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「リストを作りすぎて何がどう違うのか分からなくなった」
「ICP(理想顧客プロファイル)に基づいたセグメント設計をしたいが、どこから始めればよいか分からない」
——こうした悩みは、HubSpotを使い始めて数ヶ月が経過した企業で特に多く聞かれます。
HubSpotのリスト機能は、コンタクトや会社を条件に基づいてグルーピングする仕組みです。メール配信のターゲット設定やワークフローのエントリー条件として使われ、マーケティング・セールスの両方で日常的に活用されます。しかし、リストの設計に一貫した方針がないまま運用を進めると、似たようなリストが乱立し、管理コストが急増します。
この記事では、HubSpotのリスト機能を戦略的に設計するための考え方を、ICP定義と行動スコアリングの活用も含めて解説します。
この記事でわかること
- 静的リストと動的リストの違いと使い分け基準
- ICP(理想顧客プロファイル)に基づくセグメント設計の手順
- 行動スコアリングとリストの連携方法
- リスト設計の命名規則とフォルダ管理
- プラン別のリスト機能制限
- リスト運用で陥りがちな失敗パターンと対処法
本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。
静的リストと動的リストの使い分け
HubSpotのリストには「静的リスト」と「動的リスト(アクティブリスト)」の2種類があります。この使い分けを誤ると、意図しないコンタクトへのメール配信や、セグメントの精度低下につながります。

静的リストと動的リストの比較
| 項目 | 静的リスト | 動的リスト(アクティブリスト) |
|---|---|---|
| 更新タイミング | 手動追加・削除のみ | 条件に合致すると自動で追加・除外 |
| 主な用途 | イベント参加者、1回限りのキャンペーン | 継続的なセグメント管理 |
| メリット | 意図しない変動がない | 常に最新の条件に合ったリスト |
| デメリット | メンテナンスが手動 | 条件設計ミスで想定外のコンタクトが含まれるリスク |
| 上限数(無料) | 1,000件 | 5件 |
| 上限数(Professional) | 1,000件 | 1,100件 |
使い分けの判断基準
- 動的リストを使うべきケース: MQLリスト、特定条件に該当するコンタクトの継続監視、ナーチャリング対象のセグメント
- 静的リストを使うべきケース: 展示会の来場者名簿、特定日のキャンペーン対象、CSVインポートしたリスト
判断に迷った場合は、「そのリストが時間経過で変化すべきかどうか」を基準にしてください。メンバーの増減が自動で反映されるべきなら動的リスト、固定されたメンバーを管理したいなら静的リストです。
ICP(理想顧客プロファイル)に基づくセグメント設計
ICPとは何か

ICP(Ideal Customer Profile)とは、自社の製品・サービスから最も価値を得られる企業の特徴を定義したものです。ICPを明確にすることで、マーケティングと営業のリソースを最も成約確度の高いターゲットに集中させることができます。
ICPの定義項目
ICPを構成する主要な属性は以下のとおりです。
- 企業規模: 従業員数、売上規模
- 業種・業界: 製造業、IT、不動産など
- 地域: 国内・海外、都市部・地方
- 技術スタック: 利用しているツール・システム
- 課題: 自社サービスで解決できる具体的な課題
- 意思決定プロセス: 決裁者の役職、導入までの期間
たとえばHubSpot社自身は、「50〜200名規模のBtoB企業で、マーケティングとセールスの連携に課題を持ち、成長フェーズにある企業」をICPの一つとして公開しています。
HubSpotでICPをリスト化する手順
- ICPの定義をドキュメント化する: まず、マーケティング・セールスの合意のもとでICPの基準を文書化します
- プロパティにICPの条件を反映する: 業種、従業員数、地域などのプロパティにICPの条件値を設定します
- 動的リストでICPリストを作成する: 「業種 = SaaS」AND「従業員数 ≥ 50」AND「従業員数 ≤ 200」のような条件で動的リストを作成します
- ICP合致度をスコア化する: HubSpotのスコアリング機能を使い、ICPの各条件に合致するごとにポイントを付与する設計にします
行動スコアリングとリストの連携
属性スコアと行動スコアの違い
HubSpotでのリードスコアリングは、大きく2つの観点に分かれます。
| スコア種別 | 対象データ | 評価内容 | 例 |
|---|---|---|---|
| 属性スコア(Fit Score) | 企業属性・デモグラフィック | ICPとの合致度 | 業種=SaaS → +10点 |
| 行動スコア(Engagement Score) | Webサイト・メール・フォーム | 購買意欲の高さ | 料金ページ閲覧 → +15点 |
行動スコアの設計例
以下は、BtoB SaaS企業における行動スコアの設計例です。
- Webサイト訪問: +1点(1回あたり)
- ブログ記事閲覧: +2点
- 料金ページ閲覧: +15点
- 事例ページ閲覧: +10点
- ホワイトペーパーダウンロード: +20点
- ウェビナー参加: +25点
- 問い合わせフォーム送信: +50点
- 30日間アクション無し: −20点(減衰)
スコアとリストの連携
スコアリングの結果をリストで活用することで、マーケティングとセールスの連携が自動化されます。
- MQL(Marketing Qualified Lead)リスト: 属性スコア ≥ 30 AND 行動スコア ≥ 40
- ホットリード通知リスト: 行動スコアが直近7日で +30以上変動
- ナーチャリング対象リスト: 属性スコア ≥ 30 AND 行動スコア < 40
- 休眠リスト: 最終アクティビティ日が90日以上前
リスト設計の命名規則とフォルダ管理
命名規則のルール
リストが100を超えると、命名規則なしでは管理が破綻します。以下の命名フォーマットを推奨します。
フォーマット: [部門]_[用途]_[条件の要約]
例:
MKTG_ナーチャリング_ホワイトペーパーDL後未商談SALES_ターゲット_ICP合致_従業員50名以上CS_ヘルス_NPS低下_直近30日
フォルダによる分類
HubSpotではリストをフォルダで整理できます。推奨するフォルダ構成は以下のとおりです。
- 01_マーケティング: メール配信・キャンペーン用リスト
- 02_セールス: 営業ターゲット・商談関連リスト
- 03_CS: カスタマーサクセス用リスト
- 04_レポート用: ダッシュボード・レポートのフィルタ用
- 99_アーカイブ: 使用終了したリスト(削除前の一時保管)
リスト運用のよくある失敗パターン
失敗1: 似たリストの乱立
「メール配信用リスト」「ワークフロー用リスト」「レポート用リスト」のように、同じ条件のリストを用途ごとに作成してしまうケースです。1つの動的リストを複数の用途で共用する設計にすれば、管理コストを大幅に削減できます。
失敗2: 静的リストの更新忘れ
イベント参加者の静的リストに後から追加すべきコンタクトを反映し忘れるケースです。静的リストを使う場合は、更新の責任者とタイミングを明確に決めておきましょう。
失敗3: 複雑すぎる条件設定
AND/OR条件を10個以上重ねた動的リストは、意図どおりに動いているか検証が困難になります。条件が複雑な場合は、中間リストを作成して段階的にフィルタリングする設計を推奨します。
よくある質問(FAQ)
Q1: 動的リストの更新頻度はどのくらいですか?
HubSpotの動的リスト(アクティブリスト)は、コンタクトのプロパティやアクティビティが更新されるたびにリアルタイムに近い頻度で再評価されます。ただし、大量のコンタクトを含むリストの場合、反映まで数分〜数十分の遅延が発生することがあります。
Q2: リストの上限数に達した場合はどうすればよいですか?
まず、使用していないリストを削除またはアーカイブします。特に、過去のキャンペーンで使った静的リストは定期的に整理してください。動的リストの上限を引き上げたい場合は、プランのアップグレードを検討します。Professional以上では1,100件の動的リストを作成できます。
Q3: セグメンテーションの精度を検証する方法はありますか?
HubSpotのリスト画面でメンバー数の推移を確認できます。また、リストに含まれるコンタクトをランダムに10〜20件サンプリングし、実際にセグメント条件に合致しているかを目視確認する方法が有効です。動的リストの条件を変更する前には、必ずテスト用のリストを作成して影響範囲を検証しましょう。
Q4: ICP以外のセグメンテーション軸にはどのようなものがありますか?
ICP以外では、「購買ジャーニーのステージ別」(認知→検討→比較→決定)、「エンゲージメントレベル別」(アクティブ→休眠→離脱)、「製品ライン別」(製品A→製品B)などのセグメント軸が実務でよく使われます。自社のビジネスモデルに合った軸を選び、最大5〜7軸程度に絞ることを推奨します。
カテゴリ: HubSpot機能ガイド | HubSpot
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。