事業承継では、顧客との関係だけでなく、日々の仕事を動かす判断も引き継ぎます。先代の知識を、後継者と社員が使える記録と手順に変えることがDXの出発点です。
「主要顧客との約束が、先代の手帳にしか残っていない」「受発注の判断を、担当者に聞かないと進められない」「数字は見られるが、なぜその結果になったのかわからない」——承継を前に、こうした不安はないでしょうか。
事業承継におけるDXとは、引き継ぐべき情報と業務の流れを見える形にし、後継者が経営判断に使える状態へ整えることです。ツールの導入を目的にせず、顧客との経緯、業務の手順、判断の理由を、必要な人がたどれるようにします。
事業承継とDXは、一見すると別々のテーマに思えます。しかし、「暗黙知の形式知化」「属人的な業務のシステム化」「顧客資産のデジタル管理」という点で結びついています。経営者のためのDX入門でも解説しているように、経営者が目的を示すことはDXを進めるうえで欠かせません。
本記事では、事業承継を控えた後継者や、承継直後の経営者が取り組むべきDXの具体的なステップを、実名事例とともに解説します。前提となる考え方はDX戦略ガイドで解説しています。
この記事でわかること
事業承継を控えた後継者、または承継直後の経営者でDXを推進したい方に向けた記事です。引き継ぐ情報の選び方から、記録を日々の判断に使うまでの流れがわかります。
- 事業承継でDXに取り組む理由 — 顧客との経緯や業務の判断を、先代や特定の社員だけが知っている状態から見直す理由を説明します。
- 暗黙知を記録する方法 — 顧客情報、業務手順、取引条件を棚卸しし、どこに何を残すかを整理します。
- CRMを起点にした進め方 — 顧客とのやり取りを取引や担当者と結び付け、業務の標準化と経営判断へつなげる順序を示します。
- 承継とデジタル化を並走させる考え方 — 先代や社員の負担を見ながら、小さく試す範囲と次へ進む判断基準を考えます。
事業承継でDXに取り組む理由
承継で引き継ぐものは、顧客リストや契約書だけではありません。その顧客にどのような提案をしてきたか、例外的な注文をどう扱うかといった判断も含まれます。DXは、そうした情報を後継者が探せるようにし、社員と共有できる仕事の流れへ変える手段です。
- 顧客との関係 ── 連絡先だけでなく、提案の経緯や相手が重視する条件まで残す
- 担当者の経験 ── 「あの人に聞けばわかる」工程を、誰でもたどれる手順にする
- 判断の理由 ── 数字の背景を記録と結び付け、後継者が追えるようにする
顧客との関係を、名前だけで終わらせない
主要顧客の連絡先を一覧にしても、関係を引き継いだことにはなりません。過去の提案、現在進んでいる相談、相手が重視する条件、次に連絡する理由がわからなければ、後継者は顧客への対応をその都度先代に尋ねることになります。
紙の名刺、メール、表計算ファイルに情報が分かれている場合は、まず顧客ごとに所在を確認します。そのうえで、事実として残す取引履歴と、先代の見立てや注意点を分けて記録します。見立てには誰が、どのやり取りをもとに判断したかも添えると、後継者が内容を確かめながら使えます。
担当者の経験を、引き継げる手順に変える
受発注、経理処理、品質確認などに「あの人に聞けばわかる」工程があると、その人が不在のときに判断が止まりやすくなります。手順書を作る際は、通常の流れに加え、誰が何を見て例外を判断するかまで書き出します。
ここで目指すのは、担当者の力量をデジタルツールで置き換えることではありません。問い合わせを受けたら何を確認し、どの条件なら誰に渡すかを仕組みにすることです。新人が同じ流れをたどれるかを確かめると、手順の抜けも見つけやすくなります。
後継者が判断の理由を追えるようにする
経営指標だけを後継者に渡しても、その数字の背景がわからなければ、先代と同じ判断を続けるべきかを考えにくくなります。商談が進んだ理由、失注した理由、継続取引につながった対応を、顧客や案件の記録と結び付けます。
先代の経験に学ぶことと、後継者が新しい判断をすることは両立します。過去の判断をたどれる状態にしておけば、引き継ぐ方針と見直す方針を話し合いやすくなります。
引き継ぐ情報を棚卸しし、着手順を決める
デジタル化の対象を最初から広げすぎると、情報を集めるだけで運用が止まりかねません。まずは次の三点を並べて確認します。
- 誰が知っているか
- どこに残っているか
- 承継後、誰が使うか
顧客対応が止まるおそれのある情報から着手するのが、StartLinkのおすすめです。
経営資産を領域ごとに分けて見る
棚卸しの領域は次のとおりです。表の「デジタル化の方法」は保存先や手段の候補として捉え、既存の業務と使う人を確かめてから選びます。
| 領域 |
棚卸し対象 |
デジタル化の方法 |
| 顧客資産 |
主要顧客リスト、取引履歴、関係性のメモ |
CRM(HubSpot)に集約 |
| 業務プロセス |
受発注フロー、承認ルート、品質チェック手順 |
ワークフローツールで自動化 |
| ナレッジ |
営業ノウハウ、技術ノウハウ、業界の慣習 |
ナレッジベースに文書化 |
| 財務・法務 |
契約書、許認可、取引条件 |
クラウド会計・電子契約に移行 |
顧客資産では、連絡先だけでなく、進行中の相談と次の対応を探します。業務プロセスでは、通常の手順と例外時の相談先を分けます。ナレッジや契約に関する情報は、CRMに何でも複写するのではなく、原本の保存先と参照する場面を明らかにします。
先代への聞き取りは、案件から始める
「営業のコツを教えてください」と広く尋ねても、日常の判断は言葉にしにくいものです。現在進んでいる案件を見ながら、次の三点を聞くと、記録すべき内容を絞れます。
- なぜこの提案になったか
- 先方の誰と話したか
- 次は何を確認するか
聞き取った内容は、後継者が要約して記録し、先代に認識の違いがないか確かめます。先代に新しいツールの操作を求めずに進められる方法です。顧客との約束と先代の推測が混ざっていたら、その場で書き分けておきます。
優先順位は、承継後の利用場面で決める
資料の量ではなく、承継後にどの仕事で使うかを基準にします。たとえば、後継者が顧客訪問前に経緯を確認できないなら、まずその顧客の提案履歴と次の対応を整理します。一方、参照する担当者も場面も定まっていない資料は、保存方法を決める前に利用目的を確認します。
着手対象が決まったら、記録する人、内容を確かめる人、使う人を決めます。この役割が曖昧なまま情報を移すと、古い記録を誰が直すのかわからなくなります。
CRMで顧客との経緯を引き継ぐ
表計算ファイルで顧客名簿を管理していると、担当者ごとに別のメモが増え、商談の経緯を一続きで追いにくくなることがあります。CRMは、連絡先を保存するだけでなく、顧客とのやり取りから取引、その後の対応までを結び付けるために使います。後継者が知りたいのは、入力件数よりも「この顧客に次に何をするか」です。
顧客、会社、取引の関係をそろえる
HubSpotでは、コンタクト、会社、取引などのレコードを関連付けられ、その関連は双方のレコードから確認できます(出典:レコードを関連付ける方法)。この仕組みを使い、窓口となる人、所属する会社、進行中の取引を同じ文脈でたどれるようにします。
- 既存の名簿と案件表を照らし合わせる ── 同じ顧客の表記揺れや、担当者がわからない案件を確認します。
- 取り込んだ後に確かめる ── 会社から担当者と取引へたどり、訪問前に必要な情報を探せるかを見ます。
そこで見つからない情報があれば、項目を増やす前に、誰がどの場面で記録するかを見直します。
以下の画面は、HubSpotデモ環境の会社レコードにfreee取引先カードが表示されている例です。

暗黙知は、次の対応に使える形で残す
先代から聞いた顧客との関係性は、「大切な顧客」といった印象だけでは使いにくいものです。過去に合意した条件、現在の相談、次回確認する事項を分けて残します。メールや訪問の記録とつなげれば、後継者は先代の説明を確かめながら引き継げます。
記録項目を増やしすぎると、現場が入力を続けにくくなります。まずは担当者、案件の状況、次の対応、判断に必要な背景に絞り、使われなかった項目は見直します。CRM導入ガイドも、設計を考える際の参考になります。
顧客対応から請求までの流れを見渡す
顧客情報の引き継ぎは、コンタクトの整理だけで終わりません。相談が取引になり、受注後に顧客対応や請求へ進む流れの中で、次の担当者へ何を渡すかを決めます。会社レコードに情報が集まっていても、取引条件の原本や請求の確認先が不明なら、承継後に調べ直すことになります。
まずは、次の三つの時点で必要な情報を並べます。
- 顧客から相談を受けた時点
- 取引が進んだ時点
- 受注後の引き渡し時点
そのうえで、CRMに記録する内容と、別のシステムで管理する原本への参照を分けます。自社の業務に合う接続を考えることが、顧客資産を経営に使える状態にするうえで大切です。
HubSpotで引き継ぎ記録を設計する具体例
ここまでの考え方を、HubSpotの設定に置き換えます。項目名やステージ名は例です。自社の言葉に合わせて変えてください。
引き継ぎ用のプロパティを足す手順
プロパティの作成・編集は、公式ナレッジ(プロパティの作成と編集)に沿って進めます。
- 設定画面を開く ── 上部ナビゲーションの設定(歯車アイコン)を開き、左サイドバーの「データ管理」から「オブジェクト」を選びます。
- 対象のオブジェクトを選ぶ ── 「取引」など、記録を残したいオブジェクトを選択します。同じ画面のタブからプロパティを作成します。
- 項目を最小限で作る ── 次の表の3項目だけで始め、現場が使わなかった項目は次の見直しで外します。
- 記録する人を決める ── 先代の聞き取りは後継者が入力し、先代が内容を確認する、というように役割を分けます。
| 対象 |
プロパティ名(例) |
記録する内容 |
| 取引 |
引き継ぎ時の合意事項 |
顧客と交わした価格・納期・例外対応の約束。原本の保存先も添える |
| 取引 |
次回確認日 |
後継者が次に連絡する日付。空欄の取引は一覧で洗い出す |
| 会社 |
先代の見立て(要確認) |
事実と推測を分けるための欄。裏付けが取れたら合意事項へ移す |
取引ステージの定義を決める
取引のステージは、設定の「データ管理」>「オブジェクト」で取引を選び、「パイプライン」タブから追加・編集します。ステージの追加時には取引の確度を選べます(出典:オブジェクトのパイプラインの設定と管理)。各ステージに「次へ進む条件」を書いておくと、先代と後継者が同じ基準で案件を見られます。
| ステージ名(例) |
次へ進む条件 |
必ず残す記録 |
| 相談受付 |
先方の課題と窓口担当者が確認できた |
相談内容、窓口の氏名・役割 |
| 条件確認中 |
先方の優先条件を本人の言葉で聞けた |
引き継ぎ時の合意事項、次回確認日 |
| 提案済み |
提案内容と先方の反応を記録した |
提案資料の保存先、反応のメモ |
| 受注・失注 |
結果と理由を一文で書いた |
受注・失注の理由、次の接点 |
記録を始めたときによくある失敗
- 項目を最初から増やしすぎる ── 入力が続かず空欄だらけになります。3項目から始め、見る場面がない項目は外します。
- 事実と推測が混ざる ── 「大事な顧客」のような印象は専用の欄へ分け、合意事項と区別します。
- ステージの意味が人によって違う ── 次へ進む条件を文章にし、1か月ほど使ってから解釈の分かれた段階を直します。
- 後継者だけが入力する ── 先代と社員が読める画面(一覧ビュー)まで用意しないと、記録が閉じた台帳になります。
業務手順をそろえてから自動化を考える
CRMに記録が集まっても、担当者によって対応の順序が異なれば、後継者は仕事の全体像をつかめません。次の四点を進めます。
- 開始条件をそろえる ── 何が起きたら業務を始めるかを決めます。
- 担当者をそろえる ── 誰が対応するかを明らかにします。
- 完了の判断をそろえる ── どこまでできたら終わりかを決めます。
- 自動化する作業を選ぶ ── 通知や転記など、人が毎回判断しなくてもよい作業に絞ります。
先代の「いつものやり方」を分解する
受発注を例にすると、依頼を受けた後に何を確認し、どの条件で承認を求め、何をもって処理済みとするかを書き出します。通常の流れだけでなく、条件が合わない注文や担当者不在時の相談先も残します。
手順を作ったら、その業務を普段担当していない社員に流れを読んでもらいます。次に何をすればよいかわからない箇所があれば、そこで必要な情報や判断者を追記します。これにより、引き継ぎ資料が説明を聞いた人だけに通じる状態を避けられます。
通知は、人が行動を決められる条件に絞る
新規問い合わせへの返信、商談の進行に応じた通知、顧客へのフォローは、自動化の候補です。実際に設定する際は、まず「何が起きたら」「誰が」「何をするか」を文にします。通知を受けても行動を決められない条件なら、自動化より先に担当範囲を整理します。
HubSpotのワークフローでは登録条件を設定してレコードを処理できますが、利用できる範囲は契約内容によって異なります(出典:ワークフローの作成方法)。使う予定の通知や更新が現行の契約で扱えるかを確認し、扱えなければ手動の担当割り当てと記録から始めます。
自動送信の前に、内容と確認者を決める
顧客への返信は、送信先や文面を誤ると関係に影響します。まず下書き、確認、送信の担当を決め、問い合わせの種類ごとに人が確認すべき内容を明らかにします。定型の案内を自動化する場合も、例外的な相談を誰に渡すかを決めてから進めます。
AIを使って記録の要約や返信文の下書きを作る場合も、顧客への約束や送信の判断は担当者が確認する運用をおすすめします。先代の知識が記録に残っていても、その内容が古ければ下書きも現状に合いません。元の記録と実際の案件を照らし、使える内容に直してから活用します。
後継者が経営判断に使える情報へ整える
情報を記録する目的は、後継者が先代に代わって判断できる場面を増やすことです。
画面に数字を並べる前に、その数字から何を決めたいかを明らかにします。
顧客の状況、進行中の取引、受注後の対応を同じ流れで見ると、どこで判断が滞っているかを話し合いやすくなります。
商談の状況を共通の言葉で表す
案件表に「進行中」とだけ書かれていても、提案前なのか、条件の確認中なのかはわかりません。取引の段階ごとに、次へ進む条件と、その時点で記録する情報を決めます。たとえば提案内容と先方の反応が残っていなければ、後継者は案件の見通しを確認できません。
段階の名前や必要な項目は、自社の営業の進め方に合わせて設計します。先代の判断をそのまま項目名にするのではなく、現場の担当者も同じ意味で使える言葉にすることがポイントです。使い始めて解釈が分かれた段階から定義を直します。
指標は、判断に結び付くものから選ぶ
売上推移や進行中の商談を見えるようにしても、後継者が取る行動が変わらなければ、確認作業が増えるだけです。まず「どの案件に支援が必要か」「どの顧客との接点が途切れているか」など、会議で決めたい問いを置きます。問いに答えるために必要な記録が足りなければ、画面を増やす前に入力方法を整えます。
顧客獲得コストやリピート率も、定義と集計に使うデータがそろってから扱います。数字の意味を先代、後継者、現場で確かめておけば、同じ結果を見ながら異なる判断をしている理由も話し合えます。データドリブン経営とCRMでも、この考え方を詳しく解説しています。
実名例から、引き継ぎの論点を考える
事業承継とデジタル化を考える際は、成果だけを自社へ当てはめないことが大切です。各組織の取り組みはそれぞれ異なります。ここでは、後継者が自社の引き継ぎを考えるために、情報や業務の扱い方に注目します。
- 陣屋 ── 顧客と現場の情報をつなぐ
- 星野リゾート ── 経験とデータを判断につなげる
陣屋:顧客と現場の情報をつなぐ
神奈川県の旅館「元湯 陣屋」は、2009年に宮崎富夫氏が4代目社長として事業を引き継いだ後、旅館業向けのクラウド型業務システム「陣屋コネクト」を自社で開発しました。予約管理、顧客管理、勤怠管理、原価管理・会計処理、売上分析を一つの仕組みにまとめています(出典:TKC『戦略経営者』2015年2月号 インタビュー)。顧客対応と現場の仕事を別々に考えず、一連の流れとして扱う点が、この記事のテーマと重なります。
自社で考えるなら、まず顧客からの依頼がどの現場業務へ渡り、対応結果がどこに戻るかを確認します。同じ仕組みを作ることが目的ではありません。引き継ぎ時に情報が途切れる場所を見つけるための視点として参考にできます。
星野リゾート:経験とデータを判断につなげる
星野リゾートの星野佳路代表は、1991年に先代の後を継いで代表に就任しました。同社では顧客満足度調査の結果を各施設のスタッフがリアルタイムで確認し、天候などに合わせた施策を打って、その効果を数字で確かめています(出典:ダイヤモンド・オンライン 2018年9月14日)。先代から受け取る価値観と、後継者が使う判断材料をどう結び付けるかを考える例です。
後継者が取り組む際は、数値に置き換えられない顧客との約束も残します。そのうえで、どの判断をデータで確かめたいかを先代や現場と話し合います。経験を捨てるのではなく、経験から生まれた判断を説明できる状態にすることが大切です。
先代と社員の負担を見ながら進める
事業承継と業務の変更が同時に進むと、社員は自分の仕事がどう変わるのか判断しにくくなります。次の二点を意識します。
- 先代の協力が必要な部分と、後継者が引き受けられる部分を分ける
- 小さな範囲で試す ── 記録と利用を試し、実務で役立つことを確かめながら広げます。
中小機構が紹介する2021年8月の企業調査では、後継者への移行期間を「3〜5年程度」「6〜9年程度」「10年以上」とした回答が合計で5割を超えています(出典:事業承継・引継ぎポータル「事業承継について」)。
これはDX導入に一律の年数が必要という意味ではありません。承継予定時期から逆算し、先代に判断の理由を聞ける間に、顧客の経緯と例外時の対応を記録する順序を決めます。
先代との並走中に、判断の理由を聞く
先代が顧客を訪問した後に、後継者が対応の経緯と次の約束を聞き取ります。先代の説明と顧客へ伝えた内容が違って見える場合は、記録を確定する前に確認します。並走中なら、後継者が理解できなかった判断をその場で尋ねられます。
引き継ぎを先代の退任後まで延ばすと、判断の背景を尋ねにくくなります。一方で、すべての顧客について一度に聞き取る必要もありません。進行中の取引や、近く後継者が対応する顧客から始めます。
社員には、変わる仕事を具体的に伝える
「DXを進めます」だけでは、社員は自分に求められる行動を想像しにくいものです。どの記録をどこへ残し、これまでの手作業のうち何が変わり、判断に迷ったら誰へ相談するかを伝えます。
運用を始めたら、入力に時間がかかる箇所や、同じ内容を別の場所にも書いている箇所を聞き取ります。負担が増えているなら、項目や記録の順序を見直します。社員が使える仕組みでなければ、承継後も知識が個人の手元に戻ってしまいます。
小さく試し、次へ広げる条件を決める
最初は対象となる顧客や業務を絞ります。顧客の経緯を後継者が自分で探せるか、次の担当者が記録を読んで対応できるかを確かめます。できなければ、対象を広げる前に、足りない情報と記録の担当を直します。
顧客情報の整理が続くようになったら、商談の段階や業務の通知を検討します。さらに、判断に使う記録がそろってから指標の表示を整えます。無料プランからの着手を検討する場合も、利用する機能と運用上の負担を見て範囲を決めてください。機能選びにはHubSpot無料プランでできることも参考になります。
進め方の全体像と判断の目安
StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、150社以上のHubSpot支援に携わってきました。事業承継を伴うDXでは、次の順で小さく始めて広げる進め方を提案しています。詳しくはHubSpot導入・構築支援で紹介しています。
- 現状の整理・要件定義 ── 引き継ぐ顧客・業務・判断を棚卸しし、着手する範囲を決めます。
- 設計・構築 ── プロパティ、ステージ、一覧ビューを設計します。
- データ移行 ── 名簿や案件表を取り込み、表記揺れを整えます。手順はExcel・スプレッドシートからHubSpotへ移行する方法が参考になります。
- テスト・検証 ── 担当していない社員が記録だけで次の対応を考えられるかを確かめます。
- 定着・運用改善 ── 使われない項目を外し、準委任で伴走しながら自動化やAI(Breeze・Claude等)の活用へ広げます。
会計や請求の情報を別システムで管理している場合は、自社開発の連携アプリSync for freeeのように、標準連携で足りない部分を補う方法もあります。ここまでを踏まえて、自社の状況に合う進め方を次の表で確認してください。
| 自社の状況 |
最初の一手 |
広げる条件 |
| 先代がツールを使いたがらない |
後継者が聞き取り、CRMへ代行入力する |
先代が記録を読んで認識が合うと確認できた |
| 承継までの期間が短い |
近く対応する顧客と進行中の取引だけを入れる |
訪問前に経緯を探せる状態を確認できた |
| 記録が複数のツールに散在 |
原本の保存先を一覧にし、CRMには参照先だけ持つ |
保存先ごとの更新担当が決まった |
よくある質問
- 先代がデジタルツールを使いたがらない場合の進め方
- 予算を決める前の確認事項
- M&Aによる事業承継での役立ち方
- 事業承継前の準備の始め方
先代がデジタルツールを使いたがらない場合はどう進めますか?
後継者が先代の話を聞き、顧客や案件にひも付けて記録する方法があります。先代には、記録を読んで認識が合っているかを確かめてもらいます。まず進行中の案件で試し、聞き取る項目と確認方法を整えてください。
予算を決める前に、何を確認すればよいですか?
最初に、引き継ぐ対象と、現在のツールでできることを整理します。顧客情報を探せないことが課題なら、名簿と案件の整理から始め、追加機能が必要な業務を分けて検討します。自動化や外部システムとの接続が必要になった段階で、使う機能と契約条件を照らし合わせてください。
M&Aによる事業承継にも役立ちますか?
顧客情報、取引履歴、業務手順の所在が明らかなら、引き継ぐ対象を確認しやすくなります。ただし、記録があるだけで内容が正しいとは限りません。原本との照合、閲覧できる人の確認、引き継ぎ後に更新する担当者の決定まで行います。
事業承継前なら、何から準備すればよいですか?
まず、後継者が近く対応する顧客と進行中の取引を選び、情報の所在を確認します。先代に対応の経緯と次の約束を聞き、後継者が記録を使って対応できるか試します。そこで不足した情報を補ってから、対象を広げてください。
まとめ
DXと事業承継を進める際は、顧客との経緯を残し、業務の判断を手順に変え、その記録を後継者の経営判断につなげます。CRMは情報の置き場であると同時に、顧客から取引、受注後の対応へ仕事をつなぐ基盤として設計します。自動化や指標の表示は、使う人と判断する場面が決まってから広げるのがよいと考えています。
まずは、後継者が近く対応する顧客の情報を探すことから始めてください。
- 顧客名簿、進行中の取引、過去のやり取りがどこにあるかを確認します。
- 先代に対応の理由と次の約束を聞き、事実と見立てを分けて記録します。
- 後継者がその記録だけで次の対応を考え、足りなかった情報を補います。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、StartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
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