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「Salesforceを使っているが、運用コストが年々膨らんでいる」
「カスタマイズしすぎて、社内の誰もメンテナンスできなくなっている」
——こうした課題から、SalesforceからHubSpotへの移行を検討する企業が増えています。
SalesforceとHubSpotは、どちらもBtoB CRM市場のトップ製品です。Salesforceの高い拡張性は魅力ですが、運用の複雑さやコストが事業規模に見合わなくなるフェーズがあります。
この記事では、実際にSalesforceからHubSpotへ乗り換えた企業の事例を通じて、移行の判断基準・プロセス・成果を具体的に解説します。
本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。
この記事でわかること
- SalesforceからHubSpotへ移行する企業に共通する課題
- 移行を決断した具体的な理由
- データ移行の進め方と注意点
- 移行後の運用変化と成果
- 移行すべき企業・すべきでない企業の判断基準
本記事では、HubSpotの活用における重要なポイントを体系的にまとめています。導入前の検討段階から運用改善まで、どのフェーズにいる方にも参考になる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | BtoB ITサービス |
| 従業員数 | 約120名 |
| Salesforce利用歴 | 5年 |
| 有償ライセンス数 | Sales Cloud 30名 + Pardot 5名 |
| 年間CRM関連コスト | 約1,200万円(ライセンス + 保守 + カスタマイズ) |
移行前の課題
課題1: 運用コストの肥大化
Salesforceのライセンス費用に加え、カスタマイズの保守費用、外部コンサルへの依頼費用が年々増加。5年間で年間CRM関連コストが当初の3倍に膨らんでいました。
- ライセンス費: 年間約600万円(Sales Cloud Enterprise × 30名 + Pardot)
- 保守・カスタマイズ費: 年間約400万円(外部SIerへの委託)
- 追加開発費: 年間約200万円(Apexカスタマイズ・連携開発)
課題2: カスタマイズの複雑化
5年間でApexトリガー・フロー・プロセスビルダーが増殖し、「このフローを変更すると何が影響を受けるかわからない」という状態に。Salesforce管理者が退職した際、後任が引き継げず、3ヶ月間メンテナンスが止まるという事態も発生しました。
課題3: SFAとMAの分断
Sales CloudとPardotを使っていましたが、UIが異なり、データの同期にタイムラグが発生。マーケティングチームと営業チームが「同じリードを違うデータで見ている」状態が日常化していました。
課題4: 現場の利用率の低下
入力項目が多すぎて営業が面倒に感じ、実際のデータ入力率が50%程度まで低下。CRMに入っているデータの信頼性が低いため、レポートも信頼されなくなるという悪循環に陥っていました。
HubSpot移行を決断した理由
理由1: TCO(総保有コスト)の大幅削減
HubSpotへの移行で年間コストを試算した結果、年間約550万円の削減が見込まれました。
| 費目 | Salesforce | HubSpot | 差額 |
|---|---|---|---|
| ライセンス費 | 600万円/年 | 350万円/年 | -250万円 |
| 保守・カスタマイズ費 | 400万円/年 | 100万円/年 | -300万円 |
| 追加開発費 | 200万円/年 | 0〜50万円/年 | -150〜200万円 |
| 合計 | 1,200万円/年 | 450〜500万円/年 | -700〜750万円 |
ただし、移行プロジェクト自体に約200万円のコストがかかったため、初年度の実質削減効果は約550万円でした。
理由2: MAとSFAのワンプラットフォーム統合
HubSpotはMarketing Hub・Sales Hub・Service Hubが1つのプラットフォームに統合されているため、PardotとSales Cloudの間で発生していたデータ同期の問題が根本的に解消されます。
理由3: 運用の内製化
Salesforceではカスタマイズの多くを外部SIerに委託していましたが、HubSpotはノーコードでのカスタマイズ範囲が広いため、社内のマーケティング担当者がワークフローやレポートを自分で作成・変更できるようになります。
移行プロセス
Phase 1(1ヶ月目): アセスメントと設計
- Salesforceの既存設定の棚卸し(使用中のオブジェクト・フロー・レポートを一覧化)
- 「本当に必要な設定」と「不要になった設定」の仕分け
- HubSpotでのデータ構造設計
ここで結構重要だったのが、Salesforceの設定をそのままHubSpotに再現しないという方針です。5年間で溜まった不要なカスタマイズを引き継ぐのではなく、「今のビジネスに本当に必要なもの」だけをHubSpotで設計し直しました。結果として、項目数はSalesforceの約300から約80に削減されました。
Phase 2(2〜3ヶ月目): データ移行
- コンタクト(約15,000件)・会社(約5,000社)・取引(約3,000件)をCSVエクスポート→HubSpotインポート
- 添付ファイル・メモ・活動履歴の移行(HubSpot Migration APIを利用)
- データクレンジング(重複排除・表記揺れ統一)
データ移行で注意すべき点は、Salesforceの「参照関係」「主従関係」のリレーションを、HubSpotの「関連付け」に正しくマッピングすることです。1対多・多対多の関係が複雑な場合は、移行用のマッピングシートを事前に作成しておくことが重要です。
Phase 3(4ヶ月目): 並行運用と研修
- 1ヶ月間のSalesforce×HubSpot並行運用
- 全社員へのHubSpotオンボーディング研修(2時間×2回)
- FAQ・操作マニュアルの整備
- 部門別のQ&Aセッション
Phase 4(5ヶ月目〜): Salesforce完全停止
- Salesforceのデータバックアップ取得
- ライセンス契約の解約
- HubSpotへの完全移行
移行後の成果(6ヶ月時点)
| 指標 | Salesforce時代 | HubSpot移行後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| CRM年間コスト | 1,200万円 | 500万円 | -58% |
| データ入力率 | 50% | 85% | +35pt |
| レポート作成時間 | 平均2時間/レポート | 平均15分/レポート | -87% |
| ワークフロー変更の対応時間 | 2〜3週間(外部委託) | 即日(社内対応) | 大幅短縮 |
| 営業チームの満足度(5段階) | 2.3 | 4.1 | +1.8pt |
定性的な変化
- マーケティングと営業が「同じデータ」を見て議論できるように
- カスタマイズの依頼を社内で完結できるようになり、意思決定スピードが向上
- 不要な入力項目が削減され、営業の入力負担が大幅に軽減
- CRMの管理者が「メンテナンス」ではなく「改善」に時間を使えるように
移行すべき企業・すべきでない企業
HubSpotへの移行が向いている企業
- Salesforceの運用コスト(ライセンス+保守)が負担になっている
- Apexカスタマイズの保守に外部依存している
- SFAとMAが分断していて非効率を感じている
- 従業員50〜300名程度で、エンタープライズ級の複雑さは不要
Salesforceを継続すべき企業
- Salesforceの高度なカスタマイズ(Apex, Lightning Web Components)をフル活用している
- 1,000名以上の大規模組織で、複雑な権限設計やマルチテナント管理が必須
- SalesforceのEinsteinアナリティクスを深く活用している
- 既存のSalesforceエコシステム(外部ツール連携)が広範囲に及ぶ
正直な評価として、すべての企業にHubSpotが最適というわけではありません。自社の規模・複雑さ・将来の成長計画を踏まえて判断することが重要です。
まとめ
SalesforceからHubSpotへの移行は、運用コストの削減・MAとSFAの統合・内製化の実現という3つのメリットを同時に達成できるプロジェクトです。
ただし、移行を成功させるには「Salesforceの設定をそのまま再現しない」「必要な機能を取捨選択する」という設計方針が重要です。まずは現在のSalesforce環境の棚卸しから始め、本当に必要な機能を見極めた上で移行計画を立てましょう。
HubSpotの導入・活用についてお気軽にご相談ください
StartLinkでは、HubSpotの導入設計から運用定着まで、企業様の状況に合わせた支援を行っています。
「SalesforceからHubSpotへの移行を検討している」「移行の費用対効果を具体的に知りたい」——そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. Salesforceのデータは完全にHubSpotに移行できますか?
コンタクト・会社・取引の基本データ、メモ・活動履歴は移行可能です。ただし、Salesforceの添付ファイルやカスタムレポートの設定はそのまま移行できないため、再作成が必要です。Apexで構築したカスタムロジックは、HubSpotのワークフローやカスタムコードで再実装します。
Q2. 移行期間はどれくらいかかりますか?
企業規模やデータ量にもよりますが、一般的には3〜5ヶ月が目安です。小規模(データ数千件)なら2ヶ月、大規模(データ数万件+複雑なカスタマイズ)なら6ヶ月程度を見込んでおくと安心です。並行運用期間を1ヶ月設けることを推奨します。
Q3. SalesforceのPardotからHubSpot Marketing Hubへの移行で注意すべきことは?
メールテンプレート・フォーム・自動化ルールの再作成が必要です。特に注意すべきは、Pardotのエンゲージメント履歴(メール開封・クリック)のデータ移行です。全履歴の移行は難しいため、直近12ヶ月分の主要データを優先的に移行し、古いデータはバックアップとして保管するのが現実的です。
Q4. HubSpotからSalesforceに戻すことは可能ですか?
技術的には可能ですが、逆移行は一般的に推奨されません。万が一に備えて、移行後もSalesforceのデータバックアップを一定期間(6ヶ月程度)保管しておくことをおすすめします。HubSpotのAPIでデータエクスポートは容易に行えます。
この記事は2025年3月時点の情報に基づいています。HubSpotの機能は定期的にアップデートされるため、最新情報はHubSpot公式サイトでご確認ください。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。