インサイドセールスとは?定義・役割分担・立ち上げ設計をCRM視点で解説

  • 2026年3月3日
  • 最終更新: 2026年10月18日
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この記事の結論

インサイドセールスは、テレアポ部隊の言い換えではありません。CRMにデータを残しながら商談創出を仕組みにする営業モデルです。

ブログ目次


インサイドセールスは、テレアポ部隊の言い換えではありません。CRMにデータを残しながら商談創出を仕組みにする営業モデルです。

「問い合わせへの対応が営業担当の空き時間まで延びている」「訪問営業だけでは新しい商談に対応しきれない」「フォロー状況がスプレッドシートと個人のメールに散らばり、誰が何をしたのか追えない」。こうした状態なら、まず顧客との接点から商談への引き継ぎまでを見直す必要があります。

インサイドセールスとは、電話・メール・Web会議などの非対面チャネルを活用し、見込み顧客の発掘・育成から商談創出までを担う営業活動のことです。担当者を置くだけでは、対応漏れや引き継ぎの問題は解消しません。どのリードを受け取り、何を確認し、どの状態になったら営業担当へ渡すかを決めることが出発点です。

この記事では、インサイドセールスの定義と役割分担を押さえたうえで、CRMへの記録、KPI、商談の受け渡し、立ち上げ後の見直し方まで順に解説します。


この記事でわかること

営業・CRMの取り組みを検討されている方に向けて、担当範囲の決め方から運用を見直す条件まで整理します。自社で分業を始めるべきか、まず記録の仕組みを整えるべきかを判断する際に役立ててください。

  • インサイドセールスの定義と担当範囲 — テレアポとの違いを踏まえ、次の担当者へ渡す情報を明確にします。
  • フィールドセールスとの分業の考え方 — 比較表と「The Model」型分業を使い、担当を分ける場合と分けない場合の判断点を整理します。
  • 導入メリットとExcel管理の限界 — 接点や活動履歴を確認し、CRMに移す対象と順番を考えます。
  • KPI・SLA・パイプラインの設計要件 — 工程ごとの数字を読み、商談を渡す側と受ける側の基準を決めます。
  • 立ち上げ前の判断基準と段階的な進め方 — 記録、受け渡し、自動化、改善へ進む条件を示します。

インサイドセールスの定義と役割

インサイドセールスの担当範囲は、電話をかけるところだけではありません。リードを受け取ってから、商談として渡すか、育成を続けるかを判断するまでが対象です。業務を分ける際は、活動内容とともに「次の工程へ何を残すか」を決めます。KPIの具体的な組み立て方はインサイドセールスのKPI設計で詳しく解説しています。

インサイドセールスが担う業務の範囲

インサイドセールス(Inside Sales)とは、オフィスの中(Inside)から非対面で行う営業活動の総称です。電話、メール、Web会議ツール、チャットなどのデジタルチャネルを使い、主に次の業務を担当します。

業務 内容 次の工程に渡すもの
初回アプローチ 資料請求・問い合わせ・イベント参加などのリードへ最初に接触する 接触結果と反応
ヒアリング ニーズや課題、検討状況を把握する 課題・予算・決裁者・時期の情報
ナーチャリング 検討時期が先のリードに情報提供を続ける 検討段階の変化
商談創出 条件を満たしたリードをフィールドセールスにトスアップする 商談としての登録
記録と分析 活動内容を顧客データとして残し、改善に使う 活動ログ・KPI

最初に、現在のリードがどこから入り、誰が初回対応しているかを書き出します。次に、商談へ渡す判断に実際に使っている情報を確認します。課題を聞けていても、検討時期が分からなければ継続フォローに戻す、といった分岐を決めておくと、担当者による判断の違いを確認できます。

記録項目は、表の右列を起点にします。受け取る担当者が次の会話を始められるかを確認し、不足する情報だけを追加してください。確認できなかった項目は推測で埋めず、「未確認」と分かる形で残します。その情報が商談前に必要なら追加確認し、商談中でもよいなら引き継ぎます。

テレアポとの違い

テレアポはアポイントを獲得する行動を指します。一方、インサイドセールスには、その前後のヒアリング、育成、商談を渡す判断、活動記録まで含まれます。

違いを確かめるには、獲得したアポイントの件数だけでなく、その後の商談内容を見ます。営業担当が顧客に同じ質問を繰り返しているなら、ヒアリング結果の記録か引き継ぎ基準を見直します。商談へ進まなかったリードの状況が分かるなら、接触方法や育成の対象を見直せます。こうした検証に使える記録を残すことが、役割を広げる意味です。

インサイドセールスが注目される背景

インサイドセールスを検討する背景には、次のような営業環境の変化があります。

環境変化 営業への影響
非対面での商談機会 訪問せずに対応できる場面と、対面での確認が必要な場面を分けられる
SaaS/サブスクリプションモデルの拡大 継続的な接点を誰が担い、どの情報を次の担当へ渡すか検討する必要がある
BtoB購買行動のデジタル化 顧客が接した情報と問い合わせ内容を踏まえて初回対応を考える必要がある
人手不足・採用難 担当者が対応する対象と業務の優先順位を明確にする必要がある
CRM/MAツールの進化 記録した情報を担当者が判断に使えるか確認する必要がある
コロナ禍による非対面営業の浸透 訪問なしでも商談が成立する成功体験が広がった

自社での必要性は、こうした背景だけで判断せず、実際のリードの流れで確かめます。反響への対応が滞っているなら初回対応の担当を決めることから、過去の接点が追えないなら活動記録をそろえることから始めます。どちらも起きている場合は、対応状況を記録できるようにしてから担当を分けると、分業後の変化を追えます。


フィールドセールスとの違いと分業の全体像

インサイドセールスとフィールドセールスは、営業プロセスのどこを担当するかで役割が分かれます。境目を決める前に、顧客が同じ説明を繰り返さずに済むか、営業担当が引き継いだ情報を使えるかを確認しましょう。ここでは比較表と分業モデルを使って担当範囲を整理し、分業が向きにくい場合の判断も示します。SDRとBDRの違いはSDRとBDRの違いを徹底解説もあわせてお読みください。

比較表で見る役割の違い

比較項目 インサイドセールス フィールドセールス
活動場所 オフィス(リモート含む) 顧客先への訪問
主な手段 電話・メール・Web会議 対面での商談・プレゼン
担当フェーズ リード対応から商談創出まで 商談から提案・クロージングまで
1日の活動 担当するリードへの接触と継続フォロー 担当する商談の準備と提案
適した商材 非対面で検討状況を確認しやすい商材 対面での確認や個別提案が必要な商材
KPI コール数、アポ獲得数、SQL数 受注数、受注金額、受注率
スキル重点 ヒアリング力、データ分析力 提案力、交渉力、関係構築力

表は担当を固定するためではなく、自社で引き継ぎ地点を決めるために使います。例えば、インサイドセールスが検討時期まで確認して渡すなら、フィールドセールスは提案の準備から始められます。確認が難しい項目を一律に求めると商談が渡せなくなるため、渡す時点で必要な情報と、商談中に確かめる情報を分けてください。

境目を決めたら、実際に引き継いだ商談で確かめます。受け取る側が次の対応を決められたなら、その基準を使い続けます。追加確認のために差し戻す商談が続くなら、渡す前に必要な情報を見直します。

「The Model」型分業の全体像

インサイドセールスを理解するうえで参考になるのが、「The Model」型の分業という考え方です。

部門 担当 次の部門へ渡すもの
マーケティング リード獲得 見込み顧客のリスト
インサイドセールス リード育成・商談創出 条件を満たした商談
フィールドセールス 商談・受注 契約した顧客
カスタマーサクセス 継続・拡大 追加提案の機会

私たちは、この分業を個々の部署の話ではなく、コンタクトが取引になり、取引が顧客になり、請求へつながる一本の流れとして設計することをおすすめしています。各部門で記録する場所と引き継ぎ先を確かめ、担当が変わっても顧客との経緯を追える状態にします。

確認する順序は、リードの受け取り先、商談化の判定者、取引を更新する担当、失注や受注の結果を返す先です。結果がインサイドセールスに戻ってこなければ、どの引き継ぎ基準を直すべきか判断できません。

分業が向きにくいケース

リードが少なく、案件ごとに個別の確認が必要な商材では、担当を分けることで顧客が同じ説明を繰り返す場合があります。まず営業担当が直接対応し、活動履歴と商談結果を共通の場所に残す方法もあります。

判断の分かれ目は、初回対応と商談を分けたときに、待ち時間や情報の受け渡しが改善するかです。情報収集中のリードへの継続対応が営業担当の商談準備を圧迫しているなら、分業を検討します。多くの問い合わせが個別相談から始まるなら、担当を分ける前に記録の仕組みを整えます。分業を試した後も、営業担当への差し戻し理由と顧客への重複質問を確認し、境目を見直してください。


インサイドセールスを導入するメリット

期待できる変化は、顧客との接点、商談前の情報、初回対応、活動履歴に表れます。ただし、担当を設けただけで成果が決まるわけではありません。それぞれ何を確かめれば運用上の変化といえるかを押さえましょう。実務での進め方はインサイドセールス立ち上げガイドで具体例とともに紹介しています。

顧客との接点を増やせる

非対面で対応する範囲を設けると、訪問を待たずに初回の会話や継続フォローを組みやすくなります。まず、未対応のリードと、次の接触予定が決まっていないリードを確認します。担当を決めた後は、接触数だけでなく、必要な相手に連絡できたかを見てください。接触が増えても対象外の相手への連絡が多ければ、優先順位を見直します。

商談の質が上がる

インサイドセールスが課題や検討状況を確認して渡せれば、フィールドセールスはその内容を踏まえて商談を始められます。引き継ぎ後に営業担当が不足を感じた情報を集め、商談化の条件と記録項目に反映します。確認項目を増やす前に、その情報が提案や次の判断に使われたかを確かめることが大切です。

商談の結果も確認します。受け取った情報は十分でも提案に進まない場合は、ヒアリング項目を増やす前に、対象とするリードや商談化の条件が合っているかを見直します。

リードへの初動が速くなる

問い合わせなどを受け取る担当と、対応できないときの引き継ぎ先を決めると、営業担当の空き時間を待つ状態を見直せます。CRMでは受領、初回対応、対応結果を追えるようにします。滞留があれば担当の割り当てと通知を確認し、連絡はできているのに会話につながらない場合は、対象や連絡方法を見直します。

営業活動を可視化し、再現できる

CRM/SFAに活動を記録すると、誰が・いつ・何を・どう話したかを担当者間で確認できます。ただし、記録が使われて初めて改善につながります。

従来の営業 インサイドセールス導入後
営業個人のノウハウに依存 活動記録をもとに手順をチームで確認する
成果の要因分析が困難 KPIを同じ定義で集計し、見直す工程を選ぶ
新人が過去の対応を参照しにくい 記録された会話や手順を確認できる
担当者が変わると経緯を追いにくい CRMに残した情報を引き継ぎに使える
新人の立ち上がりに時間がかかる 記録された会話や手順から学べる
退職時にナレッジが流出 CRMに情報が蓄積され、引き継げる

運用を始めたら、記録を読む担当者に「次の対応を決めるために必要だった情報」と「使わなかった情報」を確認します。必要な情報が欠けていれば入力方法を直し、使われない項目が続くなら必須にする理由を見直します。


Excel管理のインサイドセールスが行き詰まる理由

スプレッドシートで管理できていても、活動履歴が個人のメールに残り、商談結果が別の場所にあると、顧客の状況をつなげて確認しにくくなります。ここでは情報の分散と引き継ぎの問題を確かめ、CRMへ何から移すかを整理します。

情報が分散し、同じ顧客が複数の場所にいる

スプレッドシートのリスト、個人のメール、チャットでの共有、名刺管理などに情報が分かれている場合、最初にそれぞれの情報の持ち主と更新方法を書き出します。次に、同じ会社や担当者の記録を照合し、どれを参照元にするか決めます。

CRMに集める際は、会社、コンタクト、取引の関係を確認してから移します。表記の違う会社をそのまま登録すると重複が残るため、移行後に担当者が履歴をたどれるかまで確かめてください。参照元を決められない情報は、担当者に確認してから移す対象に含めます。

引き継ぎのたびに履歴が失われる

スプレッドシートの行とメールの転送だけでは、顧客が何を伝え、何に回答したかが引き継がれない場合があります。過去の会話、確認済みの課題、次の約束を受け取る側が見られるかを、実際の商談で確かめます。

営業担当が同じ質問を繰り返したなら、その情報が未記録だったのか、記録の場所が分からなかったのかを分けて確認します。前者なら入力項目、後者なら表示や引き継ぎ手順を直します。

CRMでの「一元管理」「自動化」「可視化」

CRMに移す際に確認したい違いは、次のとおりです。

観点 スプレッドシート管理 CRMでの管理
一元管理 リストとメールが別々 コンタクト・会社・取引に活動履歴を紐づけて管理する
自動化 ステータス変更や通知は手作業 定めた条件に沿って通知や更新を行う運用を検討できる
可視化 集計のたびに手で数える 記録した項目をもとに工程ごとの数を確認する

まずはリードの担当、対応状況、次の行動を同じ場所で確認できるようにします。その記録を使って商談の引き継ぎができる状態になってから、通知や更新の自動化を検討してください。手順が定まらないまま自動化すると、誤った分類や通知も続いてしまいます。

HubSpotの活用方法は「HubSpotのSales Hub(SFA)とは?SFAの機能一覧とAIと連携した、実務で使えるユースケースをご紹介!」で解説しています。


BtoBにおけるインサイドセールスの活用シーン

新しい反響への対応に加え、失注した商談や既存顧客との次の接点を検討する場面でも、活動履歴が判断材料になります。どの対象を選ぶかは、接触する理由と次の行動を記録できるかで決めます。

展示会・セミナー・Web経由のリード対応

展示会、セミナー、資料ダウンロード、問い合わせで得たリードは、同じリストに並んでいても関心の内容が異なります。まず獲得経路と問い合わせ内容を確認し、個別の回答が必要な人と、情報提供を続ける人を分けます。初回対応後は、会話できたかだけでなく、次の行動と担当者が決まったかを記録します。

定型的なフォローにはHubSpotのシーケンスを検討できます。利用にあたっては、対象ユーザーの利用条件をCreate and edit sequencesで確認してください。個別の質問や商談に直結する相談には、担当者が内容を読んで返信する運用が適しています。

失注・休眠顧客の掘り起こし

過去に失注した顧客や接点が途切れた顧客へ連絡する際は、まず過去の会話と失注理由を確認します。ここで効くのが、失注を終点にしない設計です。

失注理由を「価格」「競合他社」「製品機能」「時期」「社内決裁」などに分けて記録し、再連絡する理由がある対象を選びます。「時期」が理由でも、顧客から聞いた検討条件が変わっていなければ、連絡する根拠にはなりません。状況の変化を確認できたら担当者と次の行動を決め、変化がなければ継続フォローの対象として記録します。

新規開拓(ABM・BDR)とアップセル・クロスセル

  • BDR ── ターゲットアカウントリストにある企業へアプローチします
  • 既存顧客への追加提案 ── 検討する場合も、まず会社単位で現在の関係を確認します

同じ会社に複数の担当者がいるなら、誰と何を話したかを照合し、接触の重複や認識のずれを防ぎます。会社内の検討状況が分からない場合は提案内容を決めつけず、担当者に状況を確認してから次の接点を設けてください。


インサイドセールスを成功させる設計要件

運用の土台になるのは、CRMに残す情報、工程を確認するKPI、商談の受け渡しを決めるSLA、受け取った商談の行方が分かるパイプラインです。それぞれを別々に設計せず、同じ商談を追える形につなげます。

テクノロジー基盤:CRMを中心に据える

インサイドセールスで検討するツールは、次のカテゴリーに分かれます。

ツールカテゴリ 役割
CRM/SFA 顧客情報・活動履歴の管理
MA リードナーチャリング・スコアリング
電話/CTI 通話記録・自動ダイヤル
メール配信 一斉配信・シーケンス
Web会議 オンライン商談
CRM/SFAの例 Salesforce
電話/CTI(MiiTel、Zoom Phone) 通話記録・自動ダイヤル
メール配信の例 Outreach:一斉メール・シーケンス 出典

ツールを選ぶ前に、顧客情報、活動履歴、商談結果をどこで確認するかを決めます。CRM/SFAを中心に据える場合は、別のツールで行った活動が担当者に見えるか、手入力が必要な箇所はどこかを確認してください。HubSpotを使う場合も、自社で必要な記録と担当者の操作を先に定め、その流れに沿って機能を選びます。

KPIの分解:どの工程で詰まっているかを見える形にする

KPIは目標を掲げるだけでなく、対応のどの工程を見直すか決めるために使います。次の分解を参考に、まず各指標を同じ定義で記録できるか確認します。

型 KPIの分解 改善の手がかり
SDR(反響型) コール数 × 接続率 × アポ獲得率 = SQL数 接続率が低ければ架電の時間帯と初動、アポ獲得率が低ければトーク内容を見直す
BDR(新規開拓型) 新規アプローチ数 × 接続率 × アポ獲得率 = SQL数 接続率が低ければリストの精度、アポ獲得率が低ければ提案の切り口を見直す

目標値を置く前に、SQLと数える条件、接続と数える条件、対象に含めるリードをそろえます。アポイントを獲得してもSQLの条件を満たさない場合があるため、表の分解を使う際は、アポイントからSQLへの判定も別に確認してください。過去の記録が使えるなら同じ条件で集計し、差が出ている工程を選んで見直します。記録がないなら、まず対象、接触結果、商談への引き継ぎ結果を残し、集計できる状態を作ります。

比較する際は、反響経路や対象企業が異なるリードを混ぜず、同じ条件の記録同士を見ます。最初に対象と期間、各指標の定義を固定し、次に接触、アポイント、SQL、商談後の結果を順に照合します。

  • 接続に差が出ている場合 ── 対象や連絡方法を確認してください
  • 接続後の差し戻しが目立つ場合 ── ヒアリング内容と商談化の定義を確認してください

条件を変えた後は、変更前と同じ定義で記録した結果を比べます。差し戻し理由と商談の行方も改善していれば続け、活動量だけが変わって結果を追えないなら、判断に必要な記録を先に整えます。

SLA:商談の受け渡し基準を決める

インサイドセールスとフィールドセールスの間にSLA(Service Level Agreement)を設け、渡す側と受ける側の行動を決めます。

  • 商談化の定義(BANT条件をいくつ満たしているか)
  • トスアップからフィールドセールスの初回接触までの期限
  • フィールドセールスからインサイドセールスへのフィードバック方法
  • リサイクル(差し戻し)の条件と対応フロー

まず実際に引き継いだ商談を振り返り、営業担当が受け取るために必要だった情報を確認します。その情報を商談化の条件にし、期限と担当者を決めます。受け取れない商談があった場合は、理由を残して差し戻し、インサイドセールスが追加確認するのか継続フォローに戻すのかを決めます。

リードスコアを使う場合も、点数だけで引き渡しを決めず、対象外条件や商談で確認すべき内容と合わせて判断します。設定方法を検討する際はHubSpot「リードスコアを作成する」を参照してください。SLAは合意して終わりにせず、差し戻し理由が繰り返される項目から見直します。

パイプライン:商談を受け取る側の設計

インサイドセールスが作った商談を改善に生かすには、フィールドセールスへ渡した後の状況を追える必要があります。受け取り、提案、失注、受注のどこで止まっているかを確認できるよう、ステージの意味と更新する担当者を決めます。

以下の画面は、HubSpotで取引をテーブル形式で一覧表示したものです。取引ごとのステージや金額を見て、引き継いだ商談の現在地を確認する起点になります。

取引一覧(22件・テーブルビュー)

パイプラインは次の要素を確認して設計します。

要素 内容 インサイドセールスとの関係
取引ステージ 受注の見込みが変わる地点でステージを分ける どこまで進んだ商談をIS起点として数えるかが決まる
受注確度 ステージごとに受注見込みの割合を置く 創出した商談の見込みを確認する際の条件になる
ステージ定義 各ステージの意味を文章で社内共有する 「アポ取得」の基準がぶれなくなる
必須入力プロパティ ステージ移動時に入力を求める項目を決める 引き継ぎ時に必要な情報を確認できる

取引ステージごとの入力項目は、商談を受け取る担当者が次の対応を判断するために必要な情報を基準に検討します。設定前に、商談を受け取る担当者が実際に参照する情報を選びます。課題、予算、決裁者、導入時期のすべてを一律に必須とするのではなく、商談を受け取る時点で確認できる内容と、商談中に確かめる内容を分けてください。

運用後は、入力項目が次の対応に使われたかを商談ごとに確認します。空欄が多ければ聞き方や入力する段階を見直し、形式的な入力が続く項目は必須にする理由を再確認します。差し戻しが起きた項目は、SLAの定義と入力画面の両方を見直す対象です。


AIを使うときの役割分担

AIはリサーチや文面作成の準備に使えます。一方、情報の採用、リードの優先順位、顧客への送信は担当者が判断します。ここではHubSpotのBreezeを例に、下準備から確認までの流れを整理します。

商談準備のリサーチをAIに任せる

架電や商談の前に企業情報を確認する際は、知りたい事項を先に決めます。顧客との過去のやり取りで分かっていることと、今回確認が必要なことを分けておくと、AIが示した内容をそのまま事実として扱わずに済みます。

次の画面は、取引レコード上に企業情報やニュースを調べるための内容が表示された例です。商談準備では、画面に示された情報の出典と対象企業を担当者が確認し、顧客との会話で使う内容を選びます。

取引レコード上でBreezeが企業情報・最新ニュースを自動収集

確認できない情報は商談の前提にせず、顧客に確かめる質問として残します。確認した事実と未確認の内容を分けて記録すれば、後続の担当者も判断の根拠を追えます。

人が判断する領域を先に決めておく

AIに任せやすい作業 人が判断する作業
企業情報のWebリサーチ どのリードを優先するか
問い合わせの分類(営業か通常か) ライフサイクルステージの定義
レコードの要約・議事録の下書き 最終的なメール送信の判断
パーソナライズメールの下書き 大型案件へのアプローチ方法

AIによる分類や要約を使う場合は、担当者が元の問い合わせや活動履歴を見て、判断に必要な情報が抜けていないか確認します。メールの下書きは、宛先、顧客の状況、約束した内容を担当者が確かめてから送ります。修正が繰り返される箇所があれば、下書きに渡す情報や確認手順を見直してください。


導入前の判断基準と段階的な進め方

立ち上げ方は、反響リードの有無、狙う企業のリスト、記録の状態、分業の体制によって変わります。最初に何を整えるべきかを確認し、次の段階へ進む条件を決めましょう。

立ち上げ前の判断基準

確認項目 満たしている場合 満たしていない場合
継続的に反響リードがあるか SDR(反響型)から始める BDRを検討するか、先にマーケティングでリード獲得を強化する
ターゲットアカウントリストがあるか BDR(新規開拓型)を始められる 狙う業種・規模を決めてリストを作るところから始める
CRM/SFAが導入済みか 既存の記録を土台にKPIを置く CRMの導入と同時に、記録するプロパティを最小限決める
分業体制に経営層の合意があるか 部門間のSLAを決めて進める 分業のねらいと評価方法を経営層とすり合わせる
専任メンバーを置けるか 専任で立ち上げる 兼任する担当者の対応時間と代行者を決め、未対応が残るなら体制を見直す
KPI設計の基礎データがあるか 過去データから工程ごとの目標を置く 数えやすい指標から記録を始める

表を確認したら、現在の課題を「対応できていないリードがある」「商談の引き継ぎで情報が欠ける」「商談結果が戻らない」のどれに当たるか整理します。最初の課題なら担当と対応状況の記録、次ならSLA、最後なら取引の更新とフィードバックを優先します。専任か兼任かは人数だけで決めず、担当を置いた時間帯に対応状況を追えるか、担当者が不在のときに誰へ渡すかで判断します。

開始前には、誰が、どの記録を見て、何を判断するかを経営層と現場でそろえておきます。立ち上げ後は、活動件数だけで継続を決めず、対応漏れ、差し戻し、商談の結果を同じ定義で確認します。記録が足りず判断できない場合は、評価を急がず記録方法を直します。結果を追える状態になったら、詰まっている工程に合わせて体制や基準を見直してください。

小さく始めて段階的に広げる

記録と引き継ぎの手順を先に整え、その手順が使われていることを確かめてから自動化へ進みます。

段階 取り組むこと 次へ進む目安
1. 記録を集める リードと活動履歴をCRMに集約し、ライフサイクルステージを定義する 反響リードの対応状況がCRM上で一覧できる
2. 受け渡しを決める SLAを決め、商談化の条件をステージの必須項目にする トスアップした商談の行方をISが追える
3. 自動化する 通知やステージ変更をワークフローで自動化し、定型フォローにシーケンスを使う 手作業の更新漏れが減っている
4. 分析・改善する KPIをダッシュボード化し、失注理由をナーチャリングに戻す 工程ごとの改善点を定例の会議で話せる

最初の段階では、一覧を見て未対応のリードと次の対応者が分かるかを確かめます。受け渡しを決めた後は、営業担当が必要な情報を受け取れたか、差し戻しの理由が残っているかを確認します。この手順が使われていることを確かめてから、繰り返し発生する通知や更新を自動化の対象にします。自動化後も担当者が対応状況を追えなければ、通知先と更新条件を見直します。

ライフサイクルステージや商談化の定義は、BtoBかBtoCか、商材の単価や検討の進み方によって適した形が変わります。他社のテンプレートをそのまま使うより、自社の顧客が検討を進める流れを書き出し、各段階へ進む条件と戻す条件を決めてください。


よくある質問

Q1. インサイドセールスはテレアポと何が違うのですか?

テレアポはアポイント獲得という行動を指します。インサイドセールスは、リードへの初回対応、ヒアリング、育成、商談として渡す判断、活動記録までを担当します。違いを運用で確かめるには、アポイントの件数に加え、営業担当が引き継ぎ情報を使えたか、商談へ進まなかったリードに次の行動が決まっているかを確認します。

Q2. インサイドセールスとフィールドセールスはどう役割分担しますか?

インサイドセールスがリード対応から商談創出までを担い、フィールドセールスが商談から提案・クロージングまでを担う形が考えられます。境目を決める際は、営業担当が商談を始めるために必要な情報と、受け取った後に確認する情報を分けます。引き継ぎで同じ質問が繰り返されるなら記録を見直し、差し戻しが続くなら商談化の条件を見直します。

Q3. インサイドセールスを導入すると何が改善しますか?

初回対応の担当と活動記録を決めることで、未対応のリードや引き継ぎに必要な情報を確認しやすくなります。改善を判断する際は、接触件数だけでなく、対応漏れ、商談の差し戻し理由、引き継ぎ後の結果を見ます。記録がそろっていない場合は、効果を判断する前に対象と指標の定義をそろえてください。

Q4. インサイドセールスを立ち上げる前に何を決めておくべきですか?

まず、対応するリード、記録する場所、担当者、商談を渡す条件を決めます。次に、フィールドセールスとの間で、商談化の定義、初回接触までの期限、結果の返し方、差し戻しの条件に合意します。開始後に商談の行方を追えなければ、担当者と取引の更新手順から見直します。


まとめ

インサイドセールスは、非対面で顧客と接し、その経緯を次の商談につなぐ営業活動です。立ち上げる際は、次の順序で自社の運用を確認してください。

  • リードの受け取りから商談結果までをたどり、担当と記録場所を決める
  • 現在の対応漏れと引き継ぎの不足を確認し、先に解く課題を選ぶ
  • 商談化の条件と差し戻しの流れを、両担当者が使えるSLAにする
  • 同じ定義で活動と結果を記録し、詰まっている工程を見直す
  • 手順が定まった作業から自動化し、失注理由も次の対応に生かす

まずは、現在使っているリード管理の場所と活動履歴の残し方を確認してください。次の順番で進めると、担当を分ける前に必要な情報が見えてきます。

  1. スプレッドシート、メール、名刺などにある情報の持ち主を確認し、CRMに集める対象と参照元を決める
  2. 顧客が検討を進める流れを書き出し、各段階へ進む条件と商談化の条件を決める
  3. フィールドセールスと引き継ぎに必要な情報を確かめ、初回接触、フィードバック、差し戻しの手順を決める

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著者情報

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。