HubSpotの営業AI「案件創出エージェント」は、ターゲット企業のWebリサーチとパーソナライズされたステップメールの下書きを自動生成する営業支援エージェントです。リサーチと下書き作成はAIに任せ、送信前の確認・修正は人間が担う「半自動モード」で運用するのが現時点で最も現実的な使い方です。
「アプローチ前の企業リサーチに時間を取られて、肝心の商談準備に手が回らない」「アウトバウンドのリスト作成とメール文面作りだけで、一日が終わってしまう」「営業AIを試したいが、日本語環境で本当に使えるのか判断がつかない」——このような悩みを抱える営業組織は少なくありません。
案件創出エージェント(Prospecting Agent)とは、HubSpotのAIプラットフォーム「Breeze」に含まれる営業向けのAIエージェントで、CRMデータとWeb上の公開情報をもとにターゲット企業をリサーチし、パーソナライズされたアプローチメールの下書きまで自動で作成する機能です。本記事では、発表されている機能の整理に加え、「日本語環境でどこまで使えるのか」を実際に検証した結果と、現実的な導入の進め方をご紹介します。
本記事は「AI × CRMで企業価値を上げる設計思想|経営者が知るべきAI CRM戦略」シリーズの一部です。
本記事はStartLinkの「AI活用完全ガイド」関連記事です。
この記事でわかること
HubSpotの営業AIを自社で使えるか判断したい営業責任者・担当者の方に向けて、機能の全体像から日本語対応の検証結果、導入の進め方までを整理しています。
- 案件創出エージェントの機能と仕組み — ターゲット企業のWebリサーチからパーソナライズされたステップメール下書きの自動生成、登録トリガーまで、動作フローを解説します
- 日本語環境での実用性の検証結果 — リサーチ結果が英語で出力される現状や、メール文面が日本語で生成される点など、検証で確認できた実際の動作レベルを報告します
- 半自動モードを前提にした運用方法 — AIがリサーチと下書きを作成し、営業担当者が確認・修正して送信する運用フローと、全自動モードを避けた方がよい理由を説明します
- 現実的なユースケースと導入ステップ — 優先度の低いアウトバウンドリストや休眠顧客の掘り起こしから始め、段階的に活用範囲を広げる進め方を紹介します
HubSpotの導入を検討中の方から、すでにSales Hubを運用していて次の一手を探している方まで、幅広く参考にしていただけます。最後まで読むと、案件創出エージェントを「どの業務に」「どのモードで」導入すべきかを自分で判断できるようになります。
案件創出エージェントとは?Breeze全体像の中での位置づけ
案件創出エージェントを正しく理解するためには、まずその上位概念であるHubSpotのAI「Breeze(ブリーズ)」の全体像を把握しておく必要があります。Breezeは単一の機能ではなく、HubSpotプラットフォーム全体に組み込まれたAIレイヤーであり、案件創出エージェントはその一部として動きます。
次の画面は、HubSpotが公開している案件創出エージェントの製品ページです。

Breeze案件創出エージェントで営業アプローチを拡大|HubSpot(ハブスポット)
HubSpotのAIレイヤー「Breeze」とは
Breezeは、単なるチャットボットや文章生成ツールではありません。HubSpotが提供するマーケティング、セールス、サービスといったすべてのHubSpotプラットフォームに組み込まれたAIレイヤーです。その目的は、中小企業が「大規模な専門チームや莫大な予算なしに、AIの価値をすぐに享受できるようにすること」にあります。
他のCRMを使ってきた方は、「AIがCRMデータと分離せず一体で動く」という点がHubSpotらしい部分だと捉えると、イメージしやすいかと思います。
Breezeを構成する3つの要素
Breezeは、大きく3つの要素で構成されており、それぞれが連携して機能します。
| 構成要素 |
役割 |
できることの例 |
| Breeze Assistant |
プラットフォームのあらゆる場所で使える対話型AIアシスタント |
タスクの実行、データ要約、アイデア出し |
| Agent Hub(旧 Breeze Agents) |
特定業務を自律実行するAIスペシャリスト群 |
複数ステップにわたる業務の自動化 |
| Breeze Intelligence |
CRMデータをリッチ化するデータ基盤 |
会社・コンタクト情報の自動リッチ化(情報付加) |
次の画面は、Breeze Assistantの機能紹介画面です。

関連記事:HubSpot Breeze Assistant徹底活用ガイド|公式プロンプト58式の紹介と、商談リサーチや問い合わせ傾向分析などの実務プロンプト例を紹介
次の画面は、特定の業務を自律的に実行するBreezeエージェントの紹介画面です。

関連記事:HubSpotのAIチャットボット(Breeze 顧客対応エージェント)機能解説|社内向けRAG/ナレッジベースも合わせて解説
なおBreeze Intelligenceは、CRMデータの会社・コンタクト情報を自動でリッチ化するBreezeの頭脳となるデータ基盤です。ただし、現時点では日本語での企業情報付与ができないケースが多く、実用にはもう少し時間がかかりそうな印象です。詳細はHubSpotのナレッジベースも参照してください。
Sales Hubにおける案件創出エージェントの役割
案件創出エージェントは、3つの要素のうち「Agent Hub」のエージェントの一つで、Sales Hubに属する機能です。
重要なのは、このエージェントが単体で動いているわけではないという点です。次のように連携する構造になっています。
- Breeze Intelligence ── CRMデータを常にリッチな状態に保つ
- Breeze Assistant ── 営業担当者の日々の疑問に答える
- 案件創出エージェント ── その質の高いデータを基に、リサーチとアウトリーチという具体的なアクションを実行する
コンタクトの獲得から取引の創出、顧客化へと進む営業フロー全体でいえば、このエージェントは「リードから商談の入口を作る」部分を担う位置づけです。つまり、単なるメール自動送信ツールではなく、Smart CRMというデータ基盤と一体になったインテリジェンスシステムの一部だと捉えると理解しやすいかと思います。
営業の「リサーチ時間」問題。本来の営業活動に集中できていますか?
案件創出エージェントの価値を理解するために、まず多くの営業組織が直面している根深い課題を整理します。それは、営業担当者が「営業活動そのもの」に十分な時間を割けていないという現実です。
次の画面は、営業担当者の時間配分の課題を整理したものです。

リスト作成と事前リサーチに消える時間
営業担当者の業務時間を振り返ると、資料作成や見込み客のリスト作成、アプローチ前の企業リサーチといった非営業活動に多くの時間が割かれがちです。Webサイトやニュース記事、SNSを手作業で巡回し、情報を集めて整理するプロセスは、営業活動の成果を左右する重要な準備段階でありながら、最も時間と労力を要する部分でもあります。
案件創出エージェントが肩代わりする領域
HubSpotの案件創出エージェントは、このような事前リサーチやアプローチメールの作成を、現時点では簡易的な形ではありますが代行してくれる機能を持っています。
ここで大事な発想は、個人の努力でリサーチ量を増やすのではなく、「リサーチは仕組みに任せる」という設計に切り替えることです。担当者の力量や残量に左右されない形でリサーチが回る仕組みを作れる点が、この機能の本質的な価値になってきます。
機能1:ターゲット企業をAIがWebリサーチ
では、案件創出エージェントが実際に何をしてくれるのか、機能を一つひとつ見ていきましょう。まず中核となるのが、営業担当者に代わってAIが行うターゲット企業のリサーチです。
次の画面は、案件創出エージェントの機能一覧を示したものです。

内部データと外部データの2つの情報源
営業担当者が多くの時間を費やすリサーチ業務を、AIが短時間で処理してくれます。このリサーチは、以下の2つの情報源から行われます。
| 情報源 |
対象となるデータ |
| 内部データ |
HubSpotのCRM内に蓄積された情報。直近7日間のフォーム送信やページ閲覧履歴、直近60日間のメールのやり取りや通話内容 |
| 外部データ |
ターゲット企業のWebサイト、ブログ記事、最新のニュースリリースなどWeb上の公開情報 |
CRMに蓄積された自社との接点情報と、Web上の公開情報を掛け合わせてリサーチしてくれる点が、単体のAIツールにはない特徴です。
検証結果:実際に何がどこまで調べられるのか
実際に、当社(株式会社StartLink)の代表者の情報を対象に、案件創出エージェントのリサーチを実行してみました。
次の画面は、実際に生成されたリサーチ結果です。

リサーチ結果の表示テキストは基本的に英語表記になるため、内容を読むにはブラウザの翻訳機能を使う必要があります。
ただし内容の精度自体は一定の水準にあり、Webリサーチの結果や当社が発信しているブログ記事の情報、代表者に関する情報をWebから取得できていました。
HubSpotのCRM内のアクティビティ情報と関連付けて出力してくれる点も含めると、簡易的なDeepResearch機能がHubSpot内で使えるようなイメージで捉えていただけるとよいかと思います。
生成されるリサーチの情報量
次の画面は、画面サイズを縮小して、リサーチ結果としてどのくらいの文章量が生成されるかを示したものです。

生成されるリサーチの分量はかなりのもので、日本語表記が今後しっかり対応されれば、情報量としては十分に実務で使えるレベルになると考えています。
機能2:リサーチ結果をもとにしたパーソナライズメールの自動作成
案件創出エージェントのもう一つの中核機能が、リサーチ結果を踏まえたアプローチメールの下書き作成です。ここでいうパーソナライズは、単に名前を差し込むレベルのものではありません。
企業の事業内容まで踏まえた文面生成
コンタクト名のようなトークンを差し込むだけではなく、Webサイトを参照して「その企業がどのような事業を行っているか」を調査した内容をもとにメールを作成してくれます。
検証では、当社がHubSpot支援の事業を行っていることや、HubSpotとAIを連携した開発支援を行っていることを踏まえた文面が生成され、簡易的ではあるものの3通のステップメールをシーケンス形式で組んでくれました。
生成される文面の正直な評価
ただし率直にお伝えすると、生成される文面は海外チックでシステム的な印象が残り、このまま送信するには魅力に欠ける状態でした。
次の画面は、案件創出エージェントが作成したメール文面の例です。

そのため案件創出エージェントは、この機能だけでアプローチ業務が完結するものではなく、たたき台となるメール文面を作成し、そこから人が修正したり、他のAIに渡して内容をリッチ化したりする使い方が適していると考えています。
Breeze Assistantで日本語のトーンを整える
参考までに、BreezeのCopilotを使って「日本の担当者に向けた丁寧語のメール」に修正してもらったところ、ある程度うまくいきました。生成されるメール自体は日本語で作成されるため、翻訳の必要はありません。
次の画面は、Breeze Assistantで日本語の丁寧な文面に調整した結果です。

英語ベースのプロダクトであるため、日本の商習慣に合う丁寧語やビジネスのお作法を守るルールをプロンプトで明示してあげると、より実務に近い仕上がりになります。この下書きを下地に、営業担当者がポイントとなる要素を加えれば、一定使えるAIアシスタントになると思います。
機能3・4:プロファイルの使い分けと登録トリガー
案件創出エージェントは、チームや商材に合わせた設定と、実行タイミングの制御が可能です。ここではプロファイル設定・動作モード・登録トリガーの3つの設定面を見ていきます。
チームや商材ごとに複数のAIエージェントを作成
案件創出エージェントは複数のプロファイルで設定でき、例えば以下のようにチームや商材ごとに使い分けられます。
- インサイドセールスエージェント
- 営業AIのエージェント
- コンサルチームの営業エージェント
メールの提案口調や販売する商品をそれぞれ分けられるため、チームごとに別々のAIエージェントを作ることが可能です。商材や組織構成は企業様によって異なりますので、自社の営業プロセスにフィットしたプロファイル設計がここでも重要になってきます。
次の画面は、複数プロファイルを分類して管理している様子です。

半自動モードと全自動モードの違い
エージェントは、チームの習熟度や信頼度に応じて、2つのモードを使い分けることができます。
| モード |
動作範囲 |
現時点での評価 |
| 半自動(Semi-autonomous)モード |
AIがリサーチを行い3通のメール文面をドラフト作成。送信はせず、人間の担当者が内容を確認・承認した上で手動で送信開始 |
推奨 |
| 全自動(Fully autonomous)モード |
リサーチから文面作成、メール送信までの一連のプロセスを人間のレビューなしで自律実行 |
リスクあり |
次の画面は、モードの切り替え設定の様子です。

基本的には「半自動モード」を選び、メール送信前に営業担当者が問題ないと判断したものだけをステップで送信する運用が現時点ではよいかと思っています。AIがレビューなしにそのまま送信する全自動モードは、文面の精度がまだ十分でない現状では少し危険なので、避けた方がよいでしょう。ただし、メールの文章精度が上がれば、将来的には全自動も選択肢に入ってくる可能性はあります。
エージェントを起動する4つのトリガー
案件創出エージェントへのコンタクト登録は、複数のトリガーで自動化できます。
| トリガー |
動作 |
| ページ表示 |
ページが表示されたときにコンタクトを登録 |
| フォーム送信 |
フォームが送信されたときにコンタクトを登録 |
| エンゲージメント日 |
前回のエンゲージメント日が指定した日数以上前のときにコンタクトを登録 |
| リスト追加 |
いずれかのリストに追加されたときにコンタクトを登録 |
検証では、「フォーム送信時」と「リスト追加時」に案件創出エージェントへ登録されるよう設定してみました。
次の画面は、トリガーの設定画面です。

「担当者が気づいたら手動で登録する」という運用にすると、どうしても登録漏れが起きてしまいます。トリガーで仕組み化しておけば、人の注意力に頼らずに対象コンタクトをエージェントへ回せる点がポイントになってきます。
セットアップ手順と日本語対応の現状【検証レビュー】
ここまでの機能を踏まえて、実際のセットアップ手順と、日本語環境での実用性の検証結果をまとめます。
設定自体は10分程度。鍵はセリングプロフィールの質
まず設定自体は驚くほど簡単です。HubSpotの権限設定でAIへのアクセスを有効にし、案件創出エージェントを起動します。
次の画面は、セットアップの手順画面です。

その後、自社の提供価値、解決できる顧客の課題(ペインポイント)、ターゲット顧客層(ICP)といった情報をAIに教え込みます。さらにCTA(行動喚起)として、担当者のミーティング予約リンクや関連資料を添付する設定も可能です。
次の画面は、セリングプロフィールの設定画面です。

画面上のクリック操作だけであれば10分もかからないでしょう。ただし、AIが質の高いアウトプットを生成するかどうかは、インプットとなるセリングプロフィールの質で決まります。自社の提供価値やターゲット像は企業様によって異なりますので、この準備には相応の時間をかける価値があるかと思います。
日本語対応の検証結果まとめ
検証で確認できた日本語対応の現状を整理すると、以下のようになります。
| 領域 |
現状 |
| リサーチ結果の表示 |
基本的に英語表記。読むにはブラウザの翻訳機能が必要 |
| リサーチの精度 |
企業サイト・ブログ・代表者情報を一定の精度で取得。CRMのアクティビティ情報と連携 |
| 生成されるメール |
日本語で作成されるため翻訳は不要。ただし海外チックな文面になりやすい |
| 日本語トーンの調整 |
Breeze Assistantに丁寧語への修正を依頼でき、一定の改善が見込める。日本のお作法をプロンプトで明示するとより実務に近い仕上がりになる |
| 企業情報のリッチ化 |
Breeze Intelligenceでは日本語の企業情報付与ができないケースが多い |
日本語対応はまだ完全ではないものの、「一定の機能として現場利用は可能」というのが、検証してみた率直な印象です。
「6割の仕事」をAIに任せ、「最後の2割」を人が磨く
「結局、日本語のリサーチ機能は使えないのか」と判断するのは、早計かもしれません。営業アプローチで最も時間がかかるのは、リサーチそのものにかかる時間と、アプローチ内容のたたき台を作る下地の準備です。
検証した印象として、案件創出エージェントはまだ完璧ではないにせよ、この大変な部分の6割程度の仕事を肩代わりしてくれそうです。AIがターゲット企業をリサーチし、それをステップメールの「下書き」の状態で提供してくれます。
日本の営業担当者は、その「下書き」を受け取り、最後の「2割」の仕事、つまりリサーチ内容の日本語への翻訳(ブラウザ操作で可能)と、日本特有の商習慣や文化に合わせたメールの微調整を行うだけで済みます。ゼロからリサーチして文章を考えるのとどちらが効率的かは、言うまでもありません。
つまり現時点での案件創出エージェントは、「ボタン一つですべてお任せ」のツールではありませんが、営業担当者の生産性を向上させる「営業アシスタント」として、今日からでも一定は活用できると考えています。
営業現場での現実的なユースケース2選
以下の画像は、営業現場で案件創出エージェントを活用するイメージを表した挿絵です。

日本語対応が不完全な現状でも、日本企業が今すぐ取り組める具体的なユースケースを2つ提案します。重要なのは、「誰にでも使う」のではなく、「誰に使うか」を戦略的に見極めることです。
優先度の低いアウトバウンドリストのリサーチ代行
まず考えられるのが、大量にアプローチする必要があるものの、一社あたりの優先度がそこまで高くないリストに対して、リサーチ業務を代行させる使い方です。
- 対象:インサイドセールスがアプローチする大量のリスト、アウトバウンドコール用のリストなど
- 目的:リサーチ業務の大幅な時短
なぜ優先度の低い顧客なのでしょうか。それは、本当に重要な顧客に対しては、AIの暫定的なリサーチだけでは不十分だからです。確度が高そうな案件や規模が大きくなりそうな案件には、担当者が自ら企業のWebサイトを隅々まで読み込み、事業内容を深く分析し、場合によってはChatGPTでディープリサーチを行うといった、人間による丁寧な準備が欠かせません。
関連記事:HubSpot-ChatGPTディープリサーチ連携を徹底検証!HubSpotデータを活用した実践ガイド
案件創出エージェントは、この「重要顧客に時間をかける」ための時間を捻出する目的で活用します。つまり、優先度の低い多数の顧客へのリサーチをAIに任せることで、営業担当者は最も価値を生む「考える」仕事に集中できるようになるのです。
休眠顧客の掘り起こしを半自動化
次に、過去に接点があったものの、現在はアプローチできていない「休眠顧客」の掘り起こしに活用するケースです。
- 対象:過去に失注した顧客、しばらく連絡が取れていないがWebサイトへの再訪問など何らかのアクションがあった顧客
- 目的:定型的なアプローチの自動化と、リサーチに基づいたパーソナライズの補完
HubSpotにはもともと「シーケンス」というステップメールを自動送信する機能がありますが、案件創出エージェントはこれをさらに一歩進めることができます。具体的なワークフロー例は以下の通りです。
- 「休眠顧客からのWebコンバージョン」などをトリガーに、対象コンタクトを特定のリストに自動で追加します
- そのリストへの追加をトリガーに、案件創出エージェントを「半自動モード」で起動させます
- エージェントが対象企業を再リサーチし、その情報に基づいたメール文面をドラフトとして作成します
- 営業担当者はAIが作成したドラフトを確認・修正し、送信を承認します
シーケンス機能との違いは、AIがリサーチを行い、ある程度パーソナライズされた文面を「下書き」してくれる点です。ゼロから定型文を考える必要がなくリサーチの手間も省けるため、失注顧客や休眠顧客へのアプローチのハードルが大きく下がります。一度失注したコンタクトをナーチャリングに戻し、再度の商談化を狙う「掘り起こし」のループに組み込めば、過去の接点を無駄にしない仕組みになります。
AIに任せる領域と人間が担う領域
この2つのユースケースに共通するのは、「重要な顧客は人間が担当する」という原則です。現時点での案件創出エージェントは、あくまで営業担当者のアシスタントです。
| AI(案件創出エージェント)に任せる |
人間が担う |
| ターゲット企業のWebリサーチ |
重要顧客・大型案件のアプローチ |
| パーソナライズメールの下書き作成 |
最終的なメール内容の確認・送信判断 |
| 優先度の低いリストへの定型アプローチ |
営業戦略やセリングプロフィールの設計 |
| 休眠顧客の再リサーチ |
日本の商習慣に合わせた文面の仕上げ |
超一流の営業担当者が考える内容が出てくるというより、「営業アシスタントがWebリサーチをして、ある程度の方向性を提案段階で持ってきてくれる」というイメージで捉えると、期待値とのずれが少なくなります。
あわせて、HubSpot Agent Builderとは?AIエージェント構、HubSpot MCP Server × AIクライアント連携ガイド、HubSpotのAI活用を総まとめなども参考にしていただければと思います。
スモールスタートから段階的に広げる導入ステップ
最後に、どのような企業がこのツールとどう向き合うべきか、導入の進め方を整理します。
今すぐ試しやすい企業・慎重に進めたい企業
このツールは、AIを活用して営業業務を本気で改革したいと考えている企業や、すでにHubSpotを日常的に活用していて、もう一歩先の生産性向上を目指したい企業にとって、テスト的に導入してみる価値が高いと言えます。本記事で紹介した「営業アシスタント」としての活用法は、すぐにでも試せます。
一方で、AIの活用によって予期せぬミスが起きることを事業上の大きなリスクと考える企業や、社内でじっくりと効果を検証してから本格導入を判断したいという慎重な姿勢の企業もあるでしょう。その懸念はもっともであり、拙速な導入は避けるべきです。影響度合いは事業規模によっても変わりますので、慎重にご判断いただければと思います。
サンドボックスやPOCで検証してから横展開
特にエンタープライズの企業様や営業人員が多い企業様には、いきなり全社的な実運用に投入するのではなく、段階的なアプローチをおすすめします。
例えば、次のような進め方が有効です。
- サンドボックスで試す ── HubSpotが提供するサンドボックス環境(テスト環境)でまず機能を試し、自社の業務にどのような影響があるかをシミュレーションしてみる
- 部署・チームを限定したPOC ── あるいは、特定の部署やチームに限定してPOC(概念実証)を実施し、小さな成功体験を作ってから横展開を検討する
すべてを一気に進めるのは難しいため、まずは「休眠顧客の掘り起こし」や「優先度の低いリストへのリサーチ代行」といった効果が出やすい範囲から始めて、自社で活用できそうな領域を見極めて優先順位をつけ、段階的に広げていただければと思います。
よくある質問
Q1. 案件創出エージェントは半自動モードと全自動モードのどちらを選ぶべきですか?
現時点では半自動モードをおすすめします。半自動モードではAIがリサーチと3通のメール文面のドラフト作成までを行い、送信は人間の担当者が内容を確認・承認した上で開始します。全自動モードはリサーチから文面作成、送信までを人間のレビューなしで実行するため、メールの文章精度がまだ十分でない現状ではリスクがあります。
Q2. 案件創出エージェントは日本語環境でも使えますか?
リサーチ結果の表示テキストは基本的に英語になるため、読む際にはブラウザの翻訳機能が必要です。一方で生成されるメール文面は日本語で作成されるため、翻訳の必要はありません。実際に検証したところ、企業のWebサイトやブログ、代表者の情報を一定の精度で取得でき、CRMのアクティビティ情報と関連付けて出力されました。
Q3. 案件創出エージェントはどのようなデータをもとにリサーチするのですか?
内部データと外部データの2つを情報源とします。内部データはHubSpotのCRMに蓄積された情報で、直近7日間のフォーム送信やページ閲覧履歴、直近60日間のメールのやり取りや通話内容が対象です。外部データはターゲット企業のWebサイト、ブログ記事、最新のニュースリリースなど、Web上の公開情報を自動で収集・分析します。
Q4. どのようなリストから案件創出エージェントを使い始めるのが現実的ですか?
大量にアプローチするものの一社あたりの優先度が高くないインサイドセールス・アウトバウンド用のリストと、休眠顧客の掘り起こしから始めるのが現実的です。本当に重要な顧客にはAIの暫定的なリサーチだけでは不十分なため、優先度の低い層のリサーチをAIに任せ、担当者が重要顧客に時間を使える状態を作る使い方が効果的です。
Q5. シーケンス機能との違いは何ですか?
シーケンスは、あらかじめ用意した定型のステップメールを自動送信する機能です。一方の案件創出エージェントは、対象企業のWebリサーチを実行し、その結果をもとにパーソナライズされた文面の「下書き」まで作成してくれます。定型文をゼロから考える手間とリサーチ工数を削減できる点が、休眠顧客の掘り起こしなどで効果を発揮します。
まとめ
以下の画像は、営業AI活用の第一歩をイメージした挿絵です。

今回の検証を通じて、HubSpotの案件創出エージェントは、いくつかの制約はあるものの、それを補って余りある可能性を秘めていることがわかりました。要点を整理します。
- 案件創出エージェントは、Breezeの一要素としてCRMデータとWeb情報をもとにリサーチとメール下書きを自動生成する、Sales Hubの機能です
- 日本語対応はまだ完全ではありませんが、リサーチと下書きの「6割の仕事」をAIに任せ、人間が最後の「2割」を仕上げる運用で実用レベルに乗せられます
- 運用は「半自動モード」が前提です。送信前の確認・承認を仕組みに組み込みましょう
- 優先度の低いアウトバウンドリストや休眠顧客の掘り起こしから始めるのが現実的です
最初の一歩として、まずは半自動モードで小さな対象リストから試すことをおすすめします。具体的には次の3ステップです。
- HubSpotの権限設定でAIへのアクセスを有効にし、自社の提供価値・ペインポイント・ICPをセリングプロフィールに整理します
- 優先度の低いリストか休眠顧客のリストを対象に、トリガーを設定してエージェントを半自動モードで起動します
- 生成されたリサーチとメール下書きを担当者が確認・修正し、精度を確かめながら対象範囲を段階的に広げます
案件創出エージェントは、「未来の営業」を一部垣間見せてくれるツールです。150社以上のHubSpot導入・運用支援の実績をもとに、StartLinkでは導入設計から運用定着まで一貫してサポートしていますので、無料相談もあわせてご利用ください。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのHubSpotゴールドパートナーのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
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