バックオフィス少人数運営とSaaS活用|一人経理・一人人事を支える業務設計

  • 2026年3月11日
  • 最終更新: 2026年10月19日
この記事の結論

限られた体制のバックオフィスでは、担当者の頑張りに頼る前に、日々の処理を引き継げる仕組みを整えることが、SaaS選びより先に必要です。会計・勤怠・給与・入退社を担当者が追える流れに整理し、導入は負担の大きい工程から1つずつ進めます。本記事では、一人経理・一人人事を支える業務設計と、規模別のSaaS構成の読み方を整理します。

ブログ目次


限られた体制のバックオフィスでは、担当者の頑張りに頼る前に、日々の処理を引き継げる仕組みを整えることが、SaaS選びより先に必要です。会計・勤怠・給与・入退社を担当者が追える流れに整理し、導入は負担の大きい工程から1つずつ進めます。本記事では、一人経理・一人人事を支える業務設計と、規模別のSaaS構成の読み方を整理します。

「勤怠の集計と請求書の処理が月末に重なる」「経理も人事も兼務していて、確認する画面が増えるほど忙しい」「担当者が休むと、どこまで処理したかわからない」——こうした悩みを抱える管理部門は、SaaSを導入する順番と、情報の受け渡し方から見直してみてください。

限られた体制でのバックオフィスSaaS活用とは、会計・勤怠・給与・入退社などの定型業務を、担当者が追える流れに整理して運用することです。手作業の置き換えに加えて、処理状況と判断基準を共有できる形にすることが、一人経理・一人人事を支えます。

DXのバックオフィスDXについて体系的に学びたい方は、バックオフィスDXガイドで全体像を把握できます。


この記事でわかること

経理・人事・総務を兼務する方や、限られた人数の管理部門を運営する経営者に向けて、業務の整理からSaaSの導入順序までを説明します。

  • 限られた体制で負担が集中する理由 — 月末の作業と担当者への情報集中を、業務フローから捉えます。
  • 一人経理の運用設計 — freeeを軸に、日々の明細確認から月次報告までをつなげる考え方を紹介します。
  • 一人人事の運用設計 — 入退社、勤怠、給与の受け渡しを整理し、SaaS構成を選ぶ視点を示します。
  • SaaSの選び方と導入順序 — 規模別の比較を踏まえ、自社の業務量と運用負荷で判断する方法を説明します。

少数精鋭のバックオフィスでは何が負担になるのか

管理業務には、毎日発生する処理と、月末や入退社の際に集中する処理があります。担当者が少ないほど、その両方を同じ人が抱えがちです。

まずは作業時間だけでなく、次の点がどこに集中しているかを見ます。

  • 情報の所在 ── 必要な情報がどこにあるか
  • 次に何をするかの判断 ── 誰に集中しているか

月末にまとめて処理すると、確認作業まで重なります

勤怠の締め、給与計算、請求書の処理、経費精算、月次の数字の確認を月末にまとめると、入力作業と照合作業が同時に発生します。

スプレッドシートに転記してから別のシステムへ入力する運用では、転記後の数字が元データと一致するかも確かめなければなりません。

最初に、月末の作業を「発生時に処理できるもの」と「締め後に判断するもの」に分けることをおすすめします。

  • 発生時に処理できるもの ── 経費申請の内容確認や取り込まれた明細の確認は、発生に合わせて進められます
  • 締め後に判断するもの ── 給与額や月次の報告値は、元データが揃った段階で確認する必要があります

この違いを明確にすると、月末に残す作業を絞れます。次の表を自社の作業で埋めると、仕分けの結果をそのまま運用の手順にできます。

作業の例 発生時か締め後か 完了の状態(例)
取り込まれた銀行明細の確認 発生時(毎日) 未処理の明細が0件、または理由を記録済み
経費申請の内容確認 発生時(申請が届いた日) 承認または差し戻しの記録が残っている
勤怠の未申請・修正待ちの確認 締めの前(週次) 締め日までに未申請の件数が0件
給与額の確認 締め後 勤怠確定データと給与計算結果の差を説明できる
月次の数字の報告 締め後 未処理の取引がない状態で試算表を出している

表の「完了の状態」は、担当者が不在でも次の人が判断できる書き方にします。「確認済み」だけで終わらせず、何を見て確認したかが分かる記録にしてください。

手順が担当者の記憶にあると、引き継ぎに時間がかかります

「あの人なら処理できる」という状態では、担当者が不在のときに、未処理の申請や取引を見つけるところから始まります。SaaSにデータを保存していても、どの画面を見て、どの条件で承認するかが共有されていなければ、次の人は判断できません。

業務フローの可視化では、担当者だけでなく、次の項目を記録します。

  • 作業の開始条件
  • 入力元
  • 確認する情報
  • 処理後の受け渡し先

例えば請求書なら、受領場所、確認する担当者、会計への登録先を順に書き出します。これをSaaS上の処理状況と対応させると、引き継ぎ時にも作業の続きを追えます。

ツールの数が増えるほど、照合する場所も増えます

会計、経費、勤怠、給与、人事労務にそれぞれSaaSを使う構成には、各業務に合う製品を選べる利点があります。ただし、同じ従業員情報や取引先情報を複数の画面で更新するなら、限られた人数の担当者には照合の負担が残ります。

新しいツールを選ぶ前に、どの情報をどのSaaSで管理するかを決めてください。次の点を書き出します。

  • 従業員情報の変更 ── 勤怠や給与へどう渡るか
  • 請求書の情報 ── 会計へどう渡るか
  • 連携できない箇所 ── 手動で入力する担当者と、その入力を照合する方法まで運用に含めます

SaaSを選ぶ前に、業務の流れを設計する

限られた体制では、個々の機能の多さよりも、前の工程が終わったことを次の工程の担当者がわかるかが重要です。会計と人事の作業をそれぞれ独立して考えると、情報の受け渡しが見落とされます。

業務の始まりから報告までをひと続きにしてから、必要なツールを選びます。

入力元、処理先、確認者を並べます

例えば経理と人事では、次のような流れになります。

  • 経理 ── 請求書や銀行明細が入力元となり、会計への登録を経て、月次の数字を確認します
  • 人事 ── 従業員から受け取る情報や勤怠データが、手続きや給与計算へ渡ります

どちらも「誰が入力するか」だけでなく、「次の工程へ渡す前に誰が何を見るか」を決めることがポイントです。

freee、SmartHR、ジョブカン、バクラクなどの組み合わせも、この流れに沿って評価できます。

画面を増やすことで手入力が減っても、連携結果を誰も確認しないなら、月次に原因を探す作業が残ります。連携後の確認先まで含めて設計します。

スプレッドシートの用途を見分けます

スプレッドシートで申請一覧を作り、処理結果を会計や人事労務のSaaSへ転記している場合は、同じ情報を繰り返し入力していないか確認します。

一覧の用途ごとに、次のように見分けます。

  • 申請の進捗を共有するための一覧 ── SaaS上のステータスで代替できるか検討します
  • 集計や報告のための一覧 ── 元のSaaSから取り出す情報と、手作業で補う情報を分けます

スプレッドシート自体をなくすことを目的にする必要はありません。判断のために必要な表は残しつつ、取引や従業員の情報を二重に更新している箇所から見直すと、変更時の食い違いを減らせます。

営業から請求までの情報のつながりも見ます

バックオフィスの負担は、管理部門の画面だけで決まりません。次の流れの間に手入力が多ければ、経理の仕事が増えます。

  1. 顧客情報の登録 ── コンタクトや会社に登録されます
  2. 取引から請求へ ── 取引の内容が請求に渡ります
  3. 入金の確認 ── 会計で入金を確認します

CRMを使う場合も、管理部門が受け取る情報まで含めた業務フローとして設計することをおすすめします。

次の画面は、HubSpot Demo AccountにあるStartLinkの会社レコードです。会社レコードの概要とアクティビティ、右側のfreee取引先カードとコンタクトカードが表示されています。

HubSpot Demo AccountのStartLink会社レコード

ただし、CRMに情報を集めるだけで会計処理が完了するわけではありません。

請求に必要な項目、会計へ渡すタイミング、連携後に確認する担当者を決めて初めて、入力の重複を見直せます。HubSpotでは、次の3ステップで受注から請求までの受け渡しを仕組みにできます。

  1. 設定(歯車アイコン)の「プロパティ」で取引のプロパティを開き、「請求先名」「請求予定日」「請求金額」を作成します(プロパティの作成手順)。
  2. 設定の「データ管理」>「オブジェクト」>「取引」の「パイプライン」タブで、受注ステージの「条件付きロジックルール」から「ルールを追加」をクリックし、上の3つを依存プロパティとして「必須」にします(パイプラインの設定)。
  3. 「オートメーション」>「ワークフロー」で「ワークフローを作成」>「最初から」を選び、取引ベースで登録条件を「取引ステージが受注」にします。アクションで経理担当者へ「請求書を作成する」タスクを作成します(ワークフローの作成)。

これで、受注の時点で請求に必要な項目が揃い、経理には作業のタスクが届きます。営業が受注を口頭やチャットで伝える運用と比べ、経理が情報を探して確認する時間を減らせます。

請求書の作成まで同じ流れでつなぐなら、StartLinkが開発したHubSpotアプリSync for freeeで、取引レコードからfreeeの見積書・請求書を扱えます。次の画面は、freeeの請求書のプレビューの例です。

Sync for freee連携で出力されるfreee請求書のプレビュー画面

マネーフォワードを使う構成では、マネーフォワード連携のアプリが同じ役割を担います。連携方法の比較はfreeeと連携できるCRMの選び方で、営業から請求までのどこをAIに任せ、どこを人が判断するかはHubSpotのAI業務設計で整理しています。


一人経理は日々の確認と月次の判断を分ける

一人経理では、すべての処理を月初に集めない運用が役立ちます。freee会計を軸にするなら、次の流れを考えます。

  • 日々 ── 取り込まれた明細を確認する
  • 締め後 ── 試算表や未処理の取引を確認する

自動化する範囲と、人が判断する範囲を分けておくことも大切です。

明細の取り込みから取引登録までを日々進めます

freeeの「自動で経理」は、同期した銀行口座やクレジットカードの明細をもとに帳簿付けを行う機能です。

利用前には口座の登録と明細の取り込みが必要で、取り込んだ明細について取引登録や消込などの処理を選びます(出典:自動で経理の使い方)。

  1. 明細が取り込まれているかを見る
  2. 先に登録した取引は消込の対象かを確認する ── 請求書などを先に登録した取引が対象です
  3. それ以外の明細は登録する ── 内容に応じて登録します

処理できない明細は月末まで放置せず、確認に必要な資料や相談先を記録しておきます。日々の作業が終わったかどうかを、未処理明細の状態で追えるようにします。

請求書と経費は、会計に届くまでを確認します

受け取った請求書をバクラクで扱い、会計へ連携する構成では、読み取った内容をそのまま確定値として扱わない運用をおすすめします。

  • 次へ渡す前 ── 取引先、金額、支払期日など、会計処理に使う情報を確認します
  • 連携後 ── 会計側に対象の取引があるか、同じ請求書を別経路で登録していないかを確かめます

経費精算も、申請が届いた時点で内容を確認すれば、月末に申請内容をまとめて読み返す負担を分けられます。

ただし、申請が少ない場合に専用ツールを増やすと、設定や管理にかかる作業が増えることもあります。現状の会計機能で申請から登録まで追えるなら、そこから始める選択もあります。

月次は未処理の確認から報告へ進みます

月次の確認は、次の順に進めます。

  1. 未処理を洗い出す ── 未処理の明細、未登録の請求書、未承認の経費を確認します
  2. 登録内容を確認する ── 会計に登録された内容を確認します
  3. 報告につなげる ── 試算表やレポートを経営者への報告につなげます

報告値に疑問が出たときに元の取引へ戻れるよう、資料の保存先と確認した結果を残しておきます。

自動登録のルールを使う場合も、初めからすべての取引に広げる必要はありません。内容が繰り返し発生し、登録後の確認がしやすい取引から適用し、想定と違う登録があればルールを見直します。これなら、作業を減らすことと数字を把握することを両立しやすくなります。

中小企業のバックオフィスDXでも、管理業務全体の整理を紹介しています。


一人人事は入退社、勤怠、給与の受け渡しを整える

一人人事では、次の場面に作業が集中します。

  • 入退社 ── 従業員から情報を集める場面
  • 勤怠から給与へ ── 毎月の勤怠から給与へ情報を渡す場面

SmartHRとジョブカンを組み合わせる構成も、freee人事労務に寄せる構成も、まずは情報の受け渡しを基準に考えます。

自社の勤務形態と、担当者が管理できる画面の数によって選び方は変わります。

入退社では、本人から受け取る情報を整理します

SmartHRを使う場合の流れは次のとおりです。

  1. 入社手続きを開始する ── 本人に必要な情報の入力を依頼します
  2. 入力済みの内容を確認する ── 担当者が確認し、届出や社内の登録に進みます

勤怠を別のSaaSで管理するなら、入社した人の情報を勤怠側にも登録する工程が必要です。

ここで決めておきたいのは、人事情報の変更を最初に受け取る場所です。住所などの変更があったとき、次を順番に並べます。

  • 本人が入力する場所
  • 担当者が確認する場所
  • 給与へ反映する場所

別々の画面で変更する場合は、どちらの処理が終われば完了なのかを手順に書いておきます。

勤怠が確定してから給与へ渡します

ジョブカン勤怠管理とジョブカン給与計算を組み合わせる場合は、次の順に追います。

  1. 勤怠の確定
  2. 給与計算への連携
  3. 計算結果の確認
  4. 振込データの処理
  5. 会計への反映

勤怠に未申請や修正待ちが残っている段階では、給与へ渡す前の作業が終わっていません。担当者が一人でも、各工程の完了状態を画面上で見分けられるようにします。

給与計算の結果を確認するときは、前工程から渡った勤務情報と、給与側で扱う情報を分けて見ます。

連携があるから確認を省くのではなく、どこで差が生じたかを追えることが重要です。従業員から問い合わせがあったときも、元の勤怠と計算結果を順に確認できます。

統一構成と組み合わせ構成を使い分けます

freee会計を使っている場合、freee人事労務を組み合わせる方法があります。複雑な勤務形態がある場合は、専用の勤怠管理SaaSを選ぶ方法があります。

構成 向いている場面 判断のポイント
統一構成(freee会計とfreee人事労務) 管理するSaaSを増やしすぎずに済み、統一構成で扱えるなら管理画面を抑えられる 勤務形態や既存の勤怠運用に合うかは、自社の条件で判断します
組み合わせ構成(専用の勤怠管理SaaS) 複雑な勤務形態がある場合 扱いにくい勤務形態や運用があるなら、勤怠を分け、その分だけ連携結果を確認する工程を加えます

比較するときは、次の点を並べてください。

  • 勤怠の締め方
  • 給与への受け渡し方
  • 変更が生じた際の修正経路

請求書処理の自動化では、経理側の受け渡しも詳しく扱っています。


従業員規模別の構成例をどう読むか

従業員規模ごとのSaaS構成を表で比較します。以下に、掲載時点の構成例を示します。月額費用は、各製品の公式料金ページで最新を確認してください。

料金、対応範囲、各製品間の連携方法を現在の確定情報として示す表ではありません。採用を検討するときは、自社に必要な機能と現行の契約条件を各製品で確認してください。

公式の料金は、ジョブカンの料金ページ、マネーフォワード クラウド会計の料金ページなどで確認できます。構成を比べるときは、利用者数・利用する機能・契約の期間をそろえて、各社の同じ条件で見積もります。

比較表

10名以下(最小構成)

項目 構成
会計 freee会計
勤怠管理 freee人事労務
給与計算 freee人事労務
入退社手続き freee人事労務
請求書処理 freee会計のファイルボックス
ワークフロー 不要(限られた体制で口頭承認可)
経費精算 freee経費精算
月額費用 各製品の公式料金ページで最新を確認
設計方針 freeeシリーズで統一(ワンプラットフォーム)

30名規模(標準構成)

項目 構成
会計 freee会計
勤怠管理 ジョブカン勤怠管理
給与計算 ジョブカン給与計算
入退社手続き SmartHR
請求書処理 バクラク
ワークフロー ジョブカンワークフロー
経費精算 freee経費精算
月額費用 各製品の公式料金ページで最新を確認
設計方針 ベスト・オブ・ブリード

50名規模(拡張構成)

項目 構成
会計 マネーフォワードクラウド会計
勤怠管理 ジョブカン勤怠管理
給与計算 ジョブカン給与計算 or MFクラウド給与
入退社手続き SmartHR
請求書処理 バクラク
ワークフロー kintone
経費精算 マネーフォワード経費
月額費用 各製品の公式料金ページで最新を確認
設計方針 内部統制を見据えた拡張構成

少ないツールで始める構成

10名以下の構成は、同じ系列のSaaSを中心にして管理画面や情報の受け渡しを抑える考え方です。経理と人事の担当者が兼務している場合には、覚える操作や確認先が増えにくい構成が合うことがあります。

実際には人数だけで決めず、次の点を見てください。

  • 勤務形態
  • 請求書の処理方法
  • 経費申請の流れ

表には口頭承認という例も残っていますが、次の点に注意します。

  • 承認した内容を後から確認する必要がある業務 ── 記録の残し方を決めておきます
  • 承認者が不在のときに処理が止まる場合 ── 代理で判断する人と、判断に必要な情報を共有します

ツールを増やす前に、この運用を明文化することが先です。

領域ごとにSaaSを組み合わせる構成

30名・50名規模の構成は、勤怠、人事、請求書処理などを領域ごとに分ける考え方です。

  • 利点 ── 各業務に合う操作を選べる
  • 注意点 ── 従業員情報や取引情報がシステムをまたぐ

導入時には、どの情報が連携され、どの情報を手入力するのかを一覧にすると、運用開始後の確認先が明確になります。

人数が増えたら、より大きな規模の構成へ機械的に移る必要はありません。今の構成で困っている工程が、次のどれなのかを特定します。

  • 勤怠
  • 請求書
  • 申請の進捗管理

その工程の処理方法を見直し、別のSaaSを加える場合は、増える連携と確認作業も含めて判断します。


SaaS導入は負担の大きい工程から段階的に進める

少数精鋭のバックオフィスでは、全業務を同時に切り替えると、通常業務と設定作業が重なります。最初に改善する工程を決め、運用できてから次の工程へ進む方が、担当者も処理結果を確認しやすくなります。

選定基準は、次の点を中心に置きます。

  • 現場で使う時間
  • 間違いが起きたときの影響

作業時間と手戻りを一緒に見ます

毎月時間がかかっている作業でも、入力自体より、資料を探したり差異を調べたりする時間が長いことがあります。次の点を記録してください。

  • 処理にかかる時間
  • 差し戻しや再入力が発生する場所 ── 元データが揃っていないために給与計算をやり直すなら、給与SaaSの機能を増やす前に、勤怠を確定する流れを整えます

判断に迷う場合は、業務を次のように分けます。

  • 発生時に処理できる ── 発生時に進められる作業を先に移します
  • 締め後に処理する ── 締め後の処理へ必要な情報が揃うようにします
  • 専門家の判断を要する ── 税理士や社労士へ何を渡すかまで決めておくと、相談前の準備も進めやすくなります

最初の対象を絞って運用を確かめます

導入順序の一案は、次のとおりです。

  1. クラウド会計
  2. 勤怠管理
  3. 給与計算
  4. 入退社手続き
  5. 請求書処理

ただし、自社ですでに会計を使えていて勤怠集計が負担なら、勤怠から着手する判断もあります。導入順序は、現在の作業量と手戻りの原因に合わせて調整します。次の判断表で、最初に着手する工程を絞れます。

いま起きていること 最初に着手する工程 最初の確認方法
銀行明細の帳簿付けが月末に溜まる クラウド会計の明細取り込み 1週間分の明細を取り込み、未処理が残らないかを見る
勤怠の修正が給与の締めまで続く 勤怠管理(確定の流れ) 締め日の3営業日前に、未申請・修正待ちを一覧で確認する
請求書の転記ミスや二重登録がある 請求書処理 1か月分の請求書を取り込み、会計側の登録件数と突き合わせる
入社時の書類回収に時間がかかる 入退社手続き 1名分の入社手続きを通しで試し、どこで止まるかを記録する

着手した工程では、次の順に進めます。

  1. 役割を決める ── 入力する人、処理する人、結果を確認する人を決めます
  2. 通常の業務を一通り進める ── 未処理を見つけられるか、誤りがあったときに元データへ戻れるかを確かめます
  3. 次の工程を検討する ── ここまでできた段階で、隣の工程との連携や次のSaaS導入を検討します

自動化後に残る判断を担当者へ戻します

連携や自動登録によって転記作業を減らしても、例外的な取引の扱い、勤怠の修正、給与結果の確認は残ります。

  • 処理する条件と見る条件を分ける ── 自動化する前に、システムが処理する条件と、担当者が見る条件を分けておきます
  • 想定と違った場合の確認先を決める ── どの画面のどの情報から確認するかも手順に含めます

この設計なら、経験のある担当者だけが暗黙のうちに判断する状態から、次の担当者も同じ流れをたどれる状態へ近づけます。

設定を増やすことより、未処理と例外を見つけられることを優先します。


運用を定着させるために残す記録

SaaSを導入した直後は処理できていても、担当者が変わると手順がわからなくなることがあります。限られた体制ほど、次の記録が役立ちます。

  • 画面の操作方法だけでなく、業務の開始条件と完了条件を記録する
  • 日常業務で見返せる場所に置く ── 変更があれば更新します

完了条件を業務ごとに決めます

途中の状態と完了の状態は別です。業務ごとに、何が終われば次の工程へ渡せるのかを書いてください。

業務 途中の状態 完了の状態
請求書 「請求書を受け取った」 「会計へ登録し、確認を終えた」
勤怠・給与 「勤怠を締めた」 「給与へ反映され、結果を確認した」

完了条件を決めると、途中で担当者が不在になっても、次の人が処理済みの範囲を見つけやすくなります。

作業手順は長くするより、確認する画面、見る項目、処理後に渡す先を明確にする方が実務で使いやすくなります。

例外処理の相談先を決めます

通常の取引や勤怠だけを手順化しても、金額が合わない請求書や修正が必要な勤怠が発生すると、担当者が判断に迷います。

例外が起きたら、まず元データを確認し、社内で判断する範囲と専門家に相談する範囲を分けます。相談する際は、次をまとめます。

  • 対象の資料
  • これまでの処理
  • 判断が必要な点

SaaSと税理士・社労士の役割も、この流れに沿って見直せます。

担当 役割
社内 日常の入力や資料の共有を進める
専門家(税理士・社労士) 判断が必要な事項を伝える

このように分けると、同じ作業を重複して行っていないか確認できます。

処理状況を次の担当者が追えるようにします

担当者が一人でも、経営者や別の担当者が処理状況を見られるようにしておくと、不在時の引き継ぎがしやすくなります。次の点を共有してください。

  • 閲覧する場所
  • 未処理の見つけ方
  • 緊急時の相談先

実際に別の人が手順を読み、対象の処理をたどれるか試すと、説明が足りない箇所も見つかります。

総務DXの進め方では、管理部門の別の業務領域も扱っています。

ご支援での進め方|業務の流れを描いてから導入する

StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、150社以上のHubSpot支援に携わっており、Sync for freeeやSync for Notionの開発元でもあります。バックオフィスの整備も、スモールスタートで1つの工程から始めて広げます。企業様によって最適な形は異なるため、人数と業務量に合わせて範囲を決めます。

  1. 現状の整理・要件定義 — 月末の作業を書き出し、入力元・処理先・確認者を並べて、最初に直す工程を1つ決めます。
  2. 設計・構築 — 受け渡しの項目と完了の状態を設計し、HubSpotや会計・人事のSaaSに設定します。
  3. データ移行 — 表計算の一覧から取引先・従業員の情報を、照合キーを決めて移します。
  4. テスト・検証 — 実際の1か月分で、未処理を見つけられるか、元データへ戻れるかを確かめます。
  5. 定着・運用改善 — 完了条件と相談先の記録を更新し、担当者が替わっても同じ流れで回るかを定期的に試します。進め方は週次レビューとデータ品質ダッシュボードが参考になります。

支援は準委任による伴走型で進めます(伴走型支援の進め方)。標準連携で足りない部分は、StartLinkのSyncシリーズで補えます。構築から定着までの全体像はHubSpot導入・構築支援のページで紹介しています。


よくある質問

一人経理では、何から見直すとよいですか?

月末にまとめている作業を洗い出し、発生時に処理できる明細確認や経費申請の確認から見直します。そのうえで、未処理の取引をどこで見つけるか、月次報告の数字から元の取引へ戻れるかを確認してください。自動登録は、処理結果を確認しやすい取引から試すと運用を整えやすくなります。

SmartHRとジョブカンは一緒に使うべきですか?

入退社の手続きと勤怠・給与を分ける構成例です。自社の勤務形態に合う勤怠管理が必要で、情報の受け渡しを管理できるなら検討できます。管理画面を増やしたくない場合は、既存の会計や人事労務のSaaSで業務をつなげられるか先に確かめてください。

担当者が少ないとき、SaaSを増やす判断基準は何ですか?

今の構成で時間がかかる工程と、その原因を特定します。新しいSaaSによって転記や差し戻しを減らせるなら、増える連携確認や設定管理も含めて比べてください。既存の機能と手順の見直しで解消できるなら、先にその運用を試す方法があります。

担当者の不在に備えるには、何を残せばよいですか?

業務の開始条件、資料の保存先、確認する画面、完了条件、例外時の相談先を残します。SaaSへのアクセス方法を共有するだけでは、どの処理から再開するか判断できません。別の担当者が記録を見て未処理を探せるか、実際の業務で確かめてください。

HubSpotで受注した後、請求書を作る流れはどう整えればよいですか?

取引の受注ステージで、請求先名・請求予定日・請求金額を必須入力にし、受注をきっかけに経理担当者へ請求書の作成タスクが届くワークフローを組みます。営業と経理の間で口頭やチャットの連絡に頼らないことで、確認の手間を減らせます。請求書の作成までつなぐ場合は、Sync for freeeのような連携アプリで取引から請求書を扱う方法があります。


まとめ

少数精鋭のバックオフィスの運営では、会計や人事のSaaSを個別に導入する前に、情報の流れを整理することが大切です。

  • 一人経理 ── 日々の明細と申請を処理し、月次に残す確認を絞ります
  • 一人人事 ── 入退社の情報、勤怠の確定、給与への反映を順に追えるようにします

まずは月末に集中している作業の書き出しから始めてください。次の順で進める方法をおすすめします。

  1. 月末に集中している作業を書き出す
  2. 入力元と受け渡し先を並べる ── 各作業について並べ、手入力や確認漏れが生じる箇所を選びます
  3. その箇所だけ見直す ── 手順やSaaSの使い方を見直し、別の担当者も処理状況を追えることを確かめます
  4. 次の工程へ広げる ── 確かめてから、次の工程へ広げていきます

CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、StartLinkまでお気軽にお問い合わせください。


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著者情報

7-1

今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。