製造業のHubSpot活用法|展示会・代理店・技術営業の案件管理をCRMで一元化

  • 2026年2月23日
  • 最終更新: 2026年10月20日
HubSpot Marketing Hubメール一覧画面
この記事の結論

製造業のHubSpot活用とは、展示会で集めた名刺、代理店経由の案件、技術検討から受注まで長引く案件の3つを、コンタクト・会社・取引の関連付けで1つのCRMにまとめ、フォローと進捗を人ではなく仕組みで管理することです。最初に作るのは「展示会名」を持つコンタクトプロパティと、受注確度を設定した製造業向けの取引パイプラインの2つです。

ブログ目次


製造業のHubSpot活用とは、展示会で集めた名刺、代理店経由の案件、技術検討から受注まで長引く案件の3つを、コンタクト・会社・取引の関連付けで1つのCRMにまとめ、フォローと進捗を人ではなく仕組みで管理することです。最初に作るのは「展示会名」を持つコンタクトプロパティと、受注確度を設定した製造業向けの取引パイプラインの2つです。

「展示会で名刺交換した見込み客のフォローが属人化している」「代理店ごとの案件進捗がスプレッドシートに散在して全体把握ができない」「技術営業の提案プロセスが長く、どこでボトルネックが生まれているかわからない」——製造業ならではの営業課題を抱えている企業は多く見られます。

製造業におけるHubSpot活用とは、展示会管理・代理店(販売パートナー)管理・技術営業の長期案件管理といった製造業特有のビジネスプロセスをCRMで一元管理・自動化し、営業の生産性と受注率を高めていくことです。

この記事では、製造業の企業がHubSpotを導入する際の設計思想と、具体的な活用パターンを解説します。この分野の体系的な情報は業界別HubSpot活用ガイドでまとめています。

本記事は「カスタマーサクセス部門のHubSpot活用法|オンボーディング・ヘルススコア・解約防止」シリーズの一部です。
本記事はHubSpotゴールドパートナーのStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。


この記事でわかること

製造業特有の営業課題を抱える方に向けて、HubSpotで何をどう設計すればよいかを整理しています。

  • 製造業に適したHubSpotの設計ポイント — スプレッドシート管理の限界と、CRMで一元管理する意義を整理します。
  • 展示会リード管理の仕組み化 — 名刺のインポートからフォローの自動化、展示会ごとのROI分析までの流れを解説します。
  • 代理店(販売パートナー)管理の方法 — 直販と代理店経由が混在するチャネル構造を、会社オブジェクトとパイプラインで可視化する方法です。
  • 技術営業・長期案件のパイプライン設計 — ステージ・受注確度・定義・必須プロパティの4要素で設計する方法を、製造業向けの例とともに紹介します。
  • 導入の進め方と向かないケース — スモールスタートでの進め方と、HubSpotの守備範囲外となる領域も率直に整理します。

展示会・代理店・長期案件の管理に課題を感じている製造業の営業企画・マーケティング・経営層の方に向けて書いています。最後まで読むと、自社に合ったHubSpot設計の全体像と、最初の一歩として何から始めるべきかがわかります。


製造業の営業課題とHubSpotの対応

製造業の営業プロセスには、他業種とは異なる特有の課題があります。展示会や代理店といったチャネルの多さ、受注までのリードタイムの長さ、技術要件を伴う提案の複雑さが、属人化した管理を生みやすい土壌になっています。

スプレッドシート管理の限界

製造業の課題 スプレッドシート管理の限界 HubSpotでの解決策
展示会リードの管理 名刺がExcelに手入力、フォローが属人化 マーケティングイベント + シーケンスで自動フォロー
代理店管理 代理店ごとにExcelファイルが分散 会社オブジェクトのセグメント + パイプラインで可視化
長期案件の追跡 長期化する案件がスプレッドシートで埋もれる パイプライン + タスクで漏れなく追跡
技術問い合わせ メール + 電話の記録が個人に閉じている アクティビティログで全員が把握可能
製品ラインナップ管理 カタログが古い、バージョン管理が困難 Content Hub + ドキュメント管理

スプレッドシートで展示会や代理店の情報を管理されている企業様は多く見られます。顧客リストと担当者マスターに別々の情報が入って差分が起きてしまう——このような状態は、HubSpotのリレーションデータベース(コンタクト・会社・取引などが関連付けられる構造)で整理して解消できます。

CRMを「顧客名簿」ではなく「事業成長のエンジン」にする

HubSpotの価値は、次の3つに集約されます。

  • 一元管理
  • 自動化
  • 可視化

コンタクト・会社・取引・チケットがひとつのデータベースで紐づくため、展示会で獲得したリードがどの取引につながり、どの代理店経由で受注したかまでを一気通貫で追えます。

CRMを単なる顧客名簿ではなく、営業プロセスの標準化と経営判断の基盤として使う、という視点がポイントになってきます。

なお、他のCRMの利用経験がある方は、HubSpotの「取引」を商談、「パイプライン」をセールスプロセスと読み替えると理解しやすいかと思います。


展示会リード管理の仕組み化

製造業にとって展示会は主要なリード獲得チャネルの一つです。獲得した名刺を営業個人の裁量に任せず、組織としてフォローできる仕組みをHubSpotで構築していきます。

リレーションデータベースの設計

展示会管理では、次のようなオブジェクト同士を関連付けて設計します。

  • コンタクト(担当者マスター)→ 会社(取引先マスター):名刺の人物と所属企業を紐付けます
  • マーケティングイベント(展示会ごと)→ 参加したコンタクトと関連付けます
  • キャンペーン → 年度内の複数展示会を横断で集計します
  • 取引 → イベント経由で創出された商談を管理します

この構造にしておくと、「この展示会で誰と会い、その後どの商談につながったか」をすべて遡れるようになります。HubSpot以外のリレーションデータベースを持つCRMでも同様の考え方は使えますが、本記事ではHubSpotでの実装を前提に説明していきます。

次の図は、コンタクト・会社・取引などオブジェクト同士の関連付けを整理した設計図の例です。展示会管理でも、まずこの形で「何を何に紐付けるか」を決めます。

HubSpotのオブジェクト間リレーションを示したデータモデル設計図

展示会後のフォローフロー

  1. 名刺データのインポート:展示会終了後、名刺管理ツールやCSVからコンタクトをインポートします
  2. マーケティングイベントへの紐付け:インポートしたコンタクトを、該当展示会のマーケティングイベントに関連付けます
  3. シーケンスでフォローメールを送信:最大3通程度のフォローメール(お礼→資料送付→商談打診)をテンプレート化して送ります
  4. ホットリードの抽出:メール開封・リンククリック・資料ページ閲覧などの行動をスコアリングでキャッチします
  5. 営業へのトス:一定スコア以上のリードをインサイドセールス/フィールドセールスにアサインします

以下の画面は、展示会経由で取り込んだコンタクトを一覧で管理しているイメージです。Eメールや電話番号の列を並べて、フォロー対象を確認できます。

コンタクト一覧(Eメール・電話列表示)

展示会リードの設定例(プロパティ・イベント・ワークフロー)

先に作るものを決めておくと、名刺インポートの当日に迷いません。次の表は、展示会管理で最初に用意するプロパティの例です。作成は、設定(歯車アイコン)> プロパティ > オブジェクトを選択 >「プロパティを作成」から行います(HubSpot公式:プロパティの作成と編集)。

対象オブジェクト プロパティ名(例) 入力形式と選択肢の例
コンタクト 展示会名(exhibition_name) ドロップダウン:開催ごとに選択肢を追加(「展示会名+開催回」の形式)
コンタクト 名刺交換日 日付:フォロー期限の起点に使う
コンタクト 関心製品カテゴリ 複数チェックボックス:自社の製品分類と同じ粒度
取引 製品カテゴリ ドロップダウン:ステージ「引き合い」の必須入力にする
取引 受注経路 ドロップダウン:「展示会」「代理店」「Web問い合わせ」「既存顧客紹介」

展示会そのものは、マーケティング > イベントの「マーケティングイベントを作成」で開催ごとに登録します。登録済みのイベントには、CSVインポートまたはワークフローのアクション「Add participant to marketing event」で参加者を紐付けられます(コンタクトのレコード画面から直接は紐付けられません)。ワークフローはProfessional以上、キャンペーンとの関連付けもMarketing Hub Professional以上が前提です(HubSpot公式:マーケティングイベントの使用)。

名刺インポート後に動かすワークフローの組み立て例は次のとおりです。

  1. 開始条件:コンタクトの「展示会名」が「いずれかの値」に一致、かつ「名刺交換日」が既知
  2. アクション1:コンタクト担当者を、会社の担当営業に合わせて設定する
  3. アクション2:「タスクを作成」で、期限を名刺交換日から2営業日後にして「お礼メール送付」を割り当てる
  4. アクション3:シーケンスへの登録(ワークフローからの登録はSales HubまたはService HubのEnterpriseが対象。Professionalの場合はシーケンスの自動化タブから登録条件を設定します)

シーケンスのワークフロー登録の条件はHubSpot公式:ワークフローによるシーケンス登録で確認できます。

展示会ROIの分析

キャンペーン機能を使うと、展示会ごとのROIを定量的に分析できます。

指標 計測方法
リード獲得数 マーケティングイベントの関連コンタクト数
商談創出数 イベント経由の取引作成数
商談金額 イベント経由の取引金額合計
受注件数・金額 イベント経由で受注した取引
CPA(獲得単価) 展示会費用 ÷ リード獲得数
商談化率 商談数 ÷ リード数

リード→MQL→商談→受注というファネルで各展示会を評価したり、展示会経由で創出された取引金額と実際の受注額を突き合わせる収益アトリビューションが可能になります。「なんとなく毎年出ている」展示会を、投資対効果で判断できるようになるのが大きな変化です。

以下の画面は、デモ環境の展示会ダッシュボードです。展示会ごとにリード数・商談創出数・商談金額・成約数を集計できます。

デモ環境の展示会ダッシュボード。展示会ごとにリード数・商談創出数・商談金額・成約数を集計できます。
デモ環境の展示会ダッシュボード。展示会ごとにリード数・商談創出数・商談金額・成約数を集計できます。

デモ環境の展示会ダッシュボード。展示会ごとにリード数・商談創出数・商談金額・成約数を集計できます。


代理店(販売パートナー)管理

製造業では、直販だけでなく代理店経由の販売チャネルを持つ企業が多くあります。代理店ごとの案件進捗や実績が担当者のExcelに散在していると、本部から全体が見えず、チャネル別の戦略判断も難しくなります。ここでは代理店の情報をHubSpotで一元管理する方法を解説します。

設計方針

  1. 会社オブジェクトの分類:プロパティ「会社タイプ」で「直販顧客」「代理店」「代理店経由顧客」を分類します
  2. 代理店専用パイプライン:代理店経由の案件を管理する専用パイプラインを作成します
  3. 代理店との関連付け:代理店経由の取引に、代理店の会社レコードを関連付けます

会社タイプで分類しておくと、直販と代理店経由を分けたレポート集計ができ、チャネル別の売上構成も把握しやすくなります。

代理店管理のプロパティ設計例

対象 プロパティ名(例) 使い方
会社 会社タイプ(company_type) 「直販顧客」「代理店」「代理店経由顧客」。代理店の一覧ビューとレポートの絞り込み条件にする
会社 代理店ランク ドロップダウン:A/B/C。取扱実績に応じて四半期ごとに見直す
取引 経由代理店 会社への関連付け(ラベル「経由代理店」)。取引レコードで代理店を一目で確認
取引 エンドユーザー 会社への関連付け(ラベル「エンドユーザー」)。代理店とエンドユーザーを同じ取引に紐付ける

関連付けにラベルを付けて「経由代理店」と「エンドユーザー」を1つの取引に両方持たせると、同じ会社が別の取引では代理店、別の取引ではエンドユーザーになる場合も表現できます。

代理店パイプラインの設計例

代理店経由の案件は、例えば「引き合い → 技術検討 → 見積もり提出 → 代理店内承認 → エンドユーザー承認 → 受注 → 納品」のようなステージ構成が考えられます。

製造業の場合、代理店とエンドユーザーの両方の承認プロセスがあるため、一般的なB2Bパイプラインよりステージが多くなる傾向があります。どこまでを一つのパイプラインに含めるかは企業によって異なるので、自社の商流に合わせた設計がポイントになってきます。

代理店別レポート

ダッシュボードで代理店ごとの実績を可視化します。

見たい指標 集計の切り口
案件数・金額 代理店別の取引数と金額の合計
受注率 代理店別の受注取引 ÷ 全取引
リードタイム 引き合い→受注の平均日数
月次推移 代理店別の取引創出・受注の時系列

代理店別の数字が見えるようになると、どの代理店にどれだけ案件を流すべきか、フォローが必要な代理店はどこか、という判断が感覚ではなくデータでできるようになります。


技術営業の長期案件パイプライン設計

製造業の案件は、初回接点から受注まで長期化するケースが珍しくありません。技術検討や試作を挟む分だけプロセスも複雑になり、長期案件を漏れなく管理するパイプライン設計が要点になります。商社・代理店・エンドユーザーの3層をどう持つかというデータ構造は製造業のHubSpotデータ設計で整理しています。

パイプライン設計の4要素

パイプラインは「なんとなくステージを並べる」のではなく、4つの要素で設計するのがおすすめです。

要素 内容
取引ステージ 受注率が変化するポイントでステージを分けます
受注確度 各ステージの受注確率を設定し、加重金額でフォーキャストを出します
ステージ定義 何をもってそのステージとするかを社内で明文化します
必須入力プロパティ ステージ移行時の必須入力を決め、データ品質を担保します

例えば「1,000万円の案件を3件持っています」という報告があったとしても、すべてが「引き合い」ステージなら、受注確度を掛け合わせたフォーキャストはごくわずかです。ステージの定義が曖昧だとこの見極めができないので、マネージャーやトッププレイヤーの知見を集めて、集合知としてパイプラインに落とし込む設計が重要になってきます。

推奨パイプライン設計(製造業向け)

製造業の技術営業を想定した設計例です。

ステージ 定義 受注確度の目安 必須入力プロパティ
引き合い 顧客から技術的な相談・問い合わせを受けた 5% 会社名、製品カテゴリ
ヒアリング 技術要件・仕様のヒアリング完了 10% 技術要件、納期希望
技術検討 社内で技術的な実現可能性を検討中 20% 技術検討結果
試作・サンプル 試作品またはサンプルを提供 35% サンプル提出日
見積もり提出 正式見積書を提出 50% 見積金額、見積有効期限
顧客内検討 顧客側で社内承認プロセスが進行中 70% 競合情報、決裁者
内示 受注の内示を受けた 85% 予定納期
受注・契約 正式受注・契約締結 受注確定 受注理由、受注金額確定
失注 案件を失注した 0% 失注理由(必須)

自社に最適なパイプラインを設計するというところが要点になるのですが、製造業の場合は「試作・サンプル」ステージの有無や「技術検討」の位置づけが企業によって大きく異なります。自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズしてください。

パイプラインを作る手順(画面の場所)

  1. 設定(歯車アイコン)> データ管理 > オブジェクト >「取引」>「パイプライン」タブを開き、「パイプラインを作成」から「最初から作成」を選びます
  2. パイプライン名を「技術営業」などにして、上の表の順にステージを追加します。各ステージの「取引確率」で5%・10%・20%などの確率を設定します
  3. 「受注」と「失注」のステージを必ず含めます(含めないと売上レポートで正しく集計されません)
  4. ステージの「条件付きロジックルール」で「ルールを追加」を押し、該当ステージの必須プロパティ(例:「見積もり提出」では見積金額と見積有効期限)にチェックを入れます
  5. 「パイプラインルール」タブで、ステージのスキップや逆戻りを制限します(編集にはスーパー管理者権限が必要で、ワークフローやAPIによる更新は制限の対象外です)

この手順の根拠は、HubSpot公式のオブジェクトのパイプラインの設定と管理とパイプラインルールの設定です。パイプラインルールはProfessional以上が対象です。

製造業のパイプライン運用でよくある失敗と回避策

よくある失敗 起きること 回避策
ステージを細かくしすぎる(15段階など) 入力が面倒になり、ステージが更新されない 確率が変わる地点だけでステージを分け、8〜9段階に収める
案件金額が空欄のまま 加重金額のフォーキャストが出ない 「引き合い」の時点では概算金額、「見積もり提出」で確定金額を必須にする
試作ステージの定義が曖昧 サンプル出荷後の案件が「技術検討」に残る 「サンプル提出日」が入力されたら「試作・サンプル」に進める、とステージ定義に明記する
失注理由を自由入力にする 集計できず、改善活動に使えない 失注理由をドロップダウンにして、ステージ「失注」で必須にする

ステージの数や確率は、自社の過去の受注実績から決めるのが基本です。過去の案件を一覧に出し、各ステージ到達時点で最終的に何%が受注になったかを見て、確率を調整してください。

失注分析と掘り起こしの設計

失注理由をカテゴリ分類して、パターンを分析します。

失注理由カテゴリ 改善アクション
価格 原価構造の見直し、価値提案の強化
技術仕様 製品開発チームへのフィードバック
納期 生産計画の最適化
競合他社 競合分析、差別化ポイントの強化
予算凍結 中長期のナーチャリング対象に移行

失注分析ができるようになると、例えば「技術仕様」での失注が多いなら製品開発チームにフィードバックできるので、営業とマーケ、さらには開発部門との連携がしやすくなります。

また、失注したリードをそのまま放置しない設計も作っておきたいところです。「予算凍結」や「時期」といった将来再提案できる理由のものは、ライフサイクルステージを一度クリアしてナーチャリング対象に戻す導線を用意します。失注=終わりではなく、検討サイクルの一地点として捉えると、長期リードタイムの製造業ならではの商機を取りこぼしにくくなります。


学校・自治体向け製品の営業管理(黒板・教育設備メーカーの例)

黒板や教育設備のように、学校や自治体が購入者になる製品では、引合から納入まで年度の予算や調達の手順に沿って動きます。ここでは、そうした営業を管理する場合の考え方を整理します。

学校・自治体ごとに引合・見積・商談を追う

学校や自治体を会社レコードとして登録し、引合ごとに取引を作ります。取引には、対象の施設、提案する製品、見積の提出状況、先方の検討時期を残し、担当者が変わっても経緯をたどれるようにします。年度の切り替わりに近づいたら、前年度に検討していた案件を一覧で確認し、再提案の対象を選ぶ運用が考えられます。

教育現場の関係者との接点を記録する

校長、事務担当、教育委員会の担当者など、案件に関わる人は複数います。コンタクトとして役割を区別して登録し、訪問やデモ、説明の履歴を活動に残します。展示会や教育系のイベントで得た名刺も、同じ会社レコードに関連付ければ、接点の流れが分かります。

HubSpotでできること・専用システムに任せること

領域 HubSpotで管理できる 専用システムに任せる
営業 学校・自治体別の引合、見積、商談履歴、関係者との接点 入札書類の作成
受注後 納入後のフォロー、次回提案の時期の管理 生産管理、製造指示

入札書類の作成や受注後の生産管理は、入札管理システム・生産管理システムの領域で、HubSpotは向きません。HubSpotには受注までの案件と関係を置き、入札書類と生産は専用システムで扱う分担にします。


製品カタログ・技術資料のコンテンツ管理

製造業では、製品カタログ、技術仕様書、導入事例、CADデータなど、多くの技術資料を管理する必要があります。営業が毎回メールに添付して送る運用だと、最新版の管理もダウンロード履歴の把握もできません。

Content Hubでの製品情報の発信

  • 製品ページ:Content Hubで製品ごとのWebページを作成します。HubDBを使えば、製品データベースから動的にページを生成できます
  • 技術ブログ:技術ブログで専門性を発信し、検索からの流入も狙えます

製品ページや技術ブログの更新を営業・マーケティング部門で行えるため、更新の依頼待ちが減ります。

資料ダウンロードをリード獲得につなげる

フォーム付きのランディングページで技術資料をダウンロード可能にすると、資料を求める見込み客のリード情報を自動で取得できます。ダウンロードした資料の種類はコンタクトのアクティビティとして蓄積されるので、「どの製品分野に関心があるか」を営業が事前に把握したうえで商談に臨めます。

展示会リード・代理店案件・資料ダウンロード——これらすべてが同じCRM上のコンタクトに蓄積されるのが、HubSpotで一気通貫に管理する意味です。


導入の進め方:スモールスタートと段階的拡張

「展示会管理も代理店管理もパイプラインも全部やる」と考えると、導入がなかなか進みません。効果が出やすいところから始めて、段階的に広げるのがおすすめです。

支援の進め方(要件整理から定着まで)

StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、150社以上のHubSpot支援に関わってきました。製造業の導入でも、次の5つの工程を、スモールスタートで始めて準委任で伴走する形で進めます(HubSpot導入・構築支援)。

工程 製造業で決めること 成果物の例
1. 現状整理・要件定義 展示会・代理店・Web問い合わせの流入元、案件の持ち方、既存のExcel・名刺管理ツール 業務フロー図、プロパティ一覧案
2. 設計・構築 パイプラインのステージと確率、必須プロパティ、会社タイプ、ワークフロー HubSpot設定、設計書
3. データ移行 会社名の表記統一、重複排除、名刺データのインポート 移行用CSV、突合結果
4. テスト・検証 テストデータでワークフローとレポートが想定どおり動くか確認 確認シート
5. 定着・運用改善 営業会議でのダッシュボード利用、入力ルールの見直し、Breezeによる活動要約などAI活用 運用ルール、改善リスト

基幹システムとの連携や受注後の請求を自動化したい場合は、自社開発の連携アプリで標準連携の足りない部分を補う進め方もあります(例:HubSpotの取引から会計への請求連携はSync for freee)。企業様によって最適な形は異なります。まず1つの工程から小さく始めて、効果を見ながら広げてください。

フェーズ別の導入ステップ例

フェーズ やること ねらい
第1段階 コンタクト・会社の一元化と展示会リードのフォロー自動化 属人化の解消・フォロー漏れの防止
第2段階 直販・代理店パイプラインの設計と必須プロパティの設定 案件の可視化とフォーキャストの精度向上
第3段階 ダッシュボードでのROI分析・失注分析・資料コンテンツ運用 データに基づく投資判断と部門間連携

まずは展示会リードのインポートとフォロー自動化のような、効果が出やすく運用も軽いところからトライして、社内で成果が見えてきた段階でパイプライン設計や代理店管理へ広げる進め方が現実的です。

入力を仕組みで担保する

「SFAにちゃんと入力してね」と言うだけでは、運用はなかなか回りません。ステージ移行時の必須入力プロパティを設定し、営業が何を記録すべきかをシステム側で決めてあげるのがポイントです。項目が少ない方が集中できるので、プロパティは必要最小限に絞るのがおすすめです。

こうしておくと、入力ルールが仕組みに埋め込まれるため、担当者が変わっても同じ品質で運用が回ります。新人にとっては「何を確認・入力すべきか」を教えてくれるツールにもなるので、人材育成の面でも副次的な効果があります。

インポート前のデータクレンジング

既存のExcelや名刺リストをそのまま取り込むと、同じ会社が「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC」のように複数の表記で登録されていたり、退職済みの担当者が残っていたりして、重複レコードの原因になります。

取り込む前に、次の作業を済ませておくと、その後の集計やフォローの精度が安定します。

  • 会社名の表記ゆれの統一
  • 重複の排除
  • 不要な担当者の削除

データの整備には想定より時間がかかるため、スケジュールに余裕を持たせておきます。

移行期は並行運用と入力サポートを置く

いきなりExcelをやめるのではなく、次のように進める方法が現実的です。

  • 並行運用 ── 一定期間はExcelとHubSpotを並行して運用し、営業事務が入力を代行しながら、徐々に営業自身の入力へ移していきます
  • 会議資料の切り替え ── 営業会議の資料をHubSpotのダッシュボードに切り替え、「CRMに入力されていない案件は会議で扱わない」というルールを経営層から示すと、入力が定着しやすくなります

営業にとっては、自分の案件や受注予測が自動で見えるというメリットを先に実感してもらうことが、入力への抵抗を減らす近道です。


HubSpotが向かないケース・導入前の注意点

メリットだけでなく、守備範囲外の領域や運用上の注意点も率直に整理しておきます。

生産管理・在庫・原価計算は対象外

同じように「受注までをHubSpot、受注後を専用システム」で分ける考え方は、卸売業のCRM活用や建設業のCRM設計でも使っています。業種ごとの違いを比べたい場合は参考にしてください。

HubSpotはCRMであり、生産管理・在庫管理・原価計算・図面管理といった製造業の基幹業務は対象外です。

受注後の生産・出荷・請求はERPや生産管理システム側の領域になるため、次の役割分担の設計が必要になります。

  • 受注までの顧客・案件管理 ── HubSpot
  • 受注後 ── 基幹システム

運用が回らないと機能しません

ただし、どれだけ良い設計をしても、現場が入力しないとデータは蓄積されません。次のことを組み合わせるのが定着の近道です。

  • 前述の必須プロパティやパイプラインルール ── ステージの省略不可・逆行不可などで運用を支えます
  • 経営層がダッシュボードを見て判断する文化を作る

図面・仕様書などのファイルの扱い

図面や仕様書は、取引レコードにファイルを添付して案件と一緒に管理できます。ただし、図面そのものを体系的に管理する機能はないため、大量の図面や版数管理が必要な場合は、PLMなどの専用システムを別に用意し、HubSpotには営業が参照する案件情報を置く分担にします。


よくある質問

Q1. 製造業でHubSpotを導入する場合、どのプランから始めるべきですか?

まずは自社の営業プロセスに必要な機能(コンタクト管理、取引管理、パイプラインなど)が使える最小限のプランから始め、ワークフローやカスタムレポートといった自動化・分析機能が必要になった段階で上位プランへのアップグレードを検討するのがおすすめです。最初から全てを導入するより、使える機能を確認しながら段階的に広げる方が定着しやすいです。

Q2. 展示会の名刺データをHubSpotにどうやってインポートしますか?

名刺管理アプリ(Sansan、Eight等)からCSVでエクスポートし、HubSpotにインポートする方法が一般的です。インポート時は姓名を分割して登録すること、また既存のワークフローが意図せず発火しないかを事前に確認するのがポイントです。

Q3. 代理店にHubSpotのアカウントを共有できますか?

代理店に直接HubSpotアカウントを共有するのは、セキュリティ上おすすめしません。代わりに、カスタマーポータル機能で代理店専用の情報共有サイトを構築するか、フォーム経由で代理店から案件情報を受け取る仕組みを作るのが安全です。

Q4. 製品の型番や仕様をHubSpotで管理できますか?

カスタムプロパティを使って、型番・仕様・カテゴリなどの製品情報を取引やコンタクトに紐付けることができます。より本格的な製品マスター管理が必要な場合は、Enterpriseプランのカスタムオブジェクトで製品データベースを構築する方法もあります。

Q5. HubSpotと生産管理システムやERPは連携できますか?

HubSpotは受注までの顧客・案件管理を担うCRMなので、生産管理・在庫・請求など受注後の業務は基幹システム側で管理する設計になります。連携が必要な場合は、APIや連携ツールを使って受注データを基幹側へ受け渡す構成を検討してください。

Q6. 展示会のリードはいつ営業にトスすればよいですか?

名刺交換だけの段階では、まずシーケンスで2〜3通のフォローを行い、返信・資料閲覧・商談打診への反応があった時点で営業に引き渡すのが一般的です。トスの基準は「返信があった」「資料ページを2回以上閲覧した」のように、数えられる行動で決めておくと担当者ごとの判断のばらつきを避けられます。


まとめ

製造業のHubSpot活用は、展示会リード管理・代理店管理・技術営業の長期案件管理という3つの領域を中心に設計するのが効果的です。スプレッドシートに散在していた情報をリレーションデータベースで一元化し、フォローの自動化とパイプラインによる可視化で「属人化」を解消する——これが本記事の要点です。

CRMにデータが蓄積されるほど、展示会のROI分析や失注パターンの把握の精度が上がり、営業戦略の意思決定に活かせるようになります。

最初の一歩として、まずは次の3ステップから始めるのがおすすめです。

  1. 直近の展示会で獲得した名刺リストを、HubSpotのコンタクトとしてインポートする
  2. フォローメールの型(お礼→資料送付→商談打診)をシーケンスで作り、漏れなく送信できる状態にする
  3. 自社の営業プロセスを書き出し、直販用・代理店用それぞれのステージ案を作ってみる

CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのHubSpotゴールドパートナーのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。


あわせて読みたい

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkが、HubSpot導入・AI活用・CRM整備・業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け


株式会社StartLinkは、事業推進に関わる「販売促進」「DXによる業務効率化(ERP/CRM/SFA/MAの導入)」などのご相談を受け付けております。 サービスのプランについてのご相談/お見積もり依頼や、ノウハウのお問い合わせについては、無料のお問い合わせページより、お気軽にご連絡くださいませ。

関連キーワード:

サービス資料を無料DL

著者情報

7-1

今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。