失注分析の進め方|HubSpotで失注原因を特定し受注率を改善するデータ活用術

HubSpot取引パイプラインボード画面
この記事の結論

失注分析の基本フレームワークと進め方。HubSpotでの失注データの記録方法。

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpot導入、AI活用、CRM整備、業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


失注分析の基本フレームワークと進め方。HubSpotでの失注データの記録方法

「なぜ失注したのかが組織として把握できていない」「営業担当に聞いても『価格が合わなかった』としか返ってこない」——失注原因の分析は、多くのBtoB企業で課題になっている領域です。

失注分析とは、商談が不成立に終わった案件のデータを体系的に収集・分析し、失注の根本原因を特定して受注率の改善につなげるプロセスです。 感覚的な振り返りではなく、CRMのデータに基づいた定量的な分析を行うことで、再現性のある改善アクションを導き出せます。

この記事では、HubSpotを活用した失注分析の進め方と、受注率を改善するための具体的な方法を解説します。 この分野の体系的な情報はHubSpotマーケティング戦略ガイドでまとめています。

本記事は「BtoBリードジェネレーションの方法12選|HubSpotで実践するインバウンドマーケティング戦略」シリーズの一部です。

本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。


この記事でわかること

  • 失注分析の基本的な進め方 — 失注理由をあらかじめカテゴリ化して、体系的に記録する方法を解説します
  • HubSpotでの失注データの記録方法 — 取引に失注理由を記録するカスタム設定の具体的な手順を紹介します
  • 失注原因の分類と分析手法 — 失注理由の割合を把握する基本的な分析方法を解説します
  • 失注データを使って受注率を上げる方法 — 分析結果を具体的な営業改善アクションに変換する方法を紹介します
  • 失注分析ダッシュボードの作り方 — HubSpotで失注データを見やすく可視化する手順を解説します

HubSpotの取り組みを検討されている方に、


なぜ失注分析が重要なのか

02
SECTION 02
なぜ失注分析が重要なのか

失注分析をしていない企業の問題

問題 影響
失注原因が属人的 営業担当の記憶に依存し、組織としての知見が蓄積されない
同じ理由で繰り返し失注 構造的な問題が改善されず、同じパターンの失注が続く
営業プロセスの改善点が不明 どのフェーズでどの原因で落ちているかが可視化されていない
マーケティング施策との連動がない 失注原因に基づくコンテンツ制作やナーチャリング改善ができない

失注分析がもたらす効果

  • 受注率の向上: 失注原因への対策により、提案精度が向上
  • 営業プロセスの改善: ボトルネックとなるフェーズを特定して改善
  • ナーチャリングの質向上: 失注パターンに基づくコンテンツ・施策の改善
  • 競合対策の強化: 競合に負けるパターンを分析し、差別化ポイントを強化
  • 組織的な営業力向上: 個人の経験を組織の知見として蓄積

失注分析の基本フレームワーク

03
SECTION 03
失注分析の基本フレームワーク

ステップ1: 失注理由のカテゴリ設計

失注理由を体系的に記録するために、あらかじめカテゴリを設計します。

カテゴリ 具体的な失注理由 対策の方向性
価格・予算 予算が足りない、競合の方が安い、ROIが見えない 価格戦略の見直し、ROI資料の強化
機能・要件 必要な機能がない、カスタマイズ性が不足、連携要件を満たさない 製品ロードマップへの反映、代替提案
競合 競合製品を選択、既存ツールの継続を決定 競合比較資料の強化、差別化ポイントの明確化
タイミング 導入時期が合わない、社内の優先順位が変わった、稟議が通らなかった リサイクルナーチャリング、社内説得支援
信頼・関係性 導入実績への不安、サポート体制への懸念 事例の充実、トライアルの提供
プロセス 意思決定者に会えなかった、提案内容が刺さらなかった 営業スキル向上、提案プロセス改善

ステップ2: 失注データの記録ルール

失注理由を正確に記録するためのルールを営業チームに共有します。

記録すべき項目

項目 内容 HubSpotプロパティ
失注理由(主因) 上記カテゴリから選択 クローズド/失注の理由(ドロップダウン)
失注理由(詳細) 具体的な背景・理由の記述 失注理由詳細(テキスト)
失注フェーズ どの商談フェーズで失注したか 取引のパイプラインステージ
競合情報 競合がいた場合、どの競合か 競合企業名(テキスト)
決裁者接触 決裁者と直接会えたか 決裁者接触(Yes/No)
次回アクション リサイクルの可能性、再アプローチ時期 再アプローチ予定日(日付)

HubSpotでの失注分析の実装

04
SECTION 04
HubSpotでの失注分析の実装

1. 失注理由プロパティの設定

HubSpotの取引(Deal)に失注理由を記録するカスタムプロパティを設定します。

設定手順

  1. 「設定」→「プロパティ」→「取引プロパティ」
  2. 「プロパティを作成」をクリック
  3. 以下のプロパティを作成

プロパティ1: 失注理由(主因)

  • タイプ: ドロップダウン選択
  • 選択肢: 予算不足 / 競合選択 / 機能不足 / タイミング不一致 / 社内稟議不通過 / 既存ツール継続 / 提案内容不適合 / 連絡途絶 / その他

プロパティ2: 失注理由詳細

  • タイプ: 複数行テキスト
  • 説明: 失注理由の具体的な背景を記載

プロパティ3: 競合企業名

  • タイプ: 単行テキスト

プロパティ4: 決裁者接触有無

  • タイプ: ドロップダウン選択
  • 選択肢: Yes / No / 不明

2. 失注時の記録を自動化

ワークフローを使って、取引が「失注」になった際に記録を促す仕組みを作ります。

ワークフロー設定例

  • トリガー: 取引ステージが「Closed Lost(失注)」に変更
  • 条件分岐: 失注理由(主因)が空か確認
  • 空の場合: 取引所有者にタスク作成「失注理由を記録してください」(期限: 1営業日以内)
  • 入力済みの場合: ワークフロー終了
  • アクション: マネージャーに通知(失注した取引の金額が一定以上の場合)

3. 失注パイプラインステージの活用

パイプライン設計で、失注前の最終ステージを記録できるようにします。取引が「提案」「見積提出」「最終検討」のどのフェーズで失注したかがわかると、より精緻な分析が可能になります。

HubSpotでは取引のクローズ時に「失注」を選択すると、その時点のパイプラインステージが記録されます。このデータと失注理由を組み合わせることで、「どのフェーズで」「なぜ」失注したかが分析できます。


失注データの分析手法

05
SECTION 05
失注データの分析手法

分析1: 失注理由の分布分析

最も基本的な分析は、失注理由の割合を把握することです。

HubSpotでのレポート作成

  1. 「レポート」→「レポートを作成」→「単一オブジェクト」→「取引」
  2. 横軸: 失注理由(主因)
  3. 測定値: 取引件数
  4. フィルター: 取引ステージ = Closed Lost

これにより、「予算不足が40%」「競合選択が25%」「タイミング不一致が15%」のような分布が可視化されます。最も多い失注理由に対して重点的に対策を講じます。

分析2: フェーズ別失注分析

どのパイプラインステージで失注が多いかを分析します。

フェーズ 失注率 主な失注理由 対策
初回商談後 30% 予算不足、優先度低い 事前のBANT確認強化
提案後 25% 競合選択、機能不足 提案品質向上、差別化強調
見積提出後 20% 予算交渉不成立 価格柔軟性、ROI訴求
最終決裁前 15% 稟議不通過、タイミング 社内説得資料の提供

分析3: 競合別失注分析

競合に負けるパターンを分析します。

HubSpotでのレポート作成

  1. 横軸: 競合企業名
  2. 測定値: 取引件数・取引金額
  3. フィルター: 失注理由 = 競合選択

競合別の失注件数・金額を把握し、特に多い競合に対して以下を整理します。

  • 競合の強み・弱み
  • 自社の差別化ポイント
  • 競合比較資料の作成・更新

分析4: 担当者別失注分析

営業担当者ごとの受注率・失注パターンを分析し、個人の課題とチーム全体の課題を切り分けます。

担当者 受注率 主な失注理由 改善ポイント
担当A 35% 提案内容不適合が多い 提案スキル向上
担当B 25% 競合選択が多い 競合対策トレーニング
担当C 40% タイミング不一致が多い リードの質の見直し

分析5: 時系列の失注トレンド分析

月次・四半期の失注率推移と失注理由の変化を追跡します。

  • 失注率が上昇傾向にあるか、改善傾向にあるか
  • 特定の失注理由が増減しているか
  • 市場環境の変化と失注パターンの相関

失注分析ダッシュボードの作成

06
SECTION 06
失注分析ダッシュボードの作成

HubSpotのダッシュボード機能で、失注分析ダッシュボードを作成します。

推奨レポート構成

レポート 種類 目的
失注理由分布 ドーナツチャート 失注理由の全体像把握
月次受注率・失注率推移 折れ線グラフ トレンドの把握
フェーズ別失注件数 棒グラフ ボトルネックフェーズの特定
競合別失注件数 棒グラフ 主要競合の把握
担当者別受注率 テーブル 個人パフォーマンスの把握
失注金額TOP10 テーブル 大型案件の失注原因確認
リサイクル対象リスト テーブル 再アプローチ候補の管理

失注データを活用した受注率改善アクション

07
SECTION 07
失注データを活用した受注率改善アクション

アクション1: 失注パターンに基づく営業トレーニング

失注分析の結果を営業トレーニングに活かします。

  • 価格・予算の失注が多い場合 → ROI訴求スキル、価値提案トレーニング
  • 競合に負ける場合 → 競合分析・差別化トーク研修
  • 決裁者に会えない場合 → マルチスレッド営業のトレーニング
  • 提案内容のミスマッチ → ヒアリングスキル向上、課題深掘り研修

アクション2: コンテンツ・ツールの整備

失注理由に対応するコンテンツやセールスツールを整備します。

失注理由 必要なコンテンツ・ツール
ROIが見えない ROI算出テンプレート、TCO比較資料
競合選択 競合比較表、移行コスト試算ツール
稟議不通過 経営層向け提案書テンプレート、導入事例(同業種)
機能不足 代替機能の提案書、ロードマップ共有資料

アクション3: リサイクルナーチャリング

「タイミング不一致」「予算不足(来期なら可能)」で失注した案件は、リサイクルナーチャリングの対象にします。

HubSpotでのリサイクル設定

  1. 失注理由が「タイミング不一致」の取引のコンタクトを自動リスト化
  2. ナーチャリングワークフローに再投入(月1回の情報提供メール)
  3. 再アプローチ予定日が近づいたら営業にタスク作成

アクション4: 営業プロセスの改善

フェーズ別の失注分析結果に基づいて、営業プロセスを改善します。

  • 初回商談後の失注が多い場合 → BANTヒアリングの徹底、事前の適格性確認強化
  • 提案後の失注が多い場合 → 提案の個別最適化、デモの質向上
  • 最終決裁前の失注が多い場合 → 社内説得支援、決裁者への直接アプローチ

失注分析の運用ルール

08
SECTION 08
失注分析の運用ルール

週次の失注レビュー

週次の営業ミーティングで、前週の失注案件をレビューします。

  • 失注した案件の理由確認
  • 共通するパターンの抽出
  • 次週の改善アクションの決定

月次の失注トレンド分析

月次で失注ダッシュボードを確認し、以下をレビューします。

  • 失注率の推移
  • 失注理由の変化
  • 改善アクションの効果測定

四半期の戦略見直し

四半期ごとに失注分析の結果を経営層にレポートし、以下の戦略判断に活用します。

  • 価格戦略の見直し
  • 製品ロードマップへのフィードバック
  • 営業体制・トレーニングの見直し
  • マーケティング施策の改善

まとめ

失注分析は、受注率向上のための最も確実な改善手法です。

  • 失注理由のカテゴリ設計: 体系的に記録できる仕組みを作る
  • HubSpotでのデータ記録: カスタムプロパティとワークフローで自動化
  • 多角的な分析: 理由別・フェーズ別・競合別・担当者別で分析
  • 改善アクションの実行: トレーニング・コンテンツ整備・プロセス改善
  • 定期的なレビュー: 週次・月次・四半期のサイクルで改善を継続

まずは失注理由のカテゴリ設計とHubSpotへのプロパティ追加から始め、データの蓄積を開始することをおすすめします。3ヶ月分のデータが溜まれば、最初の本格的な失注分析が実施できます。

あわせて、カスタマージャーニーマップの作り方BtoBリードジェネレーションの方法12選インバウンドマーケティング入門なども参考にしていただければと思います。


よくある質問(FAQ)

Q1. 営業が失注理由を正確に記録してくれません。どうすればいいですか?

失注理由の記録を「必須」にする仕組みを作ることが重要です。HubSpotでは取引ステージを「失注」に変更する際に必須プロパティとして設定できます。また、ドロップダウン選択で記録の負荷を下げ、「3クリックで完了」レベルの簡易さにすることがポイントです。

Q2. 失注分析はどのくらいのデータ量から始められますか?

最低30〜50件の失注データがあれば、基本的なパターン分析が可能です。統計的に有意な分析には100件以上が望ましいですが、まずは少ないデータでも傾向を把握し、改善仮説を立てることが重要です。

Q3. 失注理由が「価格」ばかりの場合はどうすればいいですか?

「価格」は表面的な理由であることが多く、本当の理由が隠れている場合があります。「価格が合わなかった」の裏には「ROIが伝わらなかった」「決裁者に価値が伝わっていない」「予算の優先順位で他に負けた」などの根本原因があります。営業に「価格以外の理由は何だったか」を深掘りしてもらう仕組みを作りましょう。

Q4. HubSpotのどのプランで失注分析ができますか?

基本的な取引プロパティの設定と簡易レポートは全プランで可能です。カスタムレポートやダッシュボードを活用した本格的な分析にはSales Hub Professional以上が推奨されます。

Q5. 失注した顧客に再アプローチするのは効果的ですか?

はい、特に「タイミング不一致」や「予算の来期計上」で失注した案件は、再アプローチの成功率が高いです。失注後3〜6ヶ月後に適切なナーチャリングを行い、再アプローチすることで、新規リードよりも高い受注率が期待できます。


株式会社StartLinkは、事業推進に関わる「販売促進」「DXによる業務効率化(ERP/CRM/SFA/MAの導入)」などのご相談を受け付けております。 サービスのプランについてのご相談/お見積もり依頼や、ノウハウのお問い合わせについては、無料のお問い合わせページより、お気軽にご連絡くださいませ。

関連キーワード:

サービス資料を無料DL

著者情報

7-1

今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。