地方創生支援のHubSpot活用|自治体・地域事業者との案件と関係者連絡の管理

地方創生支援のHubSpot活用|自治体・地域事業者との案件と関係者連絡の管理
この記事の結論

「自治体の担当者が4月に替わって、これまでの経緯が分からなくなった」

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkが、HubSpot導入・AI活用・CRM整備・業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


「自治体の担当者が4月に替わって、これまでの経緯が分からなくなった」

「地域の事業者さんとのやり取りが、メールと電話と対面で散らばっている」

——地方創生や観光地域づくりを支援する現場では、こうした悩みがよく聞かれるかなと思います。

地方創生支援のHubSpot活用とは、自治体・地域事業者・金融機関・大学・団体といった多様な関係者と、その間で動く案件を、1つの関係図として記録し、誰が何を知っているかを組織で共有できる状態にすることです。ただし、事業の会計処理や、公的な申請書類の作成・提出は、HubSpotの役割ではありません。専用の会計・申請の仕組みと切り分ける前提で設計します。

この記事では、観光地域づくりや地域振興の支援を行う団体、コンサルティング会社、支援機関を想定して、関係者の持ち方、案件の流れ、連絡の管理、そして線引きを整理します。

  • 関係者は種類が多く、1人が複数の立場を持つ ── 自治体職員が事業者の相談相手でもあります
  • 自治体の担当者は定期的に異動する ── 人ではなく、課と役割で関係を持つ設計が効きます
  • 案件は1つの課題に複数の関係者が関わる ── 関連付けで誰が関わっているかを残します
  • 会計・公的な申請書類はHubSpotに入れない ── 専用のシステムの領域です

自治体・事業者・団体・案件を、関連付けで結ぶ(1人が複数の立場を持つ現場の関係図)


地方創生支援の現場で起きがちな3つの詰まり

関係者が多く、全体像を誰も持っていない

1つの地域プロジェクトには、自治体の複数の課、観光協会、商工会議所、金融機関、地域の事業者、大学、住民団体と、多くの関係者が関わります。それぞれと別々の担当者がやり取りをしていると、「いまこの地域で誰と何を進めているか」を把握している人がいなくなります。

自治体の異動で関係が途切れる

自治体の担当者は、数年おき、多くは春に異動します。前任者との信頼関係で進んでいた案件が、後任への引き継ぎが不十分で止まる、という場面はよくあります。人の連絡先だけで管理していると、異動のたびに関係を作り直すことになります。

連絡の記録が、人のメールと記憶に散らばる

地域では、対面の会合、電話、メール、チャットが混在します。誰がいつ何を話したかが個人の手元にあると、担当が替わった途端に履歴が失われます。


自治体・地域事業者・案件の関係を整理する

関係者は会社レコードで持ち、種別で区別する

自治体、事業者、金融機関、大学、団体などは、会社(Company)レコードで持ちます。「種別」のプロパティーに、自治体/観光事業者/農林水産業者/金融機関/大学・研究機関/団体のような選択肢を用意しておくと、種別ごとの一覧や集計ができます。

自治体の場合は、「市区町村」と「担当課」を別の会社レコードとして持つ方法があります。会社同士の関連付けラベルで「担当課」「所管」といった関係を表せます。独自のラベルの作成にはProfessional以上が必要です(出典: HubSpotナレッジベース「create and use association labels」)。担当の課が変わったときも、会社レコードの関係を付け替えるだけで済みます。

担当者は個人ではなく、課と役割で関係を持つ

コンタクト(Contact)として担当者を登録し、所属する課と、役割(窓口・決裁・連絡の宛先など)を関連付けラベルで持ちます。Starter以下でラベルを作れない場合は、コンタクトの「役割」プロパティーで代用します。異動があったら、前任者のレコードは残したまま所属を外し、後任を同じ課と役割で関連付けます。

こうしておくと、後任の担当者に会うときに、「この課で、これまでこういう案件が、こういう経緯で動いてきた」という履歴が、課のレコードを開けば見えます。前任者個人に紐づけるより、課と案件に履歴を残すほうが、異動に強い設計です。

案件は取引として持ち、関わる関係者を関連付ける

地域の課題に対する取り組みは、取引(Deal)として持つのが自然です。たとえば「観光コンテンツの開発」「地域産品の販路づくり」「人材育成の研修」のような単位です。取引に、関わる自治体・事業者・団体を関連付けておけば、案件の画面から関係者全員が見えます。

ステージの例は次のとおりです。

ステージ 内容
相談・課題の把握 地域や事業者からの相談を受ける
企画・提案 取り組みの案をまとめ、関係者へ示す
関係者の合意 自治体・事業者・団体の同意を得る
実施 取り組みを進める
報告・振り返り 成果をまとめ、関係者へ共有する

カスタムのパイプラインの作成にはStarter以上が必要です(出典: HubSpotナレッジベース「set up and customize pipelines」)。事業の種類が多く、プロジェクトごとに複数の取引を持ちたい場合は、専用のカスタムオブジェクトで「事業」を持つ方法もありますが、作成にはEnterpriseが必要です(出典: HubSpotナレッジベース「Create custom objects」)。判断の考え方はHubSpotカスタムオブジェクトの設計判断をご覧ください。

案件の進み方を、5つのステージで持つ(関係者の合意を節目にする)


関係者への連絡と活動の記録を管理する

やり取りは関係者の会社レコードに残す

会合の議事、電話の内容、メールを、HubSpotの活動として記録します。担当者個人ではなく、会社(自治体の課や事業者)と案件に関連付けておけば、誰が見ても経緯が分かります。

会合の記録は、箇条書きで短く残すのがおすすめです。「何が決まったか」「次に誰が何をするか」だけで十分です。長い議事録は、別の資料に置き、リンクを記録に貼る形が運用しやすいです。

次の連絡をタスクで持つ

「次回は来月の会議で報告」のような約束は、タスクとして期日付きで登録します。担当者が替わっても、タスクが案件に残っていれば、引き継ぎで抜けません。

関係者への一斉連絡

事業者や関係団体に、イベントの案内や共有事項を送る場面があります。種別や地域のプロパティーで対象を絞ったリストを作れば、必要な相手にだけ連絡できます。連絡先は、同意を得ているかを示すプロパティーで管理し、配信は同意のある相手に限る設計にしておくと安心です。

閲覧できる人を絞る

地域の案件には、公表前の情報や、事業者の事情に関わる情報が含まれます。HubSpotでは、ユーザーの権限やチームを設定して、見られるレコードを絞れます。設計の考え方はHubSpot権限設定・チーム管理ガイドで整理しています。外部の関係者にHubSpotの画面を直接見せる運用は、通常は想定しません。


HubSpotでできること・専用システムに任せること

線引きを表にします。

領域 HubSpotで管理できる 専用システムの領域(HubSpotは向かない)
関係者の情報 自治体・事業者・団体・担当者の記録、関係の持ち方 ―
案件の進行 取引のステージ、関係者の関連付け、タスク プロジェクトの詳細な工程・成果物管理
連絡の記録 会合・電話・メールの履歴、次の連絡のタスク ―
一斉連絡 条件で絞ったリストへの案内 ―
事業の会計 案件の予算や金額の目安の記録 会計処理、支出の管理、精算
公的な申請書類 「提出済み」程度の状態の記録、書類ファイルへのリンク 申請書類の作成・提出・審査対応の管理

事業の会計処理や、公的な申請書類の作成・提出は、HubSpotの役割ではありません。 会計は会計の仕組みで、公的な申請は申請の仕組みで、厳密に管理する必要があります。HubSpotは、関係者と案件、連絡の記録に集中させます。会計や申請の担当部署が別にあるなら、その部署が使う仕組みとは切り分け、必要な情報だけをHubSpotに「状態」として持たせるのが現実的です。

また、複数のプロジェクトを同時に進める場合、工程表や成果物の詳細な管理は、プロジェクト管理の専用ツールのほうが向いています。HubSpotには、案件の進み具合の要約を持たせます。

HubSpotで扱う範囲と、会計・申請の範囲(関係者・案件・連絡に集中する)


導入を進める手順

  1. 関係者の一覧を会社レコードにまとめる ── 種別と所在地域だけを必須にします
  2. 自治体の担当課と担当者を、課と役割で登録する ── 前任者の履歴は消さずに残します
  3. 案件を取引として登録し、関係者を関連付ける ── 進行中の案件から始めます
  4. 会合の記録とタスクの書き方を決める ── 「決まったこと」「次にやること」の2点に絞ります
  5. 年度の変わり目に、異動の反映を確認する場を置く ── 春の異動のタイミングで更新します

導入の支援は、組織の関係資産を残すための投資だと考えています。非営利の団体の例はNPO・非営利団体のHubSpot活用にもまとめています。


よくある質問

Q1. 自治体の職員にもHubSpotを使ってもらう必要がありますか

通常は不要です。HubSpotを使うのは支援する側の団体・企業の担当者で、自治体や事業者は、連絡の相手として登録されます。

Q2. 事業者の売上や経営の情報も管理できますか

関係構築に必要な項目(業種、規模、取り組みたい課題など)に限るのがおすすめです。詳細な経営情報を預かる場合は、取り扱いの社内ルールを先に決めてください。

Q3. 担当者が多数いる大きな組織でも使えますか

使えます。権限とチームを設定して、閲覧範囲を分けられます。ただし、案件の持ち主や関連付けのルールを最初に揃えないと、記録が散らばるため、入力ルールを決めることが前提になります。

Q4. Excelからの移行は大変ですか

関係者の一覧は取り込みで移せます。難しいのは、過去の経緯をどこまで移すかの判断です。進行中の案件と、直近1年の主な履歴に絞るのが現実的です。

Q5. 業界別のほかの設計も見たいです

業界別HubSpot活用ガイドに、業界ごとの設計をまとめています。支援する側の案件管理という点では、士業のHubSpot活用法も近い考え方です。


まとめ

地方創生・観光地域づくりの支援は、HubSpotで次のように整理できます。

  • 関係者は会社レコードで種別ごとに持ちます。 自治体は市区町村と担当課を分けて持てます
  • 担当者は課と役割で関連付けます。 異動があっても、課と案件に履歴が残ります
  • 案件は取引として持ち、関わる関係者を関連付けます。 画面を開けば、誰が関わっているかが分かります
  • 連絡は活動として記録し、次の連絡はタスクにします。 担当が替わっても、抜けません
  • 事業の会計と、公的な申請書類は、専用の仕組みに任せます。 HubSpotには状態の目印だけを持たせます

最初の一歩としておすすめしたいのは、進行中の案件を5件選び、それぞれの関係者と担当課を紙に書き出すことです。誰が関わっているかを可視化するだけで、HubSpotに何を持たせるべきかが見えてきます。

自社の取り組みにどう当てはめるかを具体的に検討したい場合は、StartLinkの無料相談でご相談ください。現状の運用をうかがったうえで、設計の方向性をご提案します。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。