部門別DXの進め方|起点部門の選び方・着手順序と業種別の成功パターン

  • 2026年3月11日
  • 最終更新: 2026年10月12日
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部門別DXの進め方とは、部門間で分かれた情報や手作業の引き継ぎを確認し、業務課題に合わせて起点部門と着手順序を決め、成果を全社へ広げていくことです。部門別DXでは、部門間で分かれている情報と手作業の引き継ぎを確認し、起点となる部門を選びます。商談データの一元化が優先課題なら、営業部門が起点の候補です。

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部門別DXの進め方とは、部門間で分かれた情報や手作業の引き継ぎを確認し、業務課題に合わせて起点部門と着手順序を決め、成果を全社へ広げていくことです。部門別DXでは、部門間で分かれている情報と手作業の引き継ぎを確認し、起点となる部門を選びます。商談データの一元化が優先課題なら、営業部門が起点の候補です。

ツールを導入した後も部門ごとにExcelで管理し、同じ数字が一致しない場合は、どこで情報を作成・更新し、誰が次の部門へ渡しているかをたどってください。業種や部門の名前から着手点を決める前に、この受け渡しを確認することが大切です。

部門別DXとは、営業・マーケティング・経理・人事といった部門や、製造業・不動産業などの業種ごとに、デジタル化の対象と順序を業務課題に合わせて決め、部門単位の成果を全社へ広げていく進め方です。

このカテゴリは、DX完全ガイドの一部です。バックオフィス全般のDXについてはバックオフィスDXガイド、業務効率化については業務効率化ガイドもご覧ください。


この記事でわかること

起点部門を選び、隣接部門へ広げるまでの判断を、共通の基準と業種別の業務課題に分けて説明します。自社で検討する際は、各節の「何を確認してから次へ進むか」を順に当てはめてください。

  • 起点部門を選ぶ3つの判断基準 — 経営判断に必要な情報、現状との比較方法、他部門への受け渡しを確認します。
  • 部門別DXの具体ステップ — 営業・マーケティング・カスタマーサクセス・経理・人事について、先に決める入力ルールと次へ進む条件を整理します。
  • 業種別DXの着手点 — 製造業・物流業・卸売業・不動産業・士業などで、顧客情報と業種固有の情報をどう扱うかを見ます。
  • 部門横断のBPRと横展開の順序 — 引き継ぎ時の転記や確認を見直し、コンタクトから請求までの流れを設計します。

全社一斉DXが頓挫しやすい理由と、部門単位で始める考え方

部門ごとに業務手順や使う情報が異なるまま全社の運用を決めると、同じ項目でも入力する人や更新する時点がそろわないことがあります。まず対象業務の始まりと終わりを定め、情報を受け取る部門まで含めて、現在の手順を確認してください。

Excel・スプレッドシート管理が部門間に残す分断

顧客リストを営業のExcel、請求情報を経理の会計ソフト、問い合わせ履歴を担当者のメールボックスで管理している場合は、同じ顧客に関する情報が部門ごとに分かれています。どの保存先を最新として扱うかが決まっていなければ、ツールを入れ替えても確認や転記の手順は残ります。

最初に、顧客情報が作られる場所、更新される場所、次の部門へ渡る場所を書き出してください。複数の場所で手入力している情報が見つかったら、誰が正本を更新するかを決めます。その情報を次の担当者が参照できるか確かめてから、入力先の統合や連携方法を検討します。

小さく始めて段階的に広げる

起点部門では、情報を集めるだけでなく、日々の更新と会議での利用まで確認します。隣接部門へ広げる順序は次のとおりです。

段階 やること 次へ進む目安
1. 単一部門のデータ一元化 起点部門の顧客・案件情報をCRMに集約する 担当者がExcelではなくCRMで日々の更新をしている
2. 部門内の可視化・自動化 ダッシュボードとワークフローで報告・通知を置き換える 会議でCRMのレポートをそのまま使っている
3. 隣接部門との連携 マーケティング・経理など前後の部門とデータをつなぐ 部門間の引き継ぎで転記が発生していない
4. 全社プロセスの統合 BPRで部門横断のプロセスを再設計する 経営指標を1つの画面で追える

次の段階へ進む前に、表の目安を実際の業務で確認してください。更新されない項目があれば入力ルールを、会議で使われないレポートがあれば表示する情報を見直します。引き継ぎに転記が残る場合は、渡す情報と更新責任を決めてから対象部門を増やします。

人ではなく仕組みで回る状態をゴールにする

担当者だけが入力の意味や引き継ぎ方を知っている状態では、担当が変わる際に運用を説明し直す必要があります。項目名、入力する時点、次の担当者が確認する場所を画面上の運用に反映してください。通知や引き継ぎを自動化する場合も、先に「何が起きたら誰に渡すか」を決めます。

新しい担当者がCRMの画面を見て、どの項目をいつ入力するか判断できるかが確認点です。迷う箇所があれば、説明資料だけで補わず、必須項目やステージ定義を見直してください。


どの部門から始めるか ── 3つの判断基準

候補部門を同じ基準で比べると、優先順位を説明しやすくなります。各部門について、経営判断に使う情報、現状との比較に使える記録、次の部門が必要とする情報を書き出してください。

判断基準 内容 推奨される最初の部門
経営インパクト 売上・利益に直結するデータが得られるか 営業部門
効果の可視化しやすさ Before/Afterを定量的に示せるか 営業・経理部門
横展開の波及力 成功体験が他部門への起爆剤になるか 営業部門

商談情報が経営判断と部門間の引き継ぎの両方で必要なら、営業を起点にする方法があります。一方、期限のある対応や経理の転記が優先課題なら、経理を先に検討します。表は候補を比べるための出発点とし、実際の業務で優先順位を決めてください。

経営インパクト:売上・利益に直結するデータが得られるか

営業部門では、受注額・受注件数・商談の進捗が経営判断の材料になります。ただし、情報を集める目的を決めないまま項目を増やすと、入力と利用の関係が曖昧になります。

候補部門ごとに「その情報が整うと、経営会議で何を判断できるか」を書き出してください。判断に使う情報と更新する担当者を結びつけられた部門を優先します。結びつけられない場合は、先に会議で必要な問いを明確にします。

効果の可視化しやすさと横展開の波及力

現状と導入後を比べるには、同じ定義で記録できる指標が必要です。営業なら商談の更新状況、経理なら転記や確認が発生する箇所など、取り組む業務に合う記録を選んでください。記録方法が途中で変わる場合は、単純に前後を比べず、定義の違いを確認します。

横展開については、起点部門の情報を次に使う部門を具体的に挙げます。営業の商談情報をマーケティングの施策評価や経理の請求処理に使いたいなら、各部門が必要とする項目と受け渡しの時点を確認してください。現状の記録と受け渡し先が決まった段階で、起点部門の運用設計へ進みます。

営業以外から始めたほうがよいケース

業種や企業の状況によっては、経理部門やバックオフィスから始める方が適切なケースもあります。判断の分かれ目を整理すると次のとおりです。

社内の状況 起点にする部門 最初に記録すること
電子帳簿保存法への対応が急務 経理部門 紙・PDFで保管している証憑の種類と保管場所
人手不足でバックオフィスが回らない バックオフィス(経理・人事) 定型作業ごとの担当者と月間の作業時間
売上見込みが担当者の頭の中にしかない 営業部門 進行中の商談の一覧と各案件の段階

複数の状況に当てはまる場合は、期限のある対応と日常業務の改善を分けて計画します。期限がある業務は必要な確認を先に進め、それ以外は現状を記録して起点部門の候補として比較してください。


営業部門のDX ── 属人的な営業を再現可能なプロセスに変える

営業DXでは、商談をどの段階として記録し、会議でどう使うかを先に決めます。入力がそろった後にレポートを使い、そこから改善する業務を選びます。

営業DXの5ステップ

営業DXは、以下の5ステップで進めます。

  1. CRM導入: 顧客情報・商談情報を一元管理(Excel・名刺管理からの移行)
  2. 商談プロセスの可視化: パイプライン管理で商談のステージ・進捗を見える化
  3. 営業レポートの自動化: 日報・週報をCRMのダッシュボードで代替
  4. データ分析: 受注率・商談期間・失注理由の分析で改善ポイントを特定
  5. 予測分析: 売上予測モデルの構築で先手の経営判断を実現

まず顧客・商談情報の更新先を決め、担当者によってステージの判断が異ならないか確認します。会議でレポートを開いても、案件の状態を確かめるために別の資料が必要なら、分析に進む前に入力項目と更新時点を見直してください。商談の状態をレポートから確認できるようになったら、停滞や失注の理由を検討します。営業DXの進め方では、CRM導入、商談管理のデジタル化、営業データの使い方を順に解説しています。

パイプラインは4つの要素で設計する

パイプラインは、営業担当者が同じ商談を同じ段階として扱えるように設計します。次の要素について、実際の商談を当てはめながら定義してください。

要素 内容 設計で決めること
取引ステージ 受注の見込みが変わる地点で区切った商談の段階 どの出来事が起きたら次の段階に進むか
受注確度 ステージごとの受注見込みの割合 自社の過去の受注実績に基づく各段階の見込み
ステージ定義 各ステージに入る条件の言語化 担当者によって判断がぶれない基準文
必須入力プロパティ ステージ移行時に入力を求める項目 経営レポートと次の担当者に必要な情報

HubSpotで利用できるパイプライン設定の内容は、公式のSet up and customize pipelinesを確認してください。自社では、まず商談が進んだと判断する出来事を言葉にし、その時点で次の担当者と経営レポートに必要な情報を選びます。項目やステージ数は企業様によって最適な形は異なります。トップ営業とマネージャーの判断基準を持ち寄り、実際の商談に当てはめて判断が分かれる箇所を修正してください。

失注理由を記録し、マーケティングへ戻す

失注理由は、担当者が選べる項目として定義し、判断に迷ったときの扱いも決めておきます。「価格」「競合他社」「製品機能」「時期」「社内決裁」などを使う場合は、それぞれ何を指すかを営業内でそろえてください。

集計した後は、理由ごとに次の担当を決めます。「時期」であれば再接触を検討する条件をマーケティングと確認し、「製品機能」であれば要望として共有する情報を決めます。理由が選ばれていても具体的な経緯が分からない場合は、分類を増やす前に記録方法を見直してください。


マーケティング・カスタマーサクセスのDX ── 営業とつながる顧客データで進める

営業の前後にある部門では、同じ顧客について何を引き継ぐかが判断の起点です。マーケティングから営業へ渡す条件と、受注後にカスタマーサクセスが受け取る情報を、それぞれ明確にします。

マーケティング部門は営業と連動させる

リード獲得から営業への引き渡しまでを見直す際は、施策の履歴と商談情報をどう結びつけるかを確認します。MA(マーケティングオートメーション)を検討する場合も、先にリードの状態と担当部門を定義してください。

営業と「どの状態になったら渡すか」「受け取った後に何を記録するか」をすり合わせます。引き渡し条件が決まっていなければ配信施策を広げる前に定義し、条件に合うリードが営業側で確認できるかを試してください。マーケティングDXの施策一覧では、施策の種類と営業へつなぐ進め方を確認できます。

ライフサイクルステージで部門の受け渡しを定義する

マーケティングと営業の境目を整理する方法の一つが、ライフサイクルステージです。HubSpotでの扱いは、公式のUse lifecycle stagesを確認してください。以下は、部門間で条件を話し合うための基本形です。

ステージ 担当部門 次の段階へ渡す条件の例
リード マーケティング 資料請求やメール登録で接点ができた
MQL マーケティング 検討度合いが高いと判断できる行動があった
SQL 営業 営業が接触し、商談化の可能性を確認できた
商談 営業 取引レコードが作成され、パイプラインで管理されている
顧客 カスタマーサクセス 受注し、契約・請求の手続きに入った

表の条件を自社で使う前に、各段階で確認する情報と更新する担当者を決めてください。失注後に再接触する場合も、誰が対象を選び、どの記録を見て連絡するかを定義します。営業とマーケティングが同じ顧客の状態を確認できたら、運用を広げます。

カスタマーサクセス部門 ── 顧客維持のデジタル化

受注後の引き継ぎでは、導入目的、顧客が気にしていた点、合意した内容をカスタマーサクセスの担当者が確認できるようにします。まず実際の引き継ぎをたどり、顧客に聞き直している情報があれば、営業での記録方法を見直してください。

個別対応だけでは支援の案内が行き届かない場合は、共通の案内を届けるテクタッチと、対象を絞ったロータッチを検討します。どの顧客にどの案内が必要かを顧客情報から判断できることを確かめてから、運用を広げてください。カスタマーサクセスDXの実践ガイドでは、支援方法の設計とCRMデータの使い方を紹介しています。


経理・人事のDX ── 二重入力をなくし、定型業務をクラウドへ移す

経理・人事では、同じ情報を受け取り直したり、別の場所へ入力し直したりしている業務を確認します。対象を選ぶ際は、手作業の量だけでなく、情報の正しさを誰が確認するかも決めてください。

経理部門:ペーパーレス化と月次決算の早期化

経理DXでは、証憑の保存と月次決算の手順を分けて確認します。受け取った書類がどこに保存され、どの情報を仕訳や請求に使うかをたどってください。会計ソフトやCRMとの連携を検討する前に、転記する情報と確認が必要な情報を区別します。

電子帳簿保存法への対応を起点にする場合は、証憑の受け取り経路ごとに現在の保存方法を整理し、自社で必要な要件を確認してください。保存方法を決めた後、入力や確認の手順を見直します。経理DXの実践ガイドでは、証憑管理と経理業務の見直し方を確認できます。

CRMと会計ソフトをつなぎ、見積・請求の転記をなくす

見積・請求の情報を会計ソフトへ渡す場合は、どの取引情報を使い、経理が何を確認してから処理するかを先に決めます。StartLinkは、freee会計向けのSync for freeeとマネーフォワード クラウド向けのSync for Money Forwardを提供しています。連携を検討する際は、自社の会計ソフトと扱いたい業務に合うかを確認してください。

会社レコードで取引先連携を確認する際は、連携カードに表示される取引先情報を確認してください。

次の画像は、HubSpotデモポータルの会社レコードとfreee取引先連携カード(Sync for freee)を示します。取引先として確認したい情報が、担当者の見る画面に表示されるかを検討する際の参考にしてください。

HubSpotデモポータルの会社レコードとfreee取引先連携カード(Sync for freee)

次の画面では、HubSpotの取引と連携カードの関係を確認できます。見積・取引先・請求に関する情報を、営業と経理がそれぞれどこで確認するか整理してください。

HubSpot取引画面(MoneyForward連携カード表示)

現在使っている会計ソフトがある場合は、その運用を前提に、転記したい情報と確認が必要な情報を洗い出します。会計ソフトをこれから選ぶ段階であれば、顧問税理士の対応や経理担当者の業務手順を確認し、その後にCRMとの連携方法を検討してください。

人事部門:HR Techの活用

人事部門では、入退社手続き・勤怠管理・給与計算などについて、申請する人、確認する人、記録する場所を整理します。SmartHR、ジョブカン、freee人事労務などのHR Techツールを検討する場合も、先に手作業が残る箇所を特定してください。

勤怠の集計と給与計算の確認が別々に行われているなら、受け渡す情報と確認責任を決めます。入退社手続きが課題なら、申請から完了までの状態を追えるかを先に確認します。対象業務を選んだ後に、必要なツールと運用を比較してください。人事DXの進め方では、HR Techの活用領域と導入手順を確認できます。


業種別DX①:製造業・物流業・卸売業・建設業

現場作業やモノの流れを伴う業種では、顧客・取引の情報と、設備・在庫・工事案件などの情報を区別して設計します。業種ごとに最初に確認することは次のとおりです。

業種 最初に確認すること
製造業 現在の判断に必要な情報がどこで途切れているか
物流業 配送・倉庫・荷主対応のどこで確認や入力が重なっているか
卸売業 発注の受け取り方・在庫の確認方法・取引先への回答方法
建設業 現場が記録する進捗と、バックオフィスが確認する原価・請求の情報

まず、既存の取引情報に項目を追加して表せるかを確認してください。取引に対して複数の明細や履歴を管理する必要がある場合は、データの関係を整理してから別の管理方法を検討します。

HubSpotのカスタムオブジェクトについては、公式のCreate custom objectsで利用条件や作成方法を確認してください。企業様によって最適な形は異なります。

製造業 ── スマートファクトリーへの道筋

製造業では、生産管理・品質管理・在庫管理のうち、現在の判断に必要な情報がどこで途切れているかを確認します。設備の状態を把握したいのか、受注見込みを生産計画に渡したいのかで、先に扱うデータは変わります。

受注生産型の営業情報を使う場合は、商談のどの段階の情報を生産側へ渡すかを決めてください。受け取る側が計画に使える状態で情報が更新されているかを確かめてから、対象を広げます。製造業DXとスマートファクトリーでは、工場のデジタル化を検討する領域を確認できます。受注・生産・品質管理のつながりを整理する際は、中小製造業DXの実践ガイド|受注・生産・品質管理のデジタル化ステップも参考にしてください。

物流業 ── サプライチェーン全体の最適化

物流業では、配送、倉庫、荷主対応のどこで情報の確認や入力が重なっているかを調べます。配送計画に必要な情報が不足している場合と、荷主との契約条件や問い合わせ履歴が分散している場合では、着手点が異なります。

荷主対応に課題があるなら、まず荷主情報と対応履歴の管理場所をそろえます。配送や倉庫の情報に課題があるなら、計画に使う項目と更新する時点を現場と確認します。その情報を次の担当者が利用できることを確かめてから、対象を広げてください。物流DXとサプライチェーン最適化では、物流業務のデジタル化を検討する領域を解説しています。

卸売業 ── 受発注・在庫・商流のデジタル化

卸売業では、発注の受け取り方、在庫の確認方法、取引先への回答方法を一続きの業務として確認します。FAXや電話による注文がある場合は、入力し直す箇所と、注文内容を確定する手順を先に整理してください。

電子化を検討する際は、取引先ごとに利用できる方法を確認します。電子化できる取引先では注文から確認までを試し、従来の方法が必要な取引先には受け取り後の入力ルールを決めます。両方の注文を同じ基準で扱えるようになってから、対象を広げてください。卸売業DXの進め方では、受発注・在庫・商流を見直す手順を確認できます。

建設業 ── 現場とバックオフィスをつなぐ案件・原価管理

建設業では、案件の進捗を現場が記録し、原価や請求に必要な情報をバックオフィスが確認する流れを整理します。どの時点の情報を経営判断に使うかによって、現場で入力すべき項目が変わります。

まず案件ごとに、現場が把握する情報と経理が必要とする情報を照らし合わせてください。現場で確認できない項目を入力必須にする前に、その情報を持つ担当者を確認します。入力した情報が次の部門で使えることを確かめてから、報告や集計の方法を決めてください。建設業DXの実践ガイドでは、現場とバックオフィスをつなぐ進め方を解説しています。


業種別DX②:不動産業・士業・小売・EC

契約や継続取引を扱う業種では、顧客ごとの履歴と、次に対応すべき時点を確認できるかが着手点になります。業種ごとに最初に確認することは次のとおりです。

  • 不動産業 ── 反響対応、物件情報、契約手続きのどこに課題があるか
  • 士業・専門サービス業 ── 顧問先とのやり取り、期限、書類の管理場所
  • 小売・多店舗 ── 店舗と本部が同じ指標を見ているか
  • EC ── 受注、在庫引き当て、会計計上の間で手入力や確認がある箇所

受託開発やSaaS事業の業務を検討する場合は、IT企業のDX実践ガイド|受託開発・SaaS事業のプロセス最適化で案件と継続取引の管理方法も確認してください。

不動産業 ── 物件管理と契約のデジタル化

不動産業では、反響対応、物件情報、契約手続きのどこに課題があるかを分けて確認します。電子契約を検討する場合は、対象となる取引と現在適用される要件を確認したうえで、既存の契約手順との違いを整理してください。

問い合わせへの対応状況が分からないなら、物件管理の見直しに先立ち、問い合わせを受ける場所と担当者への割り当て方法を確認します。対応履歴を追えるようになったら、物件情報や契約手続きとの受け渡しを検討してください。不動産業DXの実践ガイドでは、物件管理・契約電子化・VR内覧を検討する順序を確認できます。

士業・専門サービス業 ── 顧問先管理と書類電子化

士業では、顧問先とのやり取り、期限、書類の管理場所を確認します。担当者ごとに記録方法が異なる場合は、まず顧問先ごとに確認すべき履歴と、期限を更新する担当者を決めてください。

期限をCRMで管理するなら、何を基に期限を登録し、変更があったとき誰が更新するかを明確にします。通知を設定する前に、期限が正しく記録されているかを確認してください。担当者が不在でも対応状況を確認できるようになった段階で、タスク作成などの運用を検討します。士業・専門サービス業のDXガイドでは、顧問先管理と書類電子化の進め方を確認できます。

小売・多店舗 ── POS・CRM・在庫を統合して店舗運営を最適化する

小売・多店舗では、店舗と本部が同じ指標を見ているかを確認します。POS・在庫・顧客情報をつなぐ前に、本部が判断したいことと、その判断に必要な記録を店舗側とすり合わせてください。

運用ルールを確認しやすい店舗で、入力から本部での確認までを試します。記録の定義や更新時点が店舗によって異なる場合は、比較方法をそろえてから他店舗へ広げてください。小売・多店舗DXの実践ガイドでは、店舗情報を統合する順序と実装時の確認点を紹介しています。

EC ── 受注から在庫・会計までのバックオフィス連携

ECでは、受注、在庫引き当て、会計計上の間で、どの情報を手入力・確認しているかをたどります。出荷に関する問題が多い場合と、計上時の確認が課題の場合では、先に見直す区間が異なります。

問題が起きた注文をたどり、どこで情報が不足したかを確認してください。対象の区間で、次の担当者が必要な情報を受け取れるようにしてから、前後の業務との連携を検討します。EC事業者のバックオフィスDXでは、受注から在庫・会計までの連携の設計を解説しています。


業種別DX③:クリニック・介護・美容・教育

予約、利用、継続を扱う業種では、それぞれの記録を誰が何のために確認するかを決めます。業種ごとに最初に決めることは次のとおりです。

  • クリニック・歯科 ── 予約の受け付け、新患への対応、再来院の案内のうち、どの業務を見直すか
  • 介護 ── 現場の記録と、請求・加算管理に使う情報の対応
  • 美容・サロン ── 担当者が変わったときに情報が伝わらない場合の、引き継ぎに使う項目
  • 教育・スクール ── 問い合わせ、体験申込、受講、決済の記録を誰が確認するか

予約と来店体験を見直す場合は、ホテル・宿泊業DXの実践ガイド|予約・チェックイン・ゲスト体験のデジタル化や飲食業DXの実践ガイド|予約・在庫・顧客管理のデジタル化ステップもあわせてご覧ください。各記事では、予約情報を現場の対応につなぐ際の検討点を確認できます。

クリニック・歯科 ── 予約・カルテ・再来院導線の統合

クリニック・歯科では、予約の受け付け、新患への対応、再来院の案内のうち、どの業務を見直すかを先に決めます。患者情報を扱う方法は、現在の業務手順と適用される要件を確認してから検討してください。

予約の対応が課題なら、問い合わせから予約確定までの状態を追います。再来院の案内が課題なら、案内の対象と担当者の判断方法を整理します。現場で必要な情報を確認できることを確かめてから、対象を広げてください。クリニック・歯科DXの実践ガイドでは、予約と再来院の業務を整理する考え方をまとめています。

介護 ── 記録・請求・加算管理をつなぐ業務デジタル化

介護事業所では、現場の記録と請求・加算管理に使う情報の対応を確認します。同じ内容を別の書類へ転記している場合は、元の記録を誰が確認し、どの時点で確定するかを整理してください。

現場職員と記録する項目・タイミングを確かめ、請求側で必要な情報と照らし合わせます。記録だけでは判断できない事項があれば、確認する担当者と手順を残したうえで連携方法を決めてください。介護事業所DXの実践ガイドでは、記録・請求・加算管理を見直す順序を解説しています。

美容・サロン ── 予約とリピート育成をCRMでつなぐ

美容室・サロンでは、予約履歴、施術内容、次の提案に使う情報がどこに記録されているかを確認します。担当者が変わったときに必要な情報が伝わらない場合は、引き継ぎに使う項目から決めてください。

まず、次の担当者が施術や提案の前に確認する情報を選びます。その情報が予約や来店の記録と結びつき、実際の接客で使えることを確かめてから、案内の運用を検討してください。美容・サロンDXの実践ガイドでは、予約とCRMの情報をつなぐ方法を紹介しています。

教育・スクール ── 受講管理・決済・LMSをつなぐ顧客管理

教育・スクールでは、問い合わせ、体験申込、受講、決済の記録をそれぞれ誰が確認するか整理します。体験から入会までの引き継ぎが課題なら申込側を、入会後の状況把握が課題なら受講管理側を先に見直してください。

対象を選んだら、担当者が次の対応を判断するために必要な情報を決めます。申込や受講の状態を同じ基準で確認できるようになってから、決済や継続案内との受け渡しを検討します。教育・スクール業DXの実践ガイドでは、申込から受講までの情報設計をまとめています。


部門横断のBPRと全社展開 ── 個別最適を一本の流れにつなぐ

起点部門の運用が定着したら、隣接部門への受け渡しを確認します。各部門の作業が整理されていても、引き継ぎ時に同じ情報を入力し直していれば、部門横断の手順を見直す余地があります。

全社横断のプロセス改革(BPR)

BPR(業務プロセス改革)では、部門をまたぐ業務の流れを確認し、転記・確認・差し戻しが発生する理由を調べます。最初に業務の開始から完了までを並べ、各部門が何を受け取り、何を判断し、次へ何を渡すかを書き出してください。

引き継ぎに必要な情報が決まっていない場合は、ツールの設定より先に担当と判断条件を定義します。受け渡しの方法が決まったら、その手順を既存の業務で試し、抜けている情報がないか確認してください。BPR(業務プロセス改革)の進め方では、業務の流れを再設計する手順と部門横断の検討方法を解説しています。

コンタクトから請求までを一気通貫でつなぐ

顧客との最初の接点から請求までをたどり、各部門が次へ渡す情報を整理します。以下の表を使い、現在の受け渡し方法と、次の担当者が確認できる情報を照らし合わせてください。

段階 主に扱う部門 CRM上の置き場所 次の部門へ渡すもの
コンタクト マーケティング コンタクト・会社レコード、ライフサイクルステージ 商談化の条件を満たしたリード
取引 営業 取引レコード、パイプライン 受注内容・導入目的・失注理由
顧客 カスタマーサクセス 会社レコード、チケット 契約継続・追加購入の情報
請求 経理 取引レコードと会計ソフトの連携 見積・請求・入金の状況

表の情報がメールやExcelだけで渡されている箇所を見つけたら、正本の管理場所と更新する担当者を決めます。次の部門がその情報を確認できることを確かめてから、項目や通知の設定を検討してください。

横展開の優先順位の付け方

起点部門の次は、業務上の依存関係と引き継ぎの課題を基に選びます。

  1. 起点部門の情報を使う隣接部門を書き出す
  2. それぞれの部門が必要とする情報と受け取る時点を確認する
  3. 転記や確認のやり直しが発生する箇所から、受け渡し方法を決める
  4. 期限のある対応は別に管理し、必要な確認を並行して進める

営業から始めた場合は、商談情報を使うマーケティングと経理が次の候補です。どちらを先にするかは、現在の受け渡しをたどり、課題と対応する担当者を明確にできる方から決めてください。

経営トップと現場キーパーソンを両方巻き込む

経営側が見たい情報と、現場が入力できる情報をすり合わせます。現場の担当者には、ステージを変える条件や必要な項目を実際の案件で確認してもらってください。経営側は、その情報をどの判断に使うかを示します。

会議で別の資料を作り直している場合は、必要な情報がCRMにあるか、表示方法が会議の問いに合っているかを確認します。現場の入力と会議での利用の両方を確かめてから、他部門へ同じ方法を広げてください。


よくある質問

よくある質問は、次の観点に分けられます。

  • 起点部門と進め方 ── 営業以外から始めてよいか、成功率を上げるコツ
  • 業種固有の情報 ── 製造業のCRM導入、物件・設備・工事案件などの管理方法

Q1. 営業部門以外からDXを始めても大丈夫ですか?

はい。期限のある経理業務や、バックオフィスの受け渡しが優先課題なら、その部門を起点にできます。まず対象業務の現状と担当者を確認し、次の部門へ渡す情報を決めてください。営業の商談情報が後の連携に必要なら、並行して記録方法を整理します。

Q2. 製造業でもCRM導入は必要ですか?

製造業でも、顧客との商談、受注、アフターサービスの情報を共有する必要があれば、CRMは検討対象になります。受注見込みを生産計画に使う場合は、どの段階の商談情報を誰が更新し、生産側がどう判断するかを確認してください。その受け渡しが必要な範囲を見極めてから導入方法を決めます。

Q3. 部門別DXの成功率を上げるコツは何ですか?

起点部門で扱う業務を明確にし、入力する人と情報を使う人の双方で運用を確認することです。経営側は判断に必要な情報を示し、現場側は入力項目や引き継ぎ条件を実際の業務に当てはめます。会議や次の担当者が記録を使えることを確かめてから、対象を広げてください。

Q4. 業種固有の情報(物件・設備・工事案件など)もCRMで管理できますか?

顧客・取引の項目で表せる情報なら、必要なプロパティを検討できます。取引に対して複数の明細や履歴を持たせる必要がある場合は、情報同士の関係を整理し、カスタムオブジェクトを含めて管理方法を検討してください。利用条件は、公式のCreate custom objectsで確認してください。


まとめ

部門別DXは、業種や部門名だけで着手点を決めず、現在の業務と情報の受け渡しを確かめるところから始めます。

  1. 起点部門を選ぶ: 経営判断に必要な情報、現状との比較方法、他部門への受け渡しを候補部門ごとに確認する
  2. 部門内の運用を確かめる: 担当者が情報を更新し、会議や次の担当者がその記録を使えるか確認する
  3. 業種固有の条件を整理する: 扱う情報や適用される要件を確認し、必要な管理方法を選ぶ
  4. 隣接部門へ広げる: 転記や確認のやり直しが残る箇所から受け渡しを見直し、部門横断の手順を設計する

まず、同じ顧客や案件の情報がどこで作られ、更新され、次の担当者へ渡るかを書き出してください。管理場所と更新する担当者が決まったら、起点部門で実際の業務を試します。記録を次の判断に使えることを確認した段階で、隣接部門への展開を検討してください。

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。