業務量調査は、「人が足りない」という訴えを、どの業務に、いつ、誰の時間が使われているかを確かめるための記録に変える手法です。 増員の要否を判断する場合も、先に業務の必要性と負荷の生じ方を調べます。同じ工数でも、繁忙時期に集中しているのか、特定の担当者に偏っているのかで、検討すべき対応が変わるからです。
例えば月末に見積作成が滞るなら、部門全体の工数だけでは原因を特定できません。依頼件数、見積ごとの作業、承認待ち、担当者への集中を分けて記録します。件数の増加が主因なら処理体制を、確認の往復が主因なら手順や必要な情報を見直します。
本記事では、調査で答えたい問いを決める→手法を選ぶ→結果を分析する→変更を試して再測定する順に進めます。工数の大小に加え、その業務の受け手、品質、後工程への影響を確認し、リソース配分の判断につなげます。
DXのプロセス設計について体系的に学びたい方は、プロセスマッピングガイドで、業務の流れを可視化し、調査する工程を選ぶまでの全体像を確認できます。
この記事でわかること
業務量調査では、集計表を作る前に「何を決めるための調査か」を明確にします。この節では記事の道筋を示します。各段階で、得られた記録だけで判断できる場合と、追加の確認が必要な場合を区別して進めます。
- 3つの調査手法の進め方 — タイムスタディ・ワークサンプリング・自己申告型で何を記録し、結果からどこまで読み取れるかを確認します。
- 自社に合った手法の選び方 — 知りたい情報、業務の定型性、現場の記録負担から手法を選び、詳しく調べる業務を絞ります。
- 改善余地を整理する分析方法 — 業務の必要性を受け手に確かめ、頻度と所要時間をそろえた条件で比較します。
- リソース配分の判断基準 — 業務の見直しと担当の再配分を試した結果から、増員・自動化・外注を検討します。
- 現場と進める方法 — 記録ルールを現場と試し、集計結果を照合して、変更後の再測定につなげます。
こんな方におすすめ: 増員の判断材料を整理したい経営者・管理職の方、工数を可視化して業務と担当の配分を見直したい業務改善担当者の方
業務量調査が経営判断に欠かせない理由
「忙しい」という状態を人員数だけで説明すると、繁忙時期、作業の重複、担当の偏りを見落とすおそれがあります。業務量調査では、意思決定の問いを先に置き、必要な記録を選びます。ここでは工数を記録する目的と、集計結果を判断に使うための条件を説明します。
「忙しい」を数値に置き換える
現場から増員の要望があったら、まず「どの業務で処理が滞り、どの状態を解消したいか」を確認します。業務名、所要時間、発生時期、担当者を同じルールで記録すると、次の問いを分けて検討できます。
- 人員増加が必要か、業務の進め方を変えられるか
- どの業務で自動化や外注を検討するか
- 部門間や担当者間の配分に偏りがあるか
- 新しい取り組みに割ける時間を確保できるか
増員の要否を判断するなら、必要な業務を処理する工数と、担当者ごとの負荷を見ます。自動化する工程を探すなら、発生頻度と所要時間に加え、毎回同じ条件で処理できるかを確認します。問いが違えば、必要な記録も違います。
比較するときは、対象者、対象業務、記録期間をそろえます。月末を含む記録と通常時だけの記録に差があっても、それを担当者の負荷の差とは言い切れません。条件が異なる場合は差を明記し、同じ条件で記録を追加するか、判断の対象を限定します。
付加価値分析の起点になる
時間を多く使う業務を見つけても、すぐに削減対象とは決められません。各業務を「直接価値を提供する業務」「遂行に必要な付随業務」「やめられる可能性がある業務」に分け、その役割と工数を一緒に確認します。業務効率化の全体戦略と優先順位の決め方については、業務効率化の進め方で詳しく解説しています。
例えば報告書の作成に時間がかかっているなら、まず受け手が何を判断するために使うかを聞きます。必要な項目がある場合は残し、重複入力や使われていない項目を調べます。受け手によって用途が違うなら、報告書を一律に減らす前に用途ごとの作り方を検討します。
この確認によって、同じ「時間のかかる業務」でも、品質を保ちながら手順を変える業務と、用途を確かめて廃止を検討する業務を分けられます。
スプレッドシート集計で止まりやすい理由
担当者ごとにスプレッドシートへ記録しても、業務名や記録の粒度が違えば比較できません。集計前に業務カテゴリ、時間の記入単位、並行作業の扱いを決めます。待ち時間や割り込み対応も、実際の業務を例に記録先を確認します。
試行中に同じ見積作成が「営業活動」と「事務作業」に分かれたら、担当者に理由を聞きます。作業の中身が同じならカテゴリの定義をそろえ、提案内容の検討と定型項目の入力で打ち手が異なるなら、作業を分けて記録します。分類がそろってから集計し、工数の大きい業務に記録漏れや時期の偏りがないかを現場と照合します。
営業やカスタマー対応では、CRMに残る活動記録を、詳しく調べる業務を絞る手がかりにできます。ただし活動の件数は所要時間を示しません。時間を判断するには、別途記録した工数と照らし合わせます。
業務カテゴリを洗い出すための図が必要な場合は、業務フロー図作成ツール比較で、担当、引き継ぎ、作業の流れのうち何を図にしたいかに応じたツールの選び方を確認できます。
調査を始める前に決める3つの設計項目
調査に着手する前に、答えを出したい問い、業務カテゴリ、対象範囲と期間を決めます。問いから必要な記録項目を選び、現場で同じ意味の記録ができるかを試します。この節では、調査を始めてよい状態までの確認方法を説明します。
目的と「答えを出したい問い」を決める
調査結果を使う判断を「営業部門の増員要否を判断する」のように書き出します。そのうえで、結果によって次に取る行動を分けます。例えば負荷が特定業務に集中していればその業務の手順を調べ、必要な業務が広く処理しきれていなければ配分や体制を検討します。
| 答えを出したい問い |
主に集めるデータ |
分析の単位 |
| 増員は必要か |
部門・担当者ごとの総工数と業務内訳 |
部門・担当者 |
| どの業務を自動化するか |
業務ごとの頻度と1回あたりの所要時間 |
業務 |
| 部門間の配分は適切か |
部門ごとの付加価値業務・付随業務・ムダの比率 |
部門 |
| 新しい取り組みに回せる余力はあるか |
ムダ・付随業務に使われている時間 |
部門・業務 |
表のデータは、問いに答えるための出発点です。例えば「余力」を見る場合、記録上の空き時間だけで新しい業務を割り当てず、突発対応や必要な待機も確認します。
問いが複数あるなら、先に必要な意思決定を選びます。その問いに必要な項目で記録を試し、ほかの項目は調査を広げるときに追加するか決めます。集計表を作る前に「どの結果なら変更を試し、どの結果なら記録を追加するか」を関係者とそろえておきます。
業務カテゴリの粒度を決める
カテゴリは、改善方法が変わる単位まで分けます。「営業活動」では打ち手を選べなくても、「提案書作成」「見積作成」「社内報告」に分ければ、それぞれの受け手と手順を確認できます。一方、分類に迷うほど細かければ、記録の揺れが増えます。
- 改善策が変わるかを確認する: 同じカテゴリ内に、廃止を検討する作業と品質を高めたい作業が混在していれば分けます。
- 記録時の迷いを確認する: 担当者によって選ぶカテゴリが違うなら、含む作業と含まない作業を明記するか、カテゴリを統合します。
業務カテゴリは自社の業務フローから洗い出します。既存の業務フロー図があれば工程を手がかりにし、現場で使われる業務名と照らし合わせます。試しに記録して分類がそろえば集計に進みます。分類できない作業が残る場合は、内容を聞いて定義を直します。名称だけを合わせても作業範囲が違う場合は、比較する前に範囲をそろえます。
対象範囲と期間を決める
記録する期間は、判断したい業務の変動に合わせます。月末の負荷を判断したいなら月末を含め、通常時との違いを確認できるようにします。繁忙期の記録しかなければ、その結果を通年の業務量として扱わず、ほかの時期にも記録が必要か決めます。
対象範囲は、課題が見えている部門から定めます。その部門でカテゴリの解釈がそろい、集計結果が現場の認識と合うか確認できたら、同じ問いを持つ部門へ広げるか検討します。部門ごとに業務名や繁忙時期が違う場合は、共通カテゴリにまとめる前に対応関係を確かめます。
企業様によって最適な形は異なります。調査対象は一律の広さで決めず、必要な判断に対して、比較できる記録を集められる範囲から始めてください。
3つの調査手法の特徴と進め方
業務量の調べ方には、作業の時間を直接測るタイムスタディ、観察した時点の作業を記録するワークサンプリング、担当者が時間を記録する自己申告型があります。この節では各手法の記録方法と読み取れる範囲を説明します。手法を選ぶ際は、まず必要な答えを決めます。
タイムスタディ(時間研究)
タイムスタディは、対象業務を作業要素に分け、それぞれの所要時間を直接計測する手法です。手順が比較的一定で、どの工程に時間がかかるかを知りたい場合に検討します。
実施手順
- 対象業務を作業要素に分解する
- 各作業要素の所要時間を複数回計測する
- 計測データから標準時間を算出する(平均値に余裕率を加算)
- 標準時間をもとに、業務全体の必要工数を算出する
標準時間を扱う前に、計測した作業条件と、余裕時間に含める範囲を決めます。見積作成なら、定型項目の入力と、案件ごとの確認や承認待ちを分けます。異なる条件の作業を一つの平均値にすると、必要工数を読み違えるためです。
メリット
- 同じ条件で計測した作業要素の時間を比較できる
- 時間差が出る工程を特定し、手順の見直しにつなげられる
- 条件をそろえた作業について、必要工数を検討する材料になる
デメリット
- 計測する人と対象者の時間を確保する必要がある
- 観察中の作業が普段の進め方と同じか確認が必要
- 依頼内容や判断が毎回変わる業務では、結果をまとめにくい
計測時には依頼内容と例外処理の有無も残します。同じ条件でも特定の工程で時間差が出るなら、その工程の手順を調べます。案件の内容によって工程自体が変わるなら、標準時間を決める前に作業を分け直すか、別の手法で全体像を確認します。
ワークサンプリング
ワークサンプリングは、あらかじめ決めた複数の時点で作業内容を観察し、業務カテゴリごとの構成比を推定する手法です。複数担当者の時間の使われ方を見たい場合に検討します。
実施手順
- 業務カテゴリ(分類項目)を事前に定義する
- 観察のタイミングをランダムに設定する(1日の中で複数回、時間帯に偏りが出ないように設定する)
- 設定したタイミングで担当者の作業内容を記録する
- 観察結果を集計し、各業務カテゴリの構成比を算出する
メリット
- 複数の担当者について、観察時点の業務構成を比較できる
- 作業の開始と終了を連続して計測せずに、時間の使われ方を調べられる
- 観察対象を絞り、業務構成を詳しく確認できる
デメリット
- 個別の作業要素の正確な所要時間はわからない
- 観察した時点に含まれない業務は、結果から判断できない
- 非定型業務の細かな内訳は把握しにくい
集計前に、観察時点がどの時間帯、曜日、繁忙状況に含まれるかを確かめます。月末の負荷を判断したいのに通常時しか観察していなければ、対象時期に観察を追加するか、別の記録で補います。
構成比の差を担当者の能力差とは扱いません。担当案件や権限が違えば、観察される業務も変わります。役割と対象業務がそろう場合に配分を比較し、1件あたりの処理時間が必要になった業務は別途計測します。
自己申告型(タイムシート・業務日報)
自己申告型は、担当者自身が業務内容と所要時間を記録する手法です。まず部門の業務全体を把握したい場合に使えます。ツールを選ぶ前に、迷わず入力できるカテゴリと記録のタイミングを決めます。
実施手順
- 業務カテゴリと記録ルール(粒度・頻度)を定義する
- 記録ツール(タイムシート・アプリ・スプレッドシート)を配布する
- 一定期間、担当者に業務時間を記録してもらう
- 記録データを集計・分析する
メリット
- 担当者自身にしか見えない作業も記録の対象にできる
- 業務の区切りや割り込みの実態を、担当者に確認できる
- 同じルールで記録を続ければ、変更前後を比較する材料になる
デメリット
- 記録忘れや後からのまとめ入力があると、時間の解釈が難しくなる
- 担当者ごとにカテゴリの解釈や時間の丸め方が異なる場合がある
- 記録作業自体が担当者の負担になる
試行では、業務の区切りで記録できるかを確かめます。後からのまとめ入力が続くなら、入力のタイミングやカテゴリの数を見直します。割り込み対応を記録しにくいなら、その扱いを決めてから本調査に進みます。
集計後は、時間の大きい業務と、現場が負担を感じる業務を照合します。食い違う場合、まず記録漏れと分類の違いを確認します。負担が急な依頼や判断の難しさにあるなら、時間を細かく測る前に、依頼内容や発生場面も記録するか検討します。
自社に合った手法の選び方
作業要素ごとの時間、業務に使う時間の割合、部門全体の内訳のどれが必要かを先に決めます。この節では、比較表を起点に試行する手法を選び、その結果で調査を深めるかを判断します。
判断基準の比較
| 判断基準 |
タイムスタディ |
ワークサンプリング |
自己申告型 |
| 精度 |
高い |
中程度 |
低〜中 |
| コスト |
高い |
中程度 |
低い |
| 対象規模 |
小規模向き |
中規模向き |
大規模可能 |
| 非定型業務 |
不向き |
やや不向き |
対応可能 |
| 現場負荷 |
中程度 |
低い |
中程度 |
| 導入のしやすさ |
難しい |
中程度 |
容易 |
表は手法を選ぶための定性的な目安です。「精度」「コスト」「現場負荷」は、観察する範囲や記録方法によって変わります。タイムスタディでも作業条件がそろわなければ時間を比較できません。自己申告型でも、担当者間でカテゴリの意味がそろっていれば、全体の内訳を検討する材料になります。
まず、答えたい問いに必要な記録を少量試します。記録した内容から問いに答えられれば調査範囲を定めます。答えられなければ、記録項目が足りないのか、手法が合わないのかを分けて見直します。
全体把握と精密分析の2段階アプローチ
対象業務をまだ絞れていない場合は、自己申告型で部門の内訳を把握し、詳しく調べる業務を選ぶ進め方があります。次に必要なのが工程ごとの時間か、担当者間の業務構成かによって手法を選び直します。
| 段階 |
使う手法 |
目的 |
次の段階に進む目安 |
| 第1段階:全体把握 |
自己申告型 |
部門・業務ごとの工数の大まかな内訳をつかむ |
時間のかかっている業務領域が絞り込めた |
| 第2段階:精密分析 |
タイムスタディ/ワークサンプリング |
絞り込んだ領域の作業要素や構成比を詳しく見る |
改善策(自動化・標準化・廃止など)を決められる粒度のデータがそろった |
第1段階で見積作成の工数が大きいと分かっても、直ちに自動化対象とは決めません。案件数、見積内容の違い、受け手が必要とする確認、記録の正確さを調べます。必要な工程を保ったまま手順を変えられるなら、その変更を試します。時間がかかる工程や担当者間の配分を特定しないと打ち手を決められない場合に、第2段階へ進みます。
手法を切り替える判断の分かれ目
自己申告型で把握した業務を詳しく調べる際は、次の順に確認します。
- 手順が決まっていて、工程ごとの時間差を知りたいか → 当てはまれば、タイムスタディで作業要素を計測します。
- 複数の担当者について、業務に使う時間の割合を知りたいか → 当てはまれば、ワークサンプリングを検討します。
- 依頼ごとに内容が変わり、共通の工程を切り出しにくいか → 当てはまれば、自己申告型のカテゴリを見直し、仕事内容もあわせて記録します。
記録上の時間と現場の実感が食い違うときは、記録漏れ、まとめ入力、分類の違いを先に調べます。それでも業務構成を確認できなければ観察を加えます。観察でも負担の理由が分からないなら、作業前後の確認や待機が調査範囲から外れていないかを確認します。
部門をまたぐ作業で担当の境界が曖昧な場合は、部門横断の業務フロー設計で、引き継ぎ箇所と役割を整理する方法も確認できます。
調査結果の分析フレームワーク
集計した工数だけでは、その業務を減らしてよいか判断できません。業務の役割を受け手に確かめ、比較条件をそろえて頻度と所要時間を見て、試す変更を決める順に分析します。この節では、分類から実行までを一つの記録につなげる方法を説明します。
付加価値分類
調査結果を以下の3つに分類し、改善余地を定量化します。
| 分類 |
定義 |
例 |
改善方針 |
| 付加価値業務 |
顧客や組織に直接価値を提供する業務 |
提案書作成、顧客対応、製品開発 |
質の向上に注力 |
| 付随業務 |
直接価値は生まないが業務遂行に必要な業務 |
データ入力、報告書作成、会議 |
効率化・自動化 |
| ムダ |
排除しても業務品質に影響しない業務 |
二重入力、不要な承認、待ち時間 |
即座に排除 |
表の「ムダ」は、受け手と用途を確認したうえで、なくしても必要な情報や品質に影響しないと判断できた作業です。「即座に排除」という方針も、その確認が済んだ場合に適用します。二重入力に見えても別の確認手続きに使われていれば、まず用途を整理します。
見積作成では、顧客に必要な内容を検討する作業と、同じ情報を別の場所へ転記する作業を分けます。前者は品質や判断の支援を考え、後者は転記先で情報が使われているかを調べます。待ち時間も、ほかの作業を進められる状態か、後工程の停滞につながるかで対応が変わります。
分類が決まったら、各カテゴリの工数を集計します。分類に迷う業務は、成果物の受け手と必要性を確認してから方針を選びます。
業務ポートフォリオ分析
業務を「頻度×1回あたりの所要時間」のマトリクスで整理し、改善の優先順位を決定します。
|
所要時間:大 |
所要時間:小 |
| 頻度:高 |
最優先で改善(自動化・効率化) |
効率化の余地を検討 |
| 頻度:低 |
標準化・テンプレート化 |
現状維持 |
表の位置は、詳しく調べる順序を決める出発点です。「最優先で改善」も、自動化を直ちに実施する意味ではありません。まず業務の必要性と変更した場合の影響を確認します。「現状維持」の位置にあっても、発生時に後工程が止まる業務なら、発生条件と対応手順を調べます。
比較前に、頻度を数える業務の単位と、所要時間に含める範囲をそろえます。見積作成に承認待ちを含む記録と含まない記録を並べると、作業自体の時間差を判断できません。待機が問題なら、作業時間と待機時間を分けて扱います。
付加価値分類と重ね、付随業務なら手順の簡素化を、ムダなら用途確認後の廃止を検討します。直接価値を生む業務では、短縮によって成果物の品質が下がらないかを先に確認します。
分析結果を改善実行リストに落とす
分析後は、業務ごとに分類、工数、考えられる打ち手、担当部門を並べます。打ち手を決める情報が足りない行には、追加で確認する相手と内容を記します。
| 記録する項目 |
内容の例 |
| 業務名 |
見積作成 |
| 付加価値分類 |
付随業務 |
| ポートフォリオ上の位置 |
頻度:高/所要時間:大 |
| 改善方針 |
自動化・効率化 |
| 想定する打ち手 |
見積テンプレートの統一、商品情報の自動反映 |
| 担当部門 |
営業企画 |
表は検討内容を整理する例です。見積作成でテンプレートの統一を試すなら、先に見積の受け手が必要とする項目と例外的な記載を確認します。試行する担当と対象を決め、作成時間に加えて修正や承認時の確認を変更前後で比べます。必要な項目が欠けた場合は適用を広げず、テンプレートを見直します。
会議では各行について、業務の目的、試す担当、採否を決める比較項目を確認します。目的や受け手が不明な行は、先にその確認を次の作業にします。
改善対象が工程の停滞にある場合は、業務プロセスのボトルネック特定と解消法で、工程ごとの滞留を調べる方法も確認できます。
リソース配分の判断基準
人員配置を決める前に、必要な業務がいつ発生し、誰がどの条件で処理できるかを調べます。総工数だけでは、待機が必要な業務や権限による制約を捉えられません。この節では、状況別の判断と、内製・自動化・外注を比較する順序を説明します。
3つのケース別の判断
業務量調査の結果は、以下の人員配置判断に活用できます。
| ケース |
状況 |
対応の方向 |
| ケース1:業務量に対して人員が過剰 |
特定の部門で業務量に対して人員が余っている |
他部門への異動や新規業務の割り当てを検討する |
| ケース2:業務量に対して人員が不足 |
業務量が人員を上回っている |
不足の原因が「ムダ・付随業務の過多」であれば、まず業務改善で対応する。改善後もなお不足する場合に、増員やアウトソーシングを検討する |
| ケース3:業務の偏在 |
同じ部門内で特定の担当者に業務が集中している |
業務の再配分やマルチスキル化で対応する |
表に当てはめる前に、役割、権限、繁忙時期をそろえて見ます。記録上の工数が少ない部門でも、いつ発生するか分からない対応を担っていれば、単純に余力とは扱えません。工数が多い部門でも、重複する確認が原因なら、配置変更より手順の見直しを先に試せます。
まず、用途を確認したうえでやめられる作業と、簡素化できる付随業務を調べます。次に、担当変更に必要な手順や権限を確認します。変更後に同じ範囲の工数と品質を測り、必要な業務をなお処理できない場合に、増員や外注を比較します。
特定の担当者への集中が見つかったら、なぜその人だけが処理しているかも調べます。手順が共有されていなければ、入力項目、判断基準、例外時の相談先を整理してから再配分します。権限や専門性が必要なら、育成や役割分担を検討します。
内製・自動化・アウトソーシングの判断基準
進め方は、判断の要否、定型性、頻度、機密性、顧客への影響を合わせて比較します。次の表で検討する方向を絞り、対象業務の例外処理と確認責任を具体化します。
| 判断基準 |
内製(手作業) |
自動化(RPA・AI) |
アウトソーシング |
| 判断が必要 |
適している |
不向き |
条件付きで可能 |
| 定型的 |
コスト高 |
最適 |
可能 |
| 高頻度 |
コスト高 |
最適 |
可能 |
| 機密性が高い |
適している |
適している |
慎重に検討 |
| コア業務 |
適している |
支援として活用 |
不向き |
表の「コスト高」「最適」は個別の費用や効果を保証する評価ではなく、検討の目安です。例えば見積作成が高頻度でも、案件ごとの条件判断まで一律に自動化できるとは限りません。条件を定義できる入力や転記と、人が確認する内容を分けます。
外部へ任せる場合は、渡す情報、作業範囲、例外時の連絡先、最終確認の担当を決めます。機密性が高い業務では、扱う情報の範囲を確かめてから可否を判断します。
方向が決まったら一部で試し、同じ対象の工数と品質を比較します。作業時間が短くなっても、確認や修正が後工程へ移ったなら、その負担を含めて見直します。必要な情報が届き、例外時の担当も明確であれば適用範囲を広げるか判断します。
AIに任せる業務と人が判断する業務
以下の画像は、問い合わせ内容を分類して処理を分ける流れを示しています。業務量調査で振り分け作業に負荷があると分かった場合、分類条件を定義できるか、分類後に誰が確認するかを考える材料になります。

業務量調査の結果をどう解釈し、どこに人員を配置するかは、事業の方針や現場の状況も踏まえて決めます。作業の整理と意思決定を分ける目安は次のとおりです。
| AIに任せやすい業務 |
人が判断する業務 |
| 問い合わせ内容の分類 |
業務カテゴリと分類基準の定義 |
| レコード内容の要約 |
付加価値業務かどうかの最終判断 |
| 定型的なデータの整理・分類 |
増員・異動・外注の意思決定 |
| 下書きの作成 |
顧客に出す文面の最終確認 |
問い合わせの分類を試すなら、先に分類後の担当と、判断できない問い合わせの扱いを決めます。使い始めた後は誤分類や人による修正を確認します。修正理由を条件に反映できれば条件を見直し、案件ごとの判断が必要なら人の確認に残します。振り分け後の対応まで確認してから適用範囲を広げます。
HubSpotで工数データを継続的に見える化する
改善前後を比べるには、業務カテゴリと記録ルールをそろえて再測定します。顧客対応が中心の業務では、HubSpotの活動記録を、やり取りの頻度や集中先を調べる補助資料として使えます。この節では、活動記録で確認すること、別途測ること、業務フローとの照合方法を説明します。
調査を一度きりで終わらせない仕組み
調査後も記録を続けるなら、誰が、どの業務を、どのタイミングで入力するかを決めます。顧客や案件に紐づく活動記録から、やり取りが集中する対象を探せます。ただし、活動の記録だけで所要時間は判断できません。工数を比較する際は、同じルールで記録した時間も確認します。
活動記録と時間の記録を照合するときは、顧客対応に含める作業をそろえます。活動に紐づかない準備や社内確認は別の業務カテゴリに記録します。対応件数が変わったのか、準備や確認に使う時間も変わったのかを分けて見るためです。
HubSpotのプロパティはレコードの情報を保存する項目です。業務に必要な情報を既定のプロパティで扱えるか確認し、足りない場合はカスタムプロパティを作成できます(出典:Create and edit properties)。項目を増やす前に、その記録を誰がどの判断に使うかを決めます。使い道が定まらなければ、入力負担を増やす前に調査の問いを見直します。
全体フローの中に業務量を位置づける
顧客対応の工数を見るときは、コンタクトの獲得から取引、顧客化、請求まで、どの段階で作業が生じるかを並べます。担当部門が替わる境目で転記や確認が増えるなら、元の情報、受け手、確認の目的を調べます。
| 流れの段階 |
業務量が膨らみやすい付随業務の例 |
検討できる打ち手 |
| コンタクト |
問い合わせの振り分け、重複データの整理 |
ワークフローとAIによる分類・担当者割り当て |
| 取引 |
見積作成、社内への進捗報告 |
テンプレート化、レポートによる報告の置き換え |
| 顧客 |
問い合わせ対応の記録、引き継ぎ |
対応履歴の一元化 |
| 請求 |
受注情報の転記、請求書作成 |
取引データとの連携による転記の削減 |
表の打ち手は、該当する作業が見つかった場合の検討先です。例えば受注情報の転記では、転記先で誰が何を確認しているかを先に調べます。必要な情報が届くと確認できたら入力方法の変更を試し、転記時間と後工程の修正を比べます。確認に必要な情報が欠けるなら、そのまま適用を広げません。
HubSpotのワークフローは、登録条件を満たしたレコードに対して、設定したアクションを自動で実行する機能です(出典:Create workflows)。繰り返し発生する付随業務では、対象条件と例外を整理してから、どの工程を扱うか検討します。
以下の画像では、ワークフローを一覧で確認する画面を示しています。自動化を検討するときは、対象業務に対応する処理がすでにあるか、設定の目的と担当を確認できるかを見ます。

設定が見つかったら、現場の手順と照合します。同じ目的の手作業が残っていれば、手動確認が必要な理由を調べます。必要な確認を残して手順を変え、変更前後の工数と処理結果を比べます。
CRMで捉えられる範囲と限界
CRMの活動記録で確認できるのは、システムに記録された顧客とのやり取りです。社内会議、資料作成、別システムでの事務処理は、活動記録だけでは把握できません。調査したい範囲と記録の範囲を照合し、次のように使い分けます。
- 顧客とのやり取りが記録されている → 活動の頻度や偏りを確認し、所要時間は別の記録と照合する
- 社内業務や他システムでの作業がある → CRMは顧客対応部分の確認に使い、部門全体の工数は自己申告型などで補う
- 記録が残っていない業務がある → 入力ルールを確かめ、記録範囲がそろうまで、そのデータだけで配分を判断しない
改善後の成果を経営に示したい場合は、業務効率化の生産性指標と測定方法で、工数以外に何を指標として継続比較するかを確認できます。
業務量調査を現場に受け入れてもらう進め方
調査で使える記録を集めるには、現場と目的を共有し、実際の業務で入力方法を試す必要があります。この節では、記録前の説明、試行中の修正、集計後の結果の返し方を順に示します。
調査の目的を透明に共有する
業務時間の記録を依頼すると、個人の評価や配置変更にどう使われるかを現場が気にする場合があります。判断したい内容、データを見る人、結果の使い道を記録前に伝えます。
- 何のために調査するか: 例えば、付随業務を見直して顧客対応の時間を確保できるか調べる、と具体的に示す
- データを何に使い、何に使わないか: 個人の評価に使わない方針なら、その範囲を明示する
- 結果をいつ、どう返すか: 集計後に現場へ示す内容と、改善策を話し合う場を決める
用途への懸念が出たら、記録開始前に扱いを確認します。説明した目的と実際の使い方が一致する状態にしてから、業務カテゴリの試行に進みます。
記録ルールを現場と一緒に決める
管理部門が作ったカテゴリ案を、現場の担当者に試してもらいます。「どこにも入らない業務」「人によって入れる先が違う業務」「業務の区切りで記録しにくい場面」を挙げてもらい、定義と入力方法を直します。
試行した記録を集計し、同じ業務を比較できるか確認します。分類の迷いが残ればカテゴリを修正し、まとめ入力が続けば記録のタイミングを見直します。入力方法が定まってから、判断したい時期の記録に進みます。
途中でカテゴリを変更した場合は、変更前後を同じ意味で集計できるか確かめます。対応づけられない項目は分けて示し、見かけ上の工数の増減として扱いません。
結果をフィードバックし改善につなげる
集計結果は協力した現場に示し、業務の実態と合うか確認します。解釈が違う箇所は、記録範囲、案件の内容、繁忙時期を調べてから打ち手を決めます。
次に、変更する業務、試す担当、変える手順、再測定で比べる項目を共有します。変更後は同じカテゴリで工数を測り、品質と後工程への影響も確認します。工数が減っても別の担当者に作業が移っただけなら、業務全体の配分を見直します。狙った変化が見られなければ、打ち手と調査時の前提のどちらが合っていなかったかを確認します。
間接業務に使われる時間を詳しく整理したい場合は、間接業務の削減方法で、対象業務の洗い出し方と改善の進め方も確認できます。
よくある質問
Q1. 業務量調査の3つの手法はどう使い分けますか?
知りたい情報から選びます。作業要素ごとの時間が必要で手順がそろっているならタイムスタディ、複数担当者の業務構成を知りたいならワークサンプリング、部門の業務全体を把握したいなら自己申告型を検討します。まず記録を試し、問いに答えられない業務だけ手法や記録項目を見直します。
Q2. 業務量調査の結果はどう分析しますか?
業務の役割を「付加価値業務」「付随業務」「ムダ」に分け、必要性を成果物の受け手に確認します。次に作業の範囲をそろえて頻度と所要時間を比較します。廃止や自動化を決める前に品質と後工程への影響を確かめ、試す担当と再測定する項目を決めます。
Q3. 業務量調査を現場に受け入れてもらうコツは何ですか?
記録前に目的、データの使い道、結果の返し方を伝えます。カテゴリを現場と試し、分類に迷う業務や記録しにくい場面があれば修正します。集計後は結果の解釈を現場と照合し、変更する手順と、工数・品質を再測定する方法を共有します。
Q4. 調査結果をリソース配分にどう活かしますか?
必要な業務と時期による負荷の違いを確認します。用途を確かめてやめられる作業や簡素化できる付随業務を見直し、担当の偏りには手順の共有と再配分を試します。変更後も必要な業務を処理できなければ、権限や品質への影響を含めて増員や外注を比較します。
Q5. CRMのデータだけで業務量を把握できますか?
CRMの活動記録は、記録された顧客とのやり取りの頻度や偏りを確認する材料です。それだけでは所要時間や、社内会議、資料作成、他システムでの作業は分かりません。部門全体の工数を判断する際は記録の範囲を確認し、時間の記録や自己申告型の調査で補います。
まとめ
業務量調査では、答えを出したい問いを決めてから記録し、業務の必要性と工数を分けて判断します。
- 着手前に、問い、業務カテゴリ、対象範囲と期間を決める
- 必要な情報に合わせて、タイムスタディ・ワークサンプリング・自己申告型を選ぶ
- 全体像をつかみ、打ち手を決める情報が足りない業務だけ詳しく調べる
- 業務の役割と頻度・所要時間を照らし合わせ、受け手への影響も確認する
- 業務の見直しと再配分を試し、再測定後に増員や外注を検討する
- 現場と記録ルールを試し、結果の解釈と変更する手順を共有する
最初は対象部門と問いを絞ります。記録条件がそろい、現場の実態とも照合できたら、必要な業務から変更を試します。
- 調査で答えを出したい問いを決め、対象業務と比較する時期を選ぶ
- 自社の業務フローからカテゴリを洗い出し、現場と記録ルールを試す
- 集計結果を業務の必要性と照らし合わせ、打ち手を決めて再測定する
調査結果から工程の停滞箇所を調べたい場合は業務プロセスのボトルネック特定と解消法を、改善後に比較する指標を決めたい場合は業務効率化の生産性指標と測定方法をご覧ください。
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