「体験レッスンには来てもらえたのに、その後の連絡が止まってしまった」
「資料請求は多いが、誰にいつ連絡したか、スタッフごとにバラバラ」
——社会人向けのスクールで、こうした悩みはよく聞かれます。
社会人向けのスクールには、共通する特徴があります。申し込みを決めるまでの検討期間が長く、仕事や家庭の都合で、体験から入会までに日が空くことです。そして、入会してからも、続けるかどうかが毎月試されます。つまり、体験前、体験後、入会後、更新前と、それぞれの時点で、適切な連絡をし続けられるかが成果を分けます。
この記事では、英会話スクールを中心に、プログラミング、オンライン、資格といった社会人向けスクールで、HubSpotを使った追客の設計を整理します。ただし、先にお伝えしておくと、授業管理・受講管理(時間割、出欠、学習管理システム=LMS)までは、HubSpotでは難しい領域です。ここは専用のシステムに任せ、HubSpotは「入会までの追客」と「入会後の関係維持」に集中させるのが、現実的な設計です。
スクールの追客が止まりやすい理由
体験・説明会のあとの連絡が、人任せになる
体験レッスンや説明会のあと、誰がいつ連絡するかが決まっていないと、忙しい日は後回しになります。入会の意思がある人ほど、連絡が遅れると別のスクールを検討し始めます。
検討中の人の状態が見えない
「体験は受けたが、料金を検討中」「家族に相談中」「時期が合わず来月以降」など、検討中の理由はさまざまです。この状態がメモに埋もれていると、次の連絡のタイミングや内容を判断できません。
入会後は、現場の運用に追われる
入会が決まると、現場は授業の運営に集中します。その結果、入会後のフォロー(学習の進み具合の確認、更新の案内など)が後回しになりがちです。
業態によって、追客の山場が違う
英会話は体験レッスン、プログラミングは説明会、オンラインは無料講座、資格は無料体験と、最初の接点が違います。同じ「追客」でも、設計する場所が少しずつ変わります。

体験レッスンから入会までを追客する:英会話スクールの設計
まず、基本の形として、英会話スクールの体験から入会までの流れを整理します。
体験の申し込みを、フォームで受ける
体験レッスンの申し込みフォームでは、次のような項目を選択式で聞きます。
- 学習の目的(仕事、旅行、試験対策など)
- 現在のレベルの目安
- 希望の曜日・時間帯
- 来校かオンラインか
HubSpotのフォームは、ウェブサイトに埋め込めて、送信内容からコンタクトを作成・更新します(HubSpot公式のフォームの案内)。フォームの設計はフォーム作成完全ガイドで詳しく扱っています。
体験の日程調整を自動化する
体験の日程は、ミーティングリンクで予約を受けられます。カレンダーとの連携により、スタッフの空き時間から予約を受け付ける仕組みです(HubSpot公式のミーティングツールの案内)。ただし、ミーティングリンクが見ているのは、連携したカレンダーの空き状況です。教室の空き、講師の担当コマ、レッスンの定員といった、授業側の資源の管理は、ミーティングリンクの役割ではありません。授業の枠そのものは、スクール側の予約システムで管理する形になります。その場合は、予約システムの予約結果をHubSpotに反映する形を検討します。
体験後の追客をパイプラインで見える化する
体験後の状態は、取引(ディール)のパイプラインで管理します。
| ステージ |
内容 |
次の動き |
| 体験申込 |
フォーム送信 |
日程の確定 |
| 体験予約済み |
日程が決まった |
リマインドの送付 |
| 体験済み |
体験を受けた |
当日〜翌日のお礼と感想の確認 |
| 検討中 |
入会を検討している |
検討理由に応じた連絡 |
| 入会手続き中 |
入会の意思あり |
書類・支払いの案内 |
| 入会 |
手続き完了 |
入会後のフォローへ |
| 見送り |
入会しなかった |
理由の記録 |
「検討中」のなかで、理由(料金、時間、家族の相談、他校との比較)を選択式で持つと、追客の内容を出し分けられます。パイプラインの作り方はHubSpot公式の案内にあります。営業プロセスの見える化は営業プロセスの可視化の解説も参考になります。
連絡のタイミングをワークフローで漏らさない
体験の前後の連絡は、ワークフローで自動化できます。ワークフローはProfessionalまたはEnterpriseのサブスクリプションで利用でき、メール送信、タスク作成、担当者への通知などを組み合わせられます(HubSpot公式のワークフローの案内)。
- 体験の前日:リマインドのメール
- 体験の翌日:お礼のメールと、感想を聞くフォームの案内
- 体験の3日後:連絡がなければ、担当者に電話のタスクを作成
- 体験の2週間後:検討中の方への、状況確認の案内
自動送信メールの利用には、Marketing HubのProfessionalまたはEnterpriseが必要です(Create and send marketing emails)。追客メールの設計はリードナーチャリングの設計と実践にまとめています。
業態別の使い方:プログラミング・オンライン・資格スクール
英会話の設計をベースに、他の業態では、設計のどこが変わるかを見ていきます。
プログラミングスクール:説明会から受講申込までを育てる
プログラミングスクールでは、最初の接点が「説明会」になることが多く、そのあとに、カリキュラムや転職・副業への見通しについて、検討を重ねる人が多くなります。
- 説明会の集客:申込フォームを作り、参加者と欠席者を分けて記録する。オンラインの場合は、会議ツールとの連携で参加状況を取り込む方法がある(Zoom/Teams連携の解説)
- 説明会のあと:参加者には受講申込への案内、欠席者には録画や次回の案内を送り分ける
- 卒業生への配信:卒業後の学習のヒント、新講座の案内、コミュニティの案内を、セグメントで送る
学習の目的(転職・副業・業務での活用)を選択式で持つと、案内の内容を出し分けられます。
オンラインスクール:無料講座から入って、継続してもらう
オンラインスクールは、無料講座や体験版で接点をもち、有料会員へ移行してもらう形が多いです。そして、会員になったあとの継続率が、事業の成否を左右します。
- 無料講座からの育成:講座の視聴や登録の状況に応じて、段階的にメールを送る。ただし、視聴の詳細な行動データは、動画配信や学習のプラットフォーム側にあるため、HubSpotに取り込む連携が必要
- 会員への継続案内:入会後のメールを、時期(1か月目、3か月目など)に応じて送る
- 継続の兆候を拾う:ログインや学習の進み具合のデータをHubSpotに連携できれば、動きが鈍っている会員を拾って声かけする運用が可能。連携ができなければ、担当者が定期的に確認する運用で代替する
継続率の向上の考え方は、サブスクリプション型の事業に共通します。サブスクリプション解約防止の施策設計も参考になります。
資格スクール・社会人講座:資料請求から無料体験、受講申込へ
資格スクールは、試験日というゴールが決まっているため、逆算した追客が効きます。
- 資料請求:目指す資格と受験予定時期を選択式で聞く
- 無料体験:体験後に、試験日までの期間に応じた学習計画の案内を送る
- 受験時期が近い方・遠い方で、配信内容を変える(アクティブなセグメントで自動的に振り分ける。HubSpot公式のセグメントの案内)
試験日や受験予定時期は、日付のプロパティで持つと、ワークフローで起点にできます。

入会後のフォローと更新案内
入会したあとも、HubSpotで関係を維持します。ただし、ここでの役割は「授業の運営」ではなく、学習を続けたくなる関係づくりと、更新・継続の案内です。
入会後のフォローの時点を決める
| 時点 |
連絡の例 |
| 入会直後 |
利用開始の案内、よくある質問 |
| 1か月後 |
学習の状況の確認、困りごとの聞き取り |
| 3か月後 |
継続のお礼、次のステップの案内 |
| 更新の2か月前 |
更新・継続の案内 |
| 更新の1か月前 |
再案内、担当者からの連絡 |
更新日や契約期間は、日付プロパティで持ち、ワークフローの起点にします。
問い合わせはチケットで受ける
入会後の質問や、手続きの相談は、チケットとして管理できます。HubSpotのチケットは、フォームやメールなどから作成でき、パイプラインで状態を追えます(Create and respond to tickets in help desk)。ヘルプデスクの機能はService HubのProfessional以上が前提です。
契約に関する注意
語学教室は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」の対象になるサービスの一つです。契約期間が2か月を超え、総額が5万円を超える場合が対象で、書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができます(消費者庁 特定継続的役務提供)。契約の書面交付や、クーリング・オフの案内が必要になる場合があります。HubSpotは、これらの書面を作成・保管する専用の仕組みではないため、契約書類の運用は別に整える必要があります。対象となる範囲は、サービス内容や契約形態によって変わるので、専門家や所管の案内で確認してください。
HubSpotでできること・専用システムに任せること
スクールの業務には、HubSpotで扱えるものと、扱えないものがはっきりあります。授業管理・受講管理までは、HubSpotでは難しいというのが、この記事の大事な前提です。
| 領域 |
HubSpotで管理できる |
専用システムに任せる |
| 体験・説明会・資料請求の申込 |
○ |
― |
| 体験後の追客・入会までの進捗 |
○(取引パイプライン) |
― |
| 入会後のフォロー・更新案内 |
○ |
― |
| 卒業生・会員向けの配信 |
○ |
― |
| 問い合わせの管理 |
○(チケット) |
― |
| 時間割・レッスン枠の管理 |
✕ |
予約・スケジュール管理システム |
| 出欠の記録 |
✕ |
出欠管理・受講管理システム |
| 教材の配信・学習の進捗・テスト |
✕ |
学習管理システム(LMS) |
| 講師のシフト・給与 |
✕ |
シフト・給与システム |
| 月謝の請求・決済 |
△(取引の記録まで) |
決済・請求システム |
「会員が何回授業に出たか」「カリキュラムのどこまで進んだか」は、受講管理システムやLMSのデータです。この情報をHubSpotで活用したい場合は、連携する形が現実的ですが、連携の可否や範囲は、使っているシステムによって異なります。連携ができなくても、入会までの追客と、更新の案内だけで、HubSpotが担う価値は十分にあります。
小さく始める進め方
最初の一歩:申込フォームとパイプライン
体験や説明会の申込フォームと、体験後の追客パイプラインを作ります。過去の申込者は、インポートで取り込みます(インポート機能の解説)。ここまでで、「誰が、どこで止まっているか」が見えるようになります。
次の一歩:体験前後の連絡を自動化する
リマインド、お礼、未連絡者のタスク化をワークフローで設定します。
その次:入会後のフォローと更新案内
追客が安定したら、入会後のフォローと更新案内を加えます。LINEで連絡を取る運用の場合は、HubSpotとLINE公式アカウントの連携も確認してください。
正直な限界
追客の自動化で、入会者が自動的に増えるわけではありません。体験の内容そのものや、料金・カリキュラムの魅力が、入会の最大の要因です。HubSpotが助けられるのは、入会を迷っている人へ、適切な時期に、適切な連絡が届く部分です。
導入支援は、単なるコストではなく、追客と継続の土台をつくる投資だと考えています。企業様によって最適な形は異なります。まずは、体験者のうち、体験後に連絡が止まっている人がどのくらいいるかを、数えてみるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 出欠や時間割もHubSpotで管理できますか
向いていません。時間割・レッスン枠・出欠は、予約・受講管理の専用システムで管理し、HubSpotには追客と入会後の関係維持に必要な情報だけを持たせるのが現実的です。
Q2. 小規模なスクールでも導入する意味はありますか
あります。体験者が月に数十人でも、「誰にいつ連絡したか」が人によってバラバラだと、連絡漏れが起きます。まずは申込フォームと、体験後のパイプラインだけで始められます。
Q3. 受講管理システムとHubSpotは、どちらを正にすればよいですか
入会前の追客と更新案内の情報はHubSpot、授業と受講の実績は受講管理システムというように、役割で分けるのが基本です。同じ項目を両方に持つと、更新がずれたときに判断できなくなります。
Q4. LINEで連絡している場合も使えますか
使えます。ただし、LINEでのやり取りが自動的にHubSpotへ記録されるわけではありません。連携の方法は使うツールによって異なるため、まずは申込と体験の履歴をHubSpotに残すところから始めてください。
まとめ
社会人向けスクールのHubSpot活用は、体験から入会までの追客と、入会後の関係維持に絞って設計するのが基本です。
- 体験後の進捗は、取引パイプラインで見える化する。 止まっている人を一覧で見つけられます
- 連絡のタイミングは、ワークフローで漏らさない。 自動化は体験前後の連絡から始めます
- 時間割・出欠・LMSは専用システムに任せる。 HubSpotは追客と更新案内に集中させます
最初の一歩は、体験後に連絡が止まっている人の数を数えることです。自社の運営への当てはめ方を検討したい場合は、StartLinkの無料相談でご相談ください。現状の運用をうかがったうえで、設計の方向性をご提案します。
業界別のHubSpot活用の全体像は、業界別ガイドでも紹介しています。