実名企業8社のBtoBオウンドメディアを、課題・施策・成果・再現ポイントの4点で分解します。成功事例の本質は記事の本数ではなく、記事からリード・商談までをつなぐ仕組みにあります。
「記事は増えているのに、商談にどうつながったのかが説明できない」「他社の成功事例を読んでも、自社の何を変えればいいのか分からない」「更新は続けているが、社内で成果を問われると数字が出せない」——オウンドメディアを運営するBtoB企業の担当者から、私たちがよくご相談いただく声です。
BtoBオウンドメディアの成功事例とは、記事のPV数が伸びた事例ではなく、特定のテーマに絞ったコンテンツがリード獲得と商談創出につながる導線として機能している事例です。本記事で扱う8社は、いずれも「テーマの絞り込み」「ペルソナの明確化」「記事と連動したCTA」「継続的な更新」「データに基づく改善」の5つを満たしています。
ただし先にお伝えしておきたいのは、事例をそのまま真似しても成果は出ないということです。各社の施策は、その会社が持つ専門性・人員・顧客層の上に成り立っています。成功事例の本質を理解したうえで、自社の事業特性・リソース・ターゲットに合わせて設計し直すことが欠かせません。
本記事は「コンテンツマーケティングとは?BtoB企業が成果を出す基礎知識と実践ステップ」シリーズの一部です。 前提となる考え方はコンテンツSEO戦略ガイドで解説しています。 立ち上げから始める場合はオウンドメディアの立ち上げ方、キーワードの決め方はキーワード選定の5ステップが参考になります。
この記事でわかること
オウンドメディアの運用に関わる方に向けて、事例のどこを読み解けば自社に活かせるかを先にお伝えします。以下の5点を押さえておくと、8社の分析を効率よく自社の設計に変換していただけます。
- 実名企業8社の成功事例を「課題→施策→成果→再現ポイント」で分析 — キーエンス、freee、カオナビ、SmartHR、才流、マネーフォワード、LIG、HubSpot Japanの8社について、公開情報の出典付きで整理しています。
- 成功パターンに共通する5要素と、その相互関係 — テーマ特化・ペルソナ明確・CTA設計・継続更新・データ活用が、どの順番でつながって成果を生むのかを構造で示します。
- 事例が語らない「時間軸」と「向かないケース」 — 成果が出るまでの現実的な期間と、オウンドメディアを今は始めない方がよい状況を率直に書いています。
- 記事→リード→商談を追跡する運用設計 — スプレッドシートでの記事管理が限界を迎える理由と、CRMに記録を寄せる場合の設計の考え方を解説します。
- 自社で再現するための優先順位の付け方 — 8つの観点を「今すぐ/3か月以内/半年以降」に振り分け、スモールスタートの順序を提示します。
オウンドメディアを運営中で成果の説明に困っている方、これから立ち上げを検討している方に向けて書いています。最後まで読むと、他社事例のどこを真似し、どこを自社仕様に変えるべきかを、自分の言葉で社内に説明できるようになります。
BtoBオウンドメディアの成功事例を読むときの3つの視点
事例集を読んでも自社に活かせない最大の理由は、「成果の数字」だけを見てしまうことです。月間のPV数は結果であって、再現すべき対象ではありません。私たちが事例を分析するときは、次の3つの視点で分解しています。
視点1: その成果は「何の資産」の上に成り立っているか
キーエンスの技術情報サイト群は、自社に技術知見を持つエンジニアがいるから成立しています。才流のメソッド公開は、コンサルタントが日常業務でナレッジを蓄積しているから成立しています。事例を読むときは、施策そのものより「その施策を支えている自社資産は何か」を先に特定していただくのがおすすめです。自社に同じ資産が無ければ、同じ施策は再現できません。
逆に言えば、自社にしか無い資産——現場の技術者の知見、顧客対応の記録、営業がよく受ける質問——を棚卸しすれば、真似ではない自社版の設計が見えてきます。
視点2: 記事のその先に、どんな導線が設計されているか
8社はいずれも、記事を読んだ人が次に取る行動を設計しています。キーエンスは技術資料のダウンロードに会員登録を条件化し、SmartHRはeBookダウンロードを主要CTAに置きました。記事は入口であって、成果地点ではありません。
ここで多くの企業がつまずくのは、記事とCTAの対応関係が管理されていない点です。どの記事にどのCTAを置き、そこから何件のリードが入り、そのうち何件が商談になったのか。この対応表がスプレッドシートで別管理になっていると、記事側の更新とリード側の数字が噛み合わなくなります。
視点3: その体制は「人」に依存していないか、「仕組み」になっているか
編集長個人の力量で回っているメディアは、その人が異動した瞬間に止まります。HubSpot Japanが新規記事とリライトを半々で運用しているように、更新の型・リライトの基準・効果測定のタイミングをプロセスとして定義しておくと、担当が替わっても運用が続きます。
私たちが支援の場面で確認しているのも、この点です。個人の頑張りで出た成果は引き継げませんが、仕組みで出た成果は引き継げます。
事例を読むときは、記事の中身と同じくらい、運営体制の記述に注目していただければと思います。
成功事例8社の全体像
まず8社の概要を一覧で押さえます。業種も規模も異なりますが、後述するように成功要素は共通しています。各社の詳細は次のセクション以降で個別に分析します。
8社の概要一覧
| No. |
企業名 |
メディア名 |
主な成果 |
| 1 |
キーエンス |
技術情報サイト群(約80サイト) |
営業利益率54%を支えるリード獲得基盤 |
| 2 |
freee |
経営ハッカー |
月間400万PV・freee登録への安定送客 |
| 3 |
カオナビ |
カオナビ人事用語集 |
月間200万PV・リード獲得コスト半減・受注額3倍 |
| 4 |
SmartHR |
SmartHR Mag. |
累計2,000万人閲覧・半期リード4,000件 |
| 5 |
才流(サイル) |
メソッド |
広告費ゼロで月間60件の商談獲得 |
| 6 |
マネーフォワード |
バックオフィスの基礎知識 |
月間1,000万PV突破・累計2,000本超 |
| 7 |
LIG |
LIGブログ |
月間500万PV・問い合わせ月50件超 |
| 8 |
HubSpot Japan |
HubSpot日本語ブログ |
1,000記事以上・トピッククラスターモデルの実践 |
「メディアの型」で分けると3つになる
一覧を型で整理すると、大きく3つのアプローチに分かれます。
| 型 |
特徴 |
該当企業 |
向いている企業 |
| 専門サイト分散型 |
1テーマ1サイトで小規模サイトを多数展開 |
キーエンス |
製品カテゴリが多く、各領域に技術知見がある |
| 大規模メディア型 |
1つのメディアに幅広いテーマを蓄積 |
freee/マネーフォワード/LIG |
複数プロダクトを持つ、または継続投資の体力がある |
| ナレッジ公開型 |
自社の方法論・用語解説を体系的に公開 |
カオナビ/SmartHR/才流/HubSpot Japan |
無形サービスで、社内にナレッジが蓄積している |
ただし、この分類は入口の整理にすぎません。どの型を選ぶかは、記事本数を何本作れるかではなく、「継続的に一次情報を出せるテーマがいくつあるか」で決まります。テーマが1つしか無い会社が専門サイト分散型を選ぶと、どのサイトも中身が薄くなります。
この領域に関心がある方にはコンテンツマーケティングとは?BtoB企業が成果を出す基礎知識と実践ステップもおすすめです。
事例1〜2: 「学び」を入口にしたリード獲得(キーエンス/freee)
最初の2社は、製品の説明ではなく「読者が学べること」を入口にリードを獲得している事例です。どちらも自社商材から一歩引いたテーマ設計をしており、潜在層との接点づくりに成功しています。
キーエンス ── 約80の技術情報サイトによる「学び型」リード獲得
課題:キーエンスはセンサ、測定器、画像処理機器などの精密機器メーカーです。高い営業力で知られる一方、エンジニアが自ら情報収集する時代において、Web上での見込み客との接点構築が課題となっていました。
施策:
- 「バーコード講座」「安全知識.com」「測定器ナビ」「熱処理入門」「FAロボット.com」「センサとは.com」など、製品カテゴリごとに約80の専門サイトを個別に開設
- 各サイトは数十ページ規模のコンパクトな構成で、エンジニアが「学べる」技術解説コンテンツを提供
- すべてのサイトにPDF資料のダウンロード機能を設置し、閲覧には会員登録(氏名・メールアドレス・会社名・電話番号)を条件化
- 数千点に及ぶダウンロード資料(カタログ・技術資料・CADデータ等)で複数回の接点を創出
成果:約80の技術情報サイトがリード獲得基盤として機能し、Web会員の獲得とメルマガ配信・営業アプローチの連動を実現しています。営業利益率54.1%(2023年3月期)を支えるマーケティング基盤の一角を担い、ニッチな技術キーワードで検索上位を確保しています。
再現ポイント:
- ニッチ特化の徹底 — 1サイト1テーマで、他社が追随しにくい専門性の高いコンテンツを構築
- 「学び」を入口にしたリード獲得 — 直接的な製品プロモーションではなく、技術教育コンテンツでエンジニアとの信頼関係を構築
- コンパクトサイト×多数展開 — 巨大メディア1つではなく、小規模な専門サイトを多数展開するアプローチ
ただし、このアプローチには前提があります。約80サイトそれぞれに一次情報を供給できる社内の技術者と、獲得した会員情報を営業が追える基盤の両方が必要です。サイト数だけ増やして会員データの管理が追いつかないと、リードが溜まるだけで商談につながりません。記事を増やす前に、獲得したリードを誰がどう追うかを決める——これが順序としては先になります。
出典・参考: 才流「キーエンスのWebマーケティングが凄すぎるので、解説してみた」 / Core Insight「キーエンス コンテンツマーケティング」 / Markethink「製造業のコンテンツマーケティングをKEYENCEから学ぶ」
freee ── 「経営ハッカー」で月間400万PVの経営者メディアを構築
課題:クラウド会計ソフトを提供するfreeeは、「会計ソフト」というキーワードだけでは潜在層にリーチしにくく、経営者・個人事業主が日常的に接触するメディアを自社で持つ必要がありました。
施策:
- 「経営×テクノロジー」をテーマにしたオウンドメディア「経営ハッカー」を運営
- 経理・会計だけでなく、人事・税務・経営戦略など経営者の実務全般をカバーする幅広いコンテンツ設計
- 税理士・会計士・社労士など外部の専門家による監修記事で信頼性を担保
- 著名経営者へのインタビュー記事でストック型コンテンツとフロー型コンテンツを両立
- 高頻度の更新体制を維持し、コンテンツの企画ネタ提供に全社員が参加する仕組みを構築
成果:月間400万PVを達成(ピーク時)し、freeeの無料登録への安定的な送客チャネルとして機能しています。「経営」「確定申告」「会計」など幅広いキーワードで上位表示を獲得し、経営者・個人事業主コミュニティにおけるブランド認知の向上につながりました。
再現ポイント:
- PVよりもコンテンツの質を重視 — 編集チームはCV率ではなく「読者に価値のある記事を毎日届ける」ことをKPIに設定し、結果的にPVもCVも伸びた
- 全社参加型の運営体制 — コンテンツのネタ出しに全社員が参加することで、顧客の生の課題を記事に反映
- 専門家監修の徹底 — 会計・税務など正確性が求められる領域で、専門家監修による信頼性が被リンクやリピートにつながった
注目していただきたいのは「全社参加型の運営体制」です。これは属人化の逆を行く発想で、ネタ出しを編集担当の個人技にせず、全社の窓口に分散させています。ネタの収集先を仕組みとして持てば、担当が替わっても企画が枯れません。
出典・参考: プロモニスタ「freeeのオウンドメディア『経営ハッカー』が何よりも大事にしている考え方」 / プロモニスタ「月間100万PV超えの『経営ハッカー』をコンテンツマーケティング戦略視点で調べてみた」 / Wantedly「400万PVの経営者向けメディア『経営ハッカー』編集長に聞く」
事例3〜4: データと設計で勝ちにいくSEO型(カオナビ/SmartHR)
続く2社は、キーワードとコンテンツ構造を設計しきることで成果を出した事例です。どちらも「闇雲に書かない」判断が成果につながっています。
カオナビ ── 「人事用語集」でSEOを制し、受注額3倍を実現
課題:タレントマネジメントシステムを提供するカオナビは、以前「人事タックル」というオウンドメディアを運営していましたが、セッション数が伸び悩み、「人事評価」「タレントマネジメント」などの主要キーワードで検索上位に表示されない状態が続いていました。
施策:
- SEO特化型オウンドメディアとして「カオナビ人事用語集」を新たに立ち上げ
- 人事・労務に関する用語解説を軸に、「検索ボリューム」「カテゴリ」「自社プロダクトとの親和性」「ユーザーニーズ」の4軸でコンテンツの優先順位を決定
- SEO解析ツール「MIERUCA(ミエルカ)」を導入し、データに基づくコンテンツ生産体制を構築
- キーワード調査→記事制作→効果測定→リライトのPDCAサイクルを徹底
成果:月間200万PV・月間100万セッションを達成し、リード獲得コストが半減、受注額が3倍に増加しました。「人事評価」「タレントマネジメント」など主要キーワードで検索上位を獲得しています。
再現ポイント:
- 既存メディアの失敗から学んだ再出発 — 「人事タックル」の反省を活かし、SEOに特化した設計で再スタートした判断
- 4軸評価によるコンテンツ優先順位付け — 闇雲に記事を量産するのではなく、事業インパクトの高いキーワードから着手
- ツール活用によるデータドリブン運営 — 感覚ではなくデータに基づく記事制作・改善のサイクル
この事例で最も応用しやすいのは4軸評価です。記事案を「検索ボリューム」「カテゴリ」「自社プロダクトとの親和性」「ユーザーニーズ」で点数化すれば、着手順の議論が担当者の好みではなく基準に基づくものになります。評価軸を定義した時点で、誰が回しても同じ優先順位が出る運用に変わります。
出典・参考: Web担当者Forum「BtoBオウンドメディアで月間200万PV超を実現したカオナビの手法」 / ミエルカ「オウンドメディア活用で、リード獲得コストは半減・受注額は3倍!」 / カオナビ公式note「月間100万セッション!カオナビ人事用語集」
SmartHR ── 「SmartHR Mag.」で法改正トレンドを捉え、事業成長に直結
課題:クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRは、後発のSaaS企業として、競合がひしめく人事労務領域で認知を獲得し、「人事労務の課題を解決するならSmartHR」という第一想起を確立する必要がありました。
施策:
- 2016年に「SmartHR Mag.」を開設。人事・労務担当者向けに「働く明日が、もっとよくなる」をコンセプトに運営
- 「働き方改革関連法」施行を見据え、関連コンテンツを戦略的に大量投入
- ピラーコンテンツ(柱記事)2本+クラスターコンテンツ(関連記事)50本弱の体系的な構成
- PV目標ではなく「リード獲得」と「ブランド認知」をKPIに設定。eBookダウンロードを主要CTAに設計
- 1名の編集体制からスタートし、「選択と集中」で効率的に成果を出す運営体制
成果:累計2,000万人以上が閲覧(開始から約8年、約1,000本の記事を公開)しています。働き方改革関連のピラーコンテンツ2本で約40万PV、クラスターコンテンツ全体で約150万PVを記録し、2021年上期に約4,000件のリード獲得に寄与、eBookダウンロードは働き方改革関連記事経由で推計約1,400件でした。月間30万UU突破時点で前年同月比3.9倍の成長を達成しています。
再現ポイント:
- 法改正・制度変更のトレンドを先読み — 施行前にコンテンツを準備し、検索需要が高まるタイミングで上位表示を獲得
- ピラー×クラスター戦略の実践 — 概要記事(ピラー)と詳細記事(クラスター)を内部リンクでつなぎ、SEO評価とユーザー体験を両立(設計の詳細はトピッククラスターとは?)
- 限られた体制でも成果を出す「選択と集中」 — すべてをやろうとせず、事業インパクトの大きいテーマに絞って集中投下
1名の編集体制から始めている点は、リソースが限られる企業にとって現実的な示唆です。ピラー2本+クラスター50本弱という構成は、いきなり全領域を網羅するのではなく、1つのテーマ群を完成させてから次に移るアプローチです。まずは1クラスターを完成させ、成果を確認してから2つ目に広げる——この順序であれば、限られた体制でも運用が破綻しません。
出典・参考: はてなビジネスブログ「SmartHRのオウンドメディアが担う事業貢献とは?」 / 白船「前年同月比3.9倍のオウンドメディアが大切にした3つのこと」 / note 藤田隼「SmartHRで実施してきた『これマジで良かった』コンテンツマーケティング施策7選」
事例5〜6: ナレッジ公開と記事資産の積み上げ(才流/マネーフォワード)
才流とマネーフォワードの2社は、コンテンツを「短期の集客手段」ではなく「事業資産」として扱っている事例です。投資の考え方と時間軸の取り方に学ぶ点があります。
才流(サイル) ── 「メソッド」公開で広告費ゼロ・月60件の商談を実現
課題:BtoBマーケティング・営業支援のコンサルティング会社である才流は、コンサルティングサービスの特性上サービス内容が見えにくく、「BtoBマーケティングコンサル」という検索キーワード自体のボリュームも極めて少ないという状況にありました。
施策:
- 2018年にコーポレートサイト内の「メソッド」として、自社で開発したBtoBマーケティングのノウハウ・フレームワーク・テンプレートを公開
- SEOだけでなく、代表・栗原氏のX(旧Twitter)での情報発信とオウンドメディアの相乗効果を狙った戦略
- ホワイトペーパー制作に1本あたり1,000万円程度を投資し、質で差別化する方針
- 主催・共催ウェビナーやオンラインカンファレンスとコンテンツを連携
- コンサルタントが日常業務で蓄積したナレッジを記事化するフローを構築
成果:広告費ゼロで年間数千件のリード獲得に成功し、インバウンドで月60件の商談を獲得しています。1つのホワイトペーパーで5,856リードを獲得した実績があり、採用面でも面接者の9割が才流を事前に認知しているという効果が出ています。
再現ポイント:
- ノウハウの出し惜しみをしない — コンサルティング会社でありながらメソッドを無料公開。「全部教えても実行支援のニーズはなくならない」という割り切り
- SNSとオウンドメディアの相乗効果 — Xでの認知拡大とメソッド記事への誘導を組み合わせた複合的なアプローチ
- コンテンツの質への投資判断 — ホワイトペーパー1本への大きな投資。量ではなく質で差別化
ここで再現すべきなのは投資額ではなく、ナレッジを記事化するフローを業務に組み込んだという点です。コンサルタントが案件で得た知見を、個人のメモで終わらせずコンテンツの原型として残す。この流れが業務プロセスに入っていれば、ネタ切れという問題自体が起きにくくなります。
出典・参考: 才流「年間数千リードを獲得する、才流のコンテンツマーケティング事例」 / 才流「才流のコンテンツマーケティングの裏側【5年間のプロセス全公開】」 / ホットリンク「才流が目指す『メソッドカンパニー』とは?」
マネーフォワード ── 「バックオフィスの基礎知識」で月間1,000万PV突破
課題:マネーフォワードはクラウド会計・経費精算・請求書発行など、バックオフィス業務のSaaSを複数展開しています。各プロダクトへの潜在顧客を効率的に獲得するために、バックオフィス業務全般をカバーするメディアが必要でした。
施策:
- バックオフィス業務(経理・会計・人事・労務・法務・総務)の実務ノウハウを体系的に発信する「バックオフィスの基礎知識」を運営
- 税理士・社労士・弁護士など各分野の専門家による監修記事で品質を担保
- 累計2,000本超の記事を蓄積し、バックオフィス領域の検索キーワードを幅広くカバー
- 記事内からマネーフォワードの各プロダクト(会計・給与・経費など)への自然な導線を設計
成果:メディア開設8年目の2022年に月間1,000万PVを突破し、累計記事数は2,000本超となっています。マネーフォワードの複数プロダクトへの送客チャネルとして機能しています。
再現ポイント:
- 複数プロダクトへの送客設計 — 1つのメディアから複数のSaaSプロダクトへ自然に誘導する設計
- 長期的な記事資産の積み上げ — 8年間で2,000本超。コンテンツマーケティングは短期施策ではなく資産構築
- 専門家監修による網羅性と信頼性 — 各領域で専門家が監修することで、SEO評価と読者の信頼を同時に獲得
複数プロダクトへの送客設計は、実務上かなり難易度が高い部分です。記事Aを読んだ人が製品Xに関心を持ったのか製品Yなのかを、リード情報として区別して記録できなければ、営業側は何を提案すべきか判断できません。プロダクトが複数ある企業ほど、記事とリードの紐付けを最初に設計しておく必要があります。
出典・参考: PR TIMES「オウンドメディア『バックオフィスの基礎知識』が月間1,000万PVを突破!」 / Bridge「バックオフィス系メディアで月間1,000万PVを達成!」
事例7〜8: ブランド確立と構造設計(LIG/HubSpot Japan)
最後の2社は、記事の積み上げ方とサイト構造の設計で成果を出している事例です。特にHubSpot Japanのトピッククラスター運用は、記事数が少ない段階から応用できます。
LIG ── LIGブログで「Web制作会社」ブランドを確立
課題:Web制作・デザイン・システム開発を手がけるLIGは、中小のWeb制作会社として大手企業と競合するなかで知名度を向上させ、安定的に案件を獲得するチャネルを構築する必要がありました。
施策:
- 2006年からLIGブログを運営。Web制作・デザインのナレッジ記事に加え、社員の個性を活かしたユニークなコンテンツで差別化
- SEO対策を中心に据えながら、SNSでの拡散を狙ったバラエティ系コンテンツも展開
- 蓄積記事数9,500本以上という記事資産を構築
- 「Web制作会社」などのビッグキーワードでSEO上位表示を獲得する戦略にシフト
成果:月間500万PVを達成し、SEO施策強化後は問い合わせ月50件超を獲得しています。新規リードの大半がブログ経由で、PVの約7割が検索エンジンからの流入です。「LIG」というブランドの確立に成功し、採用面でも効果が出ています。
再現ポイント:
- SEO×SNSの両輪戦略 — SEOで安定的なトラフィックを確保しつつ、SNSでの拡散も狙うハイブリッドアプローチ
- 企業の「人」を前面に出すコンテンツ — 社員の個性を活かした記事がブランドの差別化要因に
- 記事資産の蓄積 — 9,500本以上の蓄積が、幅広い検索キーワードでの流入を可能にしている
ただし、バラエティ系コンテンツによる差別化は誰にでも再現できるものではありません。社員が表に出ることを是とする文化と、それを継続できる人材が必要です。自社の文化に合わないなら、この部分は無理に真似せず、SEO側の設計に集中する判断が現実的かと思います。
出典・参考: Web担当者Forum「人気メディア『LIGブログ』の編集長が語る!成功と失敗から学ぶオウンドメディア運営術」 / LIG「オウンドメディアの成功事例13選!」
HubSpot Japan ── 日本語ブログでトピッククラスターモデルを実践
課題:CRM・MA・SFA統合プラットフォームを提供するHubSpotは、米国発のサービスとして日本市場における認知度向上と、「インバウンドマーケティング」という概念の普及を同時に進める必要がありました。
施策:
- HubSpot日本語ブログで1,000記事以上を公開。月間30〜40本のペースで、新規記事と既存記事のリライトを半々で運用
- 自社が提唱する「トピッククラスターモデル」を自ら実践。ピラーページを軸に関連記事を体系的にリンクで接続
- BtoBビジネス経験を重視したライター選定で、実務に根差したコンテンツの質を担保
- 社内スタッフと外部パートナー合わせて約50名体制で運営
- ブログ経由のリード創出だけでなく、「HubSpotのファンづくり」「既存顧客のエンゲージメント向上」もKPIに設定
成果:1,000記事以上の日本語コンテンツを蓄積し、「CRM」「MA」「インバウンドマーケティング」など主要キーワードで検索上位を獲得しています。トピッククラスター戦略によりリード獲得率198%向上・販売機会67%増加というグローバル実績が公開されています。
再現ポイント:
- トピッククラスターモデルの徹底 — 1クラスターの構築に3〜4ヶ月を投入し、ピラーページ1本+クラスターコンテンツ6〜8本を計画的に制作。設計の詳細はトピッククラスターとは?SEO効果を最大化するサイト設計の作り方を参照
- リライトの仕組み化 — 新規記事と同じくらいの工数をリライトに割り当て、既存記事の鮮度を保つ
- 「売る」より「教える」姿勢 — 自社製品のプロモーションではなく、マーケティング・営業の課題解決に焦点を当てたコンテンツで信頼を構築
ピラー1本+クラスター6〜8本を3〜4ヶ月という単位は、記事本数が少ない企業でも取り組める規模感です。記事数を年間目標にするのではなく、クラスター数を目標にするという置き換えが、この事例から得られる実務的なヒントです。
出典・参考: 才流「HubSpotブログの裏側」 / MarkeZine「HubSpotブログ編集長に聞く、BtoBのオウンドメディアで追うべきKPI」 / HubSpot「BtoB企業のオウンドメディア成功事例10選」
8社に共通する5つの要素と、その相互関係
ここまでの8社を横断して分析すると、成功しているBtoBオウンドメディアには共通する5つの要素が見えてきます。重要なのは、この5つが独立した施策ではなく、連鎖する構造になっている点です。
共通要素の一覧
| 要素 |
内容 |
該当企業の例 |
| テーマ特化 |
広く浅くではなく、特定領域で深いコンテンツを展開 |
キーエンス(技術領域別)、カオナビ(人事用語)、SmartHR(人事労務) |
| ペルソナ明確 |
1〜2つのペルソナに絞って設計 |
才流(BtoBマーケター)、SmartHR(人事労務担当者) |
| CTA設計 |
記事の内容と連動したリードマグネットを用意 |
キーエンス(技術PDF)、才流(テンプレート)、SmartHR(eBook) |
| 継続的更新 |
最低でも週1本以上の更新を長期間継続 |
freee(高頻度更新)、LIG(9,500本蓄積)、マネーフォワード(2,000本超) |
| データ活用 |
検索順位・CV・リード数を定期的に分析し改善 |
カオナビ(ミエルカ活用)、HubSpot(トピッククラスター分析) |
5要素は一方向ではなく循環する
5つの要素は、次のようにつながっています。
テーマ特化 → ペルソナ明確化 → 質の高いコンテンツ → SEO上位表示
↓ ↓
CTA最適化 ← データに基づく改善 ← リード獲得 ← トラフィック増加
この図で注目していただきたいのは、下段の「リード獲得 → データに基づく改善」の部分です。上段(記事を作って検索から人を集める)だけで止まっているメディアが非常に多く、これが「PVは増えたが商談は増えない」という状態の正体です。
循環を成立させるには、どの記事からどのリードが入り、そのリードがその後どうなったかを追跡できる状態が前提になります。記事の管理表とリードのリストが別々のファイルで管理されていると、この接続が切れます。
見落としがちな「時間軸」
8社の事例で見過ごしてはならないのが、成果が出るまでの期間です。
- カオナビは「人事タックル」の失敗を経て、「人事用語集」で再スタートして成果を出しています
- 才流は2018年から5年間かけてコンテンツマーケティングの仕組みを構築しました
- マネーフォワードは8年目にして月間1,000万PVを突破しました
- LIGは2006年から長期にわたりブログを運営し続けています
オウンドメディアは「6〜12ヶ月で成果が見え始め、2〜3年で本格的な成果が出る」のが現実的なタイムラインです。 短期的なROIを求めすぎると、成果が出る前に撤退してしまう失敗パターンに陥ります。
率直に言って、オウンドメディアが向かないケース
事例集は成功した企業しか載りませんが、着手を見送った方がよい状況もあります。
| 状況 |
理由 |
先に検討したいこと |
| 3か月以内にリードが必要 |
検索流入は立ち上がりに時間がかかる |
展示会・広告・既存リストへのアプローチ |
| 社内に一次情報を出せる人がいない |
一般論の記事では差別化できない |
顧客インタビューや営業の受注・失注理由の蓄積 |
| 獲得したリードを追う体制が無い |
リードが溜まるだけで商談化しない |
リード管理と営業フォローの設計 |
| テーマが決まらず議論が続いている |
迷ったまま書くと軸がぶれる |
既存顧客がなぜ自社を選んだかの整理 |
3つ目の「リードを追う体制が無い」は特に多いパターンです。記事を書く前に、リードが入ったら誰がいつ何をするかを決めておくほうが、結果的に早く成果につながります。
記事からリード・商談までを一気通貫でつなぐ運用設計
ここからは、事例の分析から一歩進んで「自社でどう運用するか」の話です。私たちがご相談をいただく際、コンテンツの質より先に問題になるのが、記事・リード・商談の情報が分断されている状態です。
スプレッドシート運用が限界を迎えるポイント
多くの企業は、記事の管理をスプレッドシートで始めます。記事タイトル、公開日、担当者、対象キーワード、検索順位——ここまでは問題なく回ります。限界が来るのは、リードの情報を紐付けようとした瞬間です。
| 管理対象 |
よくある管理場所 |
発生する問題 |
| 記事一覧・キーワード |
スプレッドシート |
順位データの更新が手作業になる |
| 問い合わせ・資料請求 |
フォームツールのCSV |
どの記事経由かが分からない |
| メール配信履歴 |
配信ツール |
記事閲覧とメール反応が別管理 |
| 商談状況 |
営業の別シート |
リード側と名寄せできず突合が手作業 |
しかも人が手で突き合わせるため、数字が担当者によって変わります。数字が人によって変わる状態では、改善の議論が成立しません。
CRMに記録を寄せると何が変わるか
HubSpotのようなCRMを使う場合、コンタクト・会社・取引が関連付けられたデータベースになっているため、「誰が」「どの記事を見て」「どのフォームから入り」「その後どの商談になったか」が1つのレコード上でつながります。記事はContent Hubで管理し、フォーム送信でコンタクトが作られ、そのコンタクトが取引に紐づく——この流れが1か所で追える状態です。
全体フローに置き直すと、次の位置関係になります。
| 段階 |
起きること |
記録される場所 |
| 記事閲覧 |
検索流入した訪問者が記事を読む |
閲覧履歴 |
| CTA接触 |
記事内のCTAから資料請求 |
フォーム送信履歴 |
| リード化 |
コンタクトが作成される |
コンタクトレコード |
| ナーチャリング |
ステップメール配信・反応記録 |
コンタクトのアクティビティ |
| 商談化 |
営業がアプローチし取引を作成 |
取引レコード(パイプライン) |
| 受注/失注 |
結果と理由を記録 |
取引のクローズ情報 |
ここで重要なのは、最後の「失注理由の記録」です。失注した理由をカテゴリー(価格/競合/機能/時期/社内決裁など)で分類しておくと、どのテーマの記事を増やすべきかがデータで見えてきます。
- 「機能不足で失注」が多いなら ── その機能への懸念を解消する記事が必要です
- 「時期尚早」が多いなら ── そのリードをナーチャリングに戻して再度育てる設計が必要です
失注を終わりにせず、掘り起こしのループに戻す——これが記事企画の一次情報にもなります。
HubSpotで記事経由のリードを追う設定手順
「記事からリード・商談まで追える」状態は、設定で作れます。ここでは、ブログ記事をContent Hubで公開している前提で、最低限の設計をまとめます。流入元の自動記録は、HubSpotのトラフィックソースプロパティー(公式ナレッジ)に基づきます。コンタクトの「Original Traffic Source(最初の流入元)」には、Organic search・Paid search・Email marketing・Organic social・Referrals・AI Referrals・Other campaigns・Direct traffic・Paid social・Offline sources の値が自動で入ります。さらに詳細な値がドリルダウン1(SNSサイトやキャンペーン名など)とドリルダウン2(URLやメール名など、最も具体的な情報)に入ります。
- 流入元の記録を確認する — コンタクトレコードの「すべてのプロパティを表示」で、最初の流入元とドリルダウン1・2に値が入っているかを確認します。広告ブロッカーによってトラッキングが効かず値が欠けることがあるため、欠損の割合も見ておきます
- 記事に対応するプロパティを足す — 設定(歯車アイコン)> プロパティ > コンタクトのプロパティで「プロパティを作成」を選び、「流入記事」(単一行テキスト)や「問い合わせ種別」(ドロップダウン)を作ります。内部名は作成後に変更できないため、先に命名ルールを決めておきます
- フォームごとに値を渡す — 資料請求フォームには非表示フィールドを置き、記事ごと・CTAごとの識別子を「流入記事」に入れます。1つの記事に複数のCTAがある場合は、CTAの位置まで識別できる値にします
- リードを営業につなぐワークフローを作る — 自動化 > ワークフローで、フォーム送信を登録条件にし、ライフサイクルステージの更新と担当者への通知を設定します。登録条件は条件(フィルター)型・イベント型・スケジュール型・Webhook型から選べます
- レポートで記事ごとの成果を見る — 「流入記事」ごとのコンタクト数と、そこから作成された取引数を並べます。コンタクト・会社・取引を横断する集計は、カスタムレポートビルダーで組みます。アトリビューションレポートは Marketing Hub または Content Hub のEnterpriseが前提のため、契約プランを先に公式ナレッジで確認してください
| プロパティ(例) |
役割 |
運用上の注意 |
| Original Traffic Source(標準) |
最初に接触した流入元の大分類 |
自動で入る。手動で変えるとドリルダウンが消えるため、原則は編集しない |
| 流入記事(カスタム・単一行テキスト) |
どの記事・CTAでリード化したか |
フォームの非表示フィールドで値を渡す。記事のURL末尾の識別名に揃えると集計しやすい |
| 問い合わせ種別(カスタム・ドロップダウン) |
営業目的か、情報収集段階か |
選択肢は3〜5個に絞る。増やすとレポートが読めなくなる |
| 失注理由(取引の標準プロパティ) |
記事企画に戻す一次情報 |
価格・競合・機能・時期・社内決裁などのカテゴリで統一する |
よくある失敗は、プロパティを先に増やしすぎることです。レポートで使う予定の無い項目を作ると、入力する人の負担だけが増えます。まず「流入記事」と「失注理由」の2つだけで始め、3か月運用して、記事企画の判断に使えたかを見てから増やすのが現実的です。
「人」ではなく「仕組み」で運用を回す
オウンドメディア運用が属人化する典型は、記事公開後の処理が担当者の手作業になっているケースです。次のような部分は、ルールとして定義してしまえば人が替わっても回ります。
- 特定のホワイトペーパーをダウンロードしたコンタクトに、自動でフォローメールを送る
- 特定のページを複数回閲覧したコンタクトを、確認対象として営業に通知する
- フォーム送信の内容から、営業目的の問い合わせと見込み客の問い合わせを自動で振り分ける
- 一定期間反応の無いコンタクトを、再アプローチ用のリストに戻す
ただし、自動化には正直な限界もあります。メールの自動送信を無条件に走らせると、文面が状況に合わずに逆効果になることがあります。私たちは、下書きの生成や分類の自動化は積極的に使い、最終的な送信判断や重要な商談へのアプローチは人が確認するという線引きをおすすめしています。AIに任せられるのは分類・要約・下書きまでで、誰に何を伝えるかの判断は人の仕事です。
以下の図は、HubSpotのデータベース構造のイメージです。リード・コンタクト・会社・取引が相互に関連付けられており、1社に複数の担当者が紐づくため、同じ企業から複数人が記事経由で資料請求した場合も、会社単位で状況を把握できます。

なお、こうしたリレーション型のデータ管理はHubSpotに限った話ではなく、同様の構造を持つ他のCRMでも実現できます。重要なのはツール名ではなく、記事・リード・商談が1つの線でつながっているかどうかです。
自社だけで進めるか、伴走を使うかの判断と、StartLinkの支援の進め方
設計までは社内で決められても、「プロパティ設計」「フォームの作り替え」「既存リードの移行」「ワークフローの検証」を本業と並行して進めるのは負担が大きく、ここで止まる運用が少なくありません。StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、150社以上のHubSpot支援実績をもとに、次の流れで進めます。公開しているサービスの流れはHubSpot導入・構築支援のページにあります。
- 現状の整理・要件定義 — 記事の管理表、フォーム、リード一覧、取引の状況を棚卸しし、「何を追えれば意思決定できるか」を決めます
- 設計・構築 — プロパティ、フォーム、ワークフロー、レポートを設計し、構築します。まず1クラスターだけ対象にするスモールスタートです
- データ移行 — スプレッドシートやMAツールにあるリードを、関連付けを保ったまま移行します
- テスト・検証 — テスト送信で、流入記事・担当者通知・取引化までが想定どおり動くかを確認します
- 定着・運用改善 — 週次のレビューで数字を見ながら、設定とコンテンツ企画を改善します
| 状況 |
社内で進める |
伴走を使う |
| HubSpotの管理者がいて、設定の経験がある |
向いている。まず1クラスターで試す |
設計のレビューだけ依頼する形もある |
| 既存リードの移行や、他ツールとの連携が必要 |
データ件数が少なければ可能 |
移行の検証が必要なため向いている |
| 記事制作の担当と営業の間で、数字の定義が揃っていない |
定義の合意に時間がかかりやすい |
要件定義の段階から入ると進めやすい |
伴走は準委任で進めるため、役割分担はHubSpot導入支援は準委任か請負かで整理しています。定着の段階で見る数字は、週次パイプラインレビューとデータ品質ダッシュボードの記事が参考になります。AIを使った記事の分類・要約・下書きをHubSpotのBreezeなどで業務に組み込む場合は、HubSpot×AIのページもご覧ください。HubSpotとNotionで記事の企画情報を分けて管理している場合は、StartLinkが開発するSync for Notionでデータをつなぐ選択肢もあります。
自社で再現するための優先順位
観点を並べても、全部を同時にはできません。8社の事例から導かれる観点を、着手時期で3つに分けて整理します。企業様によって最適な形は異なりますので、自社の状況に合わせて順序を入れ替えていただければと思います。
今すぐ決めること(着手前)
| 観点 |
具体的にやること |
| テーマ領域 |
自社の強み・専門性を活かせる領域を1つに絞る |
| ペルソナ |
1〜2つに絞り、その人が何を検索するかを言語化する |
| 継続体制 |
週1本以上を6か月以上続けられる体制があるか確認する |
| 撤退ライン |
最低12か月は継続するという経営判断を先に取る |
テーマとペルソナが決まっていない状態で記事を書き始めると、後から軸を変えることになり、書いた記事の多くが無駄になります。カオナビが「人事タックル」から「人事用語集」へ切り替えたように、軸の変更は実質的な作り直しになります。
3か月以内に整えること
| 観点 |
具体的にやること |
| キーワードリスト |
ペルソナの検索行動に基づくリストを作る |
| リードマグネット |
記事と連動したホワイトペーパー・テンプレートを用意する |
| 効果測定 |
月次で検索順位・PV・CV・リード数を確認する運用を始める |
| リード対応 |
リードが入ったら誰がいつ何をするかを決める |
半年以降に取り組むこと
| 観点 |
具体的にやること |
| リライト |
改善の仕組みを運用プロセスに組み込む |
| 営業連携 |
営業がコンテンツを商談で活用できる状態にする |
| CRM連携 |
コンテンツ→リード→商談の一気通貫の流れを設計する(BtoBコンテンツマーケティング完全ガイドも参考に) |
| テーマ拡張 |
1つ目のクラスターが成果を出してから2つ目に広げる |
HubSpotで運用する場合の位置づけ
BtoBオウンドメディアを実務に落とし込む際、記事の公開基盤とリード管理が分かれていると、先述した分断が起きます。HubSpotの場合、Content Hubでブログを運営しつつ、同じ基盤上でCRMのコンタクト・取引とつながるため、記事からの流入がそのまま顧客データとして蓄積されます。SEOの管理機能については「HubSpotのSEOツール完全ガイド|トピッククラスター設計・検索順位モニタリング」で解説しています。
ただし、既存のWebサイトを別のCMSで運用している場合、すべてをすぐに移行する必要はありません。まずはフォームとトラッキングコードだけをHubSpot側に寄せて、記事経由のリードが追える状態を作る——この形からのスモールスタートでも、分断の問題は解消できます。
よくある質問
Q1. BtoBオウンドメディアの成功に共通するポイントは何ですか?
キーエンス・freee・カオナビ・SmartHR・才流・マネーフォワード・LIG・HubSpot Japanの8社に共通するのは、次の5つです。
- テーマの特化
- 1〜2つに絞った明確なペルソナ設計
- 記事と連動したCTA設計
- 週1本以上の継続的な更新
- データに基づく改善サイクル
この5つは独立した施策ではなく、テーマ特化からリード獲得を経てデータ改善に戻る循環構造になっています。ただし成功事例をそのまま真似しても成果は出ず、自社の専門性と読者の課題が交わる領域を見つけることが前提になります。
Q2. オウンドメディアで成果が出るまでどのくらいかかりますか?
6〜12か月で成果が見え始め、2〜3年で本格的な成果が出るのが現実的なタイムラインです。マネーフォワードの「バックオフィスの基礎知識」は8年目に月間1,000万PVを突破し、才流は2018年から5年かけて仕組みを構築、LIGは2006年からブログを運営しています。短期のROIを求めすぎると成果が出る前に撤退することになるため、着手前に「最低12か月は継続する」という合意を社内で取っておくことをおすすめします。
Q3. リード獲得に直結した施策として具体的にどんな成果がありますか?
具体的な成果は次のとおりです。
- カオナビ ── 「人事用語集」で月間200万PVを達成し、リード獲得コストが半減、受注額が3倍になりました
- SmartHR ── 働き方改革関連のピラー2本+クラスター50本弱の構成で2021年上期に約4,000件のリード獲得に寄与しました
- 才流 ── 広告費ゼロで月60件の商談を獲得、ホワイトペーパー1本で5,856リードを獲得した実績があります
いずれも記事単体ではなく、記事とリードマグネットの組み合わせで成果が出ている点が共通しています。
Q4. 記事を大量に作れない企業でも再現できますか?
再現していただけます。ただしテーマを1つに絞ることが条件です。キーエンスは巨大メディア1つではなく数十ページ規模のコンパクトな専門サイトを約80展開し、SmartHRはひとり編集部から始めて「選択と集中」で成果を出しました。
Q5. どの記事が商談につながったかを把握するには何が必要ですか?
記事の管理表とリードのリストが別ファイルになっていると、突合が手作業になり、担当者によって数字が変わってしまいます。フォーム送信時にどのページから来たかを記録し、そのコンタクトが後に商談(取引)へ進んだかを同じデータベース上で追える状態にすることが必要です。HubSpotのようにコンタクト・会社・取引が関連付けられたCRMであれば、記事閲覧からクローズまでを1つのレコード上で確認できます。同様の構造を持つ他のCRMでも実現可能です。
Q6. HubSpotで記事経由のリードを追うには、最初に何を設定すればよいですか?
まず流入元(Original Traffic Source とドリルダウン1・2)が記録されているかを確認し、次にコンタクトのプロパティに「流入記事」を足して、フォームの非表示フィールドで記事ごとの値を渡します。取引側には失注理由のカテゴリを揃え、記事ごとのコンタクト数と取引数をレポートで並べます。最初は「流入記事」と「失注理由」の2項目だけで始め、3か月運用してから増やす進め方がおすすめです。
まとめ
BtoBオウンドメディアの成功事例8社に共通するのは、「テーマの絞り込み」「明確なペルソナ設計」「CTA最適化」「継続的な更新」「データに基づく改善」の5要素です。そしてこの5要素は、記事を書いて終わりではなく、リード獲得のデータが次の記事企画に戻る循環として機能しています。
ただし、繰り返しになりますが、これらの事例をそのまま真似しても成果は出ません。キーエンスの技術サイト群は自社エンジニアの知見があるから、才流のメソッド公開はコンサルタントの蓄積があるから成立しています。重要なのは、自社ならではの「専門性」と「読者の課題」の交差点を見つけることです。
いきなり2,000本の記事を目指す必要はありません。まずは次の3ステップから始めてみてください。
- テーマとペルソナを1つに絞る — 既存顧客がなぜ自社を選んだのかを振り返り、書ける一次情報がある領域を特定します
- 1クラスターだけ作る — ピラー記事1本+関連記事6〜8本を3〜4か月で完成させ、成果を確認してから次に広げます
- リードの追跡を先に設計する — 記事を増やす前に、フォーム送信から商談までを同じ場所で追える状態を作ります
特に3つ目は多くの企業が後回しにしがちです。記事を制作してリードを獲得しても、そのリードがどの記事から来て、どの商談につながったかを追跡できなければ、投資対効果を正しく評価できず、改善の議論も感覚論になってしまいます。スプレッドシートでの二重管理から抜け出し、記事・リード・商談を1つの線でつなぐこと——ここが仕組み化の起点です。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのHubSpotゴールドパートナーのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
あわせて読みたい