電子帳簿保存法に対応した文書管理の実践ガイド|要件・システム選定・運用ルール

  • 2026年3月10日
  • 最終更新: 2026年3月11日

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2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化されました。メールで受け取った請求書、PDFでダウンロードした領収書、電子契約で交わした契約書など、電子的にやり取りした取引書類は、一定の要件を満たした形で電子保存しなければなりません。

しかし、「具体的に何をどう保存すればよいのか」「既存の文書管理の仕組みをどう変えればよいのか」がわからない企業も多いのが現状です。この記事では、電子帳簿保存法の要件を正確に理解し、実務に落とし込むための具体的な方法を解説します。

この記事でわかること

  • 電子帳簿保存法の3つの保存区分(電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引)の要件と対応方法
  • 自社の取引書類を棚卸しして電帳法対応の優先順位をつける具体的な手順
  • 電帳法対応の文書管理システムを選定する際の5つの評価ポイント
  • 実務で使える運用ルールの策定方法と社員向け教育のポイント

電子帳簿保存法の基本構造

3つの保存区分

電子帳簿保存法は、保存する書類の種類によって3つの区分に分かれています。それぞれ要件が異なるため、自社の取引書類がどの区分に該当するかを正確に把握することが第一歩です。

保存区分 対象 概要 義務/任意
電子帳簿等保存 会計ソフトで作成した帳簿・決算書類 最初からデジタルで作成したデータをそのまま保存 任意(優良電子帳簿で過少申告加算税が軽減)
スキャナ保存 紙で受領した請求書・領収書等 紙をスキャンしてデジタルで保存 任意(紙原本の廃棄が可能に)
電子取引 メール・PDF・EDI等で受領した取引書類 電子的に授受したデータを電子のまま保存 義務(2024年1月〜)

電子取引の保存要件(義務)

電子取引の保存は全事業者に義務化されているため、最優先で対応すべき区分です。保存要件は以下の4つです。

1. 真実性の確保

以下のいずれかの措置が必要です。

  • タイムスタンプが付与されたデータを受領する
  • 受領後にタイムスタンプを付与する
  • 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する
  • 訂正削除の履歴が確認できるシステムを利用する

2. 検索機能の確保

以下の検索条件で文書を検索できるようにする必要があります。

  • 取引年月日
  • 取引先名
  • 取引金額
  • 上記の範囲指定・組み合わせ検索

3. 見読性の確保

ディスプレイやプリンタで速やかに出力し、整然とした形式で確認できること。

4. システム関連書類の備え付け

使用しているシステムの概要書やマニュアルを備え付けること。

中小企業向けの猶予措置

売上高5,000万円以下の事業者、または電子取引データを税務職員のダウンロードの求めに応じられる状態にしている場合は、検索要件が不要になります。この猶予措置を活用すれば、中小企業は「事務処理規程の策定」と「ダウンロード対応」の2点で最低限の対応が可能です。

電帳法対応の実践ステップ

ステップ1:取引書類の棚卸し

まず自社で発生する取引書類を棚卸しし、電子取引に該当するものを洗い出します。

電子取引に該当する書類の例:

  • メール添付で受領する請求書・見積書・注文書
  • Webサイトからダウンロードする領収書・明細書
  • 電子契約サービスで締結した契約書
  • EDI(電子データ交換)で受領する発注書・納品書
  • チャットツールで送受信した取引関連の書類

見落としやすいのは、AmazonビジネスやMonotaROなどの通販サイトで発行される電子領収書や、クラウドサービスの利用料明細です。これらもすべて電子取引に該当します。

ステップ2:保存方法の決定

電子取引データの保存方法には、大きく3つの選択肢があります。

方法A:クラウド文書管理システムを利用する

電帳法対応機能を備えた文書管理システムやクラウド会計ソフトを利用する方法です。タイムスタンプの自動付与、検索機能の確保、訂正削除履歴の自動記録がシステム側で行われるため、運用負荷が最も低い方法です。

方法B:ファイルサーバー+事務処理規程で対応する

ファイルサーバーにフォルダを作成し、命名規則に基づいてファイルを保存する方法です。真実性の確保はタイムスタンプではなく「事務処理規程」で対応します。コストは最も低いですが、運用の手間が大きく、ルールの徹底が求められます。

方法C:クラウド会計ソフトの機能を利用する

freee、マネーフォワード、弥生会計などのクラウド会計ソフトには、電帳法対応の書類保管機能が標準搭載されています。会計処理と連動して書類を管理できるため、経理業務の効率化にもつながります。

ステップ3:ファイル命名規則の策定

ファイルサーバーで管理する場合は、統一された命名規則が必須です。検索要件を満たすために、以下の形式を推奨します。

{取引年月日}_{取引先名}_{取引金額}_{書類種別}.pdf
例:20260311_株式会社ABC_150000_請求書.pdf

この命名規則に従ってファイルを保存することで、ファイル名による検索が可能になり、検索要件を満たすことができます。

ステップ4:事務処理規程の策定

タイムスタンプを付与しない場合は、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」の策定が必要です。国税庁のWebサイトにサンプルが公開されているため、自社の実情に合わせてカスタマイズして利用できます。

規程に含めるべき主な内容は以下のとおりです。

  • 電子取引データの管理責任者
  • データの保存方法と保存場所
  • 訂正・削除を行う場合の手続き
  • バックアップの方法

電帳法対応システムの選定基準

5つの評価ポイント

電帳法対応のシステムを選定する際に確認すべき5つのポイントを解説します。

1. JIIMA認証の取得状況

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証を取得しているシステムは、電帳法の要件を満たしていることが第三者機関によって確認されています。認証には「電子帳簿ソフト法的要件認証」「電子書類ソフト法的要件認証」「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」の3種類があります。

2. 検索機能の柔軟性

取引年月日・取引先名・取引金額での検索に加え、範囲指定検索(「2026年1月〜3月の取引」「10万円以上の取引」など)や複合条件検索(「株式会社ABCの2026年2月分」など)に対応しているかを確認します。

3. タイムスタンプの自動付与

書類をアップロードした際にタイムスタンプが自動的に付与される機能があれば、運用負荷が大幅に軽減されます。手動でタイムスタンプを付与する運用は、漏れが生じるリスクがあります。

4. 既存システムとの連携

クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)やCRMとAPI連携できるかは、業務効率に直結します。たとえばfreeeの「ファイルボックス」機能は、受領した請求書を取り込んで自動仕訳する機能を備えています。

5. 長期保存への対応

法定保存期間(原則7年、繰越欠損金がある場合は10年)にわたるデータの安全な保管が保証されているか、サービス提供者の信頼性やデータポータビリティ(サービス移行時のデータ取り出し)を確認します。

スキャナ保存の活用(任意)

スキャナ保存のメリット

スキャナ保存は義務ではありませんが、活用することで紙の原本を廃棄でき、保管スペースのコスト削減と検索性の向上が実現します。特に大量の紙の請求書や領収書を受領する企業にとっては、ペーパーレス化を推進する上で有効な手段です。

スキャナ保存の要件

スキャナ保存には、電子取引よりも厳格な要件が求められます。

  • 解像度200dpi以上・カラー画像(一般書類はグレースケール可)
  • 受領後または業務サイクル後、最長約2ヶ月と概ね7営業日以内にタイムスタンプ付与
  • 入力者等の情報の確認
  • 訂正削除の履歴等の確保
  • スキャン文書と帳簿の相互関連性の確保

実務での運用フロー

ステップ 作業内容 担当 期限
1 紙の書類を受領 受領者 受領時
2 スキャンして電子データ化 受領者/経理 受領後速やかに
3 メタデータ(日付・金額・取引先)を入力 経理 スキャン時
4 タイムスタンプ付与 システム自動 入力時自動
5 上長の確認(適正事務処理要件) 管理者 月次
6 紙原本の廃棄 経理 確認完了後

業種別の電帳法対応ポイント

製造業

製造業では仕入先からの紙の請求書や納品書が大量に発生します。サプライチェーン全体で電子化を進めることが理想ですが、まずは自社側でスキャナ保存を導入し、段階的に取引先への電子化の依頼を進める方法が現実的です。トヨタ自動車は、部品サプライヤーとの取引にEDIを導入し、取引書類の99%以上を電子化しています。

サービス業・IT企業

クラウドサービスの利用が多いIT企業は、すでに多くの取引が電子で行われているため対応のハードルは低い傾向にあります。Slack・メール・各種SaaSのダウンロード領収書をどこに集約するかのルールを整備することが重要です。

小売業

POSデータや電子レシートの管理が課題になります。レジシステムと会計ソフトの連携により、売上データの電子保存を自動化する仕組みを構築することが効率的です。

CRM・会計システムとの連携

freee × 文書管理の統合

freee会計のファイルボックス機能を活用すれば、請求書のスキャンデータを取り込み、自動で仕訳候補を提案し、電帳法対応の保管まで一気通貫で処理できます。電子帳簿保存法の基本と組み合わせて理解することで、実務への落とし込みがスムーズになります。

CRM上の取引書類管理

営業部門が見積書や契約書をCRM(HubSpotなど)で管理している場合、CRM上の書類も電子取引に該当する可能性があります。CRMのドキュメント管理機能と電帳法対応のストレージを連携させることで、営業と経理の両方のニーズを満たす文書管理が実現します。

まとめ

本記事では、電子帳簿保存法の3つの保存区分の要件を正確に理解し、実務に落とし込むための具体的な方法を解説しました。

ポイントを振り返ります。

  • 電子取引データの電子保存は2024年1月から全事業者に義務化されており、最優先で対応すべき区分です。真実性の確保、検索機能の確保、見読性の確保、システム関連書類の備え付けの4要件を満たす必要があります
  • 対応方法には、クラウド文書管理システムの利用、ファイルサーバーと事務処理規程の組み合わせ、クラウド会計ソフトの活用の3つの選択肢があり、自社の規模と取引量に応じて選定します
  • JIIMA認証の取得状況、検索機能の柔軟性、タイムスタンプの自動付与、既存システムとの連携、長期保存への対応の5つのポイントでシステムを評価することが重要です
  • CRMや会計ソフトとの連携により、営業と経理の両方のニーズを満たす統合的な文書管理が実現します

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よくある質問(FAQ)

Q1. 電子取引の保存義務に違反した場合のペナルティは?

電帳法の保存要件を満たしていない場合、保存義務違反として青色申告の承認取消の対象になる可能性があります。また、改ざんがあった場合は、通常の重加算税(35%)にさらに10%が加重されます。ただし、2023年度税制改正で「相当の理由」がある場合の猶予措置が設けられているため、すぐにペナルティが科されるわけではありません。

Q2. 個人事業主やフリーランスも対応が必要ですか?

はい、事業を営むすべての方に電子取引データの電子保存義務があります。ただし、売上高5,000万円以下であれば検索要件が不要になる猶予措置があるため、ファイル名に取引情報を記載して保存するだけで最低限の対応が可能です。

Q3. 過去のメール添付の請求書はどうすればよいですか?

2024年1月以降に受領した電子取引データが電子保存義務の対象です。それ以前のデータについては従来どおりの保存方法(紙出力保存を含む)で問題ありません。ただし、将来的な検索性や管理の統一性を考慮して、過去分もデジタルで管理する企業も増えています。

Q4. 電帳法対応のためだけにシステムを導入する必要がありますか?

必ずしも専用システムは必要ありません。ファイルサーバーと事務処理規程の組み合わせでも対応可能です。ただし、取引量が多い企業ではファイル管理の手間が大きくなるため、クラウド会計ソフトの電帳法対応機能やクラウドストレージの導入を検討する方が長期的には効率的です。

Q5. 電子契約で締結した契約書も電帳法の対象ですか?

はい、電子契約で締結した契約書は電子取引に該当します。クラウドサインやDocuSignなどの電子契約サービスは、電帳法の保存要件を満たす機能を標準搭載しているため、サービス上で保管している限り追加対応は不要なケースが多いです。ただし、サービスの契約終了後のデータ保管についても確認しておくことを推奨します。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。