フィールドセールスとインサイドセールスの違い|最適な分業体制と連携のコツ

  • 2026年3月3日
  • 最終更新: 2026年10月20日
この記事の結論

フィールドセールスとインサイドセールスの違いは、担当場所だけではありません。営業プロセスのどこで価値を出すかという役割設計が核心です。

ブログ目次


フィールドセールスとインサイドセールスの違いは、担当場所だけではありません。営業プロセスのどこで価値を出すかという役割設計が核心です。

「インサイドセールスが獲得した商談を、フィールドセールスが受け入れてくれない」「顧客から同じ説明を求められる」「商談後の結果がインサイドセールスへ戻ってこない」——営業組織を分業すると、役割の境界でこうした問題が起こるケースがあります。

フィールドセールスとは、顧客と対面またはオンラインで商談し、提案・交渉・クロージングを担う営業です。インサイドセールスとは、電話・メール・Web会議などの非対面チャネルを使い、リードの発掘・育成・商談創出を担う営業です。

両者の違いを理解する目的は、担当業務を切り離すことではありません。顧客情報と営業プロセスを共有し、それぞれの専門性が次の活動へつながる分業体制をつくることが重要です。

本記事は「インサイドセールスとは?基礎知識から導入効果まで完全ガイド」シリーズの一部です。 関連するトピックを横断的にまとめたインサイドセールス実践ガイドもあわせてご覧ください。


この記事でわかること

営業・CRMの取り組みを検討されている方が、役割の違いだけでなく、分業後の連携まで整理できる内容です。商談化基準や引き継ぎ方法を見直す際にも活用できます。

  • フィールドセールスとインサイドセールスの役割 — それぞれが担当する営業フェーズと、顧客に提供する価値を整理します。
  • 分業体制の選び方 — 完全分業型、インサイドセールス主導型、協働型の特徴と向いている状況を比較します。
  • 商談化と引き継ぎの設計方法 — 部門間で認識がずれやすい基準や、CRMに残す情報を具体化します。
  • SLAの考え方 — インサイドセールスとフィールドセールスが互いに守る約束を明文化する方法を解説します。
  • 連携不全の見直し方 — 商談品質、情報断絶、フィードバック不足など、症状ごとの原因と対策を整理します。

フィールドセールスとインサイドセールスの役割

フィールドセールスとインサイドセールスは、同じ売上目標に向かう営業プロセスの担当者です。違いは優劣ではなく、顧客の検討段階に応じて担う役割にあります。まずは両者の定義と関係を分けて確認しましょう。

フィールドセールスは提案からクロージングを担う

フィールドセールスは、顧客との商談を通じて課題を深掘りし、提案、交渉、クロージングを進めます。顧客の業務や意思決定の背景を踏まえ、導入後の姿まで含めて合意形成を支援する役割です。

  • 求められる力 ── 商材の内容が複雑な場合や、関係者との調整が必要な場合に、会話の流れに応じて提案を組み立てる力
  • 注意したい点 ── 商談前の情報が不足していると、課題の確認からやり直すことになり、顧客と営業担当者の双方に負担がかかります

さらに深掘りしたい方は営業の属人化を解消する方法もあわせてお読みください。

インサイドセールスは接点づくりと商談創出を担う

インサイドセールスは、電話、メール、Web会議などを用いて顧客との接点をつくり、関心や課題を把握しながら商談へつなげます。単にアポイントを獲得するのではなく、顧客の検討状況を確認し、フィールドセールスが提案を始められる状態を整える役割です。

すぐに商談へ進まない顧客については、継続的に情報を提供し、検討の変化を捉えます。インサイドセールスの基本は「インサイドセールスとは?完全ガイド」で網羅的に解説しています。

両者は営業プロセスをつなぐパートナー

  • インサイドセールス ── 顧客の課題や検討状況を整理する
  • フィールドセールス ── 提案と合意形成を進める
  • フィールドセールスからの還流 ── 把握した反応や失注理由をインサイドセールスへ戻せば、その後のヒアリングや対象顧客の見直しにも活用できます

この循環がなければ、分業は単なる作業の切り分けになってしまいます。

両者を別々に評価するだけでなく、商談創出から受注、失注後の掘り起こしまでを一気通貫の流れとして設計することがポイントです。


フィールドセールスとインサイドセールスの違いを比較

両者の違いは、活動場所だけでは判断できません。担当フェーズ、顧客との接点、成果指標、扱う情報を並べると、分業の境界が見えやすくなります。ただし、実際の担当範囲は商材や営業プロセスに合わせて調整する必要があります。

担当フェーズと顧客接点の違い

インサイドセールスは、リードへの初期対応、状況確認、関係構築、商談創出を中心に担当します。フィールドセールスは、具体的な提案、条件調整、クロージングを中心に担当します。

比較項目 インサイドセールス フィールドセールス
主な役割 リードの発掘、育成、商談創出 提案、交渉、クロージング
主な接点 電話、メール、Web会議 対面商談、オンライン商談、プレゼン、デモ
主な担当段階 初期接点から商談化まで 商談化から受注まで
会話の中心 課題、関心、検討状況の把握 解決策、条件、導入判断の合意
次工程への成果物 商談情報と引き継ぎ内容 商談結果と受注または失注情報

この表は基本的な役割分担です。インサイドセールスがクロージングまで担当する体制や、両者が同じ案件を並行して進める体制もあります。

KPIとデータ活用の違い

インサイドセールスでは、顧客との接点や商談創出に関する指標が中心になります。フィールドセールスでは、商談の進捗、受注、受注金額など、案件の結果に近い指標が中心です。

ただし、それぞれの指標を分断すると、インサイドセールスは商談数だけを追い、フィールドセールスは受注しやすい案件だけを優先するといったずれが生じやすくなります。部門別のKPIに加え、商談受入、案件進捗、受注や失注の結果を共有し、営業プロセス全体を評価する視点が必要です。

強みと限界の違い

担当 強み ただし注意したい点
インサイドセールス 多様なリードへ継続的に接点を持ちやすい 商談化基準が曖昧だと、アポイント獲得自体が目的になりやすい
フィールドセールス 顧客の状況に応じた提案と交渉を進めやすい 商談情報が不足すると、顧客へ同じ質問を繰り返しやすい
分業体制 専門性を分けて営業活動を進められる 情報共有の仕組みがなければ、部門間に断絶が生じやすい

分業には、担当者が得意な業務へ集中しやすいという利点があります。ただし、部門を分けるだけで連携が改善するわけではありません。役割、商談化基準、引き継ぎ、フィードバックを同時に設計する必要があります。


分業体制を選ぶための考え方

分業体制は、組織図から決めるのではなく、顧客が検討を始めてから受注するまでの流れを基準に選びます。商材の複雑さ、営業サイクル、必要な提案内容、担当者の役割を整理すると、適した形を判断しやすくなります。ここでは分業モデルを定性的な基準で比較します。

完全分業型

完全分業型は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが、それぞれの担当フェーズを受け持つモデルです。担当範囲を明確にしやすく、各部門が専門性を高めやすい点が特徴です。

観点 内容
向いている状況 リード対応と商談対応を役割別に運用したい
強み KPIと担当範囲を整理しやすい
注意点 部門間で情報が途切れると顧客体験が分断される
設計の重点 商談化基準、引き継ぎ項目、フィードバック

ただし、部門を増やすほど受け渡しの機会も増えます。CRMへ共通情報を残し、次の担当者が過去の経緯を確認できる状態が前提です。

インサイドセールス主導型

インサイドセールス主導型は、商談創出からクロージングまでを同じ担当者が進めるモデルです。顧客との会話を引き継がずに進められるため、情報の受け渡しによるロスを抑えやすくなります。

一方で、担当者には初期対応、ヒアリング、提案、交渉まで幅広いスキルが求められます。商談内容が複雑になるほど業務負荷も高まりやすいため、どこまでを担当範囲に含めるかを明文化しておく必要があります。

協働型

協働型は、インサイドセールスとフィールドセールスが同じ案件に関わり、それぞれの役割を補完するモデルです。インサイドセールスが継続的な接点を担い、フィールドセールスが提案や条件調整を担うなど、案件の状況に応じて協力できます。

ただし、担当の境界が曖昧になると、顧客への連絡が重なったり、必要な対応が互いに任されたままになったりします。主担当、次のアクション、更新する情報を案件ごとに確認できる仕組みが必要です。

選定基準を表にして比較する

判断軸 完全分業型 インサイドセールス主導型 協働型
商談の複雑さ 分業後も標準化しやすい 担当者が一貫して対応しやすい 複数の知見を組み合わせたい
顧客との一貫性 引き継ぎ設計が重要 同じ担当者が維持しやすい 役割説明と連絡調整が重要
組織運営 部門別の責任を明確にしやすい 個人の担当範囲が広くなりやすい ペアやチームの運用設計が必要
CRM運用 部門間の情報連携が中心 活動履歴の継続記録が中心 主担当と共同担当の可視化が中心

分業モデルは固定的に考える必要はありません。

まずは現在の営業プロセスに近い形から始め、案件の滞留や情報断絶を確認しながら段階的に調整する方法をおすすめします。


連携の土台となる営業プロセスの設計

インサイドセールスとフィールドセールスの連携は、担当者同士の相性だけに頼らず、営業プロセスとして設計する必要があります。パイプラインは案件を並べる一覧ではなく、営業の進め方を共通化し、経営判断に必要な情報を整える基盤です。設計時には取引ステージ、受注確度、ステージ定義、必須入力項目をまとめて考えます。

顧客の流れから担当範囲を決める

最初に、リードがどのように商談へ進み、受注後に顧客となるかを整理します。その流れに沿って、インサイドセールスが担当する範囲、フィールドセールスへ渡す条件、受注後の担当部門を定義します。

部門を先に置いて業務を分けると、顧客の検討段階と社内の担当範囲が合わないことがあります。顧客の状態を基準に役割を定めることで、誰が次のアクションを担うのかを判断しやすくなります。

パイプラインを構成する要素をそろえる

設計要素 決める内容 連携への効果
取引ステージ 案件がどの状態に進んだらステージを変えるか ISとFSが同じ進捗を見られる
受注確度 各ステージの案件をどの程度の見込みとして扱うか 案件の優先順位を共有しやすい
ステージ定義 ステージに入る条件と完了条件 担当者による判断のばらつきを抑える
必須入力項目 移行時に記録する顧客情報や商談情報 引き継ぎ漏れを仕組みで防ぎやすい

入力項目を増やしすぎると、更新の負担が高まり、必要な情報まで入力されなくなるケースがあります。営業活動とレポートに使う項目を優先し、運用しながら追加する方が定着させやすくなります。

商談化基準を共通言語にする

商談化の定義が曖昧なままでは、インサイドセールスは商談として渡したつもりでも、フィールドセールスは追加確認が必要だと判断します。BANTの観点は、双方が確認する情報をそろえるための材料になります。

確認項目 確認する内容
Budget 概算予算や予算確保の可能性
Authority 決裁者や意思決定に影響する担当者との関係
Need 顧客が認識している具体的な課題
Timeline 導入を検討する時期や判断の予定

すべての情報がそろうまで商談を渡さないという運用では、顧客の機会を逃す可能性があります。どの情報を商談化の条件とし、どの情報をフィールドセールスが商談で確認するかを分けておくことが要点になります。

小さく始めて調整する

最初から複雑なパイプラインや大量の入力項目を用意すると、現場が運用を理解しにくくなります。まずは主要な取引ステージ、商談化基準、引き継ぎ項目に絞って開始し、実際の案件で不足を確認します。

商談が特定のステージに滞留する、差し戻し理由が偏る、入力されない項目があるといった事実をもとに見直します。担当者へ注意を促すだけでなく、ステージ移行時の確認や必須入力を使い、仕組みとして運用を支えることが重要です。


引き継ぎとCRM運用を仕組み化する方法

引き継ぎは、インサイドセールスがフィールドセールスへ文章を送るだけの作業ではありません。顧客との接点、商談の背景、次の対応を、担当者が変わっても理解できる状態にする業務設計です。CRMへ情報を一元管理すると、個人の記憶やスプレッドシートの更新に依存しにくくなります。

引き継ぎ情報のフォーマットを統一する

インサイドセールスからフィールドセールスへ渡す情報は、案件ごとに同じ項目で記録します。自由記述だけにすると、担当者によって情報量や表現が変わり、受け手が必要な情報を探しにくくなります。

情報区分 記録する内容
顧客情報 企業名、担当者名、役職、連絡先
商談化情報 顧客の課題、検討状況、BANTに関する確認内容
会話の記録 顧客が話した課題や要望、確認できていない事項
競合情報 顧客が比較している選択肢や判断軸
次の予定 商談日時、議題、参加者、次のアクション
担当者の所感 温度感、注意点、追加で確認したい内容

入力項目は、フィールドセールスが初回商談を進めるために必要な内容へ絞ります。現場で使われない項目を増やすより、少ない項目を同じ基準で更新する方が情報の信頼性を保ちやすくなります。

スプレッドシートと手動連絡の分散を見直す

顧客情報をスプレッドシートに記録し、引き継ぎをチャットで送り、商談結果を別の資料へ入力する運用では、情報の所在が分かれます。更新のたびに転記が必要になり、担当者による記入漏れや内容の差分も起こりやすくなります。

手動管理で起こりやすい状態 CRMで目指す状態
顧客情報と商談情報が別々に保存される 顧客と取引を関連付けて確認できる
引き継ぎ内容が個別メッセージに残る 共通の項目と活動履歴へ記録する
商談結果がISへ戻らない 取引ステージや結果を共通画面で確認する
担当者の記憶に対応履歴が依存する 新しい担当者も過去の経緯をたどれる

CRMはデータを保管するだけの場所ではありません。

営業プロセスの標準化、部門間連携、進捗の可視化を支える仕組みとして設計することが重要です。

HubSpotで顧客と取引を一元管理する

HubSpotを活用する場合は、コンタクトと会社に顧客情報を持たせ、取引で商談の進捗を管理します。受注後は顧客対応や請求に必要な情報へつなぎ、顧客との接点から取引、受注後の対応まで同じ流れで確認できる状態を目指します。

次の画面は、HubSpotの取引一覧で、取引名、クローズ日、取引ステージ、関連会社、金額を同じ表で確認している状態です。

HubSpotの取引一覧画面

インサイドセールスは顧客との活動履歴や商談化情報を更新し、フィールドセールスは取引ステージや商談結果を更新します。詳しくは「HubSpotシーケンスの使い方を徹底解説!営業メール自動化の設定から分析・収益管理まで」で解説しています。

ただし、CRMを導入しただけでは情報はそろいません。誰が、どのタイミングで、どの項目を更新するかを営業プロセスと合わせて決める必要があります。

フィードバックを次の営業活動へ戻す

フィールドセールスは、商談の受入可否、進捗、受注や失注の結果をインサイドセールスへ戻します。差し戻す場合は理由を記録し、追加ヒアリングが必要なのか、対象顧客が合っていないのかを分けます。

失注理由も記録すれば、インサイドセールスのヒアリングだけでなく、対象顧客や提案内容の見直しに活用できます。検討時期が合わなかった顧客については、失注で終わらせず、再び情報提供や状況確認へ戻す流れを設計できます。


SLAで部門間の約束を明文化する

SLAとは、インサイドセールスとフィールドセールスの間で取り決める約束事です。互いの責任範囲、対応条件、記録方法を明文化し、連携の品質を担当者個人の判断だけに依存させないために使います。数値目標を置く前に、守るべき行動と確認方法をそろえることが重要です。

インサイドセールス側の約束を決める

約束する項目 基準の考え方
商談化条件 合意した確認項目を満たしてから引き継ぐ
引き継ぎ情報 必要項目を共通フォーマットへ記録する
商談予定 日時、参加者、議題を明記する
未確認事項 分からない情報を推測せず、未確認として残す
顧客への説明 次に担当するフィールドセールスの役割を伝える

未確認事項を空欄のままにすると、入力漏れなのか、確認できなかったのか判断できません。未確認であること自体を記録するルールにすると、フィールドセールスが商談で確認しやすくなります。

フィールドセールス側の約束を決める

約束する項目 基準の考え方
初回接触 顧客の温度感に応じた期限内に対応する
商談結果 商談後に進捗と次のアクションを更新する
差し戻し 受け入れられない理由と追加確認事項を記録する
失注情報 失注理由と今後の対応方針を残す
改善提案 ヒアリングや商談化基準への意見を共有する

フィールドセールスから結果が戻らなければ、インサイドセールスは商談の質を改善できません。受注や失注だけでなく、提案へ進まなかった理由も共有することがポイントです。

定期的に運用を見直す

SLAは作成して終わりではありません。定期的な合同ミーティングで、守れなかった項目と、その背景を確認します。

議題 確認する内容
パイプラインレビュー 進行中の商談、停滞案件、次のアクション
商談フィードバック 受入、差し戻し、追加ヒアリングの理由
失注の振り返り 失注理由、検討時期、再アプローチの方針
ナレッジ共有 有効だった質問、顧客の反応、改善内容

ただし、SLAを厳しくしすぎると、形式を守ることが目的になり、顧客への対応が遅れることがあります。例外を認める条件と、例外時に記録する内容も決めておくと運用しやすくなります。


連携がうまくいかないときの原因と見直し方

連携不全は、担当者の姿勢だけが原因とは限りません。商談化基準、CRM項目、フィードバック、会議の進め方など、仕組みの不足が表面化しているケースがあります。症状から原因を切り分け、該当する設計を見直しましょう。

商談の質に対する評価が分かれる

フィールドセールスから商談の質が低いと言われる場合は、まず受入条件を確認します。顧客の課題、検討状況、関係者、次の予定について、双方が同じ基準を持っているかを見直します。

症状 考えられる原因 見直す内容
商談の受入判断が担当者ごとに違う 商談化基準が曖昧 BANTの確認項目と受入条件
追加ヒアリングが繰り返される 必要情報が定義されていない 引き継ぎ項目と未確認事項
差し戻し理由が残らない フィードバックのルールがない 差し戻し理由の記録項目

商談化基準を見直す際は、受注した案件だけでなく、差し戻しや失注となった案件も確認します。実際の商談結果と照らし合わせることで、必要な情報と不要な情報を分けやすくなります。

顧客が同じ説明を求められる

顧客がインサイドセールスとフィールドセールスへ同じ説明を繰り返している場合は、引き継ぎ情報が不足している可能性があります。活動履歴が残っていても、要点が整理されていなければ次の担当者は会話の背景を理解できません。

顧客が話した課題、検討のきっかけ、確認済みの内容、未確認事項、次回の議題を共通フォーマットへまとめます。フィールドセールスは商談前に内容を確認し、既に聞いた情報ではなく、追加で深掘りする質問から始められる状態を目指します。

商談結果が次の活動へ生かされない

商談後の結果がインサイドセールスへ戻らない場合、商談創出の改善が止まります。受注したか失注したかだけでなく、提案へ進んだ理由、進まなかった理由、顧客の反応を記録します。

失注理由を分類して共有すれば、対象顧客の見直しや、失注後の掘り起こしにもつなげられます。インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングが同じ情報を見ることで、個別機能ではなく営業活動全体の改善へつながります。

特定の担当者だけが成果を出している

特定の組み合わせだけ連携がうまくいく場合は、質問内容、引き継ぎ方法、商談準備が個人の経験に依存している可能性があります。成果を出している担当者の行動を確認し、商談化基準、入力項目、確認手順へ落とし込みます。

標準化は、会話を画一化することではありません。新人や引き継いだ担当者でも必要な情報を確認でき、顧客に応じた判断へ集中できる土台をつくることです。


HubSpotで引き継ぎとSLAを運用する設定例

分業の成否は、インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎが、決めた条件と期限どおりに行われるかで決まります。ここでは、HubSpotで引き継ぎの条件・担当・期限を運用する設定例を示します。項目名は例なので、自社の言葉に合わせて変えてください。

引き継ぎを仕組みにする手順

  1. 引き継ぎの条件を点数か項目で決める ── 企業規模・役職・検討時期など、商談に進める条件をリードスコアの基準にするか、確認済みの項目として定義します(出典:リードスコアの作成)。
  2. 引き継ぎ時に必ず残す項目を作る ── 次の表の項目を、コンタクトまたは取引のプロパティとして作成します(出典:プロパティの作成と編集)。
  3. 担当の割り当てと通知を自動化する ── 条件を満たしたら取引を作成し、フィールドセールスの担当者を割り当ててタスクと通知を送るワークフローを作ります(出典:ワークフローの作成)。
  4. 期限を過ぎた引き継ぎを検知する ── 同じワークフローに待機を入れ、決めた日数のうちにステージが進んでいなければ、上長に通知します。
引き継ぎ時に残す項目(例) 入力形式 フィールドセールスでの使い方
確認済みの課題 複数行テキスト 初回訪問で同じ質問を繰り返さない
検討時期 ドロップダウン選択(3か月以内・半年以内・未定) 訪問の優先順位を決める
決裁への関与 ドロップダウン選択(決裁者・推進者・情報収集) 次に会うべき人を決める
差し戻し理由 ドロップダウン選択 条件の見直しに使う(フィールドセールスが入力)

SLAで決める数字と確認の方法

SLAの項目(例) 決める数字 HubSpotでの確認
引き継ぎ後の初回接触 2営業日以内 引き継ぎ日と初回の活動日の差を一覧で確認する
差し戻しの判断 初回接触から5営業日以内 差し戻し理由の入力状況を週次で確認する
引き継ぎ件数 月ごとの目標件数 条件を満たして作成された取引の件数を集計する

よくある失敗と回避策

  • 引き継ぎの条件を口頭で決める ── 担当者ごとに基準がずれます。条件を項目か点数で定義し、記録に残します。
  • 差し戻しを記録しない ── インサイドセールスが条件を見直す材料がなくなります。理由を選択式で必須にします。
  • SLAを決めても確認しない ── 期限を過ぎた引き継ぎが放置されます。期限超過の通知と週次の確認を組み合わせます。

自社の状況に合わせた進め方

StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、150社以上のHubSpot支援に携わってきました。営業の分業体制づくりでは、次の順で小さく始めて広げる進め方を提案しています。詳しくはHubSpot導入・構築支援で紹介しています。

  1. 現状の整理・要件定義 ── 直近の商談を振り返り、引き継ぎで失われた情報と、止まった理由を洗い出します。
  2. 設計・構築 ── 引き継ぎの条件、残す項目、割り当てと期限のワークフローを設計します。
  3. データ移行 ── 進行中のリードと商談を取り込み、担当と段階を付け直します。
  4. テスト・検証 ── 一部のチームで1か月運用し、差し戻し率と初回接触までの日数を確かめます。
  5. 定着・運用改善 ── 準委任で伴走しながら条件とSLAを見直し、AI(Breeze・Claude等)による通話記録の要約や下調べの補助へ広げます。
自社の状況 最初の一手 次へ進む条件
これから分業を始める 引き継ぎの条件と残す項目を決め、1つのチームで試す 差し戻し理由から条件を1回見直せた
分業しているが引き継ぎで情報が抜ける 引き継ぎ時に残す項目を必須にする 初回訪問で同じ質問をしなくなった
引き継いだ商談が放置される 期限超過の通知と週次の確認を始める 初回接触までの日数がSLA内に収まった

インサイドセールスの指標の決め方はインサイドセールスのKPI設計、購買関与者の記録はBtoB購買プロセスとはで解説しています。


よくある質問

フィールドセールスとインサイドセールスの分業を検討する際によく出る疑問を整理します。役割だけでなく、連携方法やCRM運用まで含めて確認してください。

インサイドセールスとフィールドセールスは担当範囲がどう違いますか?

インサイドセールスは、リードへの接点づくり、検討状況の把握、関係構築、商談創出を中心に担当します。フィールドセールスは、具体的な提案、条件調整、交渉、クロージングを中心に担当します。

ただし、担当範囲は固定ではありません。商材の複雑さや営業プロセスに応じて、インサイドセールスが受注まで担当したり、両者が同じ案件を進めたりする形もあります。

フィールドセールスから商談の質が低いと言われるのはなぜですか?

商談化の定義や、引き継ぎ時に必要な情報が共有されていない可能性があります。予算、意思決定に関わる担当者、課題、検討時期など、確認する観点をそろえましょう。

差し戻し時には理由をCRMへ記録し、追加ヒアリングで解決できるのか、対象顧客を見直す必要があるのかを分けます。個人への注意だけで終わらせず、基準と入力項目を更新することが重要です。

分業体制はどのモデルを選べばよいですか?

役割を明確に分けたい場合は完全分業型、同じ担当者が顧客対応を継続したい場合はインサイドセールス主導型、複雑な案件を連携して進めたい場合は協働型が候補になります。

ただし、組織規模だけで決めるのではなく、顧客の検討プロセス、提案の複雑さ、必要な引き継ぎ、担当者のスキルを確認してください。現在の体制に近いモデルから小さく始め、運用結果を見ながら調整する方法がおすすめです。

SLAには何を盛り込むべきですか?

インサイドセールス側は商談化条件、引き継ぎ情報、商談予定、未確認事項の扱いを決めます。フィールドセールス側は初回接触、商談結果の更新、差し戻し理由、失注情報、改善フィードバックを決めます。

SLAは部門を監視するためではなく、顧客対応を滞らせず、改善に必要な情報を残すための約束です。運用状況を定期的に確認し、守りにくい項目は原因を調べて見直します。


まとめ

フィールドセールスとインサイドセールスの違いは、担当する営業フェーズと顧客への関わり方にあります。両者を分けるだけでなく、商談化、引き継ぎ、提案、受注、失注後の掘り起こしまでを同じ営業プロセスとして設計することが重要です。

押さえておきたい要点は次の通りです。

  • インサイドセールスはリードの育成と商談創出、フィールドセールスは提案とクロージングを中心に担います。
  • 分業モデルは、商材の複雑さ、顧客の検討プロセス、必要な連携方法から選びます。
  • パイプラインは、取引ステージ、受注確度、ステージ定義、必須入力項目を組み合わせて設計します。
  • 商談化基準、引き継ぎ項目、SLA、フィードバックを明文化し、個人の力量だけに頼らない仕組みをつくります。
  • CRMでは顧客情報と取引情報を一元管理し、商談結果を次の営業活動へ戻します。

まずは、現在の営業プロセスと情報の受け渡しを書き出すところから始めてください。読者自身で進める場合は、次の順番で着手できます。

  • ISとFSが現在担当している業務と、役割が重なっている箇所を整理します。
  • 商談化基準と引き継ぎ項目を決め、CRMで共通管理します。
  • 商談結果と差し戻し理由を定期的に振り返り、パイプラインやSLAを調整します。

CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのHubSpotゴールドパートナーのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。


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著者情報

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。