Salesforceが中小企業に合わない理由とHubSpot代替CRMの選び方

  • 2026年3月4日
  • 最終更新: 2026年10月20日
Salesforceが中小企業に合わない理由と最適な代替CRM
この記事の結論

Salesforceが中小企業に合わないのは、製品の優劣ではなく、設計思想と事業規模のミスマッチです。全ユーザー課金・専門知識を要する設定・MAの別契約といった構造が、小規模なチームでは過剰投資になりやすいためです。自社の営業プロセスに対して「過剰な設計」になっていないかが、残るか乗り換えるかの判断軸になります。

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Salesforceが中小企業に合わないのは、製品の優劣ではなく、設計思想と事業規模のミスマッチです。全ユーザー課金・専門知識を要する設定・MAの別契約といった構造が、小規模なチームでは過剰投資になりやすいためです。自社の営業プロセスに対して「過剰な設計」になっていないかが、残るか乗り換えるかの判断軸になります。

「導入したものの機能が多すぎて、結局ごく一部しか使っていない」「ユーザーが増えるほどライセンス費が膨らみ、投資対効果が見合わなくなってきた」「設定を直すにも外部依頼が必要で、気づけばExcelとの併用に戻っている」——こうした声は、中小企業のSalesforce運用担当者から比較的よく聞かれます。

Salesforceが中小企業に合わないとは、大企業の複雑な組織構造を前提に設計されたプラットフォームを、中小企業の規模でそのまま使うと、コスト・運用・機能の3面で過剰投資になりやすいという意味です。製品自体の優劣の話ではありません。この分野の体系的な情報はHubSpot競合比較ガイドでまとめています。

本記事では、Salesforceが中小企業にフィットしにくい理由を率直に分析し、代替CRMを選ぶ際の判断基準と、「残るか・乗り換えるか」を感情ではなく数字で判断するフレームワークを解説します。

本記事はCRM比較おすすめ7選の関連記事で、Salesforceからの乗り換えを具体的に検討する場合はSalesforceからHubSpotへの移行完全ガイドも参照してください。
本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。


この記事でわかること

Salesforceの運用負荷や費用対効果に課題を感じている中小企業の方に向けて、「ツールの問題か、設計の問題か」を切り分ける視点と代替CRMの選び方を整理します。

  • Salesforceが中小企業に合わない5つの構造的な理由 — 課金構造・専門知識・機能過多・MAの別契約・スモールスタートの難しさという観点で、製品批判ではなく設計思想の違いとして整理します。
  • 中小企業がCRM選定で見るべき5つの基準 — 月額ライセンス費だけでなく、導入設計・追加ツール・運用工数まで含めたトータルコストで比較する考え方をお伝えします。
  • 代替CRMの比較と、それぞれが向くケース — HubSpot・Zoho CRM・kintone・Microsoft Dynamics 365・Pipedriveを、機能の統合度とカスタマイズ性の軸で比較します。
  • 「残る/乗り換える」の判断フレームワーク — 棚卸し・移行コスト試算・残留選択肢の検討という3ステップで、事実ベースで判断する方法を解説します。
  • 乗り換え時の落とし穴と、定着させる仕組みの作り方 — カスタムオブジェクトのマッピング、ワークフロー再構築、必須入力プロパティによる仕組み化まで、実務で詰まりやすい箇所を挙げます。

CRMの乗り換えやSalesforceの運用負荷に悩む、中小企業の経営者・営業責任者・情報システム担当の方に向けて書いています。最後まで読むと、自社がどちらに進むべきかを自分の言葉で説明でき、まず何を棚卸しすればよいかが具体的に分かります。


Salesforceが中小企業に合わない理由1〜3: コストと定着の構造

ここで扱うのは「Salesforceが劣っている」という話ではありません。大企業の複雑な組織構造を前提に設計されたプラットフォームだからこそ、中小企業の規模で使うと構造的に過剰投資になりやすい、という話です。まずはコストと現場への定着という、最も顕在化しやすい3つの理由から見ていきます。

理由1: 全ユーザー有料課金で固定費が重くなりやすい

Salesforceは全ユーザーに有料ライセンスが必要です。閲覧だけの経営層やバックオフィス担当にもライセンスが必要になるため、人数が増えるほど固定費が線形に増えていきます。

プラン 課金の見方
Essentials 全ユーザー課金。小規模チーム向けの入口プラン
Professional 全ユーザー課金。標準的な営業管理向け
Enterprise 全ユーザー課金。ワークフローやカスタマイズを広く使う層向け
Unlimited 全ユーザー課金。最上位プラン

全ユーザーに課金されるため、「何名がEnterpriseを使うか」×「ユーザー単価」がそのまま固定費になります。さらにPardot(MA、マーケティングオートメーション)を使う場合は別契約の費用が加わります。年間でどの程度のCRM投資になっているかを、実ログインユーザー数で割り戻して検証する価値があります。最新の単価は公式の料金ページ(HubSpot/Salesforce/kintone/Zoho CRM)で確認してください。

比較の際に押さえておきたいのは課金単位の構造の違いです。HubSpotはシート課金で、上位プランにCRM・MA・SFA・レポートの機能が含まれます。表示のみのシートの扱いはシート種別によって異なるため、HubSpotのシート管理(公式ナレッジ)とHubSpot公式の料金ページで最新の条件を確認してください。「見るだけの人にも費用がかかるか」という点は、人数規模が変わったときの固定費の伸び方を左右します。

理由2: 設定・運用に専門知識が必要になる

Salesforceの設定・カスタマイズには、Apex(プログラミング言語)やVisualforceなどの専門技術が必要になるケースがあります。中小企業では専任のSalesforce管理者を確保するのが難しく、外部コンサルタントに依頼するとライセンス費とは別に設計・保守のコストが発生します。

結果として起きやすいのが、「導入したが設定が不十分で、結局Excelと併用している」という状態です。CRMに入っているのは受注済みの案件だけで、進行中の商談はスプレッドシートにある——この二重管理が始まると、CRM上のレポートは経営判断に使えなくなります。数字を出すたびに「どちらが正なのか」を突き合わせる作業が発生し、CRMを入れた目的そのものが失われていきます。

理由3: 機能過多でUIが複雑になり、定着しにくい

Salesforceは非常に多機能ですが、中小企業で実際に使う機能はその一部です。よくあるSFAのあるあるで、全然使っていない項目が大量にあったり、ほぼ使っているのは一部だけ、という状況になりがちです。

これはSalesforceに限った話ではなく、HubSpotの設計をする際にも同じ考え方が重要だと考えています。プロパティ(項目)は最小限にする。項目が少ない方が営業は入力に集中できますし、埋まっている項目が少なければマネージャーもどこを見ればいいか迷いません。中小企業の営業チームにとっては、必要な機能だけがシンプルに揃っているUIの方が定着率は上がります。

ただし、これは「カスタマイズ性が低い方が良い」という話ではありません。組織が大きくなり、部門ごとに異なる承認フローや権限設計が必要になった段階では、Salesforceの細かい制御が効いてきます。今の自社がどちらのフェーズにいるかを見極めるのが要点です。


Salesforceが中小企業に合わない理由4・5: データ分断と拡張の難しさ

続いて、部門間のデータ連携と導入アプローチの2つです。こちらは営業現場の使い勝手というより、マーケティングとの連携や導入計画の段階で効いてくる構造的な問題です。

理由4: MAが別製品・別コストになる

Salesforceでマーケティングオートメーションを行うには、Pardot(Account Engagement)やMarketing Cloudを別途契約する必要があります。CRMとMAが別製品のため、契約コストも運用の手間も増えます。

ここで効いてくるのが、データの分断です。マーケが持っているリードの行動履歴と、営業が持っている商談の進捗が別システムにあると、「どのチャネルから来たリードが受注につながっているか」を追うのに毎回手作業のひも付けが必要になります。一気通貫でデータが流れないと、失注理由をマーケ施策の改善に返すループも回りません。

HubSpotの場合、Professionalプラン1つでCRM+MA+SFA+レポートがすべて含まれており、マーケティングから営業まで同じデータベース上で管理できるのが大きな違いです。

理由5: 段階的なスケールが難しい

Salesforceは「まず小さく始めて段階的に拡張する」というアプローチが取りにくい構造です。最初からある程度の設計・カスタマイズが必要で、初期導入コストも高額になりがちです。

中小企業がCRMに求めるのは、「まず営業のパイプライン管理を始めて、回り始めたらMAやレポートを追加する」というスモールスタート型のアプローチです。最初から全部作り込もうとすると、設計に時間がかかるうえ、使ってみて初めて分かる「実はこの項目いらなかった」に対応できません。

5つの理由の整理

理由 中小企業で起きること 見るべき判断ポイント
全ユーザー有料課金 閲覧者にもライセンス費が発生 実際にログインして操作する人数は何名か
専門知識が必要 設定が止まりExcel併用に戻る 社内に設定を触れる人がいるか
機能過多 未使用項目の乱立・入力率低下 実際に埋まっている項目は何割か
MAが別製品 データ分断・二重運用 マーケと営業のデータがつながっているか
スケールしにくい 初期設計に時間とコストがかかる 小さく試してから広げられるか

中小企業がCRM選定で重視すべき5つの基準

CRM選定でよくある失敗は、機能比較表の丸の数で決めてしまうことです。中小企業の場合、機能の多さより「使い続けられるか」が成否を分けます。代替CRMを比較する際に確認したい5つの基準を、3つのグループに分けて挙げます。

基準1: ライセンス費だけでなくトータルコストで比較する

月額ライセンス費だけでなく、以下を含めたトータルコストで比較することをおすすめします。

  • ライセンス費(全ユーザー分。閲覧のみの人を含むかどうかも確認)
  • 導入・設計コスト(外部コンサルタント費用)
  • MA・CMS等の追加ツール費用
  • 運用・保守コスト(管理者の人件費含む)

特に見落とされやすいのが4つ目です。設定変更のたびに外部に依頼が必要なツールは、表面上のライセンス費が低くても、年間で見ると工数が積み上がります。

基準2・3: 「一番不慣れなメンバーが使えるか」と機能の統合性

専任管理者なしでも設定・運用できるか、営業チームが直感的に使えるUIか、学習コストは許容範囲かを確認します。ここで見るべきは「管理者が使えるか」ではなく「一番ITに慣れていない営業メンバーが使えるか」です。CRMは全員が入力してはじめてデータが揃うため、一番不慣れなメンバーに合わせた設計ができるかどうかが、定着を左右する要素の一つです。

あわせて、CRM、SFA、MA、CMS、レポートが1つのプラットフォームに統合されているかも重要です。ツールが分散するとデータの一元管理が崩れ、運用コストも増えます。コンタクト・会社・取引・チケットがリレーションデータベース(複数のデータが関連付けられた形で保存される仕組み)として紐づいているかは特に確認したいポイントで、「この会社に過去どんなアプローチをして、どの商談がどう決着したか」が1画面で追えるかどうかで、引き継ぎのしやすさが大きく変わります。

基準4・5: 段階的に広げられるかと、詰まったときの解決導線

無料または低コストのプランから始めて、事業成長に合わせて段階的に機能を追加できるかを確認します。逆方向、つまり「将来もっと高度な仕組みが必要になったときに移れるか」も見ておくと安心です。入口が狭いツールより、入口も出口も用意されているツールの方が、意思決定のリスクは下がります。

加えて、日本語のサポート、パートナー、コミュニティ、学習リソースが充実しているかも確認しておきたいポイントです。中小企業では社内に専任者を置けないことが多いので、詰まったときに日本語で解決策にたどり着けるかは実務上かなり効いてきます。


代替CRMの選択肢と、それぞれが向くケース

Salesforceの代替を検討するとき、選択肢は「統合型プラットフォーム」「業務アプリ型」「パイプライン特化型」の3系統に大きく分かれます。どれが優れているかではなく、自社が何を解決したいかで選ぶべき系統が変わります。

統合型・業務アプリ型の比較

項目 HubSpot Zoho CRM kintone
無料プラン あり(充実) あり(3名まで) なし
有料プランの課金単位 シート課金 ユーザー課金 ユーザー課金(公式で確認)
MA統合 ○ 標準搭載 △ 別製品(Zoho Marketing Hub) × なし
SFA ○ 本格的なパイプライン管理 ○ パイプライン管理 △ カスタマイズで対応
CMS ○ Content Hub × ×
カスタマイズ性 中〜高 中 高(ノーコード)
日本語サポート ○ 日本法人あり ○ 日本法人あり ○ 国産
拡張性 ○ 1,700以上のアプリ ○ Zohoエコシステム ○ プラグイン

以下の画面は、kintoneの公式サイトです。ノーコードで自社業務に合わせた業務アプリを作れる点が特徴で、CRM/SFAとして使うというより「自社独自の管理台帳をシステム化したい」というニーズに向いています。

kintone 公式サイト

Microsoft Dynamics 365

Microsoft 365との統合に強みがあり、Outlookとの連携がネイティブです。大企業向けの機能が充実しており、Salesforceと同等以上の高度なカスタマイズが可能です。課金はユーザー単位です。

Dynamics 365が向いているのは、Microsoft製品を全面的に使っている企業、ERPとの統合が必要な企業、高度なカスタマイズが必要な企業です。ただし「Salesforceが重いから」という理由で移行すると、同じ重さの問題に突き当たる可能性がある点は率直にお伝えしておきます。以下の画面は、Microsoft Dynamics 365の日本語サイトです。

Microsoft Dynamics 365 日本語サイト

Pipedrive

営業パイプライン管理に特化したシンプルなSFAです。直感的なUI、かんばんボード型のパイプライン表示が特徴で、営業チームの使いやすさに定評があります。課金はユーザー単位で、料金は公式サイトで確認できます。

Pipedriveが向いているのは、営業パイプライン管理に集中したい企業、シンプルで使いやすいSFAを求める小規模チーム、MA機能が不要な企業です。逆に、マーケティング施策からのリード獲得と営業を一続きで見たい場合は物足りなさが出ます。

どの系統を選ぶかの整理

他のCRMも含めた全体像はCRM比較おすすめ7選、費用面の見方はCRM料金の相場を比較、SFAに絞った比較は中小企業向けSFAおすすめ比較で整理しています。

解決したい課題 向く系統 具体例
営業の商談管理だけを整えたい パイプライン特化型 Pipedrive
自社独自の台帳・業務フローをシステム化したい 業務アプリ型 kintone
マーケ〜営業〜顧客管理を一気通貫で見たい 統合型 HubSpot、Zoho CRM
ERP・Microsoft製品群との統合が主目的 エンタープライズ統合型 Microsoft Dynamics 365

SalesforceとHubSpotを並べて見たときの違い

Salesforceからの乗り換え先としてHubSpotを検討されるケースが多いので、この2つを正面から比べます。どちらも広く使われているプラットフォームです。ここでは優劣ではなく「どういう組織に向くか」の違いとして読んでいただければと思います。

機能・料金体系の比較

項目ごとの詳しい比較はHubSpot Salesforce比較|9項目でわかる料金・機能の違いと選び方で扱っています。ここでは判断に効く違いだけを並べます。

比較項目 Salesforce HubSpot
UI/操作性 高機能だが複雑 直感的で学習コストが低い
料金体系 ユーザー課金 シート課金(閲覧のみシートは無料)
MA統合 Pardot別契約(追加費用) Marketing Hub標準搭載
CMS なし(外部CMS必要) Content Hub搭載
カスタマイズ 非常に高度(要管理者) 適度(非エンジニアでも可)
無料プラン なし(30日トライアル) あり(永年無料)
AI機能 Einstein AI Breeze
API 充実 充実

中小企業でHubSpotが有力な選択肢になる理由

中小企業のSalesforce代替として、HubSpotが候補に挙がりやすいのには理由があります。

  • 無料プランから始められる: まず費用をかけずにCRMの基本機能を試せます
  • CRM+MA+SFA+CMS統合: Salesforce+Pardot+外部CMS相当の機能が1つのプラットフォームに収まります
  • 直感的なUI: 専任管理者なしでも営業チームが使いこなせる設計です
  • 段階的スケール: Starter→Professional→Enterpriseと段階的にアップグレードできます(アップグレードの判断基準を参照)
  • 機能面の充実: HubSpotでもSalesforceに近い水準の仕組みを構築できる機能が揃っています

HubSpotは無料プランからStarter、Professionalへと、事業の立ち上げから拡大まで段階的に機能を足していける構成です。小さく試す場合は、まず無料プランで1パイプラインを再現し、必要になった機能に応じてプランを選びます。各プランの最新の条件はHubSpot公式の料金ページで確認してください。

以下の画面はHubSpotのBreeze(AI機能)の製品ページです。

HubSpot Breeze AI 製品ページ

ただし、Salesforceの方が適するケース

正直にお伝えすると、以下のようなケースではSalesforceに残る、あるいはSalesforceを選ぶ方が合理的です。

  • Apex開発を伴う独自ロジックが業務の中核に組み込まれている
  • 部門ごと・地域ごとに複雑な権限設計と承認フローが必要
  • 既存の基幹システムとの連携がSalesforce前提で作り込まれている
  • 社内にSalesforce管理者が在籍し、設定変更を内製できている

「使いこなせていない」という感覚だけで乗り換えを決めると、移行先でも同じことが起きます。原因がツールなのか設計なのかを切り分けるのが先です。


Salesforceに残るか乗り換えるかの判断フレームワーク

乗り換えの検討で最も危険なのは、不満の感情だけで動いてしまうことです。ここでは事実ベースで判断するための3ステップを提示します。企業様によって最適な結論は異なるので、あくまで自社の数字を当てはめて考えていただくための型です。

ステップ1: 現在の利用状況を棚卸しする

  • 使っている機能と使っていない機能を洗い出す
  • 月間のログインユーザー数を確認する
  • カスタムオブジェクト・カスタムフィールドの数を把握する
  • 連携している外部ツールの一覧を作成する

ここで見たいのは「契約しているユーザー数」と「実際にログインして操作しているユーザー数」の差です。この差が大きければ、そもそもプラン構成の見直しだけで解決する可能性があります。あわせて、各プロパティの入力率も確認してください。ほとんど埋まっていない項目が大量にあるなら、問題はツールではなく設計側にあります。

ステップ2: 移行コストを試算する

コスト項目 内容
データ移行 CSV/APIでのデータ移行作業
再設定 ワークフロー・レポートの再構築
トレーニング 新CRMの操作研修
一時的な生産性低下 慣れるまでの期間(1〜3ヶ月)
新CRMのライセンス費用 月額/年額

見落とされがちなのが4行目の「一時的な生産性低下」です。移行の前後で営業が数字を追いにくくなる期間が発生するため、期末や繁忙期と重ならないタイミングを選ぶのが実務的です。

ステップ3: 「Salesforceに残る」選択肢も同時に検討する

乗り換えが常に正解とは限りません。Salesforceのプラン見直し(Enterprise → Professional)や、不要機能・不要項目の削除で解決できるケースもあります。

特に「使いこなせていない」が主訴の場合、原因がパイプライン設計やステージ定義の曖昧さにあることは少なくありません。その場合、ツールを変えても同じ問題が再発します。まず設計側を直してみて、それでも運用負荷やコストの構造が変わらないなら移行を検討する——この順番が安全です。

判断の目安

状況 推奨される検討方向
実利用者数が契約数を大きく下回る まずプラン・ライセンス構成の見直し
項目が多すぎて入力率が低い まず項目整理とステージ定義の再設計
MAを別契約しており運用が分断している 統合型プラットフォームへの移行を検討
設定変更のたびに外部依頼が必要 内製できるツールへの移行を検討
Apex等の独自開発が業務の中核 残留し、運用設計の改善に投資

Salesforceの使い方別の移行方針

棚卸しの結果を、次の表に当てはめると方針の目安が立ちます。

Salesforceの現状 方針の目安 最初にやること
標準オブジェクト(リード・取引・取引先)中心で、カスタム項目は少ない HubSpotへの移行が現実的 CSVで書き出し、コンタクト・会社・取引に分けてインポートする
カスタム項目が多いが、入力率は低い 項目を減らしてから移行 入力率の低い項目を棚卸しし、移行しない項目を決める
カスタムオブジェクトや承認フローを多用している HubSpot Enterpriseの要否を確認してから判断 カスタムオブジェクトは公式ナレッジ上Enterpriseが必要。代替の持ち方も同時に検討する
Apex・Flowで業務ロジックを作り込んでいる Salesforceに残る、または段階移行 業務ロジックをワークフローで置き換えられるかを1本ずつ確認する
外部ツール連携(会計・請求・チャット)が多い 連携の置き換え先を先に確認 連携の一覧を作り、標準連携と自社開発アプリのどちらで置き換えるかを決める

移行を決めた場合の進め方と落とし穴

移行を決めたら、次は「何をどの順で動かすか」です。ここで焦って一括移行すると、データの整合性が取れないまま運用が始まり、結局スプレッドシートに戻るという事態になりかねません。段階的に進めるのが結局は近道です。

データ移行の基本ステップ

  1. データの棚卸し: 移行するデータと破棄するデータを選別する
  2. データクレンジング: 重複排除、名寄せ、フォーマット統一を行う
  3. テスト移行: サンプルデータで移行テストを実施する
  4. 本番移行: 全データの移行を実施する
  5. 検証: データの整合性をチェックする
  6. 並行運用: 新旧CRMの並行運用期間を設ける

Salesforceのデータはデータローダーやレポート機能でエクスポートできます。HubSpotへのインポートはExcel/CSV形式で行え、コンタクト・会社・取引の基本データは移行できます。ファイルの作り方はHubSpot公式ナレッジのインポートファイル作成手順を確認してください。全体の手順とプロパティのマッピングはSalesforceからHubSpotへの移行完全ガイド、失敗しやすい点はSalesforce移行で失敗する7つの原因と対策にまとめています。移行後にHubSpotを使いこなすための実践テクニックは「HubSpotが使いにくいと感じる原因と解決策」で解説しています。

移行のタイミングは、データを整理する良い機会でもあります。何年も触れられていない古いリードや、担当者不明のまま残っている会社レコードをそのまま持ち込むと、新環境でも同じ混乱が起きます。

HubSpotとSalesforceを連携して段階移行する手順

一括で切り替えず、連携しながら移していく場合の設定手順です。公式ナレッジ(HubSpot-Salesforce連携のインストール)の記載に基づきます。

  1. 前提を確認します。HubSpot側はMarketing・Sales・Service・DataなどのProfessional以上のサブスクリプションと管理権限、Salesforce側はAPI利用が可能なエディションと、システム管理者のユーザーが必要です。
  2. HubSpotのナビゲーションバーのマーケットプレイスアイコンから「HubSpotマーケットプレイス」を開き、「Salesforce」アプリを検索して「インストール」を押します。
  3. サンドボックスにつなぐ場合は、サンドボックス接続の選択肢を選びます。テスト環境で試してから本番につなぐのが安全です。
  4. 表示されたポップアップでSalesforceの認証情報を入力してログインします。
  5. 連携後の設定は、設定(歯車)の Integrations > Connected Apps > Salesforce から行います。
  6. プロパティの対応づけ(フィールドマッピング)を確認し、最初は同期する対象を絞って試します。

連携を使う場合、どのシステムを正とするかを先に決めることが重要です。実務では、移行期間中はHubSpotを入力の正とし、Salesforceは参照のみにします。双方向同期を長く続けると、どちらが最新か分からなくなります。

続いて、データをHubSpotへ取り込む手順です(オブジェクトのインポート)。

  1. 設定(歯車)の「データ管理」から「Data Integration」を開き、「Import data」を選びます。複数のオブジェクトを同時に取り込む場合は「Advanced imports」を使います。
  2. 取り込むオブジェクト(コンタクト・会社・取引)と、作成のみ・更新のみ・作成と更新のどれにするかを選びます。
  3. ファイルをアップロードし、重複を防ぐ一意の識別子を対応づけます(コンタクトはメールアドレス、会社はドメイン名など)。
  4. 残りの列をHubSpotのプロパティに対応づけ、インポートに名前を付けて完了します。
よくある失敗:識別子を対応づけずに取り込むと、同じ会社が重複して作られます。テストとして10〜20件だけ取り込み、会社と取引の関連づけが正しいかを確認してから本番に進めてください。

よくある移行の落とし穴

  • カスタムオブジェクトのマッピング不備: Salesforceのカスタムオブジェクトのデータはそのままインポートできないため、HubSpot側でカスタムオブジェクト(Enterpriseプラン)を作成するか、既存のオブジェクトにマッピングする必要があります
  • ワークフロー・プロセスビルダーの再構築漏れ: SalesforceのProcess BuilderやFlowで構築した自動化は、HubSpotのワークフローで手動での再構築が必要です
  • レポート・ダッシュボードの喪失: 既存レポートは移行できないため、新環境で再作成することになります

ワークフローについては、この機会にすべてを再現しようとしないことをおすすめします。長年運用していると、誰も理由を説明できない自動化が残っているものです。本当に必要な自動化だけを選んで再構築する方が、結果的に運用しやすい環境になります。

人ではなく仕組みで定着させる

移行時に最も大事なのは、「入力してね」とお願いすることではなく、入力せざるを得ない仕組みを作ることです。具体的には、取引ステージを進めるときに必須入力プロパティを設定します。

ステージ移行時 必須にする項目の例 狙い
商談化 想定金額、クローズ予定日 フォーキャストの精度を担保
見積もり提示 提案内容、決裁者 提案の抜け漏れ防止
受注 受注理由 勝ちパターンの蓄積
失注 失注理由(選択式) 失注分析とマーケへの還元

必須入力は入力を強制するだけの仕組みではありません。新しく入ったメンバーに対して「このステージでは何を確認しておくべきか」を教えるガイドにもなります。担当者が変わっても同じ品質で商談が進む、つまり属人化しない営業プロセスをつくるための装置だと捉えていただくのがよいでしょう。

あわせて、プロパティの編集権限は管理者のみに絞っておくことをおすすめします。誰でも項目を追加できる状態にしておくと、半年後には元のSalesforceと同じく「使っていない項目が大量にある」状態に戻ってしまいます。

StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、Salesforceからの移行設計と定着を支援しています(SalesforceからHubSpotへの乗り換え支援)。

チームへの説明と段階的な移行パス

Salesforceから別のCRMへの乗り換えに抵抗感を持つメンバーもいるかもしれません。乗り換えの理由(業務効率化、機能統合、運用の内製化など)を明確に伝え、新CRMのメリットを実感できるデモやハンズオンを実施することをおすすめします。

移行パスとしては、まずStarterから始めてSalesforceと並行運用し、問題なければ完全移行するというアプローチが安全です。並行運用の連携設定はHubSpot Salesforce連携ガイド、段階移行か一括移行かの判断はSalesforce HubSpot 連携 併用が参考になります。いきなり全社・全機能を切り替えるのではなく、1つの営業チームだけ、あるいはパイプライン管理だけを先に移すところから始めると、後戻りのリスクを抑えられます。

なお、HubSpotからSalesforceへの逆方向の移行パスも確保されています。事業が大きくなり、より厳密な統制や複雑な権限設計が必要になった段階で、HubSpotのStarterからSalesforceへ移るという選択も取れるので、今の規模に合わせて選んで問題ありません。

StartLinkの移行支援の進め方

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkは、Salesforceからの移行を次の5工程で支援しています。最初に残す部分と移す部分を切り分け、スモールスタートで始めて広げます。

  1. 現状の整理・要件定義:Salesforceの項目・自動化・連携を棚卸しし、移す範囲を決めます。
  2. 設計・構築:HubSpotのパイプライン、プロパティ、ワークフローを設計します。
  3. データ移行:クレンジングと名寄せを行い、テスト移行から本番移行へ進めます。
  4. テスト・検証:一部のチームで先行利用し、集計と入力のずれを確認します。
  5. 定着・運用改善:準委任で伴走し、BreezeなどのAIを業務設計に組み込みます。

移行の詳細はSalesforceからの乗り換え支援(本記事の後半にリンクがあります)、構築全般はHubSpot導入・構築支援に載せています。会計との連携が必要な場合は、自社開発のSync for freeeで標準連携の足りない部分を補えます。他のCRMとの違いは、HubSpotとZoho CRMの比較やHubSpotとkintoneの比較も参考になります。企業様によって最適な形は異なりますので、まずは棚卸しからご相談ください。


移行後にCRMを「成長のエンジン」にするために

CRMは導入して終わりではなく、そこから営業プロセスを回すための基盤です。ツールを変えただけでは成果は変わらないので、移行を機にどう運用設計を組み直すかが本題になります。ここでは全体フローの中でCRMをどう位置づけるかを整理します。

コンタクトから請求までを1本の線でつなぐ

理想的なのは、リード獲得から受注、その後の請求・更新管理までが同じデータベース上でつながっている状態です。流れとしてはこうなります。

  1. フォームや展示会でリードを獲得し、コンタクトとして蓄積する
  2. ライフサイクルステージで検討段階を可視化する(リード→MQL→SQL→商談→顧客)
  3. ワークフローでステップメールを配信し、検討度合いを高める
  4. 商談化したら取引(パイプライン)で管理する
  5. 受注後は顧客としてサポート・更新を管理する
  6. 失注したリードはステージを戻し、ナーチャリング対象に再投入する

6番目の「失注からの掘り起こし」は特に見落とされやすいところです。失注理由を価格・競合・機能・時期・社内決裁といったカテゴリーで選択式にしておくと、レポートで傾向が可視化され、マーケ施策や製品開発への具体的なフィードバックになります。営業とマーケの連携が生まれるのはこのループがあるからです。

自社に最適な設計にする

ここまで書いた構成は一般的な型であって、そのまま使えるとは限りません。企業様によって最適な形は異なります。BtoBとBtoCでライフサイクルステージの定義は変わりますし、商材が高額で検討期間が長い企業と、単価が低く回転が速い企業では、パイプラインのステージ数も適正値が違います。

パイプラインを設計するときは、次の4要素をセットで考えると型が崩れにくくなります。

要素 考え方
取引ステージ 受注率が明確に変化するポイントでステージを分ける
受注確度 各ステージに確率を置き、加重金額でフォーキャストを出す
ステージ定義 各ステージの意味を文章で定義し、社内で共有する
必須入力プロパティ ステージ移行時の必須項目でデータ品質を担保する

このうち「ステージ定義」を言語化していない組織が意外と多く、そこが曖昧なまま数字を集計しても、フォーキャストは当たりません。ツールを変える前に、この定義が社内で揃っているかを確認してみてください。

まずはスモールスタートで

いきなり全機能を設計しようとすると、検討だけで数ヶ月が過ぎます。まずは受注件数と商談数を正しく数えられる状態をつくるところから始めて、そこが回り始めたらMAやレポートを足していく——この順番が現実的です。

最初の設計に完璧さを求めすぎないことが、結局は早く回り始めるコツです。


よくある質問

Q. SalesforceからHubSpotへの移行にはどのくらいの期間がかかりますか?

中小企業(〜50名)の場合、2〜3ヶ月が目安です。データ移行に2〜4週間、環境構築に2〜4週間、並行運用と定着に2〜4週間という配分になります。Salesforce側のカスタマイズが複雑な場合はさらに期間を要しますので、期末や繁忙期を避けたスケジュールを組むことをおすすめします。

Q. Salesforceのカスタムオブジェクトのデータも移行できますか?

HubSpotのEnterpriseプランであればカスタムオブジェクトを作成でき、データ移行は可能です。Professional以下のプランの場合は、既存のオブジェクト(コンタクト・会社・取引等)にマッピングするか、メモとして情報を保持する方法が現実的です。移行前にどのカスタムオブジェクトが実際に運用で使われているかを棚卸しすると、無理に移す必要がないデータも見えてきます。

Q. HubSpotはSalesforceと比べて機能が劣りませんか?

HubSpotも機能面は大きく拡充されており、中小企業が必要とする機能はほぼカバーしています。大企業向けの高度なカスタマイズ(Apex開発等)が必要な場合はSalesforceの方が適しますが、営業プロセスの標準化とマーケティング連携が目的であれば十分な機能を備えています。判断軸は機能の多さではなく、自社の業務がその機能で回るかどうかです。

Q. SalesforceとHubSpotの並行運用は可能ですか?

可能です。HubSpotにはSalesforceとの連携コネクタがあり、データの双方向同期ができます。移行期間中はSalesforceを読み取り専用にし、HubSpotで実務を行う並行運用が現実的です。ただし双方向同期を長期間続けると、どちらが正のデータか分からなくなりやすいので、並行期間はあらかじめ区切っておくことをおすすめします。

Q. HubSpotの無料プランだけでSalesforceの代替になりますか?

基本的なCRM機能(コンタクト管理、パイプライン管理)は無料プランでも利用できます。ただし、ワークフロー自動化やカスタムレポートが必要な場合はProfessionalプランが必要です。まず無料プランで自社の営業プロセスを表現できるか試し、自動化やレポートが必要になった段階で有料プランを検討するという進め方が無理がありません。

Q. Salesforceの連携機能を使ってHubSpotとデータを同期するには何を確認しますか?

HubSpotにはSalesforceとの連携機能があり、導入前に同期するオブジェクトと同期の向き、重複レコードの扱い、双方のプロパティの対応関係を決めておくのが基本です。設定手順はHubSpot公式ナレッジで確認できます。移行目的の場合は同期期間を区切り、どちらを正とするかを先に決めておくと混乱を避けられます。

Q. Salesforceに残るか乗り換えるかは、どの数字で判断すればよいですか?

契約ユーザー数と実際にログインして操作している人数の差、主要プロパティの入力率、外部コンサルタントへ依頼している設定変更の頻度の3点が目安です。実利用者数が契約数を大きく下回るならプラン構成の見直し、入力率が低いなら項目とステージ定義の再設計を先に行い、それでもコストや運用負荷の構造が変わらない場合に移行を検討します。


まとめ

Salesforceが中小企業に合わないのは、製品の優劣ではなく、大企業の複雑さを前提にした設計が中小企業の規模では過剰になりやすいためです。具体的には、全ユーザー有料課金による固定費、設定に専門知識が必要なこと、機能過多によるUIの複雑さ、MAが別製品なこと、スモールスタートの難しさという5つが重なります。

一方で、乗り換えが常に正解とは限りません。原因がツールではなくパイプライン設計やステージ定義の曖昧さにある場合、移行先でも同じ問題が再発します。まずは実利用者数と項目の入力率を数字で確認し、ツールの問題なのか設計の問題なのかを切り分けることが出発点です。

移行を決めた場合も、いきなり全社一括ではなく、1チーム・1パイプラインから小さく始めて広げるのが安全です。そして最も大事なのは、人にお願いするのではなく、必須入力プロパティとステージ定義で「新人が入っても同じ品質で回る」仕組みをつくることです。

まずは今週、Salesforceの実ログインユーザー数を確認するところから始めてみてください。具体的な次の行動としては、次の3ステップをおすすめします。

  1. 棚卸し: 契約ユーザー数と実ログインユーザー数、主要プロパティの入力率を数字で出す
  2. 切り分け: 課題がコスト構造なのか、設計(ステージ定義・項目数)なのかを判定する
  3. 小さく試す: 設計側の課題なら項目整理から、構造的な課題ならHubSpotの無料プランで1パイプラインだけ再現してみる

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著者情報

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。