「問い合わせ対応がメールとチャットとSlackに分散していて、対応漏れが発生している」
「誰がどの問い合わせを担当しているか把握できず、重複対応が起きている」
——こうした課題は、ヘルプデスクの一元化で解決できます。
HubSpotのヘルプデスク機能は、チケット管理・チャット・メール・ナレッジベースを一つのワークスペースに統合し、カスタマーサポートの全体像を可視化する仕組みです。
この記事では、HubSpotヘルプデスクの設定手順から、チケット管理・ナレッジベースとの連携設計まで、実務で使えるレベルで解説します。
この記事でわかること
- HubSpotヘルプデスクの全体像と機能構成
- チケットパイプラインの設計方法
- ナレッジベースの構築と連携
- AIチャットボットとの組み合わせ
- 運用上の注意点と限界
HubSpotヘルプデスクとは?
HubSpotヘルプデスクとは、メール・チャット・フォームからの問い合わせをチケットとして一元管理し、対応状況をリアルタイムで可視化するワークスペースです。
従来のHubSpotでは「受信トレイ」で問い合わせを管理していましたが、ヘルプデスクワークスペースはその進化版として、より高度なチケット管理とSLA対応を実現しています。
ヘルプデスクに含まれる主な機能
- チケット管理: 問い合わせをチケットとして記録・追跡・管理
- ヘルプデスクワークスペース: 複数チャネルの問い合わせを一画面で対応
- ナレッジベース: よくある質問や操作手順を記事化して公開
- AIチャットボット: ナレッジベースを参照して自動応答
- SLA管理: 応答時間・解決時間の目標設定と監視
- カスタマーポータル: 顧客向けの問い合わせ確認画面
これらが一体で動くのが結構ミソになってくるところで、個別のツールを組み合わせるのではなく、CRMの顧客データと連携した状態でサポート業務全体を設計できるのがHubSpotの強みです。
チケットパイプラインの設計
基本のステージ構成
チケットパイプラインは、営業のパイプライン設計と同じ考え方で、自社のサポートフローに合わせてカスタマイズするのが重要です。
| ステージ | 定義 | 自動化のポイント |
|---|
| 新規受付 | 問い合わせが登録された直後 | 自動でチケット作成+担当者割当 |
| 一次対応中 | 担当者が内容を確認中 | SLAカウント開始 |
| エスカレーション | 上位者や開発チームに確認が必要 | 自動通知+担当者変更 |
| 回答済み | 顧客に回答を送信 | 一定期間後に自動クローズ |
| クローズ | 対応完了 | CSAT(満足度)アンケート自動送信 |
企業様によって最適なステージは異なりますが、ステージ数は5〜7個に収めるのがベストプラクティスです。多すぎるとチケット移動の手間が増え、少なすぎると進捗が見えにくくなります。
チケットの自動作成と振り分け
メール・フォーム・チャットからの問い合わせを自動的にチケット化するには、以下の設定を行います。
- 接続されたメールアドレスへの受信 → チケット自動作成
- ウェブサイト上のフォーム送信 → チケット自動作成
- チャットウィジェットからの問い合わせ → チケット自動作成
振り分けルールは、問い合わせの内容(件名のキーワード)や送信元の企業規模によって担当者を自動割当できます。ワークフローを活用すれば、「VIP顧客からの問い合わせは即座にマネージャーに通知」といったルールも設計可能です。
ナレッジベースの構築
ナレッジベースの役割
ナレッジベースは「顧客が自分で答えを見つけられる場所」です。よくある質問、操作手順、トラブルシューティングなどを記事として公開し、問い合わせの前段階で自己解決を促します。
記事のカテゴリ設計
ナレッジベースの記事は、顧客が探しやすいようにカテゴリを設計しましょう。
- はじめに: 初期設定・アカウント関連
- 操作方法: 各機能の使い方
- トラブルシューティング: よくある問題と解決策
- 請求・契約: 契約変更・請求関連の手順
- アップデート情報: 新機能や仕様変更のお知らせ
AIチャットボットとの連携
HubSpotのAIチャットボット(Breeze カスタマーエージェント)は、ナレッジベースの記事を学習データとして参照し、顧客の質問に自動応答します。
ここが1個ポイントになるのですが、AIチャットボットの回答品質は、ナレッジベースの品質に直結します。ナレッジベースの記事がしっかり整備されていれば、AIは正しく回答してくれます。逆に記事が不足していたり内容が古いままだと、的外れな回答をしてしまいます。
AIチャットボットの運用で大切なのは、「常に全部AIが対応するのではなく、ここの基準から人間に渡しますという設定」を明確にすることです。例えば、AIが回答できない質問や、クレーム・緊急性の高い問い合わせは自動的に担当者へエスカレーションする設計にしておきましょう。
設定方法(実装ステップ)
ステップ1: ヘルプデスクワークスペースを有効化
- HubSpotの設定画面(歯車マーク)から「受信トレイとヘルプデスク」を開く
- ヘルプデスクワークスペースを有効化
- チャネル(メール・フォーム・チャット)を接続
ステップ2: チケットパイプラインを設定
- 設定画面の「オブジェクト」→「チケット」→「パイプライン」を開く
- ステージ名・ステージ順序を自社フローに合わせて設定
- 各ステージの自動化(担当者割当、通知、ステータス変更)を設定
ステップ3: SLA(サービスレベル合意)を設定
- 「応答時間SLA」と「解決時間SLA」の目標値を設定(例: 初回応答4時間以内、解決72時間以内)
- SLA違反時の通知ルールを設定
- 営業時間の定義(対応時間外はSLAカウントを一時停止)
ステップ4: ナレッジベースを構築
- Service Hub → ナレッジベースを開く
- カテゴリを作成
- 記事を作成・公開(まずは問い合わせ頻度の高いトップ20の質問から)
- AIチャットボットにナレッジベースを学習させる
活用事例
BtoB ITサービス企業
メール・電話・Slackに分散していたサポート窓口をHubSpotヘルプデスクに集約。チケットの自動作成と担当者振り分けをワークフローで設計し、対応漏れがゼロに。SLAレポートで初回応答時間を継続的にモニタリングし、平均応答時間を8時間から2時間に短縮。
コンサルティング会社
顧客からの資料依頼・日程調整・質問対応をチケットで管理。ナレッジベースに「よくある質問」と「契約関連の手続き」を整備し、問い合わせ件数を30%削減。浮いた時間を攻めのカスタマーサクセス活動に充てられるようになった。
注意点とベストプラクティス
プランごとの機能制限
- Starter: 基本的なチケット管理のみ。ナレッジベース・AIチャットボットは利用不可
- Professional: ヘルプデスクワークスペース、ナレッジベース、AIチャットボット、SLA管理が利用可能
- Enterprise: カスタム権限、高度な自動化、サンドボックスが追加
ナレッジベースやAIチャットボットを使いたい場合は、Professional以上のプランが必要です。
一部システムで解決できない部分もある
HubSpotヘルプデスクは汎用的なサポートツールとしては十分ですが、IT運用管理(ITSM)向けの高度な機能(変更管理、インシデント管理、構成管理など)は専門ツール(ServiceNow等)の方が得意な領域です。自社のサポート要件を整理した上で、HubSpotでカバーする範囲と外部ツールで補完する範囲を設計するのが現実的です。
ナレッジベースの継続的な更新
ナレッジベースは「作って終わり」ではなく、継続的なメンテナンスが必要です。以下のサイクルを四半期ごとに回しましょう。
- チケットデータから頻出する質問を分析
- 未カバーの質問に対する記事を追加
- 古い情報が記載された記事を更新
- 閲覧数・評価が低い記事の改善
まとめ
HubSpotヘルプデスクは、チケット管理・ナレッジベース・AIチャットボット・SLA管理を一つのワークスペースに統合し、カスタマーサポートの全体像を可視化する仕組みです。
まずはチケットパイプラインの設計とチャネル接続から始めて、段階的にナレッジベースの整備、AIチャットボットの導入と進めていくのがおすすめです。CRMにサポートデータが蓄積されるほど、顧客ごとの対応履歴が充実し、よりパーソナライズされたサポートが実現できるようになります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. ヘルプデスクワークスペースと受信トレイの違いは何ですか?
受信トレイは主にメール・チャットの対応管理に特化した機能で、ヘルプデスクワークスペースはそれを拡張してチケット管理・SLA・分析を統合した上位機能です。新規導入の場合はヘルプデスクワークスペースの利用をおすすめします。
Q2. 既存の問い合わせデータを移行できますか?
はい、CSVインポートでチケットデータを一括登録できます。ただし、インポート前にワークフローの発火チェックを行い、不要な自動通知が大量発送されないように注意しましょう。
Q3. 複数のチケットパイプラインを作成できますか?
はい、Professional以上のプランでは複数のパイプラインを作成可能です。例えば「一般サポート」「技術サポート」「請求関連」のように、問い合わせ種別ごとにパイプラインを分けることができます。
Q4. ナレッジベースの記事は何本くらいから始めればいいですか?
まずは問い合わせ頻度の高い質問トップ20〜30個をカバーする記事を作成するのがおすすめです。完璧を目指すよりも、まずは主要な質問をカバーして、チケットデータを分析しながら段階的に追加していくアプローチが現実的です。
Q5. ZendeskからHubSpotヘルプデスクへの移行は可能ですか?
移行自体は可能です。チケットデータのエクスポート・インポート、ナレッジベース記事の移行が必要になります。HubSpotの強みは、サポートデータがCRM(営業・マーケ)と一元化される点にあるので、部門間の情報連携を重視する企業様には特にメリットが大きいかなと思います。
この記事は2025年3月時点の情報に基づいています。HubSpotの機能は定期的にアップデートされるため、最新情報はHubSpot公式サイトでご確認ください。
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