HubSpotでサブスクリプション売上を管理する方法|MRR追跡・更新通知・解約防止の設計

ブログ目次

「サブスクリプションの更新状況をスプレッドシートで追いかけている」「解約予兆の把握が後手になり、気づいたときにはチャーンが発生している」——SaaSやサブスク型ビジネスを展開する企業の多くが、こうした収益管理の課題を抱えています。

HubSpotのCommerce Hub機能とCRMを組み合わせることで、MRR(月次経常収益)の追跡、更新通知の自動化、解約防止のアラート設計を一元的に構築できます。 決済データと顧客データがCRM上で統合されるため、カスタマーサクセスと営業が同じ画面で収益状況を把握しながら、先手のアクションを打てる体制が整います。

本記事では、HubSpotでサブスクリプション売上を管理するための設計思想から、MRR追跡レポートの構築、更新通知ワークフロー、解約防止の仕組みまで、実務に即した手順を解説します。

この記事でわかること

  • HubSpotでサブスクリプション管理を行う全体設計
  • MRR・ARRを可視化するレポートの構築手順
  • 更新通知ワークフローの設定方法
  • 解約予兆を検知するアラートの設計
  • カスタマーサクセスと連携した解約防止の仕組み

サブスクリプション管理の全体設計

なぜCRMでサブスクリプションを管理すべきなのか

HubSpot取引パイプライン(ボードビュー)

サブスクリプションビジネスでは、売上の源泉が「新規獲得」から「既存顧客の維持・拡大」に移行します。契約更新率、MRR成長率、チャーンレートといった指標を正確に追跡するためには、顧客データと収益データの統合が不可欠です。

多くの企業では、決済はStripeやfreeeで管理し、顧客対応はCRM、利用状況はプロダクトのダッシュボードと、データが3つ以上のツールに分散しています。この状態では以下の問題が発生します。

  • 更新対象の顧客リストを毎月手動で作成する必要がある
  • 解約リスクのある顧客を特定するのに複数ツールを横断する手間がかかる
  • 月次のMRR・ARRレポートの作成に丸1日かかる

HubSpotにサブスクリプション情報を集約することで、これらの業務を自動化し、データドリブンな収益管理を実現できます。

HubSpotでのサブスクリプション管理に必要な構成要素

構成要素内容設定場所
商品カタログサブスク型商品の登録(月額・年額プラン)コマース > 商品
カスタムプロパティ契約開始日・更新日・MRR・プラン種別設定 > プロパティ
取引パイプラインサブスクライフサイクル管理用のパイプラインCRM > 取引
ワークフロー更新通知・解約アラートの自動化自動化 > ワークフロー
レポートMRR・ARR・チャーンレートの可視化レポート > ダッシュボード

MRR・ARRを追跡するレポートの構築

カスタムプロパティの設計

HubSpotカスタムレポート画面

サブスクリプション管理に必要なカスタムプロパティを取引(Deal)オブジェクトに作成します。

プロパティ名用途
月額利用料(MRR)数値(通貨)取引ごとのMRRを記録
契約開始日日付サブスクリプション開始日
次回更新日日付次の契約更新日
契約期間ドロップダウン月次 / 四半期 / 年次
プラン種別ドロップダウンFree / Starter / Pro / Enterprise
解約リスクスコア数値0〜100のスコアリング

MRRダッシュボードの構築手順

HubSpotのレポート機能を使い、以下のレポートを作成してダッシュボードにまとめます。

  1. MRR推移レポート: 取引の「月額利用料」プロパティを月次で集計し、折れ線グラフで表示します
  2. プラン別MRR構成比: プラン種別ごとのMRRを円グラフで可視化します
  3. 新規MRR vs 解約MRR: 取引ステージの変更をトリガーに、新規獲得MRRとチャーンMRRを棒グラフで比較します
  4. ARR見通し: MRRの12倍を算出するカスタム計算プロパティを作成し、数値タイルで表示します

Zuoraとの連携によるMRR追跡の事例

サブスクリプション管理プラットフォームのZuoraは、HubSpotとのネイティブ連携を提供しています。Zuoraで管理している契約・請求データをHubSpotのコンタクトや取引に同期させることで、営業チームがCRM画面上で契約ステータスやMRRをリアルタイムに確認できます。Zuoraの公式ドキュメントでは、HubSpotとの双方向データ同期の手順が公開されています。

更新通知ワークフローの設定方法

基本の更新通知フロー

契約更新の漏れを防ぐために、ワークフローで自動通知を設定します。

更新60日前

  • カスタマーサクセス担当者にタスクを自動作成:「〇〇社の契約更新確認」
  • 社内Slackチャンネルに通知を送信

更新30日前

  • 顧客に更新案内メールを自動送信
  • 取引のステージを「更新検討中」に変更

更新14日前

  • 未応答の顧客に対してフォローアップメールを送信
  • 担当者にリマインダー通知

更新当日

  • Stripe連携による自動課金を実行(自動更新設定の場合)
  • 取引ステータスを「更新完了」に自動変更

ワークフローの作成手順

  1. HubSpotの「自動化」>「ワークフロー」から新規ワークフローを作成します
  2. トリガーとして「取引のプロパティ」>「次回更新日」を選択します
  3. 「次回更新日が60日後」という条件でフィルタリングします
  4. アクションとして「タスク作成」「メール送信」「Slack通知」を設定します
  5. 分岐条件を追加し、顧客の応答有無によって後続のアクションを変えます

解約防止のアラート設計

解約予兆の指標設計

解約リスクの高い顧客を早期に発見するために、以下の指標をHubSpotのカスタムプロパティで管理します。

予兆指標検知方法リスクレベル
ログイン頻度の低下プロダクト連携データの同期
サポート問い合わせの増加チケット件数の集計
NPS/CSATスコアの低下アンケートフィードバック
決済失敗の発生Stripe Webhook通知最高
担当者の異動・退職コンタクトの役職変更

解約防止ワークフローの構築

解約リスクスコアが一定値を超えた場合に自動でアクションを実行するワークフローを設計します。

リスクスコア70以上の場合

  • カスタマーサクセスマネージャーに即時アラート通知
  • 対象顧客との1on1ミーティングのタスクを自動作成
  • 社内のチャーンリスク管理用リストに自動追加

リスクスコア90以上の場合

  • マネージャーとCSリーダーにエスカレーション通知
  • 割引オファーや特別対応の検討タスクを作成
  • 対象取引にフラグを立て、ダッシュボードで可視化

Gainsightとの連携事例

カスタマーサクセスプラットフォームのGainsightは、HubSpotとの連携により、顧客のヘルススコアを自動算出してHubSpot上に同期する仕組みを提供しています。Gainsightが分析した解約予兆データがHubSpotの取引やコンタクトに反映されるため、営業・CS・マネジメントが同じデータを見ながら対応策を議論できます。

実践的なサブスクリプション管理の設計パターン

パターン1:SaaS企業のMRR管理

SaaS企業の場合、以下のようなパイプライン設計が効果的です。

  • パイプライン名: サブスクリプション管理
  • ステージ構成: トライアル中 → 有料契約 → 更新検討中 → 更新完了 / 解約申請 → 解約完了
  • 自動化ポイント: トライアル終了7日前に有料プランへの案内メールを自動送信

パターン2:BtoBサービスの年間契約管理

年間契約が中心のBtoBサービスでは、更新時期の集中管理が重要です。

  • パイプライン名: 年間契約管理
  • ステージ構成: 契約中 → 更新提案中 → 条件交渉 → 更新完了 / 解約
  • 自動化ポイント: 更新3ヶ月前にアップセル提案用のコンテンツを自動送信

よくある質問(FAQ)

Q1. HubSpotだけでサブスクリプションの課金管理はできますか?

HubSpot単体では課金処理はできません。課金処理にはStripeなどの決済プラットフォームとの連携が必要です。HubSpot Commerce Hubは、Stripeを決済バックエンドとして使用し、CRM上でサブスクリプションの状態管理・更新通知・レポーティングを行う仕組みです。

Q2. MRRの自動計算はHubSpotの標準機能で可能ですか?

HubSpotの標準機能では、MRRの自動計算プロパティを「計算プロパティ」として作成できます。取引の金額と契約期間を元に月額換算する計算式を設定することで、個別取引のMRRと全体のMRR合計を自動算出できます。Professional以上のプランで利用可能です。

Q3. 解約防止のワークフローは何件まで作成できますか?

ワークフローの作成上限はHubSpotのプランによって異なります。Starterプランでは最大10件(シンプルワークフロー)、Professionalプランでは最大300件、Enterpriseプランでは最大1,000件のワークフローを作成できます。サブスクリプション管理では、更新通知・解約アラート・アップセル提案など、複数のワークフローを組み合わせて運用するのが一般的です。

Q4. Stripe以外の決済サービスでもサブスクリプション管理はできますか?

HubSpot Commerce Hubのネイティブ連携はStripeのみですが、Zapierやmake(旧Integromat)などのiPaaSツールを使えば、PayPalやSquareの決済データをHubSpotに同期することは可能です。ただし、リアルタイム性やデータの精度はネイティブ連携と比較して制限がある場合があるため、導入前に検証を推奨します。

カテゴリ: Commerce Hub | HubSpot


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。