就職支援サイトのHubSpot活用|学生会員の育成と企業への送客を管理する設計

就職支援サイトのHubSpot活用|学生会員の育成と企業への送客を管理する設計
この記事の結論

就職支援サイトのMAは、学生の属性と活動フェーズを軸に配信し、同意を管理しながら企業へ送客することが要です。設計の考え方を解説します。

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkが、HubSpot導入・AI活用・CRM整備・業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


就職支援サイトのMAは、学生の「卒業年度」と「就活の活動フェーズ」を軸に配信を出し分け、企業へ送客するときの同意を記録しておくことで整います。 HubSpotで管理できるのは学生会員の育成と企業への送客までで、選考の進行や内定の管理は、採用管理システムの領域です。

この記事では、新卒・既卒の学生が登録する就職支援サイトの運営会社が、会員の育成と企業への送客をHubSpotで設計するときの考え方を説明します。プロパティー、配信の出し分け、企業側の管理、同意と個人情報の扱いの順に整理し、最後にHubSpotでは扱わない領域を表にします。

会員は集まるのにエントリーにつながらない、配信が全員一律になっている、企業への送客の実績を数えられない、といった課題がある運営会社に向けた内容です。


就職支援サイトの会員育成が難しい理由

就職支援サイトの会員は、一般的なBtoCの会員とは性質が違います。学年の進行とともに、必要な情報が短期間で大きく変わるからです。

学生の状況が、時期によって変わる

同じ学生でも、大学3年の春は「業界を知りたい」段階、秋には「インターンに参加したい」段階、年が明けると「選考に進みたい」段階と、求める情報が移り変わります。全員に同じ内容を同じタイミングで送ると、どの段階の学生にも少しずつ外れたメッセージになります。

登録した時点の情報だけでなく、いまの活動フェーズを更新し続けることが、配信の質を決めます。

会員の「出口」が決まっている

就職支援サイトの会員は、就職が決まるか、卒業すると、サイトから離れます。長く付き合う顧客ではなく、一定期間で入れ替わる会員です。そのため、登録から短い期間で、いかにエントリーや応募につなげるかが重要になります。育成の設計は、「じっくり育てる」というより「卒業年度から逆算して、行動を促す」考え方になります。

企業側と学生側で、同じ会員データを使う

就職支援サイトには、学生という会員と、掲載する企業という顧客がいます。送客の実績は、企業への営業や更新の提案の材料にもなります。学生側のデータと企業側のデータを、別々の表で管理していると、「どの企業にどんな学生を何人送ったか」を数えるたびに、手作業で突き合わせることになります。


学生会員のデータ設計

最初に決めるのは、学生を表すプロパティーです。MAの出し分けは、すべてこのデータが土台になります。プロパティー設計の基本はHubSpotプロパティ設計のベストプラクティスにまとめています。

持たせたいプロパティー

プロパティー 型 使い道
卒業予定年度 選択(例: 27卒/28卒/既卒) 配信の出し分けの最も基本の軸
就活の活動フェーズ 選択(情報収集/インターン/本選考/内定後) 内容と頻度の出し分け
志望業界 選択(複数可) 業界別の企業・記事の案内
志望職種 選択(複数可) 職種別の案内
志望の勤務地 選択(複数可) 地域別のイベントや求人の案内
文系・理系 選択 企業側の募集条件との照合
登録経路 選択 どの入口の会員が成果につながるかの分析

活動フェーズは「自動」で更新する

活動フェーズを、学生が自分で更新してくれることは期待できません。サイト上の行動から、フェーズを推定して自動で更新する設計にします。たとえば、インターンの募集ページを見た、企業にエントリーした、といった行動をきっかけに、フェーズのプロパティーを書き換えます。

HubSpotのワークフローは、プロパティーの更新を自動化できます。ワークフローの利用にはProfessional以上が必要です(出典: HubSpotナレッジ「ワークフローの作成」)。設定の考え方はHubSpotワークフローの設定方法で解説しています。

卒業年度は年に一度、棚卸しをする

卒業予定年度のプロパティーは、年が替わるたびに選択肢を整理します。卒業した学年の会員を、配信の対象から外す仕組みを、最初に作っておきます。放置すると、卒業したあとの会員に配信が続き、開封率の低下や配信停止の増加につながります。

HubSpotのプロパティー一覧画面(HubSpotデモアカウント)


属性と活動フェーズで配信を出し分ける

プロパティーが揃ったら、配信を出し分けます。

セグメントで対象を作る

HubSpotのセグメント(リスト)には、条件に合う記録が自動で出入りする「アクティブ」と、保存した時点の記録を固定する「スタティック」があり、全プランで利用できます(出典: HubSpotナレッジ「セグメントの作成」)。

「卒業予定年度が28卒」かつ「活動フェーズがインターン」のようなアクティブなセグメントを作っておくと、学生が条件を満たした瞬間に自動で対象に入り、条件を外れると自動で抜けます。セグメント設計の詳しい考え方はHubSpotリスト・セグメンテーション設計を参照してください。

配信の出し分けの例

セグメント 目的 配信の例
登録直後の会員 最初の行動を促す プロフィール入力、気になる業界の選択
情報収集フェーズ 業界・企業への関心を深める 業界の解説記事、企業の紹介
インターンフェーズ 応募を促す インターンの募集情報、締切の案内
本選考フェーズ エントリーを促す 選考スケジュール、説明会の案内
一定期間反応がない会員 再開を促す 「あなたに合う企業」の再提案

反応を点数にして、送客の優先度を決める

HubSpotのリードスコアリングのツールでは、行動にもとづく「エンゲージメントスコア」と、属性にもとづく「フィットスコア」を作れます。作成したスコアは、セグメント、ワークフロー、レポートで使えます。コンタクトのスコアはMarketing Hubを使い、ProfessionalまたはEnterpriseが必要です(出典: HubSpotナレッジ「リードスコアリングツール」)。

たとえば、「企業ページを複数見た」「メールのリンクをクリックした」といった行動に加点しておくと、熱量の高い学生を企業に紹介する順番づけに使えます。設計の考え方はHubSpotリードスコアリング設定ガイドにまとめています。

配信停止のタイプを分ける

HubSpotでは、配信の「購読タイプ」を作り、連絡の種類ごとに、受け取りたいかどうかを会員が選べるようにできます。たとえば、「イベント・説明会の案内」と「企業からのオファー」を別のタイプにしておくと、片方を止めても、もう片方は受け取れます(出典: HubSpotナレッジ「メール購読タイプの設定」)。購読タイプの作成はMarketing HubのStarter以上で利用できます。

また、マーケティングメールは、「マーケティングコンタクト」に設定したコンタクトにだけ送れます(Marketing Hub Starter以上の機能)(出典: HubSpotナレッジ「マーケティングコンタクト」)。会員数が多いサイトでは、配信の対象とする会員を、卒業年度や活動の状況で絞る運用が、コストの面でも現実的です。


企業への送客を管理する

学生の育成のもう一方の目的が、掲載企業への送客です。

企業は会社、掲載の契約は取引で持つ

掲載企業は、HubSpotの会社(Company)として管理します。掲載の契約や、イベント出展の申し込みは、取引(Deal)として管理します。企業の営業の流れは、HubSpotパイプラインの設計方法に沿って組み立てられます。

送客の実績を、学生と企業の関係として残す

「どの学生が、どの企業に関心を示し、エントリーしたのか」は、学生(コンタクト)と企業(会社)の関係として記録します。HubSpotの関連付けラベルを使うと、関係の種類を区別して持てます。「閲覧」「資料請求」「エントリー」「説明会の参加」といったラベルを作れば、送客の種類ごとに、件数を数えられます。関連付けラベルはProfessional以上で利用でき、オブジェクトの組み合わせごとに最大50個まで作成できます(出典: HubSpotナレッジ「関連付けラベルの作成と使用」)。

ここで記録するのは、サイトの上で起きた「関心」と「エントリー」までです。エントリー後に企業側で行われる選考の進み方は、HubSpotでは管理しません。

企業への報告を、数字でそろえる

送客の実績が、企業・種類・期間ごとに集計できていれば、掲載企業への報告や更新の提案が、数字にもとづいてできます。レポートの作り方はHubSpotレポート完全ガイドに整理しています。

企業別の送客実績を、数字でそろえる(閲覧・資料請求・エントリーを集計)


学生の個人情報と同意を、どう扱うか

学生の情報を企業に渡す設計では、同意の扱いを最初に決めておくことが欠かせません。ここは、運用の工夫以前の、事業の信頼にかかわる部分です。

第三者提供には、本人の同意が原則として必要

個人情報保護法では、個人データを第三者に提供する場合、あらかじめ本人の同意を得ることが原則とされています。個人情報保護委員会のQ&Aでは、同意を得るときに、提供先を1社ずつ明示することまでは求められないものの、想定される提供先の範囲や属性を示すことが望ましいとされています(出典: 個人情報保護委員会 Q&A)。

就職支援サイトの分野では、2019年に、学生の行動データをもとにした予測値を、本人の同意が十分でないまま企業に提供していたとして、個人情報保護委員会が勧告を出した事案が知られています(出典: ITmedia NEWS「『内定辞退率』予測のリクナビ、個人情報保護委が行政指導」)。学生の行動をスコアにして企業に渡す設計は、同意の取り方と、何を渡すかの線引きを、特に慎重に設計する必要があります。

同意の内容を、プロパティーで記録する

HubSpotで運用するときは、次のような情報を、コンタクトのプロパティーで持つと、あとから確認できます。

  • 企業への情報提供に同意したか(同意する/しない)
  • 同意した日時と、同意を得た画面
  • 同意した提供の範囲(例: 閲覧した企業のみ、すべての掲載企業)

企業への送客に使うセグメントは、「同意あり」を必須条件にします。同意のない学生が、送客の対象に入らない仕組みにしておくことで、運用の担当者が意識しなくても、ルールが守られます。

求職者情報を扱う事業としての規制

求人情報などを提供する事業のうち、労働者になろうとする人の情報を収集して情報提供に使うものは、職業安定法にもとづく「特定募集情報等提供事業」として届出が必要になる場合があります(出典: 厚生労働省「特定募集情報等提供事業概況報告書の提出状況等について」)。自社の事業が該当するかどうかは、管轄の労働局や専門家に確認してください。個人情報の取扱いの全般は、HubSpotのセキュリティ・個人情報保護法/GDPR対応ガイドでも整理しています。


HubSpotでできること・専用システムに任せること

就職支援サイトでは、「学生が企業に応募したあと」の管理を、HubSpotに持ち込まないことが大切です。

領域 HubSpotで管理できる 専用システムに任せる
学生会員の育成 属性・活動フェーズの管理、セグメント配信、スコアリング ―
配信の同意・購読 購読タイプ、同意の記録、配信停止の管理 ―
企業への送客 閲覧・資料請求・エントリーの記録、送客の実績集計 ―
掲載企業の営業 掲載の契約(取引)、担当者との関係、更新の提案 ―
選考の進行管理 ― 採用管理システム(書類選考、面接の日程・結果)
内定の管理 ― 採用管理システム(内定・内定承諾・辞退)
求人情報の掲載・編集 ― 求人情報の管理・掲載システム

線引きの考え方は、「学生が応募するまでをHubSpot、応募したあとの選考を採用管理システム」です。選考の結果を、サイトの改善のために知りたい場合は、採用管理システムから集計値を連携するか、レポートとして別に確認する形が現実的です。


よくある質問

Q1. 選考の進み具合を、HubSpotで追えますか

選考の進行や内定の管理は、採用管理システムの役割です。HubSpotに入れると、選考の状況を2か所で更新することになり、どちらかが古くなります。HubSpotには、エントリーまでの記録を残してください。

Q2. 学生のメールアドレスが、卒業後に使えなくなる場合はどうしますか

大学のメールアドレスは卒業後に使えなくなることがあります。登録時に、個人のメールアドレスも任意で聞いておく設計にすると、既卒の会員にもつながります。ただし、強制すると登録の離脱が増えるため、任意の項目にとどめるのが現実的です。

Q3. 企業にも学生にも、同じ種類のメールを送ってよいですか

宛先の性質が違うため、購読タイプを分けて運用してください。学生向けの配信と、掲載企業向けの案内を同じ種類にすると、配信停止の影響が互いに及びます。

Q4. 最初に整えるものは何ですか

卒業予定年度と活動フェーズの2つのプロパティーと、企業への情報提供の同意の記録です。この3つがあれば、配信の出し分けと、同意にもとづく送客の両方の土台ができます。


まとめ

就職支援サイトのMAは、学生の属性と活動フェーズを軸に配信を出し分け、同意を記録しながら企業に送客することで整います。

  • 卒業予定年度と活動フェーズを、配信の軸にします。 フェーズは行動から自動で更新します
  • 購読タイプを分けます。 イベントの案内と企業からのオファーを別にして、学生が選べるようにします
  • 企業への送客は、同意ありの学生だけを対象にします。 同意の内容をプロパティーに残します
  • 選考の進行と内定の管理は、HubSpotに持ち込みません。 採用管理システムに任せます

最初の一歩としては、卒業予定年度と活動フェーズのプロパティーを作り、既存の会員に値を入れていくことをおすすめします。

業界別の考え方は業界別HubSpot活用ガイドにまとめています。人材領域のCRMの考え方は人材業界のHubSpot活用法も参考になります。自社の会員データに合わせた設計を相談したい場合は、StartLinkの無料相談をご利用ください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。