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「HubSpotを導入したのに、結局Excelに戻ってしまった」
「高いライセンス費用を払っているのに、誰も使いこなせていない」
——こうした声は、CRM導入に取り組む企業で決して珍しくありません。
HubSpot導入の失敗とは、ツールを購入・設定したにもかかわらず、期待した成果(営業効率化・マーケティング自動化・データに基づく意思決定など)が得られない状態を指します。実際にCRM導入プロジェクトの約6割が「定着しない」「活用されない」という結果に終わるとも言われています。
本記事では、HubSpot導入支援を手がけるStartLinkの実務経験をもとに、よくある5つの失敗パターンとその具体的な回避策を解説します。
この記事でわかること:
- HubSpot導入で陥りがちな5つの失敗パターン
- 各失敗パターンの根本原因と具体的な回避策
- 成功する導入プロジェクトに共通する3つの原則
- 導入フェーズごとのチェックリスト
なぜHubSpot導入は失敗するのか?根本原因を理解する
HubSpot導入が失敗する根本的な原因は、ツールの導入そのものをゴールと捉え、「活用」と「定着」を見据えた戦略が欠如していることにあります。
HubSpotは非常に多機能なプラットフォームですが、だからこそ「何をどの順番で、どのように使うか」の設計が重要です。設計なしに導入すると、機能の多さがかえって混乱を生み、現場は使い慣れたExcelやスプレッドシートに戻ってしまいます。
ここからは、具体的な5つの失敗パターンを見ていきましょう。
失敗パターン1: 目的・KPIが曖昧なまま導入する
どんな失敗か
「とりあえずCRMを入れよう」「競合がHubSpotを使っているから」という理由で導入し、何を達成したいのかが明確でないケースです。
具体的な症状
- 導入後に「何から設定すればいいかわからない」状態になる
- 各部門がバラバラにHubSpotを使い始め、データの統一性がない
- 半年経っても「導入効果」を説明できない
回避策
導入前に以下の3つを明文化することがポイントになってくるかなと思います。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 導入目的 | 「営業パイプラインを可視化し、受注予測の精度を上げる」 |
| KPI | 「営業データ入力率90%以上」「月次レポート作成時間を5時間→30分に」 |
| 対象範囲 | 「まずSales Hubのパイプライン管理から。MA連携は3ヶ月後」 |
まずは受注目標や受注件数といった、やりやすいところからKPIを設定して、そこから段階的に管理範囲を広げていくのが現実的です。
失敗パターン2: 自社の業務プロセスを整理せずに設定する
どんな失敗か
HubSpotの標準設定をそのまま使ったり、他社の事例をコピーしたりして、自社の営業プロセスに合っていない設定で運用を始めてしまうケースです。
具体的な症状
- パイプラインのステージが実際の営業フローと合っていない
- ライフサイクルステージが形骸化し、誰も更新しない
- 「このプロパティ何に使うの?」という項目が大量にある
回避策
「自社に最適な形で設計する」ことが結構ミソになってくるポイントです。特に以下の3つの設計が重要です。
パイプライン設計の4要素:
- 取引ステージ: 受注率が変化するポイントでステージを分ける
- 角度(受注確度): 各ステージに受注確率を設定(アポ取得10%→見積もり提示50%→受注内示80%など)
- ステージ定義: 各ステージの明確な定義を社内で共有し、属人化を防ぐ
- 必須入力プロパティ: ステージ移行時に必要な情報の入力を強制する
ライフサイクルステージの設計:
自社のカスタマージャーニーをベースに、リード→MQL→SQL→商談→顧客という流れを定義します。B2B企業とB2C企業では設計が異なりますし、企業様によって最適な形は変わってきます。
プロパティ設計:
「よくあるSFAのあるあるで、全然使っていない項目が大量にあったりする」企業は少なくありません。項目は最小限にし、本当に必要な情報だけを入力してもらう設計が重要です。項目が少ない方が現場は集中できます。
失敗パターン3: 現場の巻き込みが不十分
どんな失敗か
IT部門や経営企画が主導してHubSpotを選定・導入し、実際に使う営業・マーケティング部門への説明やトレーニングが不十分なまま「はい、明日から使ってください」と展開してしまうケースです。
具体的な症状
- 「なんでこのツールを使わないといけないの?」という現場の反発
- 旧ツール(Excel、既存SFAなど)との二重運用が発生
- データ入力が進まず、レポートの信頼性が低い
回避策
現場への定着を「仕組み」で支えることが大切です。
| 施策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| キーパーソンの巻き込み | 各部門から推進担当者(チャンピオン)を選任し、設計段階から参加してもらう |
| 段階的な展開 | 全社一斉ではなく、パイロットチーム(5〜10名)で先行導入→成功事例を社内展開 |
| 必須入力の設計 | 入力しないとステージ移行できない「条件付きステージ」で、仕組みとしてデータ入力を担保 |
| メリットの可視化 | 「入力するとこんなレポートが見られる」「この自動化でこの作業がなくなる」を具体的に見せる |
営業の方ですと、なかなか「ちゃんとSFAに入れてね」と言っても使いこなせなかったりするので、必須化する項目を決めてあげて、仕組みで解決するアプローチが有効です。
失敗パターン4: 全機能を一気に使おうとする
どんな失敗か
HubSpotの多機能さに魅力を感じ、CRM・MA・SFA・チケット管理・ブログ・チャットボットなどを一度に導入しようとするケースです。
具体的な症状
- 設定項目が多すぎて初期設定が完了しない
- 各機能の連携設計が甘く、データの整合性が取れない
- 運用ルールが複雑になりすぎて、誰も守れない
- ワークフローが大量に増えてうまく動作しなくなる
回避策
スモールスタート→段階的拡張が鉄則です。以下のような段階で進めることをおすすめします。
| フェーズ | 期間目安 | 導入内容 |
|---|---|---|
| Phase 1 | 1-2ヶ月 | CRM基本機能(コンタクト・会社・取引の管理)+ パイプライン設定 |
| Phase 2 | 2-3ヶ月 | Sales Hub活用(シーケンス、見積もり)+ レポート・ダッシュボード |
| Phase 3 | 3-6ヶ月 | Marketing Hub(フォーム、メール配信、ワークフロー)+ リードスコアリング |
| Phase 4 | 6ヶ月〜 | 高度な自動化、カスタムレポート、Service Hub、Content Hub |
「自社で活用できそうなものや効果が出そうなものを見極めて、優先順位をつけてトライいただければなと思います。」一度に全てを進めるのではなく、成果の出やすい領域から着手して成功体験を積み上げることが重要です。
失敗パターン5: データ品質を軽視する
どんな失敗か
既存のExcelや旧CRMからデータを移行する際に、重複データや不正確なデータをそのままインポートしてしまうケースです。また、運用開始後もデータクレンジングのルールがないまま放置してしまう失敗もあります。
具体的な症状
- コンタクトの重複が大量に発生
- 会社名の表記揺れ(「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC」が別レコード)
- レポートの数値が実態と合わない
- 「CRMの値がなかなか入っていなくてデータ資産化できていない」
回避策
インポート前の整備:
- 姓名を分割する(フルネームで1カラムだとパーソナライズ時に表示が崩れる)
- 会社名の表記を統一する
- 重複レコードを事前にマージする
- CSVは文字化けするのでExcel形式でのインポートを推奨
運用中のデータ品質維持:
- 同期プロパティを活用し、会社名の表記揺れを防止
- スマートプロパティ(AI自動入力)で従業員数・事業内容・資本金を自動取得
- フィルレート(入力率)を定期的にチェックし、1%以下の項目は削除を検討
- ワークフローでマーケティングコンタクトの対象外化を自動実行(90日間メール未開封→対象外)
成功する導入プロジェクトに共通する3つの原則
原則1: 「ツール導入」ではなく「業務改革」として位置づける
HubSpot導入は「ツールを入れること」がゴールではなく、「売上を最大化するための仕組みづくりのスタート」です。経営層がこの認識を持ち、プロジェクトに適切なリソースを割り当てることが前提になります。
原則2: 「人」ではなく「仕組み」で解決する設計思想
営業のデータ入力漏れを「ちゃんと入力して」と注意するのではなく、必須プロパティや条件付きステージで仕組み化する。一部システムで解決できない部分は運用面で解決するという、現実的なハイブリッドアプローチが大切です。
原則3: 専門家の活用を検討する
HubSpotの初期設定・設計は、自社の業務理解と HubSpotの機能理解の両方が必要です。HubSpot認定パートナーへの相談やHubSpot Academyの活用で、回り道を最小限にすることができます。
導入フェーズ別チェックリスト
| フェーズ | チェック項目 |
|---|---|
| 企画 | □ 導入目的・KPIが明文化されている / □ 対象範囲(どのHubを使うか)が決まっている / □ 推進体制(責任者・チャンピオン)が決まっている |
| 設計 | □ パイプラインが自社の営業フローに合っている / □ ライフサイクルステージが定義されている / □ プロパティは必要最小限に絞られている |
| 構築 | □ データインポートの品質チェックが完了している / □ ワークフローがテスト済み / □ 権限設定が完了している |
| 展開 | □ ユーザートレーニングが実施されている / □ 運用マニュアルが整備されている / □ サポート体制(質問先)が明確 |
| 運用 | □ データ品質の定期レビューが計画されている / □ KPIの振り返りミーティングが設定されている / □ 段階的な機能拡張の計画がある |
まとめ
HubSpot導入の失敗は、多くの場合「ツールの問題」ではなく「導入プロセスの問題」です。本記事で紹介した5つの失敗パターンを事前に把握し、回避策を実行することで、導入成功の確率は大幅に高まります。
5つの失敗パターンの要点:
- 目的・KPIが曖昧 → 導入前に目的・KPI・対象範囲を明文化
- 業務プロセス未整理 → 自社に最適なパイプライン・ステージ・プロパティ設計
- 現場の巻き込み不足 → チャンピオン制度・パイロット導入・仕組み化
- 全機能一気導入 → スモールスタート→段階的拡張
- データ品質の軽視 → インポート前整備・運用中のクレンジング体制
まずはHubSpotの基本操作を確認し、パイプライン設計から着手して、段階的にCRM活用の仕組みを構築していきましょう。CRMにデータが蓄積されるほど、レポートの精度が上がり、より効果的な営業・マーケティング戦略を立てられるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. HubSpot導入後、成果が出るまでどのくらいかかりますか?
A. CRM基本機能の定着には1〜3ヶ月、MA連携まで含めた本格的な成果が見え始めるのは6ヶ月〜1年が目安です。スモールスタートで段階的に進めることが、早期に成果を実感するポイントです。
Q2. すでにExcelで顧客管理をしていますが、HubSpotに移行するメリットはありますか?
A. スプレッドシートでの管理は、データの分散・手動更新の工数・リアルタイム性の欠如が課題になります。HubSpotに移行することで、一元管理・自動化・可視化が実現し、特にコンタクト数が増えるほど効果を実感できます。
Q3. Salesforceを使っていますが、HubSpotに乗り換えるべきですか?
A. 一概には言えません。SalesforceのSFA機能に満足していて、MA機能を追加したい場合は「HubSpot Marketing Hub + Salesforce SFA」の併用も選択肢です。HubSpotはSalesforceとのデータ連携が可能なため、MAとSFAを切り分けた運用もできます。
Q4. HubSpot導入に失敗した場合、やり直しはできますか?
A. はい、やり直しは可能です。パイプラインの再設計、プロパティの整理、データクレンジングを行い、改めて運用ルールを策定すれば立て直せます。ただし、14日以内であればバックアップからの復元も可能なため、大きな変更時はバックアップを取っておくと安心です。
Q5. HubSpot導入支援を外部に依頼した方がいいですか?
A. CRM導入が初めての場合や、社内にHubSpotの知見がない場合は、認定パートナーへの相談を検討されるのがいいかなと思います。初期設計の質が導入成否を大きく左右するため、専門家の知見を活用することで回り道を最小限にできます。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。