HubSpot Revenue Agentの設定|請求書の督促をAIで自動化する運用ルール

  • 2026年10月19日
  • 最終更新: 2026年10月19日
この記事の結論

Revenue Agentは未払い請求書ごとに連絡計画を作るベータ機能です。設定と運用ルール、会計ソフトと二重督促にしない役割分担の決め方を整理します。

ブログ目次


HubSpotのRevenue Agent(日本語UIでは「収益管理エージェント」)は、未払いの請求書を監視し、請求書ごとに個別の支払い計画とメールを作って、購入者への連絡を自動化するAI機能です。 公式ナレッジでは「ベータ」と表記され、すべての製品とプランで利用できる一方、プランに関連付けられた請求書ごとにHubSpotクレジットを消費します。

督促は、頻度が低すぎれば回収が遅れ、強すぎれば関係を損ねます。そのうえ、会計ソフトでも請求・入金を管理している企業では、「誰が、どの請求書を、いつ督促するか」が曖昧になりがちです。この記事では、設定の手順に加えて、文面・頻度・止める条件の運用ルールと、会計ソフトと二重督促にならない設計を整理します。

  • 設定の手順と必要な前提 ── 受信トレイの接続、登録対象の選択、自動化モード、エージェントの手順
  • 督促の文面・頻度・止める条件 ── 公式が定める範囲と、当社の運用ルール案を分けて記載
  • 請求・入金データの前提 ── エージェントの精度は、請求書の状態の正確さで決まる
  • freeeなど会計ソフトとの二重督促を避ける設計 ── 「1請求書・1督促主体」の原則

Revenue Agentでできること・できないこと

Revenue Agentは、HubSpot内の請求書を対象に、督促の連絡計画を作って実行するエージェントです。公式ナレッジと公式の Fall 2026 Spotlight の記載を整理すると、動きは次のとおりです。

公式に確認できる動き

未払いの請求書を監視し、請求書の変更や顧客とのやり取りを追跡します。個別対応の支払い計画(提案プラン)を作り、顧客からの返信や請求書の動きに応じて計画を調整します。支払いがない場合は、社内担当者へエスカレーションメールを送ります。エスカレーションの判断には、請求書の状況、顧客からのメッセージ、これまでの連絡内容、過去の判断が使われると公式ナレッジに記載されています。

提供状況は、ナレッジが「ベータ」、Spotlightが「public beta」の表記です。Spotlightでは収益系の機能がRevenue Hubの項目に掲載されています。ベータ機能は仕様が変わる可能性があるため、導入時は公式の最新情報を確認してください。

公式には記載がないこと

確認した範囲で、次の点は公式ナレッジに記載がありませんでした。督促の既定の頻度や間隔、督促を止める条件、エージェントの一時停止の方法、手動で支払い済みにした場合の挙動です。登録後の解除については、別の公式記事を参照するよう案内されています。

記載がない部分は、設計と運用でカバーする必要があります。後述の運用ルールは、この「公式に定めがない部分」を埋めるための当社の見解です。

任せる範囲の線引き

領域 エージェント 人が決める
請求書の監視・計画の作成 担当 対象にする顧客の範囲
メール文面の下書き 担当 口調・回数・避ける表現(指示で設定)
請求額・支払条件・添付 変更不可 請求書そのものの内容
個別の事情への対応 判断を補助 分割払い・減額などの合意

請求額や支払条件、顧客情報、添付書類は、エージェントの指示では変更できません。金額や条件の交渉はエージェントの役割ではなく、人が行います。


設定手順と、始める前に整える前提

設定は、公式ナレッジの手順に沿って進めます。画面操作の前に、前提の確認が必要です。

事前に確認する前提

  • アカウントのAI設定で、生成AIのツールや機能へのアクセスを許可するトグルがオンになっていること
  • 督促メールの送信元として、個人用または共有のメール受信トレイが接続されていること
  • 設定する人が、請求書に対する「スーパー管理者」または「編集」権限を持っていること
  • 外部で発行した請求書を対象にする場合は、先にHubSpotと同期されていること

AI機能の利用可否やデータ共有の範囲は、AI設定で管理します。社内で生成AIの利用範囲を決めている場合は、この設定が方針と合っているかを先に確認してください。

初期設定の流れ

  1. HubSpotで「その他」から「収益」>「収益管理エージェント」に進みます
  2. 送信済み受信トレイを、共有受信トレイまたは個人用受信トレイから選びます。個人用の場合、提案プランの編集・承認と有効なプランの編集は、その受信トレイの所有者だけが行えます
  3. 登録対象の企業・連絡先を選びます。未決済の請求書と未払い総額をもとに、エージェントが候補を自動選択します。ダイアログでは最大20社が表示され、名前やメールアドレスで検索して追加・削除できます
  4. 「エージェントの概要へ進む」から、プランを確認して承認します

初回は、対象を絞って始めることをおすすめします。候補が自動で選ばれても、そのまま全件を承認せず、対象企業を絞り込んでから開始すると、挙動を確認しやすくなります。

設定画面の3つの項目

設定項目 場所 役割
アカウントの詳細 「設定」から開く エスカレーション通知を受ける社内担当者のメールアドレス
自動化 「設定」から選ぶ 送信前に人が確認するか、自動送信するかのモード
エージェントの手順 「設定」から開く メール作成時の指示(口調・構成・回数・タイミングなど)

「自動化」には2つのモードがあります。「すべてのメールを確認」は、送信前にすべての計画案を確認して承認する必要があるモードです。「顧客からの返信があるまで自動送信」は、初回・フォローアップ・エスカレーションのメールを承認なしで自動送信し、購入者から請求関連のメールが届くと支払い計画を再作成して承認を求めます。部分払い・全額払いなど請求書が更新された場合は、承認なしで計画が自動的に再生成されます。


督促の文面・頻度・止める条件の運用ルール

公式が示すのは、設定できる項目と動きの原則です。ここからは、当社が実務で勧める運用ルールの案です。数値や日数は例であり、企業様によって最適な形は異なりますので、取引先との関係や契約条件に合わせて調整してください。

文面のルール

エージェントの手順では、口調、文の構成、メールの長さ、フォローアップの回数やタイミング、避けるべき表現を指定できます。指示に入れておく項目を、表にまとめます。

指示の項目 記載例(当社見解) 狙い
口調 丁寧で簡潔。確認のお願いとして書く 関係を損なわない
冒頭の構成 請求書番号と支払期日を最初に書く 相手が何の件か即座に分かる
避ける表現 「至急」「再三」「未払い」といった強い言葉 行き違いの可能性を前提にする
結び 入金済みの場合は不要である旨と、問い合わせ先を書く 入金済みの顧客への配慮

文面の考え方は、「相手が支払っていない」と決めつけず、「行き違いがないかの確認」として書くことです。入金のタイムラグや、相手側の承認待ちなど、督促が不要なケースが一定数あります。

頻度のルール

公式に既定の頻度は記載されていないため、エージェントの手順で指定します。当社が勧める考え方は、段階を3つに分けることです。

段階 タイミングの例 内容
初回 支払期日の翌営業日以降 確認のお願い。請求書の内容を再掲
フォローアップ 前回から1週間以上あける 状況の確認と、支払予定日の質問
エスカレーション 一定回数のあとも未払い 社内担当者へ通知。人が連絡する

フォローアップの回数に上限を決めておくことが大切です。上限なしで自動送信を続けると、取引先から見て機械的な連絡が重なる印象になります。上限に達したら、人が電話などで個別に連絡する段階へ切り替えます。

止める条件のルール

止める条件は公式に記載がないため、運用の側で決めます。次の表は、「どの条件で、どの手段で止めるか」の例です。

止める条件 対応する手段(当社見解)
顧客が支払予定日を連絡してきた 担当者がプランを確認し、日付を踏まえて調整する
請求内容に異議・問い合わせがある 督促の対象から外し、担当者が個別対応する
重要な取引先、交渉中の案件 登録の対象にしない(手動登録の運用)
入金が会計側で確認できた 送信前の確認モードで止める。後述

「登録の管理」で「新規企業および連絡先を自動登録する」をオフにすると、手動登録の運用になります。重要な取引先は自動登録に任せず、担当者が対象にするかを判断する運用が安全です。登録後の解除方法は、公式の別記事で案内されています。

自動化モードは段階的に切り替える

最初は「すべてのメールを確認」で運用し、承認と修正の傾向をつかみます。担当者が毎回同じ修正をするなら、エージェントの手順にその内容を反映します。修正が減り、文面が安定してから、対象を絞って「顧客からの返信があるまで自動送信」へ移す、という進め方です。

エージェントの手順を更新した場合、新しいメールには自動で反映され、承認待ちのプランは「提案済みのすべての計画を再作成」か「再生成せずに保存」を選べます。承認済みのプランと送信予定のメールには影響しません。


請求・入金データの前提

Revenue Agentは、HubSpot上の請求書の状態を見て動きます。請求書の状態が実際の入金状況とずれていれば、督促も的外れになります。導入の成否は、エージェントの設定よりも、データの前提で決まります。

状態を追跡できる範囲

公式ナレッジでは、請求書の作成元(契約書、見積書、サブスクリプション、外部発行など)にかかわらず、「未処理」「支払済み」「延滞」などのステータスを追跡すると記載されています。外部で発行された請求書は、先にHubSpotと同期させる必要があります。

前提のチェック表

確認項目 確認する内容 ずれたときの影響
請求書のステータス 入金後に「支払済み」へ更新されるか 入金済みの顧客へ督促が届く
連絡先の関連付け 請求書に、請求窓口の連絡先が関連付いているか 宛先が不適切になる
送信元の受信トレイ 共有か個人か、所有者が誰か 承認できる人が限られる
外部発行分の同期 HubSpotに請求書として同期されているか 監視の対象から漏れる

特に重要なのは1行目です。入金の反映がHubSpotに遅れると、すでに支払った顧客へ督促メールが届く可能性があります。次の節で、会計ソフトと組み合わせる場合の設計を整理します。

クレジットの見積もり

Revenue Agentは、プランに関連付けられた請求書ごとにHubSpotクレジットを消費します。公式のクレジット料金ページには、Revenue agentについて「500 credits / invoice」と記載されています。月の消費量は、督促の対象になる請求書の件数に、この値を掛けて見積もります。

月間のクレジット上限は、アカウント全体や機能別に設定でき、上限に近づくと通知が届きます。未使用のクレジットは月末に失効し、繰り越されません。金額の面は、導入前に公式の料金ページで最新の内容を確認してください。クレジットの仕組み全体はHubSpot AIクレジット料金ガイドで整理しています。


freeeなど会計ソフトとの二重督促を避ける設計

請求書をHubSpotとfreeeの両方で扱う企業では、督促の主体が複数になりやすくなります。HubSpotのRevenue Agentが督促メールを送り、同時に経理担当者がfreee側の入金一覧を見て電話をかけると、取引先は同じ請求書で二重に連絡を受けます。

原則は「1請求書・1督促主体」

当社の設計の原則は、請求書1件につき、督促の主体を1つに決めることです。主体は、請求書の発行経路で決めると運用が明確になります。

請求書の発行経路 督促の主体(当社見解) 補足
HubSpotで発行した請求書 Revenue Agent 担当者の承認を経て送信
freeeで発行した請求書 経理担当者、または社内通知 HubSpotの請求書として扱われるかは検証が必要
紙・その他で発行 経理担当者 エージェントの対象外

外部で発行した請求書をRevenue Agentの対象にするには、HubSpotと同期されている必要があります。freeeで発行した請求書が、Revenue Agentの監視対象となるHubSpotの請求書として扱われるかは、公式ナレッジと公開情報からは確認できませんでした。実環境で、少数の請求書を使って検証してから、対象範囲を決めてください。

Sync for freeeで確認できる入金の状態

Sync for freeeの公開情報では、入金消し込みは全プランで利用できます。freee会計の「取引」に対応するHubSpotの「freee取引」オブジェクトで、決済状況(未決済/決済完了)を確認でき、定期的なバッチ処理で自動更新されます。ワークフローのアクションとして「未入金請求書チェック」「未決済取引チェック」も用意されています。

Sync for freeeのCRMカードに表示されるfreee見積書・請求書の情報

取引レコードの右サイドバーには、対応するfreee請求書とfreee取引の情報(請求書番号、金額、入金期日、明細、支払い履歴、決済状況など)が表示されます。freeeの原本へのリンクがあり、「ステータス更新」で手動更新もできます。詳細はSync for freeeのサービスページとマニュアルをご覧ください。

入金の反映のずれに備える

決済状況はバッチ処理で更新されるため、freee側で入金を登録してからHubSpotに反映されるまで、時間差が生じえます。この時間差があると、入金済みの請求書にRevenue Agentが督促を送るリスクがあります。当社では、次の運用で備えることを勧めています。

  1. 運用の初期は、自動化モードを「すべてのメールを確認」にする
  2. 督促メールを承認する前に、CRMカードの「ステータス更新」で最新の決済状況に更新する
  3. 経理担当者が入金を登録した日は、その顧客への督促を承認しない、という共有ルールを置く
  4. 督促を承認した日付と、経理側の入金確認の日付を月次で突き合わせ、行き違いの件数を記録する

行き違いが月に数件以下で安定し、承認時の修正がなくなってから、自動送信への切り替えを検討します。

役割分担の全体像

担当 役割
経理担当者 入金の確認・登録。会計ソフトの正を保つ
営業・請求担当者 督促メールの承認、個別事情の対応
管理者 エージェントの設定、権限、クレジット上限の管理
Revenue Agent 計画の作成、文面の下書き、返信への追従

請求書の発行経路ごとに督促の主体を1つに決める設計(1請求書・1督促主体)


導入の進め方と、導入前に決めること

StartLinkの支援は、現状の整理・要件定義、設計・構築、データ移行、テスト・検証、定着・運用改善の工程で進めます。Revenue Agentのように仕様が更新されるベータ機能は、スモールスタートで始めて、確認しながら広げる進め方が適しています。

工程別のやること

工程 内容
現状の整理・要件定義 請求書の発行経路、督促の担当、現在の回収の流れを整理する
設計・構築 督促の主体の原則、文面の指示、段階を設計し、AI設定と権限を整える
テスト・検証 少数の請求書で挙動を確認し、入金反映のずれを実測する
定着・運用改善 承認の修正傾向を指示に反映し、対象と自動化の範囲を広げる

導入前に決める5点

  1. 督促の対象にする顧客の範囲と、対象外にする条件
  2. 督促の主体(HubSpotか、会計ソフト側か)を請求書の発行経路ごとに
  3. フォローアップの回数上限と、人に切り替える基準
  4. メールの承認者と、不在時の代行者
  5. 月のクレジット上限と、上限到達時の対応

AIを業務に組み込む際は、「AIに任せる工程」と「人が決める工程」を最初に分けておくことが、運用の安定につながります。AI活用全体の設計はHubSpotのAI活用サービスでもご案内しています。

督促の自動化で最初に決めるのは、エージェントの設定ではなく「どの請求書を、誰が督促するか」です。 発行経路ごとに主体を1つに決め、入金の反映のずれに備えた承認運用から始めると、二重督促と誤送信を防げます。


よくある質問

Q1. Revenue Agentは正式版ですか

公式ナレッジは「ベータ」、Fall Spotlightは「public beta」と表記しています。仕様や提供範囲が変わる可能性があるため、導入時は公式の最新情報を確認してください。

Q2. 対象のプランは何ですか

公式ナレッジ(日本語版)では、すべての製品とプランで利用できると記載されています。ただし、プランに関連付けられた請求書ごとにHubSpotクレジットが必要です。設定には、請求書に対する「スーパー管理者」または「編集」権限が求められます。

Q3. 督促メールを自動で送ってしまうのが心配です

自動化の設定で「すべてのメールを確認」を選ぶと、送信前にすべての計画案を確認して承認する運用になります。最初はこのモードで運用し、文面と挙動に問題がないことを確認してから、対象を絞って自動送信へ移すことをおすすめします。

Q4. freeeで請求書を発行している場合も使えますか

外部で発行した請求書は、先にHubSpotと同期されている必要があります。freeeで発行した請求書が、Revenue Agentの対象となる形でHubSpotに同期されるかは、公式からは確認できませんでした。少数の請求書で検証したうえで、督促の主体を決めてください。

Q5. エージェントを止めたいときはどうしますか

確認した公式ナレッジには、一時停止の方法の記載がありませんでした。登録対象の管理は概要ページの「登録の管理」から行え、登録後の解除は別の公式記事で案内されています。運用では、自動化モードの切り替えと、対象の絞り込みで調整してください。


一次情報・参考にした公式ドキュメント

あわせて、請求と入金の設計はRevenue Hubの解説、入金消込の自動化、営業が入金状況を確認できる仕組み、請求漏れ防止の設計にも整理しています。


まとめ:督促の主体を1つに決めて、段階的に自動化する

Revenue Agentは、督促の手間を減らす有力な選択肢ですが、設定よりも運用ルールとデータの前提が成果を分けます。

  • メニューは「その他」>「収益」>「収益管理エージェント」です。 ベータ機能で、プランに関連付けられた請求書ごとにクレジットを消費します
  • 文面・頻度・止める条件は、エージェントの手順と登録の管理で設計します。 既定の頻度や停止条件は公式に記載がないため、運用ルールで補います
  • 請求書のステータスの正確さが前提です。 入金の反映が遅れると、入金済みの顧客に督促が届きます
  • 会計ソフトとは「1請求書・1督促主体」で分担します。 発行経路ごとに主体を決めます
  • 最初は「すべてのメールを確認」で始めます。 行き違いが安定して少なくなってから、自動送信を検討します

最初の一歩としては、現在の請求書の発行経路と、督促を実際に担当している人を一覧にするところから始めるのがおすすめです。

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記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

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著者情報

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。