DXリテラシー標準(Di-Lite)とは?社内教育への活用と進め方

  • 2026年3月4日
  • 最終更新: 2026年10月11日
この記事の結論

DXリテラシー標準(Di-Lite)は、社員がDXについて学ぶ範囲を考えるための共通言語です。研修計画を立てる際は、学ぶ内容に加え、日々の業務で何を使えるようにするかを決めておくことが大切です。

ブログ目次


DXリテラシー標準(Di-Lite)は、社員がDXについて学ぶ範囲を考えるための共通言語です。研修計画を立てる際は、学ぶ内容に加え、日々の業務で何を使えるようにするかを決めておくことが大切です。

全社員に教える範囲をどう決めるか。学んだ内容をどの業務で使うか。受講後の変化を何で確かめるか。これらを順に整理すると、研修と業務を結びつけやすくなります。

DXリテラシー標準は、すべてのビジネスパーソンを対象に、DXに関わる基礎的な知識やスキルを整理したものです。Why DX・Whatデータ・Whatデジタル技術・How利活用の領域を手がかりに、社内教育では現状把握、対象者別の設計、学習方法の選定、業務での活用確認へと進めます。標準の位置づけは経済産業省のデジタルスキル標準でも確認できます。

DXの基礎知識について体系的に学びたい方は、DX基礎ガイドで全体像を把握できます。

本記事は「DXとは?デジタルトランスフォーメーションの定義・目的・IT化との違いをわかりやすく解説」シリーズの一部です。


この記事でわかること

全社のデジタル教育を任された経営者・DX推進担当・人事担当の方に向けて、Di-Liteを研修計画に使い、学んだ内容を業務につなげるまでの判断を整理します。

  • Di-Liteの学習領域 — 目的、データ、デジタル技術、利活用の観点から、自社で教える内容を決める方法を説明します。
  • Di-LiteとDSS-Pの使い分け — 全社員が共有する基礎と、推進役が深める専門性を分けて考えます。
  • 社内教育の進め方 — 現状把握から効果測定まで、各段階で確認することと次へ進む条件を示します。
  • 学びを業務に結びつける方法 — CRMのデータや入力ルールを教材にする際の選び方を紹介します。
  • 育成事例とロードマップの読み方 — 他社の取り組みから参照する点を選び、自社の計画を見直す条件を整理します。

DXリテラシー標準(Di-Lite)の全体像

Di-Liteは、社員がDXの基礎を学ぶ際に、内容の抜けや偏りを確認するための地図として使えます。最初に標準の位置づけと学習領域を押さえ、その後で自社の業務に必要な学習内容を選びます。

策定の背景と位置づけ

DXを進める際には、専門人材だけでなく、現場でデータを扱い、業務の課題を伝える社員にも共通の理解が必要です。例えば、顧客情報を使って営業活動を見直すなら、担当者がデータの意味や記録方法を理解しているかが判断の出発点になります。

Di-Liteは、こうした基礎を社内で共有する際の指針です。推進役に求める専門性まで同じ研修に詰め込まず、まずは全社員が業務で使う知識を確認します。デジタルスキル標準における位置づけは、経済産業省の資料を参照してください。

4つの学習領域

Di-Liteの学習内容は、次の表のように整理できます。

領域 内容 主なトピック
1. Why DX なぜDXが必要か DXの背景・社会変化・ビジネスへの影響
2. What データ データとは何か データの種類・活用方法・データリテラシー
3. What デジタル技術 技術の基礎 AI・クラウド・IoT・セキュリティの基礎
4. How 利活用 どう活用するか データ活用の実践・ツール選定・倫理

研修内容を決めるときは、まずWhy DXで自社の課題を言葉にし、その課題を検討するためのデータと技術を確認します。最後に、得た知識をどの業務判断で使うかを決めます。技術を学ぶ目的が説明できない場合は、教材を増やす前に業務課題の整理へ戻ってください。

各領域の詳細

領域1: Why DX

  • 社会の変化とDXの必要性
  • デジタル技術によるビジネスモデルの変革事例
  • DXとイノベーションの関係

この領域では、一般的な事例を知るだけで終わらせず、自社で見直したい業務と、その理由を受講者が説明できるかを確かめます。

領域2: What データ

  • データの種類(構造化/非構造化、定量/定性)
  • データの収集・管理・活用の基本
  • データ分析の基礎概念(統計、可視化)
  • データに基づく意思決定のプロセス

自社のデータがどこで作られ、誰が更新し、どの判断に使われるかを追うと、学ぶ内容を業務に結びつけられます。

領域3: What デジタル技術

  • AI・機械学習の基礎概念(ディープラーニング、自然言語処理)
  • クラウドコンピューティングの基礎
  • IoT・5Gの基礎
  • サイバーセキュリティの基礎

技術ごとの用語を学んだ後は、自部門の課題に関係する技術と、現時点では詳しく学ぶ必要がない技術を分けます。

領域4: How 利活用

  • デジタルツール・サービスの選定と活用
  • データ活用プロジェクトの進め方
  • AI・デジタル技術活用における倫理・法規制
  • 業務改善へのデジタル技術適用

この領域では、受講者が自分の業務を題材に、確認するデータ、判断する人、実行前に確認すべきことを説明できるかを見ます。

関連するテーマとして、経産省DX推進ガイドラインの要点と自社への適用方法もあわせてご覧ください。

「全社員」が対象になる理由

顧客情報を担当者ごとのファイルで管理している場合、会議で数値を比較する前に、参照するファイルや更新日を確かめる必要があります。データに基づく判断を研修で学んでも、使うデータの所在や定義が曖昧なままでは、業務で試しにくくなります。

そこで、受講者が扱う主要なデータについて、保管場所、更新担当、利用する場面を一覧にします。部門によって同じ項目の意味が異なるなら、その違いも記録してください。教材を選ぶ前にこの一覧を作ると、学習内容をどの業務に当てはめるか判断できます。


Di-LiteとDX推進スキル標準(DSS-P)の関係

全社員に求める基礎と、DX推進を担う人材に求める専門性は分けて設計します。教育計画では、まず各部門が共通して理解すべき内容を決め、そのうえで推進役が担う仕事に必要なスキルを考えます。

全社員向けと推進人材向けの違い

フレームワーク 対象 レベル
Di-Lite 全社員 基礎リテラシー
DSS-P DX推進人材 専門スキル

使い分ける際は、予定している取り組みを具体的な仕事に分けてください。現場がデータを記録し、意味を理解するための学びは基礎教育に置きます。業務改革の設計や専門的な分析を担当する人には、担当範囲に応じて専門教育を検討します。推進役だけを先に育てる場合も、現場との共通言語が足りているかを確かめ、必要な基礎教育を並行して計画します。

DSS-Pの5つの人材類型

DSS-Pの人材類型を、担当する仕事を考える手がかりとして整理します。

類型 役割 必要スキル
ビジネスアーキテクト DXの取り組みを推進するリーダー 戦略策定、プロジェクトマネジメント
デザイナー 顧客・ユーザー体験を設計 UXデザイン、サービスデザイン
データサイエンティスト データを分析し価値を創出 統計分析、AI/ML、ビジネス理解
ソフトウェアエンジニア デジタルサービスを構築 開発技術、アーキテクチャ設計
サイバーセキュリティ セキュリティリスクを管理 セキュリティ設計、インシデント対応

類型名だけで研修を決めず、現在の担当者がどこまで担い、どこに支援が必要かを確認します。仕事の範囲が決まってから、学習内容や外部への相談範囲を選んでください。

自社に必要な類型の見極め方

優先する類型は、取り組むテーマと社内で担う仕事によって変わります。次の表は、役割分担を検討するための出発点です。

自社のDXテーマ 優先して育てたい類型 外部パートナーに頼りやすい類型
営業・マーケティングの業務改革 ビジネスアーキテクト、データサイエンティスト ソフトウェアエンジニア
顧客向けデジタルサービスの立ち上げ デザイナー、ソフトウェアエンジニア データサイエンティスト
既存システムの刷新 ビジネスアーキテクト、サイバーセキュリティ デザイナー

まず、取り組みの目的と業務上の決定者を書き出します。次に、社内で継続して判断すべき仕事と、支援を受けて進められる仕事を分けます。優先する類型に迷う場合は、業務を理解し、関係部門と目的や進め方を調整する役割の担当者を決めてください。その人が担う範囲を教育計画に書けたら、必要な専門教育の検討に進めます。

関連するテーマとして、DX戦略の策定方法もあわせてご覧ください。


社内教育プログラムへの組み込み4ステップ

教育計画は、現状把握、対象者別の設計、学習方法の選定、効果測定の順に具体化します。各段階で残すものと次へ進む条件を決めておけば、研修の実施後にも計画を見直せます。自社の規模や業種によって適切な進め方は変わるため、表は出発点として使ってください。

ステップ1: 現状のリテラシーレベルの把握

最初に、部門ごとの業務と、その業務で必要な知識を整理します。Di-Liteの領域を参考に設問を作る場合は、用語を知っているかに加え、日常業務でデータをどのように確認し、判断しているかを尋ねます。

結果は全社平均だけで判断せず、部門や役割ごとに見ます。例えば、顧客データを扱う部門で記録項目の意味が共有されていなければ、分析の研修より先に項目の定義を確認します。各対象者について「できること」「困っている業務」「優先して学ぶ領域」を説明できたら、次の設計に進みます。

ステップ2: 対象者別の教育カリキュラム設計

役職や部門ごとに、学んだ内容を使う場面を決めます。次の表を参考に、対象者の仕事に合う内容へ調整してください。

対象 必須レベル 推奨学習内容
経営層 Why DX + How利活用 DX戦略の理解、投資判断に必要な技術知識
管理職 4領域すべての基礎 部門DXの推進方法、データ活用の実践
一般社員(事務系) Why DX + What データ 業務データの活用、ノーコードツールの操作
一般社員(技術系) 4領域すべて + DSS-P 専門技術スキルの深化

管理職には、部門の業務課題を教材に選び、研修後の実践を確認する役割があります。開始順を決める際は、その役割を担う管理職がいるかを確認してください。対象者、学習目的、使う業務場面を対応づけられたら、学習方法を選びます。

ステップ3: 学習コンテンツの選定

学習方法は、知識を共有したいのか、業務での行動を練習したいのかで選びます。

学習方法 コスト 特徴 推奨ツール例
eラーニング 低 自分のペースで学習可能 Udemy Business、Schoo
社内研修 中 自社の事例に即した内容にカスタマイズ可能 社内講師 + 外部講師
ハンズオン 中〜高 実際のデータ・ツールを使った実践学習 BIツール、CRM操作研修
外部資格 低〜中 客観的なスキル証明 ITパスポート、G検定

基礎用語を共有するなら、各自が学べる教材を選びます。一方、顧客データを見て次の対応を決めるなど、行動を変えたい場合は、自社の業務を題材にした演習を組み合わせます。選定後は、受講者が何を説明または実行できれば学習を終えたと判断するかを決めてから実施します。

ステップ4: 効果測定とPDCA

教育の結果は、知識と業務での使い方を分けて確認します。

  • スキルスコアの変化: 同じ観点で研修前後の理解を比較する
  • 業務への適用度: 学んだ内容を、どの確認や判断に使ったかを記録する
  • デジタルツール利用率: 利用状況の変化を、業務上の使い方とあわせて見る(関連記事: CRM導入の進め方完全ガイド)

理解は進んでも業務での利用が変わらない場合は、受講者に使う場面があるか、入力ルールや業務フローが妨げになっていないかを確認します。理解も進んでいない場合は、教材が対象者の仕事や前提知識に合っているかを見直します。利用が増えても判断に使われていなければ、確認する指標や会議での扱い方を見直してください。


研修を業務の仕組みに接続する

研修後の実践を確かめるには、受講者が扱うデータと、入力・確認・判断の場面を洗い出します。使う場面が決まったら、業務フローや入力ルールに反映する方法を検討します。ここでは、CRMのデータを教材にする際の考え方を整理します。

Excel管理のままでは学びが業務に残らない

担当者ごとのファイルに顧客情報が分かれている場合、研修で分析方法を学んでも、最初にデータの所在や項目の違いを確認する必要があります。複数のファイルで管理を続けるなら、参照する版、更新担当、集計方法を決めておくことが欠かせません。

観点 Excel・スプレッドシート管理 CRMでの一元管理
データの所在 担当者ごとのファイルに分散 コンタクト・会社・取引が紐づいて1か所に集約
最新性 どれが最新版か判断しにくい 同じレコードを全員が参照
研修との接続 学んだ分析を試す元データが揃わない 実データでレポート作成を練習できる
効果測定 手作業での集計が前提 ダッシュボードで利用状況を継続的に確認

研修で使うデータの管理方法を決める際は、まず教材に必要な項目が揃っているかを確認します。揃っていなければ、管理場所を変える前に、どの業務で誰が記録するかを整理してください。記録方法を共有できたら、そのデータを使う演習へ進めます。

CRMの全体フローを教材にする

「Whatデータ」を学ぶ際は、自社の顧客データがどこで生まれ、どの担当者に引き継がれるかを追うと、項目同士の関係を考えられます。例えば、問い合わせに関する情報、会社の情報、取引の情報をそれぞれどこに記録し、営業担当が何を確認するかを教材にします。

研修の題材は、次の順で選びます。

  1. 受講者の部門で使う業務データを選び、そのデータを確認する仕事を特定する
  2. データが作られる場面、更新する担当者、引き継ぐ相手を図にする
  3. そのデータを見て何を判断するか、受講者に説明してもらう

受講者がデータの意味と判断への使い方を自分の言葉で説明できたら、レポートの作成など「How利活用」の演習に進みます。説明できない項目があれば、操作研修を増やす前に項目の定義を確認してください。

入力ルールを新人教育の仕組みにする

CRMの入力項目は、仕事の各段階で何を確認するかを伝える教材にもなります。例えば、商談の状況を更新する場面で、次の担当者が判断するために必要な情報を確認する練習に使えます。

項目を必須にする前に、「誰が、何の判断に使うか」「その段階で確認できる情報か」を確かめてください。入力できない理由がある項目まで必須にすると、運用しにくくなります。担当者が入力目的を説明でき、引き継ぎ先がその情報を使えることを確認してから、ルールを広げます。

AIツールの扱い方を研修に入れる

AIを扱う研修では、ツールの操作とあわせて、参照する資料や回答を人がどう確認するかを決めます。自社の業務を題材に、要約や下書きに使う場面と、送信・公開など担当者が判断する場面を分けてください。

次の画像は、HubSpotのBreezeアシスタント向けアプリの一覧です。研修で画面を扱う際は、アプリ名を覚えることより、どの資料を参照し、誰が回答を確認するかを考える題材として使います。

Breezeアシスタント向けアプリ一覧(18件)

社内資料をAIの参照先として検討する場合は、資料の管理担当、更新状況、回答の確認方法を先に整理します。資料の内容を確認できない状態なら、その資料に基づく回答を業務判断に使わない運用を決めてください。役割分担の例は次のとおりです。

AIに任せやすいこと 人が判断すること
問い合わせの分類 業務プロセスやステージの定義
レコードや議事録の要約 最終的な送信・公開の判断
企業情報のリサーチ 大型案件へのアプローチ方針
メールや資料の下書き 営業戦略・事業判断

DX人材育成の先進事例

他社の育成事例を見るときは、研修の名称や規模だけを追わず、誰を対象に何を教え、学習後にどの仕事を任せているかを確認します。自社に取り入れる前に、公開資料で対象範囲や運用方法を確かめてください。

日立製作所のDX人材育成

日立製作所の育成事例を参照する際は、全社員向けの基礎教育と、推進役向けの専門教育をどう分けているかに注目します。自社で検討する際も、全員に共通して必要な知識と、特定の担当者が仕事に応じて深める知識を分けて書き出してください。

そのうえで、受講後に現場で使う場面が定義されているかを確認します。自社で使う場面がまだ決まっていなければ、他社の研修内容を選ぶ前に、対象業務を決めることが先です。

ダイキン工業のDX人材育成

ダイキン工業の育成事例を参照する際は、事業部門の仕事を知る人が、学んだ専門性をどの業務課題に使うかに注目します。自社でも、専門教育を受ける担当者を決める前に、その人が研修後に取り組む課題と、部門内で相談できる相手を明確にしてください。

担当する課題を決められない場合は、研修の選定を進めるより、部門が改善したい業務と必要な支援を整理します。

事例から自社が取り入れられること

他社の取り組みを自社の計画に置き換える際は、次の要素ごとに実施条件を確認します。

事例の要素 自社で取り入れる形
基礎教育を全社員必修にする まずは管理職と1部門から必修にし、対象を広げる
高度人材には専門研修を用意する DSS-Pの類型から優先する1類型を決め、外部研修を活用する
事業部門の社員を育てる 業務を知る社員を推進役に選び、実データで学ぶ場を用意する

全社に広げるかを判断する前に、対象部門で研修時間を確保できるか、学んだ内容を使う業務があるかを確かめます。条件が揃っていなければ、対象を絞って実施し、業務での使い方を確認してから範囲を見直します。


全社デジタル人材化のロードマップ

教育計画は、現状把握、基礎教育、業務での実践、専門人材の育成という段階で整理できます。予定した日付だけで次へ進まず、各段階で必要な判断材料が揃ったかを確認してください。

フェーズ別の進め方

フェーズ 期間 目標 施策
Phase 1 0〜6ヶ月 現状把握と方針策定 リテラシー診断、教育計画策定
Phase 2 6〜12ヶ月 全社員基礎教育 Di-Lite準拠のeラーニング必修化
Phase 3 1〜2年 実践力強化 ハンズオン研修、OJT、資格取得支援
Phase 4 2年〜 高度人材育成 DSS-P準拠の専門教育、外部連携

表の期間欄は計画を検討するための例であり、必要な期間を示す基準ではありません。実施時は、Phase 1で対象部門と優先課題を決め、Phase 2で対象者が基礎を学んだことを確認します。Phase 3では学んだ内容を使う業務と確認方法を決め、その結果を見てPhase 4で必要な専門性を検討します。条件が揃わなければ、日程を優先せず、該当する段階の設計を見直してください。

スモールスタートで始める範囲の決め方

最初の対象は、業務データと研修後に試す仕事を確認できる部門から選びます。選定時には次の条件を見ます。

  1. 業務データの所在と更新担当を確認できる
  2. 部門の管理職が研修と実践の時間を確保できる
  3. 学んだ内容を使った判断や業務の変化を確認できる

条件が揃う部門が複数あるなら、課題が明確で、受講者が実データを扱える部門を選びます。どの部門でもデータの所在が分からない場合は、研修を始める前にデータの棚卸しを行ってください。

つまずいたときの戻り先

進行が止まった場合は、症状を確認し、該当する設計に戻ります。

症状 戻り先 見直す内容
研修の受講率が上がらない Phase 1(方針策定) 経営層からのメッセージと研修時間の確保
受講したが業務が変わらない ステップ2(カリキュラム設計) 対象者の業務に合った教材への差し替え
ツールが使われない 業務の仕組み 入力ルール・業務フローの簡素化
推進人材が育たない DSS-Pの類型選定 優先する類型と外部パートナーの役割分担

例えば、受講後も業務が変わらない場合は、教材を差し替える前に、学んだ内容を使う仕事が予定されていたかを確認します。仕事はあるのに実践できないなら、教材と業務の接続を見直します。仕事自体が決まっていなければ、対象業務の選定へ戻ります。


Di-Lite活用でつまずきやすいポイントと限界

Di-Liteは学ぶ内容を整理する指針です。研修を実施した後に、誰がどの業務で知識を使うかは自社で決める必要があります。ここでは、教育計画を見直す際に確認したい点を整理します。

Di-Liteは「何を学ぶか」の地図であり評価制度ではない

Di-Liteを人事評価の検討に使う場合は、職種ごとに、学んだ知識やスキルをどの業務でどう使えていれば評価できるかを整理してください。企業様によって最適な形は異なります。

評価への反映を検討する前に、受講者へ学習目的と実践の機会が伝わっているかを確認します。業務で試す機会がまだないなら、まず学びを使う場を設け、その記録を見て評価方法を検討してください。

eラーニングだけでは業務は変わらない

受講者に、扱うデータの意味と、そのデータを業務でどう使うかを説明してもらいます。

  • 説明できる ── そのデータを使った演習へ進みます。例えば、部門で参照する取引データからレポートを作り、会議で何を判断するかを話し合います。
  • 説明できない ── 追加の操作研修より先に、データの意味と利用目的を確認してください。

研修の成果をツール利用率だけで測る落とし穴

ログイン数や入力件数は利用状況の確認に使えますが、そのデータが業務判断に役立ったかは別に確かめる必要があります。

入力が増えても、会議で参照されていなければ、研修の目的に照らして見直します。

部門長と受講者に、どのデータを見て何を判断したかを聞き、具体的な場面を記録してください。

  • 利用されているのに判断に使われない ── 項目の意味、見せ方、会議で確認する順序を見直します。
  • 利用自体が進まない ── 入力する場面と担当者から確認します。

よくある質問

Q1. Di-Liteは全社員が学ぶ必要がありますか?

Di-Liteは、社員に共通して必要な基礎を考える指針として使えます。ただし、全員に同じ教材を同じ順番で受けてもらう必要はありません。まず共通して理解してほしい内容を決め、経営層には投資や方針の判断、現場には日々のデータの扱いなど、それぞれの仕事で使う内容を選んでください。

Q2. DX人材育成にはどれくらいの期間がかかりますか?

必要な期間は、対象者の仕事、既にある知識、研修後に実践できる場によって変わります。予定日を先に固定するより、基礎教育では受講者が内容を自分の業務に結びつけて説明できるか、専門教育では担当する課題に知識を使えるかを確認してください。その状態に達していなければ、次の段階へ進む前に教材や実践の機会を見直します。

Q3. ITパスポートやG検定の取得は必要ですか?

資格取得を前提にする前に、対象者が業務で何をできるようになる必要があるかを決めてください。知識を体系的に学び、その理解を確認したい場合は資格を学習方法の選択肢にできます。一方、業務データを使った判断が目的なら、資格の学習に加えて実データを使う演習が必要か検討します。

Q4. 中小企業でもDi-Liteを活用できますか?

活用できます。まず自社の業務課題を選び、それに関係する学習領域を確認してください。研修を担う人や時間が限られる場合は、対象業務を絞り、受講者が普段使うデータで学んだ内容を試します。実践する場を用意できたら、結果を確認して次の対象を決めます。


まとめ

Di-Liteは、社員がDXについて学ぶ内容を整理する指針です。社内教育では、まず自社の業務課題と対象者を決め、必要な基礎を選びます。推進役に専門性が必要な場合は、担当する仕事を明確にしたうえでDSS-Pの類型を参照します。

研修後は、受講者がデータをどこで確認し、何の判断に使ったかを確かめてください。使う場面がなければ業務を選び直し、場面はあるのに実践できなければ教材や入力ルールを見直します。

着手する際は、次の順で進めます。

  1. 対象にする業務を選び、使うデータの所在と更新担当を確認する
  2. 対象者がそのデータをどう扱っているかを把握し、優先して学ぶ領域を決める
  3. 自部門のデータを使う演習を計画し、学んだ内容をどの判断に使うか決める

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著者情報

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。