MarketoからHubSpotへの移行ガイド|MAを「再設計」して配信を止めずに切り替える手順

MarketoからHubSpotへの移行ガイド|MAを「再設計」して配信を止めずに切り替える手順
この記事の結論

Marketoの設定をそのまま写すのではなく、HubSpotで作り直す前提で進めます。対応表、データ移行、スコア再設計、配信切り替えの順に、つまずきやすい点を整理します。

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkが、HubSpot導入・AI活用・CRM整備・業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


「Marketoの運用が属人化していて、作った人しか触れない」

「配信を止めずに乗り換えたいが、何から手をつければいいのか分からない」

——MAのリプレイスを検討する場面で、よく出てくる悩みかなと思います。

MarketoからHubSpotへの移行とは、Marketo上のデータと配信の仕組みを棚卸しし、HubSpotの構造に合わせて作り直したうえで、配信を段階的に切り替えることです。ここで強調したいのは、移行の中心がデータの引っ越しではなくMAの再設計にあることです。Marketoの設定を1対1で写そうとすると、不要な仕組みまで持ち込むことになり、HubSpotの利点も活かせません。

この記事では、両者の機能比較をすでにご覧になった方向けに、「実際に移行するならどう進めるか」に絞って整理します。機能や仕様の比較はHubSpotとMarketoの比較記事にまとめているので、そちらもあわせてご覧ください。


なぜ移行は「写す」ではなく「再設計」になるのか

結論から言うと、MarketoとHubSpotは同じ目的の道具ですが、部品のつくりが違うからです。

概念の対応は目安であり、1対1ではない

Marketoの用語とHubSpotの機能は、おおよそ次のように対応します。あくまで考え方を揃えるための目安で、完全に同じ動きをするわけではありません。

Marketoでの考え方 HubSpotでの置き換え先(目安) 注意点
スマートリスト セグメント(アクティブ) 条件の書き方が異なるため作り直す
スマートキャンペーン ワークフロー トリガーとフローの持ち方が違う
プログラム・チャネル キャンペーンとプロパティでの整理 同じ構造の入れ物はない
リードスコア リードスコアリングツール 点数をそのまま写さず再設計する
ライフサイクルの管理 ライフサイクルステージ・リードステータス 定義を整理し直す
メール・フォーム・LP マーケティングメール・フォーム・ランディングページ 資産は作り直し

なお、移行の対象を決めるうえで一番大事な考え方は、「動いているものを全部移す」ではなく「今の事業に必要なものだけを作り直す」ことです。長く使われたMAには、誰も使っていないキャンペーンやリストが山のように残っています。

資産の棚卸しが移行の品質を決める

最初にやるのは、Marketo上の資産を次の3つに分けることです。

  • そのまま作り直すもの:今も回っていて成果に直結している配信、スコア、フォーム
  • 整理して作り直すもの:目的は残るが、構造が複雑になりすぎているもの
  • 移さないもの:1年以上使われていないリスト、終了したキャンペーン、重複したアセット

この分類だけで、作業量が大きく変わります。棚卸しを飛ばして移行を始めると、あとで「あれも必要だった」「これは不要だった」と手戻りが起きるので、最初に時間をかけてください。

Marketo資産の棚卸しは3つに仕分ける(動いているものを全部移すのではなく、必要なものだけ作り直す)


HubSpotでできること・Marketo独自のロジックに任せない範囲

HubSpotは、MAの中核であるリード育成・スコアリング・メール配信を問題なく担えます。一方で、「Marketoで組んだ大規模で独自の配信ロジックを、そのまま完全に再現すること」は得意な領域ではありません。

領域 HubSpotで管理できる 向かない/別の手当てが要る領域
リード育成 ワークフローによる段階的なメール配信、反応に応じた分岐 多数のキャンペーンが複雑に連鎖する、独自の大規模配信ロジックの完全再現
スコアリング エンゲージメント・フィット・両方を合わせたスコア(対象プランで利用可) Marketo固有の点数計算の挙動を、数値まで同じに再現すること
メール配信 セグメント配信、パーソナライズ、A/Bテスト Marketo固有の記法で作り込んだメールテンプレートのそのままの移植
データ移行 コンタクト・会社・取引などの標準的なデータ、プロパティ 履歴データ全件の無加工の再現、メール配信の過去実績の完全な移行
配信の信頼性 送信ドメインの認証、配信停止の管理 配信実績(送信元としての評価)は新しい環境で積み直し

この表が示すとおり、移行の判断で一番大切なのは、「再現できるか」ではなく「同じ目的を、HubSpotの構造でもっと簡単に達成できるか」という問いです。複雑な配信ロジックの完全再現が事業上どうしても必要な場合は、MA専用の高度なカスタムが前提のツールのほうが向いています。そうでなければ、HubSpotの標準機能で目的を満たす形に簡素化するのが、運用面でも長続きします。


移行できるデータと、作り直すもの

HubSpot公式の移行ツール「Smart Transfer」

HubSpotには、他のCRM・MAからデータを移行するための公式の仕組みがあり、Marketoは対応アプリに含まれています。移行の流れは、監査(元データの把握)、設定(HubSpot側のプロパティなどの作成)、データ同期の順です。ツールはスーパー管理者のみが使え、移行は元のアプリからHubSpotへの一方向です(HubSpotのCRM移行の仕組み)。

注意したいのは次の点です。

  • 添付ファイルやセグメントなど、同期の対象外のものは一度きりの移行になり、その後は自動で更新されません
  • カスタムフィールドのマッピングの移行にはData Hubの契約が必要です
  • 対象になるデータの種類はアプリごとに違うため、実際の対象範囲は監査の結果で確認する必要があります

「ツールを使えば全部移る」と考えず、移るもの・移らないものを監査で確定してから進めるのが安全です。

CSVで取り込む場合の考え方

ツールを使わず、Marketoからコンタクトを書き出してCSVでHubSpotに取り込む方法もあります。HubSpotのインポートは、メールアドレスをコンタクトの一意の識別子として使えるため、同じ人を重複させずに更新できます。ファイルには1シートとヘッダー行が必要で、ヘッダーはHubSpotのプロパティに対応させます(HubSpotのインポートファイル設定)。

取り込む前に、次の準備をしておくと失敗が減ります。

  1. HubSpot側のプロパティを先に作る(選択肢の表記もMarketo側とそろえる)
  2. 意味が違うフィールド(スコアなど)は、「Marketoスコア(旧)」のような別プロパティに保管する
  3. 小さなバッチで試し、エラーの傾向を見てから本番の取り込みに進む

作り直すものと、持ち越さないもの

ワークフローに相当するもの、メールのテンプレート、フォーム、ランディングページは、HubSpot側で作り直す前提で計画します。Marketoの運用実績(過去の開封率や配信履歴)をHubSpotで同じ形で再現することはできないため、必要なものはレポートとして書き出して保管してください。


スコアリングは「写さず、作り直す」

移行でいちばん悩みやすいのが、リードスコアです。

点数をそのまま持ち込まない理由

Marketoのスコアは、これまでの運用の積み重ねでルールが増え、なぜその点数なのか説明できない状態になっていることが少なくありません。この状態のまま点数を写しても、新しい環境で同じ意味を持たず、営業との信頼も戻りません。

HubSpotのリードスコアリングツールでは、エンゲージメント(行動)スコアとフィット(属性)スコアを分けて作り、両方を合わせたスコアも作れます。ルールの点数にはプラスもマイナスも設定でき、スコアはセグメントやワークフロー、レポートで使えます。コンタクトのスコアはMarketing Hubで、会社のスコアはMarketing HubまたはSales Hubで作れます(HubSpotのリードスコアリングツール)。

再設計の進め方

  1. 今のスコアで営業が実際に動いている閾値を確認する(何点で引き渡しているか)
  2. 直近の受注と失注のリードを見て、成約に近い行動・属性を洗い出す
  3. エンゲージメントとフィットに分けて、少ないルールから作る
  4. 一定期間、Marketo側のスコアと並べて比較する

スコアの機能は画面や仕様が更新されることがあるため、古い解説記事の手順ではなく、現行のリードスコアリングツールの公式ページを見ながら設計してください。考え方の詳細はリードスコアリング設定ガイドとリードスコアリングの設計方法も参考になります。

旧スコアの閾値と、新しい2軸スコアを並べて比較する(移行期間中の確認の考え方)


配信を止めずに切り替える|ドメイン・同意・並行稼働

データを移しても、配信の土台が整っていないと届きません。ここがMA移行で一番見落とされやすい部分です。

送信ドメインの認証を先に済ませる

HubSpotから自社ドメインで配信するには、DNSにレコードを追加して認証する必要があります。手順ではMX・DKIM・SPF・DMARCのレコードを設定し、状態が「認証済み」になることを確認します。認証の状態は画面で確認でき、未完了のまま本番配信に入ると到達率に影響しかねません(HubSpotのメール認証の管理)。

すでにSPFレコードがある場合は、新しく作らずに既存のレコードへHubSpotを追加します。DNSの反映には時間がかかることがあるため、切り替えの本番よりずっと前に設定しておきます。

配信停止と同意の記録を引き継ぐ

もっとも気をつけるのは、配信停止した人に、新しい環境から送ってしまう事故です。特定電子メール法では、広告宣伝メールに受信者の事前同意が必要で、配信停止の申し出をした相手への再送信は禁止されています。

HubSpotには、配信停止の一覧を取り込む専用の機能があります。CSVにメールアドレス列を用意して取り込むと、該当のコンタクトの「すべてのメールの配信を停止」が有効になります。このとき新しいコンタクトは作成されません(HubSpotの配信停止リストのインポート)。

あわせて、同意の日時と取得方法の記録も、プロパティとして引き継ぎます。同意の記録の考え方は特定電子メール法のBtoB実務ガイドで解説しています。

並行稼働のすすめ方

一斉に切り替えず、配信の種類ごとに段階を踏むのが安全です。

  1. 社内向けのテスト配信でHubSpotの配信を確認する
  2. 影響の小さい配信(ニュースレターなど)からHubSpotに切り替える
  3. ナーチャリングの配信を、セグメントごとに順次切り替える
  4. Marketo側のキャンペーンを停止し、一定期間後に契約を終了する

送信元としての評価(配信実績)は、新しい環境で積み直しになります。最初から大量に送らず、反応の良い層から少しずつ増やすと、到達率を保ちやすくなります。移行の全般的なデータ設計はCRM移行のデータ設計完全ガイドにもまとめています。


移行の進め方と、担当の分け方

移行は、段階を分けると見通しがよくなります。期間は規模や資産の量によって大きく変わるため、ここではフェーズの順番だけを示します。

フェーズ やること 完了の目安
1. 監査・棚卸し 資産の洗い出しと3分類、移行対象の確定 作り直す一覧が確定している
2. 設計 プロパティ、ライフサイクル、スコア、ワークフローの設計 設計書に営業・マーケが合意している
3. 構築・データ移行 HubSpot側の構築、データの取り込み、ドメイン認証 テスト配信が問題なく届く
4. 並行稼働 配信の段階的な切り替え、スコアの突き合わせ 全配信がHubSpotで動いている
5. 定着・停止 運用の引き継ぎ、Marketoの停止 Marketoなしで運用が回る

担当の分け方は、設計の判断はマーケティングと営業の責任者、構築と移行作業は実務担当または外部の支援と分けるのが現実的です。少人数のチームなら、まず1つの配信シナリオを完全に移し切り、運用のやり方を確かめてから全体に広げる進め方もおすすめです。

他社のMAやCRMからの乗り換えの進め方は、MAツールからHubSpotへ移行する設計やCRM移行・乗り換え完全ガイドでも扱っています。業界ごとの活用例は業界別HubSpot活用ガイドをご覧ください。


よくある質問

Q1. Marketoの契約期間が残っている間に、HubSpotへの移行を始めてもいいですか

始められます。むしろ、契約が切れる前にHubSpot側を整えて並行稼働するほうが安全です。切り替えの余裕がないまま契約満了を迎えると、配信が止まる、あるいは準備不足のまま本番を迎える、という状況になりかねません。

Q2. 過去のメール開封やクリックの履歴も移せますか

メールの個別の反応履歴は、HubSpotで同じ形で再現することは難しいと考えておくのが現実的です。必要な指標はレポートとして書き出して保管し、HubSpotでは移行後の反応を新しく積み上げていく形になります。

Q3. Marketoのスコアは、そのままHubSpotに持ち込めますか

点数の値は別プロパティに保管できますが、ルールの考え方まで持ち込まないほうが運用しやすくなります。移行をきっかけに、営業が実際に動く基準へ作り直してください。並行期間中は、旧スコアを参考値として残しておくと比較に使えます。

Q4. 複雑なキャンペーンの連鎖は、HubSpotで再現できますか

多くの場合、HubSpotのワークフローで目的を達成する形に簡素化できます。ただし、独自の大規模な配信ロジックをMarketoと同じ挙動で完全に再現することは、HubSpotが得意とする領域ではありません。必要性を事業目的から見直すのが先です。

Q5. 移行は自社だけでもできますか

資産が少なく、担当者がHubSpotの設計に慣れていれば可能です。一方で、資産の棚卸し、スコアの再設計、ドメイン認証と同意の引き継ぎなど、判断が必要な論点が多いため、設計の段階だけでも外部の知見を入れると手戻りが減ります。


まとめ

MarketoからHubSpotへの移行は、データの引っ越しではなく、MAを今の事業に合わせて作り直す機会です。

  • 1対1で写さない。 棚卸しで「作り直す/整理する/移さない」に分ける
  • HubSpotに向かない領域を先に見極める。 独自の大規模な配信ロジックの完全再現は、必要性から見直す
  • データはツールとCSVを使い分け、移るもの・移らないものを監査で確定する
  • スコアは点数を写さず、エンゲージメントとフィットに分けて作り直す
  • 配信の土台(ドメイン認証・配信停止・同意の記録)を先に整え、段階的に切り替える

最初の一歩としておすすめしたいのは、Marketo上の資産を一覧にして、「今月も実際に動いたもの」に印をつけることです。この一覧ができれば、移行の範囲と順番が自然に見えてきます。

MarketoからHubSpotへの移行や、MAの再設計をご検討でしたら、StartLinkまでお気軽にご相談ください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。