経費精算のデジタル化|申請から承認まで自動化して管理コストを削減する方法

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経費精算のデジタル化とは、紙の領収書・手書きの精算書・押印による承認といったアナログなプロセスをクラウドサービスで電子化し、経費の申請から承認・会計ソフトへの仕訳連携までを自動化する取り組みです。楽楽精算やマネーフォワード経費、freee経費精算などのクラウド経費精算サービスを活用すれば、従業員の申請負担と経理担当者のチェック工数を大幅に削減できます。

経費精算は、従業員にとっても経理担当者にとっても「やりたくないが避けられない業務」の代表格です。領収書をノートに貼り、精算書を手書きで作成し、上長に印鑑をもらって経理に提出する。経理は内容をチェックし、会計ソフトに仕訳を入力し、振込処理を行う。この一連のプロセスに、両者とも多くの時間を奪われています。

ラクス社の調査によると、経費精算にかかるコストは1件あたり平均約2,000円(従業員の申請時間+承認者の確認時間+経理の処理時間を人件費換算)とされています。月に100件の経費精算が発生する企業では、年間で約240万円のコストが経費精算だけに費やされている計算です。

本記事では、経費精算のデジタル化を「領収書の電子化」「交通費の自動計算」「承認フローの電子化」「会計ソフトとの連携」の4ステップで解説し、主要サービスの比較と段階的な導入手順を紹介します。

この記事でわかること

経費精算は従業員にとっても経理にとっても負担の大きい業務であり、1件あたり約2,000円のコストがかかるとされています。本記事では、領収書の電子化から交通費の自動計算、承認フローの電子化、会計ソフト連携までの4ステップでデジタル化する方法を解説します。

こんな方におすすめ: 紙の領収書と手書き精算書による経費処理を効率化したい経理担当・管理部門の方、経費精算クラウドの導入を検討しているが比較・選定の基準がわからない方

  • 経費精算業務の4つの非効率ポイントと、それぞれに対するデジタル化のアプローチがわかります
  • 楽楽精算・マネーフォワード経費・freee経費精算の機能比較と選定基準を整理します
  • スマートフォンでの領収書撮影とAI-OCRによるデータ自動読取の活用方法を解説します
  • 交通系ICカードとの連携による交通費精算の自動化手順を紹介します
  • 電子帳簿保存法に対応した領収書の電子保存ルールと運用方法を解説します

経費精算業務の4つの非効率ポイント

領収書の管理と紛失リスク

出張や会食のたびに受け取る領収書を、月末まで保管して精算書に添付する。この運用では、領収書の紛失が頻繁に発生します。紛失した場合は再発行を依頼するか、経費として認められない事態になり、従業員の不満と経理の対応工数が増大します。

クラウド経費精算サービスのスマートフォンアプリを使えば、領収書を受け取ったその場で撮影・アップロードでき、原本の紛失リスクを大幅に軽減できます。AI-OCRが日付・金額・店舗名を自動で読み取るため、手入力の手間も削減されます。

交通費の計算と経路確認

営業担当者の交通費精算では、「どの経路を使ったか」「最安経路だったか」を確認する作業が必要です。従業員が手書きで経路を記入し、経理がジョルダンや駅すぱあとで運賃を確認する。このやりとりに、双方の時間が消費されます。

楽楽精算やマネーフォワード経費は、交通系ICカード(SuicaやPASMO)の利用履歴を自動で取り込む機能を備えています。ICカードリーダーやスマートフォンのNFC機能でカードをかざすだけで、乗車区間と運賃が自動で記録されるため、手入力と経路確認の両方が不要になります。

承認の滞留と催促の手間

紙の精算書を上長に回覧して承認を得る場合、上長が出張中や会議中で承認が進まないことがあります。承認が滞留すると、従業員の立て替え金の精算が遅れ、不満が蓄積します。月末には承認の催促を行う経理担当者の手間も増えます。

ワークフロー機能を備えたクラウド経費精算では、承認者のスマートフォンにプッシュ通知が送られ、移動中でも承認操作が可能です。一定期間承認されない場合の自動リマインド機能も備わっており、催促の手間が解消されます。

会計ソフトへの転記

承認済みの経費精算データを会計ソフトに仕訳として入力する作業は、経理担当者の重要な業務ですが、同時に最も単調な業務でもあります。勘定科目の判断、消費税区分の設定、部門別の按分計算など、ルールに基づいた作業を1件ずつ手で処理しています。

クラウド経費精算とクラウド会計の連携機能を使えば、承認済みの経費データが自動的に仕訳として会計ソフトに取り込まれます。バックオフィスSaaS連携の設計パターンで、より詳しい連携アーキテクチャを解説しています。勘定科目のマッピングルールを事前に設定しておくことで、転記作業をゼロに近づけることができます。

主要クラウド経費精算サービスの比較

楽楽精算(ラクス)

楽楽精算はラクス社が提供する国内シェアトップクラスのクラウド経費精算サービスです。導入社数は16,000社以上で、中小企業から大企業まで幅広い規模の企業に対応しています。

楽楽精算の最大の強みは、経費精算に特化した豊富な機能セットです。交通系ICカードの読取、GPS打刻による出張管理、日当の自動計算、海外出張時の為替レート自動取得など、経費精算にまつわるあらゆるニーズに対応しています。

ラクスの公開事例では、株式会社オプトが楽楽精算の導入により、経費精算の月間処理時間を約60%削減したと報告されています。特に交通費精算のICカード連携による効果が大きく、従業員1人あたりの申請時間が平均15分から3分に短縮されました。

マネーフォワード経費

マネーフォワード経費は、マネーフォワードシリーズの一部として提供されるクラウド経費精算サービスです。マネーフォワードクラウド会計・給与との連携がシームレスで、マネーフォワードで経理業務を統一している企業に最適です。

マネーフォワード経費の特徴は、クレジットカードの利用明細との自動連携機能です。法人カードや個人カードの利用明細が自動で取り込まれ、経費申請のベースデータとして利用できます。領収書の撮影とカード明細のマッチングも自動で行われるため、従業員の入力負担が最小化されます。

freee経費精算

freee経費精算はfreeeの会計エコシステムの一部で、freee会計との連携が最大の特徴です。承認済みの経費データがfreee会計の仕訳として自動連携されるため、経理の転記作業が完全に不要になります。

freee経費精算は、経費申請から承認、会計仕訳の生成、振込データの出力まで一気通貫で処理できる設計です。freee会計をすでに導入している企業にとっては、追加コストを抑えながら経費精算のデジタル化を実現できる選択肢です。

クラウド経費精算サービス比較表

比較項目 楽楽精算(ラクス) マネーフォワード経費 freee経費精算
導入社数 16,000社以上 非公開(MFシリーズ全体で多数) 非公開(freeeシリーズ全体で多数)
最大の強み 経費精算特化の豊富な機能 クレジットカード明細の自動連携 freee会計への仕訳自動連携
ICカード連携 対応(Suica/PASMO等) 対応 対応
日当・海外出張対応 充実(為替レート自動取得) 基本対応 基本対応
会計ソフト連携 freee・マネーフォワード等に対応 MFクラウド会計とシームレス freee会計とシームレス
規程チェック機能 充実(複雑なルール設定可) 基本対応 基本対応
適した企業 経費精算の専門機能を重視する企業 MFシリーズで統一している企業 freeeシリーズで統一している企業

選定の判断基準

経費精算の専門機能を重視するなら:楽楽精算が適しています。ICカード連携、日当計算、海外出張対応など、経費精算に特化した機能が最も充実しています。

マネーフォワードシリーズで統一しているなら:マネーフォワード経費が最適です。会計・給与・請求書との連携がシームレスで、追加設定がほとんど不要です。

freeeシリーズで統一しているなら:freee経費精算が最適です。freee会計への仕訳連携が自動化されるため、経理の工数削減効果が最大化されます。

段階的な導入ロードマップ

フェーズ1:領収書の電子化とICカード連携(1〜2ヶ月目)

まず、従業員のスマートフォンにクラウド経費精算のアプリをインストールし、領収書の撮影・アップロードとICカードの読取を開始します。この段階では承認フローは従来通り紙で運用し、データの電子化だけを先行させます。

従業員向けの操作説明会を開催し、「領収書は受け取ったその場で撮影する」という習慣を定着させることが重要です。月末にまとめて撮影する運用では、結局は紛失リスクが残ります。

フェーズ2:承認フローの電子化(3〜4ヶ月目)

領収書の電子化が定着したら、承認フローの電子化に進みます。紙の精算書と押印による承認を廃止し、クラウド上での申請・承認に完全移行します。

承認ルートの設定では、金額による承認者の分岐(たとえば5万円以下は課長承認、5万円以上は部長承認)や、部門ごとの承認ルートを設定します。自動リマインドの設定も合わせて行い、承認滞留を防止します。

フェーズ3:会計ソフトとの連携(5〜6ヶ月目)

承認フローが安定したら、クラウド会計との仕訳連携を設定します。経費の勘定科目マッピング(交通費→旅費交通費、会議費→会議費など)を定義し、承認済みデータが自動で仕訳に変換される仕組みを構築します。

連携初月は、自動生成された仕訳を経理担当者が全件確認し、マッピングの妥当性を検証します。問題がなければ、翌月以降は異常値のみを確認する運用に移行します。

フェーズ4:規程チェックの自動化(7〜8ヶ月目)

最終フェーズでは、社内の経費規程に基づくチェックの自動化を設定します。たとえば「タクシー代は事前申請が必要」「接待費は1人あたり上限5,000円」といった規程を、クラウド経費精算のルールとして登録します。

規程に違反する申請は自動でエラー通知を出し、従業員に修正を促します。これにより、経理担当者が1件ずつ規程をチェックする作業が不要になります。楽楽精算は規程チェック機能が特に充実しており、複雑なルールの設定にも対応しています。

電子帳簿保存法への対応

スキャナ保存の要件

経費精算で受け取る領収書をスマートフォンで撮影して保存する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです。

タイムスタンプの付与:受領後速やかに(最長2ヶ月と概ね7営業日以内に)タイムスタンプを付与する必要があります。楽楽精算、マネーフォワード経費、freee経費精算はいずれもタイムスタンプの自動付与機能を備えています。

解像度と画質:200dpi以上の解像度での撮影が求められます。現在のスマートフォンのカメラはこの要件を十分に満たしています。

検索機能:日付・金額・取引先で検索できることが要件です。クラウド経費精算サービスはAI-OCRで読み取ったデータをもとに検索機能を提供しているため、この要件も自動的に満たされます。

原本の取り扱い

スキャナ保存の要件を満たした場合、紙の領収書の原本は廃棄が可能です。ただし、社内のルールとして「スキャン後○ヶ月は原本を保管し、その後廃棄する」という運用を定めておくと安心です。

よくある失敗と回避策

従業員への周知が不十分で定着しない

クラウド経費精算を導入しても、従業員が使い方を理解していなければ、紙の精算書を提出し続けます。導入時にはマニュアルの配布だけでなく、実際にスマートフォンで領収書を撮影する操作研修を全従業員に対して実施することが重要です。

勘定科目のマッピングが不適切

経費精算と会計ソフトの連携で最も多いトラブルは、勘定科目のマッピング設定ミスです。「タクシー代が旅費交通費ではなく雑費に計上されていた」といった問題は、連携初月に集中的にチェックすることで防止できます。

経費規程の見直しを省略する

デジタル化のタイミングで経費規程を見直さないと、時代にそぐわないルール(たとえば「FAXでの事前申請が必要」など)がそのままシステムに実装されてしまいます。ツール導入の前に、規程自体の簡素化・合理化を行うことが重要です。申請業務のペーパーレス化の考え方も参考になります。

まとめ

経費精算のデジタル化は、「領収書の電子化」「交通費の自動計算」「承認フローの電子化」「会計ソフトとの連携」の4ステップで段階的に進めるのが効果的です。楽楽精算は経費精算の専門機能が充実しており、マネーフォワード経費とfreee経費精算はそれぞれの会計ソフトとのシームレスな連携が強みです。経費精算の1件あたり約2,000円のコストを削減するだけでなく、従業員の申請負担と経理の確認工数を同時に軽減できる経費精算のデジタル化は、バックオフィスDXの中でも特にROIが高い領域です。経理DX全体の進め方については経理DXの進め方を、業務改善のROI試算方法は業務改善の投資判断基準もあわせてご覧ください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。