Loop Marketing(ループマーケティング)とは、HubSpotが提唱する循環型のマーケティングフレームワークです。「Express→Tailor→Amplify→Evolve」の4ステージを繰り返し回すことで、AI時代の持続的な成長を目指す考え方です。
「従来のファネル型マーケティングでは成果が頭打ちになっている」「AI時代に合ったマーケティング手法を取り入れたい」「コンテンツを作っても効果が続かない」——こうした課題意識をお持ちの方に注目していただきたいのが、HubSpotが提唱するLoop Marketingです。
Loop Marketingは、2025年時点ではHubSpotがINBOUNDカンファレンスで発表したフレームワークで、従来のファネル型(認知→検討→購入で終わる直線モデル)に代わり、改善と進化を繰り返す循環構造を採用しています。
この記事では、Loop Marketingの基本概念から4つのステージの詳細、従来のファネルとの違い、HubSpotでの実践方法までを解説します。この分野の体系的な情報はHubSpotマーケティング戦略ガイドでまとめています。
本記事は「BtoBリードジェネレーションの方法12選|HubSpotで実践するインバウンドマーケティング戦略」シリーズの一部です。
本記事はHubSpotゴールドパートナーのStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。
この記事でわかること
ファネル型マーケティングの限界を感じているマーケティング担当者や、AIを取り入れた施策設計を検討している方に向けて、Loop Marketingの全体像と実践の進め方をまとめています。
- Loop Marketing(ループマーケティング)の定義と背景 — AI時代の消費者行動の変化を踏まえた、循環型フレームワークの考え方を整理します
- 4つのステージ(Express・Tailor・Amplify・Evolve)の具体的な内容 — 各ステージでやることと、具体的なアクション例を紹介します
- 従来のファネルモデルとの違い — 直線型と循環型の違いを比較表で整理し、ファネルを否定しない関係性を説明します
- HubSpotの機能を活用した実践方法 — Content HubやMarketing Hub、Breeze AIがどのステージに対応するかを解説します
- ループを回し続けるための運用設計と注意点 — 段階的な導入の進め方と、AIに頼りすぎない役割分担を提案します
HubSpotやマーケティングの取り組みを検討されている方に向けて書いています。最後まで読むと、自社のマーケティング施策をLoop Marketingの4ステージに当てはめて見直せるようになります。
Loop Marketing(ループマーケティング)とは
まず定義を押さえます。Loop Marketingは、HubSpotが提唱する循環型のマーケティングフレームワークです。従来のマーケティングファネルが「購入」というゴールで終わる直線モデルだったのに対し、Loop Marketingでは改善と進化を続ける循環構造を採用しています。
登場の背景:AI時代の顧客行動の変化
Loop Marketing登場の背景にあるのは、AI時代における消費者行動の変化です。検索してもクリックにつながらない「ゼロクリック」の場面が増え、ユーザーがAIから直接答えを得るケースが広がっています。つまり、従来の「SEO→ウェブサイト訪問→コンバージョン」という直線的な導線だけでは、顧客にリーチしにくくなっているのです。
AIの効率性と人間の信頼性の組み合わせ
Loop Marketingは、こうした環境変化に対応するために「AIの効率性」と「人間の信頼性」を組み合わせたアプローチを提案しています。
AIに任せる部分と人間が判断する部分を分けて設計するという点は、私たちが日頃からおすすめしているAI活用の考え方とも通じるものがあります。
Loop Marketingの4つのステージ
Loop Marketingは「Express→Tailor→Amplify→Evolve」の4つのステージで構成されます。
- Express ── 自社独自の視点や表現を定義します
- Tailor ── AIを活用して顧客ごとにコンテンツを最適化します
- Amplify ── 顧客がいる多様なチャネルへ展開します
- Evolve ── 成果データを分析して次のExpressの改善に戻します
この循環を繰り返し回していく構造です。直線的に「やって終わり」になるのではなく、1周するごとに精度を上げていくイメージです。順番に見ていきましょう。
ステージ1:Express(表現する)
Expressステージでは、ブランド独自の視点・トーン・価値観を明確に定義します。
AIが生成するコンテンツが増える中で「自社ならではの視点」が差別化要因になります。AIツールを活用する前に、まず自分たちが何を伝えたいのか、どんな立場から情報発信するのかを言語化することが要点になります。
具体的なアクション例:
- ブランドのコアメッセージとトーン&マナーの定義
- 独自の知見・データ・経験に基づいたコンテンツテーマの設定
- ターゲット顧客のペルソナと課題の明確化
StartLinkの例で言えば、HubSpotパートナーとしての実務経験や、YouTubeチャンネルでの実務解説スタイルが、まさにExpressにあたります。自社の実践を基にした情報発信は、読者にとっても具体的で参考にしやすい内容になりやすいと考えています。
ステージ2:Tailor(最適化する)
Tailorステージでは、AIを活用してコンテンツを顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズします。
単に大量のコンテンツを配信するのではなく、顧客の属性・行動・関心に基づいて最適なメッセージを届けることがポイントになってきます。
具体的なアクション例:
- HubSpotのスマートコンテンツで訪問者の属性に応じたページ表示
- ワークフローを使ったセグメント別のメールナーチャリング
- リードスコアリングに基づくコンテンツの出し分け
ここで大切なのは、AIに丸投げするのではなく、人間がレビューすることです。AIは「超一流の営業マン」ではなく「アシスタント」として活用し、最終的な品質は人間が担保するという考え方が重要です。
ステージ3:Amplify(増幅する)
Amplifyステージでは、顧客がいる多様なチャネルにコンテンツを展開します。
自社のウェブサイトだけでなく、SNS、メール、動画、ウェビナー、パートナーチャネルなど、顧客が情報収集するあらゆる接点でコンテンツを届けることが目標です。
具体的なアクション例:
- ブログ記事をSNS投稿・メルマガ・動画に展開
- HubSpotのSNS連携機能での一元管理
- キャンペーン機能で複数チャネルの施策を統合管理
- 顧客の口コミや事例の活用(アドボカシー)
BtoB企業の場合、SNSの活用は業種によって向き不向きがあります。意思決定者の情報収集の習慣が業種ごとに異なるためです。例えばIT・SaaS系企業ではLinkedInやXが有効ですが、製造業などでは展示会や業界メディアの方が効果的な場合もあります。
どのチャネルが自社に合うかは、イメージで決めるのではなくデータで確認するのが確実です。HubSpotのアトリビューションレポートを見れば、どのチャネル経由のリードが商談や受注につながっているかを把握できます。
すでに成果の出ているチャネルを伸ばし、実績のないチャネルは小さく試す、という順序で広げていくのが現実的です。自社のターゲット顧客がどこにいるかを見極めた上でチャネル選定いただくのがよいです。
すべてのチャネルを一度にカバーしようとすると運用が回らなくなりがちなので、まずは顧客との接点がすでにあるチャネルから始め、HubSpotのSNS連携やキャンペーン機能で一元管理しながら、どのチャネルがリードや商談に貢献しているかをレポートで確認して、効果の見えるチャネルから広げていく進め方が現実的です。
ステージ4:Evolve(進化する)
Evolveステージでは、データ分析とAIを活用して戦略を継続的に改善します。
ここが従来のファネルモデルとの大きな違いです。ファネルモデルでは「受注」で一旦完了しますが、Loop Marketingでは成果データを次のサイクルのExpressに戻してフレームワーク全体を進化させていきます。
具体的なアクション例:
- HubSpotのダッシュボードでチャネル別・施策別の成果を分析
- A/Bテストの結果をコンテンツ戦略にフィードバック
- 失注分析のデータをExpressフェーズの改善に活用
- 顧客フィードバックを基にしたメッセージの再定義
従来のファネルモデルとの違い
Loop Marketingを理解する上で、従来のファネルモデルとの違いを整理しておきましょう。
直線型と循環型の比較
| 比較項目 |
ファネルモデル |
Loop Marketing |
| 構造 |
直線型(認知→購入で終了) |
循環型(4ステージを繰り返し) |
| ゴール |
購入・受注 |
持続的な成長と進化 |
| AIの位置づけ |
補助的 |
各ステージに組み込み |
| 顧客との関係 |
獲得中心 |
獲得+育成+進化 |
| 改善サイクル |
施策単位で検証 |
フレームワーク全体で循環 |
| コンテンツ |
チャネル個別 |
マルチチャネル一体 |
ファネルモデルが「漏斗の上から入れて下から出す」イメージだったのに対し、Loop Marketingは「ループを回すたびにフライホイールのように加速する」イメージです。
ファネルの考え方は依然として有効
ただし、ファネルモデルが不要になるわけではありません。特にBtoBでは購買プロセスが比較的明確なケースが多いため、ファネルの考え方は基本フレームワークとして依然有効です。Loop Marketingはファネルを否定するものではなく、ファネル的な段階設計の上に循環・改善の思想を加えたものと理解いただくのがよいです。
HubSpotの機能でLoop Marketingを実践する
Loop Marketingの各ステージは、HubSpotの既存機能に対応づけることができます。全体フローの中での位置づけを意識しながら見ていきましょう。
Express → Content Hub+ブランド設定
HubSpotのContent Hubでブログやウェブサイトを運営し、自社の視点を発信します。AIコンテンツアシスタントを活用して効率化しつつ、最終的な品質は人間がチェックする運用がおすすめです。
Tailor → Marketing Hub+Breeze AI
HubSpotのMarketing Hubにはスマートコンテンツ、リードスコアリング、ワークフローなどのパーソナライゼーション機能が揃っています。Breeze AIと組み合わせることで、コンテンツのパーソナライズを効率的に実施できます。
例えばスコアリングでは、業種や役職といった属性情報と、ページ閲覧やメール開封などのウェブ行動を組み合わせて点数化します。属性情報だけでは「自社の顧客像に合っているか」は分かっても関心の高まりが見えず、行動だけでは関心の高さは見えてもターゲットとして適した相手かは判断できません。2軸を掛け合わせることで、「顧客像に合っており、かつ今関心が高まっているリード」を絞り込みやすくなります。
点数化したうえで、一定の基準を超えたリードをMQLとしてマーケティング側で育成し、さらに温度感の高いリードを営業へ引き渡す、といった基準を設けると運用しやすくなります。このとき大切なのは、引き渡しの基準をマーケティング側だけで決めないことです。営業側と「どの状態のリードを受け取るか」を先に合意しておくと、引き渡したリードが放置されるといったすれ違いを防ぎやすくなります。
配点や閾値は自社の商談化の実績を見ながら調整していく前提で、まずは属性と行動の2軸でシンプルに設計するのが始めやすいです。具体的には、次のように配点します。
- 行動 ── フォーム送信や資料請求のような意思表示の強い行動に高い配点を置き、ページ閲覧やメール開封のような軽い行動には低い配点を置く。
- 属性 ── ターゲット業種や意思決定に関わる役職に配点を寄せる。
この2軸の掛け合わせだけで、実務上は十分に機能する設計になります。
運用に載せるときは、スコアが閾値を超えたタイミングで何が起きるかまで決めておきます。次のような形にしておけば、担当者がスコアを見に行かなくても引き渡しが回ります。
- 通知 ── ワークフローで営業担当者へ通知を送る
- リスト追加 ── 引き渡し用のリストに自動で追加する
設定して終わりではなく、基準を超えたのに商談につながらないリードが多い、基準未満でも成約したケースがある、といったズレが見えたら配点や閾値を見直します。
この見直しの循環そのものが、Evolveステージの実践にあたります。
Amplify → SNS連携+キャンペーン
Marketing HubのSNS連携機能とキャンペーン機能を使えば、複数チャネルの施策を一元管理できます。各チャネルからの流入がどの程度リードや商談に貢献しているかをアトリビューションレポートで可視化できるのも大きなメリットです。
Evolve → レポート+ダッシュボード
HubSpotのレポート・ダッシュボード機能でデータを分析し、次のサイクルに活かします。まずは既存の標準レポートで基本を把握し、不足する部分をカスタムレポートで補うアプローチが効率的です。
次の画面は、レポートダッシュボードで集計結果を数値テーブルとして確認する例です。

ループを回し続けるための運用設計
Loop Marketingは「やって終わり」の施策ではなく、回し続けるための仕組みが重要です。個人の努力ではなく仕組みで継続するためのポイントを整理します。
ダッシュボードの定期確認を仕組み化する
ダッシュボードの定期配信を設定しておけば、週次・月次のスナップショットが残せるので、時系列での改善トレンドを追いやすくなります。担当者が見に行くのを待つのではなく、自動で届く仕組みにしておくことが、継続のポイントになってきます。
以下の画面は、展示会などの施策の結果を一覧で確認できるレポートの例です。

役割と基準を決めて属人化を防ぐ
どの指標を誰が見て、どんな基準で次のアクションを判断するかを決めておくと、担当者が変わっても同じ品質でループを回せます。例えば「月次でチャネル別のリード獲得数を確認し、伸びているチャネルのテーマをExpressの見直しに反映する」といった運用ルールを文書化しておくのがおすすめです。
Loop Marketingを導入する際の注意点
最後に、導入時に押さえておきたい注意点を3つ挙げます。
段階的に始める
Loop Marketingは4ステージすべてを一度に完璧にする必要はありません。まずはExpressフェーズで自社の強みや独自視点を明確にするところから始めて、段階的に他のステージを強化していくのがおすすめです。自社で活用できそうなステージや効果が出そうな部分を見極めて、優先順位をつけて取り組んでいただければと思います。
AIに頼りすぎない
Loop MarketingはAIの活用を前提としていますが、「AIに丸投げ」では質の高いマーケティングは実現できません。特にExpressフェーズでの自社の視点や価値観は、人間でなければ定義できない領域です。
AIはアシスタントとして効率化に活用し、戦略や品質の最終判断は人間が行うという役割分担を意識いただくのがよいです。
既存の資産を活用する
すでにHubSpotで運用中のワークフロー、リードスコアリング、コンテンツなどがある場合、それらをLoop Marketingの各ステージにマッピングするだけで、実質的にLoop Marketingの実践が始められます。ゼロから構築し直す必要はありません。
よくある質問
Q1. Loop Marketingは従来のファネルモデルを完全に置き換えるものですか?
いいえ、ファネルモデルを否定するものではありません。特にBtoBでは購買プロセスの段階管理としてファネルの考え方は依然有効です。Loop Marketingは、ファネル的な段階設計の上に「循環・改善の思想」を加えたフレームワークと理解いただくのがよいです。
Q2. Loop Marketingを実践するにはHubSpotのどのプランが必要ですか?
基本的なコンテンツ発信やスコアリングは無料プランやStarterでも可能ですが、ワークフロー自動化やカスタムレポート、高度なパーソナライゼーションを活用するにはProfessionalプラン以上が推奨されます。ワークフローとカスタムレポートがProfessional検討の大きな判断ポイントになります。
Q3. AI活用が苦手な組織でもLoop Marketingは実践できますか?
はい、可能です。Loop Marketingの本質は「循環的な改善」にあり、AIはそれを効率化するツールの一つです。まずはExpressフェーズで自社の独自性を言語化し、Evolveフェーズでデータを見て改善するという基本ループを回すことから始めていただければと思います。AIの活用は慣れに応じて段階的に取り入れていくアプローチが現実的です。
Q4. フライホイールモデルとLoop Marketingの違いは何ですか?
フライホイールモデル(2018年にHubSpotが提唱)は「顧客を中心に据え、Attract→Engage→Delightの循環で成長する」という概念でした。Loop Marketingはその考え方を発展させ、AI活用を各ステージに組み込み、より具体的な4ステージ(Express→Tailor→Amplify→Evolve)のアクションフレームワークとして体系化したものです。
Q5. Loop Marketingの効果をどのように測定すればよいですか?
各ステージごとにKPIを設定して測定します。Expressではブランド認知やコンテンツの独自性評価、TailorではパーソナライゼーションのCVR改善、Amplifyではチャネル別リーチとエンゲージメント、Evolveでは改善サイクルの速度と成果の向上をトラッキングします。HubSpotのダッシュボードで統合的にモニタリングするのがおすすめです。
まとめ
Loop Marketing(ループマーケティング)は、AI時代のマーケティング戦略として、従来のファネル型の限界を超えるフレームワークです。
- Express:自社の視点と価値を明確にする
- Tailor:AIでコンテンツをパーソナライズする
- Amplify:多様なチャネルで顧客にリーチする
- Evolve:データ分析で継続的に改善する
まずは次の3ステップから始めてみてください。
- Expressフェーズとして、自社の強み・独自視点・トーンを言語化する
- 現在のHubSpot運用(ワークフロー・コンテンツ・スコアリング)を4ステージにマッピングする
- ダッシュボードの定期確認を仕組み化し、月次でEvolveの振り返りを行う
ループを回すたびにデータが蓄積されるため、改善の判断材料が増え、施策の精度を上げていきやすくなります。企業様によって最適なステージの比重は異なりますので、自社の状況に合わせてカスタマイズしていくことが大切です。
あわせて、カスタマージャーニーマップの作り方、HubSpotでリードマネジメントを設計する方法、営業とマーケティングの連携SLA設計なども参考にしていただければと思います。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのHubSpotゴールドパートナーのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
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