広告代理店のHubSpot活用|広告主の案件・提案・運用レポート連絡を一元管理

広告代理店のHubSpot活用|広告主の案件・提案・運用レポート連絡を一元管理
この記事の結論

広告代理店の営業管理は、広告主ごとの案件と提案履歴を一か所に集めることから始まります。支援会社の種類別の違いと、入稿・配信・進行管理をHubSpotに任せない線引きを整理します。

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkが、HubSpot導入・AI活用・CRM整備・業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


広告代理店のCRM活用とは、広告主ごとの案件・提案・契約・レポートの連絡といった「営業と関係管理の情報」を一か所に集め、担当者が変わっても経緯が追える状態にすることです。 広告の入稿・配信運用そのものや、制作物の進行管理をCRMに載せることではありません。

広告代理店、マーケティング支援会社、Web制作会社は、仕事の形が似ているようで少しずつ違います。広告運用なら月次の運用レポートと予算の相談が続き、SNS支援なら月ごとの施策の報告があり、Web制作なら案件ごとの見積と納品後の保守契約があります。それでも共通しているのは、「広告主(クライアント)との関係が長く続き、提案と報告が何度も往復する」 という点です。

この記事では、広告代理店・マーケ支援・制作会社の営業と関係管理を、HubSpotで整理するための設計を一般的な使い方としてまとめます。SNS支援、SEO・Webマーケ支援、Web制作、動画広告クリエイティブ制作、デジタルマーケ・EC運営代行のそれぞれで、何をHubSpotで管理し、何を専用ツールに任せるかも整理します。

  • 管理するのは「提案・契約・連絡」まで ── 広告の入稿・配信や制作の進行管理は、それぞれの専用ツールの領域です
  • 広告主を会社として持ち、案件ごとに取引を作る ── 運用の継続案件と単発の制作案件は、パイプラインを分けると見通しが立ちます
  • レポートの連絡は「やり取りの履歴」として残す ── レポートそのものの作成はHubSpotの仕事ではありません
  • 見込み客の育成は、問い合わせ後のフォローを仕組みにする ── 営業担当者の記憶に頼らない運用にします

広告代理店の営業管理が散らばる理由

代理店の営業管理が難しいのは、広告主の数と、案件の種類が多いからです。1つの広告主に対して、運用の継続案件、スポットの制作案件、提案中の別の施策が同時に走っていることも珍しくありません。

広告主ごとの情報が、担当者ごとに分散する

広告主の連絡先、過去の提案資料、見積、運用の方針をまとめた資料、定例会議のメモは、営業担当者と運用担当者のそれぞれが持っていることが多いはずです。運用担当者は広告の管理画面を見て、営業担当者は提案資料を見ています。広告主から「次の施策の相談がしたい」と連絡が入ったとき、営業が運用の状況を把握していないと、的外れな提案をしてしまいます。

提案から運用までの流れが、履歴として残らない

提案が通って契約になり、運用が始まった時点で、営業の情報は止まりがちです。契約時にどんな目的と条件で合意したのか、どんな提案が見送られたのかは、後の追加提案や更新の場面で必ず必要になります。

表面化する場面

表面化する場面 起きること 根本原因
担当者の異動・退職 広告主との経緯、約束事が引き継げない 商談履歴・メール・メモが個人に分散している
広告主からの追加相談 過去の提案や見送りの理由が分からない 提案の履歴が取引に残っていない
契約更新・運用の見直し 更新の時期に気づくのが遅れる 契約期間と更新日が一覧で見えない
問い合わせ後のフォロー 資料請求だけで止まっている見込み客が放置される フォローの条件と手順が決まっていない

いずれも「人の頑張り」で補うより、情報の置き場と流れを決めるほうが再発しにくいと考えています。


HubSpotでできること・専用ツールに任せること

まず、線引きを明確にします。代理店の仕事は、営業・関係管理の側と、広告の運用・制作の実行の側に分かれます。HubSpotが受け持つのは前者です。

領域 HubSpotで管理できる 専用ツールの領域
提案・商談 広告主ごとの案件・提案・商談履歴 -
見積・契約 見積の作成と履歴、契約期間・更新日の管理 契約書の電子締結は専用サービス
広告主との連絡 会社・担当者の整理、メール・会議・メモの履歴 -
見込み客の育成 問い合わせの取り込み、メールでの育成、フォローのタスク化 -
広告の入稿・配信運用 向かない 各広告媒体の管理画面
運用データの分析・レポート作成 向かない 広告媒体の管理画面、BIツール、レポート作成ツール
制作の進捗・タスク管理 向かない プロジェクト管理ツール、制作進行管理ツール

HubSpotは「広告主との関係と営業」を管理するツールで、広告の運用や制作の進行を管理するツールではありません。 運用の実績データを営業側の資料に反映したい場合は、各媒体やBIツールから必要な数値だけを取り出して資料に載せるほうが現実的です。HubSpot側に運用データを丸ごと取り込む設計は、運用が重くなるためおすすめしません。

広告主との関係はHubSpot、広告運用や制作は専用ツール(役割分担の考え方)


広告主を「会社」、案件を「取引」で持つ

HubSpotでは、広告主を会社(Company)として登録し、窓口の担当者をコンタクトとして関連付けます。案件は取引(Deal)として管理し、ステージを進めて進捗を追います。

案件の種類ごとにパイプラインを分ける

代理店の案件は、性質が大きく2つに分かれます。毎月続く運用の継続案件と、一度きりの制作案件です。進み方が違うため、パイプラインを分けると、見込みの集計が混ざりません。パイプラインは複数作成でき、上限は契約プランによって異なります(公式のパイプライン設定)。

パイプライン 主なステージ 見たい指標
運用・支援の新規提案 引き合い → ヒアリング → 提案 → 見積・条件調整 → 契約 提案数・受注率・提案から受注までの期間
運用・支援の更新・追加 更新の準備 → 内容の見直し提案 → 更新確定 継続率・追加提案の受注数
制作案件 引き合い → 要件確認 → 見積 → 契約 → 納品後 見積数・受注率

パイプラインの設計の考え方はHubSpotパイプラインの設計方法に整理しています。ステージは多すぎると入力が負担になるため、まず5〜6個に絞るのがおすすめです。

取引に持たせるプロパティー

取引には、後から集計できるよう、選択式や日付で項目を持たせます。

プロパティー 型 使い道
施策の種類 選択(運用型広告・SNS運用・SEO・Web制作・動画制作・EC運営など) 施策別の受注傾向の集計
契約期間(開始日・終了日) 日付 更新の準備を起動する起点
契約の形態 選択(月額の継続・単発・保守) 継続案件と単発案件の見分け
提案の見送り理由 選択 失注・見送りの傾向分析

見送り理由を選択式で残しておくと、「どんな提案が通らなかったのか」が後から分かります。失注分析の進め方は失注分析の進め方でも解説しています。

見積と契約の更新を管理する

見積は、HubSpotの見積機能で作成し、取引に紐づけて履歴を残せます。見積の承認や電子署名まで進める場合の設計は、HubSpot CPQ・見積書作成ガイドをご覧ください。

契約期間がある案件では、契約終了日を基準に、更新の準備を始める流れを作っておくと、更新の時期を逃しません。HubSpotのワークフローには、日付プロパティーを基準に待機する「遅延」があり、日付の何日前、といった指定ができます(公式の遅延の解説)。ワークフローは、Marketing Hub、Sales Hub、Service Hub、Data HubのProfessionalまたはEnterpriseで利用できます(公式のワークフロー作成ガイド)。設定の手順はHubSpotワークフローの設定方法にまとめています。


運用レポートの連絡と見込み客の育成

運用レポートの連絡を「履歴」として残す

運用型の案件では、月次でレポートを広告主に共有し、定例会議で振り返るのが一般的です。ここでHubSpotが担うのは、レポートそのものの作成ではなく、レポートを「いつ・誰に・どんな観点で共有したか」という連絡の履歴を残すこと です。

残しておきたい連絡の記録

  • 定例会議の日程と議事のメモ(会社・コンタクト・取引のどれかに関連付ける)
  • レポートを送ったメールの履歴(個別メールのやり取りとして残る)
  • 広告主からの要望・予算の相談(取引のメモやタスクとして残す)

定例会議の日程調整には、ミーティングのリンクが使えます。チームでの調整(ラウンドロビン)にはSales HubまたはService Hubの有料サブスクリプションとシートが必要です(公式のスケジュールページ作成)。

運用レポートの中身(広告の成果や、媒体ごとの数値)は、各媒体の管理画面やレポートツールで作成し、HubSpotには連絡の事実と、そこで出た相談だけを残します。こうしておくと、営業担当者が運用の状況を把握したうえで、追加の提案に入れます。

見込み客の育成と問い合わせ管理

代理店の新規の営業は、問い合わせや資料請求から始まることが多くなります。HubSpotでは、フォームで受けた問い合わせをコンタクトとして取り込み、その後の育成をメールとタスクで進められます。

フォームで問い合わせを取り込む

フォームの作成は、すべての製品・プランで利用できます(公式のフォーム作成)。設計の詳細はHubSpotフォーム作成ガイドで解説しています。

育成のメールは、マーケティングコンタクトにだけ送れる

Marketing Hubの有料サブスクリプションでは、マーケティングコンタクトに設定した相手にだけ、マーケティングメールを送信できます(公式のマーケティングコンタクトの解説)。また、ワークフローから自動でメールを送る場合は、Marketing HubのProfessionalまたはEnterpriseが必要です(公式のマーケティングメール作成)。広告宣伝を目的としたメールは、事前の同意など日本の法令(特定電子メール法)への対応も必要です。詳しくはBtoBメール配信と特定電子メール法のガイドをご覧ください。

育成の組み立て方はリードナーチャリングのメール設計術、リストの切り方はリスト・セグメンテーション設計にまとめています。


支援会社の種類別に見る使い分け

ここからは、代理店・支援会社の種類ごとに、HubSpotで管理するものと、専用ツールに任せるものを整理します。自社に近いものを読んでいただければ十分です。

SNSマーケティング支援|クライアント別の運用案件管理

SNS運用の支援では、クライアントごとに、運用するアカウント、月次の施策、報告の頻度が異なります。

区分 内容
HubSpotで管理 クライアント(会社)、運用の契約期間、月次の施策の提案、成果報告の会議の履歴
専用ツールの領域 投稿の予約配信、投稿ごとの分析(SNS運用ツール)

投稿の予約や分析は、SNS運用ツールに任せます。HubSpotには、「この月はこの施策を提案した」「報告会でこの相談があった」という営業・関係管理の事実を残します。

SEO・Webマーケ支援会社|見込み客の育成と案件管理

SEOやWebマーケの支援会社は、自社の集客も含めて、問い合わせから契約までの流れが長くなりがちです。

区分 内容
HubSpotで管理 問い合わせ、提案、契約の管理、メールでの育成
専用ツールの領域 順位の計測、分析データの保管(SEO計測ツール)

自社の見込み客への育成メールは、前の章のとおりMarketing Hubの機能で組み立てられます。一方、クライアントのサイトの順位計測や分析データは、SEO計測ツールの領域です。

Web制作会社|制作案件と保守契約の管理

Web制作会社は、制作案件が終わったあとの保守契約が、継続的な収益の柱になりやすい業態です。

区分 内容
HubSpotで管理 問い合わせ、見積、保守契約の更新日、納品後のフォロー
専用ツールの領域 制作の進捗、タスク管理(プロジェクト管理ツール)

制作案件のパイプラインと、保守契約の更新用のパイプラインを分けておくと、納品後のフォローが漏れにくくなります。納品後の一定期間(たとえば3か月後)にワークフローでタスクを作り、保守の提案を促す運用も組めます。

動画広告クリエイティブ制作|広告主の案件と提案管理

動画広告の制作会社は、広告主別に提案や見積を重ねる点が特徴です。

区分 内容
HubSpotで管理 広告主別の提案、見積、制作案件の取引
専用ツールの領域 動画の編集進行、素材のファイル管理(制作進行管理ツール)

動画素材のような大きなファイルや、編集の工程管理は、HubSpotに載せません。提案時に使った企画書や過去の制作物の事例の一覧は、取引のメモやリンクで残しておくと、次の提案の準備が速くなります。

デジタルマーケ・EC運営代行|クライアント案件の管理

EC運営の代行では、クライアント別に施策と契約が異なり、実務は受注や出荷の現場に近くなります。

区分 内容
HubSpotで管理 クライアント別の提案、契約、施策の履歴
専用ツールの領域 受注・在庫・出荷作業(ECカート、受注管理システム)

受注・在庫・出荷などの作業は、ECカートや受注管理システムの領域です。HubSpotに入れるのは、代行を受託する側の営業と契約の情報までにします。


小さく始めるための3ステップ

最初から全部を整える必要はありません。次の順に進めると、負担が少なく進められます。

  1. 契約中の広告主を、会社として登録する。 窓口の担当者と、契約期間・契約の形態を、取引として紐づけます
  2. 継続案件の更新用パイプラインを作る。 契約終了日の数か月前に、更新の準備が始まるようにします
  3. 問い合わせの取り込みと、フォローのタスクを1本だけ作る。 フォーム経由の問い合わせに、担当者のタスクが自動で作られるところまでで十分です

そのうえで、見積、見込み客の育成、定例会議の履歴へと広げていきます。他の業種での設計の違いは業界別ガイドにまとめています。


よくある質問

Q1. 広告の成果データをHubSpotに取り込めますか

取り込むことは技術的に検討できる場合もありますが、おすすめしません。広告の成果データは更新の頻度も量も多く、媒体の管理画面やBIツールで見たほうが正確で速いためです。HubSpotには、レポートを共有した事実と、そこで出た相談を残すのが現実的です。

Q2. 運用担当者もHubSpotを使う必要がありますか

必須ではありません。まずは営業担当者が、広告主の情報と提案の履歴を整えるところから始めても効果があります。ただし、運用担当者が得ている広告主の状況(予算の変更や要望)が営業に届かないと、追加提案の精度が上がらないため、定例会議のメモだけでも共有できる形を作ると良いかなと思います。

Q3. 広告主ごとに閲覧できる情報を分けられますか

HubSpotにはユーザーの権限設定があり、担当者や所属するチームごとに、見られるレコードを絞る設定もできます。ただし、細かい制御にはProfessionalやEnterpriseなど上位のサブスクリプションが必要な場合があります。利用する権限機能は、契約するプランの内容に合わせて公式の資料で確認してください。

Q4. 制作会社でも、案件の進捗はHubSpotで管理できますか

営業の段階(引き合い・見積・契約)までは管理できます。制作の進捗やタスクの管理は、プロジェクト管理ツールに任せるほうが運用しやすいと考えています。HubSpotにもプロジェクトのオブジェクトがありますが、制作の工程の細かい管理を担わせるものではありません。

Q5. 既存の顧客管理がスプレッドシートの場合、移行は大変ですか

件数が数百件程度であれば、会社・コンタクト・取引ごとに表を整理して、取り込む形で進められます。移行の前に、表記ゆれ(会社名の違いなど)を整える作業が最も手間になるため、現行のスプレッドシートの項目を整理するところから始めることをおすすめします。


まとめ

広告代理店・マーケ支援会社・制作会社のCRM活用は、営業と関係管理に絞って設計するのが基本です。

  • HubSpotが受け持つのは、広告主ごとの案件・提案・契約・連絡の履歴までです。 入稿・配信、運用データの分析、制作の進行管理は専用ツールの領域です
  • 継続案件、制作案件、更新用でパイプラインを分けます。 見込みの集計が混ざらず、更新の漏れも防げます
  • レポートは作らず、連絡の事実を残します。 営業が運用の状況を把握したうえで、追加提案に入れます
  • 支援会社の種類で、HubSpotに任せる範囲は変わります。 SNS・SEO・制作・動画・EC運営それぞれで、専用ツールとの境界を先に決めます

最初の一歩としておすすめするのは、契約中の広告主の一覧に、契約期間と契約の形態を加えて、HubSpotの取引として登録することです。それだけで、更新の時期と、継続案件の全体像が見えるようになります。

自社の業務にどう当てはめるかを具体的に検討したい場合は、StartLinkの無料相談でご相談ください。現状の運用をうかがったうえで、設計の方向性をご提案します。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。