ドローンを活用したソリューションの営業は、産業分野ごとに商談の中身が変わり、導入後の関係も長く続くため、「分野別の商談」と「導入後のフォロー」を同じCRMで追えるようにすることが整えどころです。 HubSpotで管理できるのは商談と導入後のフォローで、機体の運用や撮影データの解析は、運用・解析のシステムに任せる領域です。
この記事では、点検・測量・農業・物流といった産業向けにドローンのソリューションを提供する企業が、営業と導入後の管理をHubSpotで組み立てるときの考え方を整理します。取引、導入後の管理、レポートの順に説明し、最後に、HubSpotで扱わないものの線引きを表にします。
分野ごとに案件の進み方が違って管理が散らかっている会社、導入したあとの更新や追加の提案が属人化している会社に向けた内容です。
ドローン活用ソリューションの営業が複雑になる理由
ドローン関連の事業は、機体の販売、撮影や点検の受託、解析ソフトを含むソリューションの提供など、提供形態の幅が広いのが特徴です。同じ会社でも、案件によって売るものが違います。
産業分野ごとに「検討する人」と「決める条件」が違う
ドローンの活用先は、インフラ設備の点検、建設現場の測量、農地の状況確認、災害対応、物流など多岐にわたります。分野が変わると、検討を担当する部署も、導入の判断基準も変わります。
たとえば点検の分野では、現場の保全担当が使い勝手を見て、設備管理の部署が予算を握る、といった構図が一般的です。農業の分野では、農業法人の経営者が直接判断する場合もあります。分野の違いを記録していないと、どの分野の商談が進みやすいのかが、営業の感覚でしか語れません。
実証から本導入に進む段階がある
産業向けのソリューションでは、いきなり本導入にはならず、実証実験や試験導入を挟むことが多くなります。実証の結果を受けて本導入の可否が決まるため、商談の中に「実証」という段階が入ります。実証を何件やって、何件が本導入に進んだのかを数えられないと、営業の打ち手が見えません。
法令の確認が商談に絡む
ドローンの飛行には、航空法にもとづく規制があります。屋外で飛ばす100g以上の無人航空機は機体の登録が必要で、人口集中地区の上空や夜間飛行、目視外飛行といった「特定飛行」には、原則として国土交通大臣の許可・承認が必要です(出典: 国土交通省「無人航空機登録ポータルサイト」、同「飛行許可・承認申請ポータルサイト」)。さらに、有人地帯での補助者なし目視外飛行にあたるレベル4には、第一種機体認証と一等無人航空機操縦者技能証明(操縦ライセンス)に加え、飛行の許可・承認の手続きが求められます(出典: 同「レベル4飛行ポータルサイト」)。
商談の途中では、「その飛行に許可・承認が要るのか」「誰が申請するのか」という確認が発生します。営業側としては、確認が必要な項目と、その状況を取引に残しておくことが、導入の遅れを防ぐ工夫になります。ただし、制度の詳細や最新の運用は変わりうるため、判断の際は必ず国土交通省の最新の情報を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
産業分野別の商談をHubSpotで管理する
商談は、HubSpotの取引(Deal)で管理します。パイプライン設計の基本はHubSpotパイプラインの設計方法にまとめています。ここでは、ドローンのソリューションに特有の部分に絞ります。
分野はパイプラインではなくプロパティーで持つ
分野ごとにパイプラインを分けたくなりますが、最初は1本のパイプラインに、分野を選択式のプロパティーとして持たせるほうをおすすめします。HubSpotのカスタムパイプラインは、プランごとに上限があります(出典: HubSpotナレッジ「パイプラインの設定」)。それ以前に、分野ごとに分けると、営業の進め方の違いを管理する手間が増え、全体の比較もしづらくなります。
分野のプロパティーを取引に持たせておけば、レポートの条件を変えるだけで、分野ごとの受注率や商談期間を比較できます。分野ごとの進め方が本当に違うと分かってから、パイプラインを分ければ十分です。
取引のステージ案
| ステージ |
完了条件 |
記録しておくこと |
| 引合 |
課題と対象の業務を聞き取った |
産業分野、対象業務、現状のやり方 |
| ヒアリング・現地確認 |
現場の条件を確認した |
飛行環境、飛行の条件、確認が必要な手続き |
| 提案 |
提供形態と範囲を提示した |
提供形態(機体販売/受託/ソリューション) |
| 実証 |
実証実験を実施し、結果を共有した |
実証の目的、評価の指標、結果 |
| 見積・調整 |
導入の条件を詰めた |
手続きの担当、導入時期 |
| 成約 / 失注 |
契約、または見送りが決まった |
失注理由 |

取引に持たせるプロパティー
| プロパティー |
型 |
使い道 |
| 産業分野 |
選択(点検/測量/農業/物流/防災 など) |
分野別の受注率・商談期間を比較する |
| 提供形態 |
選択(機体販売/受託/ソリューション提供) |
提供形態ごとの傾向を見る |
| 実証の有無 |
選択(あり/なし/検討中) |
実証から本導入への転換率を見る |
| 実証の結果 |
選択(本導入へ/追加実証/見送り) |
結果を集計する |
| 飛行に必要な手続きの確認状況 |
選択(確認前/確認中/手続き済み/不要) |
導入の遅れの原因を見つける |
| 失注理由 |
選択(費用対効果/体制/法令対応/他社 など) |
見送りの傾向を見る |
「飛行に必要な手続きの確認状況」は、営業が導入の障害を見落とさないための確認用の項目です。申請の手続きそのものを管理する場所ではありません。申請は、国土交通省の申請サイトで行います。
プロパティーの選択肢の作り方は、HubSpotプロパティ設計のベストプラクティスが参考になります。
会社と担当者の関係を役割つきで持つ
産業向けの商談は、現場の担当、設備や経営を担う部署、情報システムの部署など、関わる人が複数います。HubSpotの関連付けラベルを使えば、取引に関わるコンタクトに「現場の担当」「決裁者」「手続きの窓口」といった役割を付けられます。関連付けラベルはProfessional以上で利用できます(出典: HubSpotナレッジ「関連付けラベルの作成と使用」)。
導入後のフォローをHubSpotで管理する
ドローン活用のソリューションは、導入して終わりではありません。点検や測量のように継続して使う用途が多く、更新・保守・追加の機会が続きます。導入後の関係を追えるかどうかで、売上の積み上がり方が変わります。
導入後に追うべき情報
導入後は、会社のレコードやチケットを使って、次のような情報を管理します。
- 導入している内容 ― 提供したソリューションの種類と、導入の時期
- 契約の更新時期 ― 保守や利用契約の終了予定日
- 定期の点検・訪問の予定 ― 訪問の履歴と次回の予定
- 問い合わせ・トラブルの履歴 ― 発生した内容と対応の状況
更新時期のような日付は、日付型のプロパティーで持つのが基本です。日付を持っていれば、「更新日の90日前になった会社」のような条件のセグメントを作って、担当者のタスクやメールの対象にできます。
更新・追加提案を仕組みにする
ワークフローを使うと、日付や状態をきっかけに、タスクの作成や担当者への通知を自動化できます。ワークフローの利用にはProfessional以上が必要です(出典: HubSpotナレッジ「ワークフローの作成」)。設定の考え方はHubSpotワークフローの設定方法で解説しています。
たとえば、「契約の更新日の90日前になったら、担当者にタスクを作る」という動きを1つ作っておくだけで、更新の提案漏れが防げます。導入先ごとの状況は、ベテランの記憶ではなく、CRMの日付と状態に持たせるのが、属人化を避ける近道です。
問い合わせの対応はチケットで残す
導入後の問い合わせ・不具合の相談は、チケットで管理するとやり取りが整理できます。同じ会社から繰り返し来る問い合わせを、会社のレコードから一覧できるため、追加の提案や改善の材料になります。
導入した機体や機材を、どう持つか
導入先ごとに機体や機材の台数・型式を持ちたい場合は、選択肢がいくつかあります。数が少なければ、会社のプロパティーに文字や数値で持てます。機体ごとに1件ずつ記録したい場合は、カスタムオブジェクトを使う方法があります。 カスタムオブジェクトはEnterpriseの機能です(出典: HubSpotナレッジ「カスタムオブジェクトの作成」)。ただし、機体の運用状況そのものを管理する用途ではなく、「どの会社にどの機材を納めたか」という営業側の記録に留めるのが現実的です。
HubSpotでできること・専用システムに任せること
ドローン関連の事業では、営業とは別に、運用と解析の仕組みが事業の中核になります。HubSpotに運用や解析の機能を持たせようとすると、無理が出ます。
| 領域 |
HubSpotで管理できる |
専用システムに任せる |
| 引合・商談 |
産業分野別の商談、実証から成約までのステージ、失注理由 |
― |
| 顧客との関係 |
担当者の役割、やり取りの履歴、導入後のフォロー |
― |
| 導入後の営業 |
契約の更新時期、更新・追加提案のタスク、問い合わせの履歴 |
― |
| 納入の記録 |
どの会社にどの機材を納めたか(営業側の記録) |
― |
| 機体の運用 |
― |
運用管理システム(整備、稼働、飛行の記録) |
| 飛行計画・申請 |
確認状況の記録のみ |
国土交通省の申請サイト、飛行計画の管理ツール |
| 撮影データの解析 |
― |
解析ソフトウェア・データ基盤 |
| 成果物(レポート・図面)の作成 |
― |
解析・作図のツール |
線引きの考え方は、「お客様との関係を追うのがHubSpot、機体とデータを扱うのが専用システム」です。連携が必要なときは、解析結果の画面や報告書へのリンクだけを、会社や取引のプロパティーに貼ります。データそのものを持ち込まないほうが、運用の負担も、情報管理のリスクも小さくなります。
運用で見るべき数字
仕組みを整えたら、次の指標をレポートで確認します。作り方はHubSpotレポート完全ガイドに整理しています。

- 産業分野別の受注率と商談期間 ― どの分野に営業を寄せるかの判断材料になります
- 実証から本導入への転換率 ― 実証の進め方や評価指標を見直す手がかりです
- 失注理由の内訳 ― 費用対効果なのか、法令対応なのかで、打ち手が変わります
- 更新時期を迎える導入先の件数 ― 更新・追加提案の予定を可視化します
よくある質問
Q1. 機体の運用記録もHubSpotに入れられますか
おすすめしません。整備の履歴や稼働の記録は、運用管理のシステムが前提とする情報で、HubSpotの設計とは用途が合いません。HubSpotには、営業側で必要な「導入の事実」だけを残し、運用の詳細は専用システムに置いてください。
Q2. 機体の販売と、撮影の受託を同じパイプラインで管理できますか
「提供形態」を選択式のプロパティーで持てば、1本のパイプラインで管理できます。提供形態ごとに商談の進み方が大きく違うと分かった段階で、パイプラインを分けるのが現実的です。
Q3. メールでの情報提供もできますか
可能です。分野別のセグメントを作り、事例や活用方法の情報を届けます。メールの配信は、配信を受ける設定の確認も含めて運用してください。配信の設計はHubSpotのEメール配信を完全攻略を参照してください。
Q4. 最初に整えるものは何ですか
産業分野と実証の結果の2つのプロパティーです。この2つがあれば、「どの分野で、実証から本導入に進む割合はどれくらいか」という、営業の最も重要な問いに答えられます。
まとめ
ドローン活用ソリューションの営業は、分野別の商談と導入後のフォローを、同じCRMで追えるかが要になります。
- 産業分野は、パイプラインを分ける前に、プロパティーとして持ちます。 比較ができる状態を先に作ります
- 実証を、取引の段階として独立させます。 実証から本導入への転換率が、営業の改善点を示します
- 導入後は、更新時期を日付で持ち、ワークフローでタスクにします。 更新・追加の提案漏れを防げます
- 機体の運用と撮影データの解析は、HubSpotに持ち込みません。 専用システムに任せ、必要ならリンクで参照します
最初の一歩としては、産業分野と実証の結果のプロパティーを作り、進行中の案件に入力してみることをおすすめします。
業界別の考え方は業界別HubSpot活用ガイドにまとめています。自社の営業の流れに合わせた設計を相談したい場合は、StartLinkの無料相談をご利用ください。