インテントセールスとは?購買意図データで商談につなげる営業の進め方

  • 2026年3月3日
  • 最終更新: 2026年10月12日
この記事の結論

インテントセールスとは、購買意図を示すデータから「誰に・いつ・何を」届けるかを決める営業手法です。シグナルを担当者の勘ではなくCRM上の仕組みで回すことが、成果を続けるための分かれ目になります。

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インテントセールスとは、購買意図を示すデータから「誰に・いつ・何を」届けるかを決める営業手法です。シグナルを担当者の勘ではなくCRM上の仕組みで回すことが、成果を続けるための分かれ目になります。

「テレアポをしても担当者に取り次いでもらえない」「メールを送っても返信がない」「マーケから渡されたリストのどこから電話すればいいのか分からない」——BtoB営業の現場では、従来型のアウトバウンドアプローチの効率が落ちていると感じるケースが増えています。その背景には、買い手がオンラインで情報収集を済ませてから売り手に接触する「バイヤー主導の購買行動」へのシフトがあります。

この課題に対する考え方が「インテントセールス」です。見込み客の購買意図(インテント)をデータで検知し、検討が動いているタイミングで、その企業の関心テーマに合わせたメッセージを届けます。「今まさに自社の製品カテゴリに関心を持っている企業」から順にアプローチするため、リストを上から順に当たる営業と比べて、限られた営業時間を商談につながりやすい相手に振り向けられます。

本記事では、インテントセールスの定義から実践ステップ、活用ツール、HubSpotでの実装手順、営業チームで仕組みとして回すための考え方までを解説します。

本記事は「BtoB広告運用の完全ガイド|8つの手法と費用対効果を最大化する戦略」シリーズの一部です。


この記事でわかること

営業・CRMの取り組みを検討されている方に、インテントセールスの考え方から、HubSpotで小さく始めて営業プロセスに組み込むまでの流れを整理しました。

  • インテントセールスの定義と従来営業との違い — 購買意図データを使うと、アプローチ対象・タイミング・メッセージの何が変わるのかを比較表で整理します。
  • 実践の4ステップとスコア設計例 — データ収集、スコアリング、パーソナライズドアプローチ、効果測定を、各段階の判断基準とあわせて解説します。
  • 活用できるツール(Sales Marker、FORCAS、HubSpot等) — 各ツールが担う役割の違いと、どの順番で組み合わせるかの考え方をまとめます。
  • HubSpotでの実装手順と仕組み化 — スコア・通知・シーケンス・パイプラインをつなぎ、担当者が替わっても回る形にする方法を紹介します。
  • 導入時の注意点と限界 — 「監視されている」と感じさせない伝え方と、データだけでは判断できない領域を率直に整理します。

インテントセールスとは

インテントセールスは、営業の「誰に当たるか」「いつ当たるか」をデータで決める手法です。まず定義と従来営業との違いを押さえ、そのうえで営業プロセス全体の中でどこに位置づくのかを整理します。

インテントセールスとは、インテントデータ(購買意図データ)を活用し、見込み客が購買検討を行っているタイミングを検知して営業アプローチを行う手法です。

インテントデータそのものの種類や取り方については、インテントデータとは?BtoBマーケティング・営業での活用法を徹底解説をご覧ください。

従来営業との違い

従来型アウトバウンドとの違いを比較表で示します。

項目 従来型アウトバウンド インテントセールス
アプローチ対象 リスト上の全企業 購買意図がある企業のみ
タイミング 営業都合 見込み客の検討タイミング
メッセージ 汎用的な提案 関心テーマに即した提案
アポ率 1〜3% 5〜15%
商談化率 10〜20% 25〜40%
営業の心理負担 高い(断られ続ける) 低い(相手のニーズに合致)
データ活用 企業属性のみ 属性+行動+意図データ

表のアポ率・商談化率の数値は参考値で、出典を確認できていません。

  • 自社の目標値としてそのまま使うのではなく ── 「対象を絞ると率の指標がどちらに動くか」を示す比較の観点として読んでいただくことをおすすめします。
  • 自社で比べるとき ── 導入前の自社のアポ率・商談化率を同じ定義で集計しておき、導入後の数値と並べてください。

この表で読み取っていただきたいのは、変わるのが「量」ではなく「選び方」だという点です。

  • アプローチ対象が「リスト上の全企業」から「購買意図がある企業」に変わるため ── アプローチ総数は減ります。
  • その代わりに ── タイミングとメッセージを相手の検討状況に合わせられるようになります。

インテントセールスの基本構造

インテントセールスは以下の3つの要素で構成されます。

  1. インテントデータの収集: 見込み客の購買意図を示すシグナルを収集
  2. シグナルの解釈: どの企業が、いつ、何に関心を持っているかを分析
  3. 最適なアクション: タイミング・チャネル・メッセージを最適化してアプローチ

3つのうち、つまずきやすいのは2つ目の「解釈」です。データを集めても、「このシグナルが出たら誰が何をするか」が決まっていなければ、レポートを眺めて終わってしまいます。

本記事での整理:営業プロセス全体の中の位置づけ

本記事では、インテントセールスを「コンタクト→取引→顧客→請求」という営業プロセス全体の入口を整える取り組みと整理します。記録は次の段階に残っていきます。

  • シグナルの検知 ── コンタクトと会社の段階に記録されます。
  • アプローチの結果 ── 取引(商談)の段階に記録されます。
  • 受注後 ── 顧客の段階に記録されていきます。

入口だけを切り出して導入すると、「アポは増えたが受注につながったかは分からない」という状態になりやすいと考えています。

導入前に、次の問いに答えられるかを見てください。

問い 答えられる場合 答えられない場合
どのシグナルが出たら、誰が動くか ステップ2のスコア設計に進む まず営業とマーケで役割分担を決める
アプローチ結果をどこに記録するか ステップ3の実行に進む 取引の作成ルールを先に決める
受注・失注までを同じ画面で追えるか ステップ4の効果測定に進む CRMへのデータ集約から始める

インテントセールスが注目される3つの背景

インテントセールスが注目されているのは、ツールが登場したからだけではありません。次の3つが同時に変わったことが背景にあります。

  • 買い手の行動
  • 売り手の手法
  • データ技術

自社がどの変化の影響を強く受けているかを見ると、取り組む優先度を判断しやすくなります。

1. バイヤーの購買行動の変化

BtoBの購買担当者は、営業担当者に会う前にWebサイトや比較記事、事例などで情報収集を進め、候補を絞り込んでいるケースがあります。

問い合わせが来た時点では、すでに比較検討の終盤に入っていることも珍しくありません。見込み客が情報収集をしている段階を捉えられれば、比較の土俵に早く乗れます。

ABMの考え方とあわせて理解したい方は、ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基礎から実践まで徹底解説もあわせてお読みください。

2. アウトバウンド営業の効率低下

テレアポや一斉メールで接点を作る手法は、受付で取り次いでもらえない、メールが開封されないといった壁に当たりやすくなっています。

「数をこなす」営業は、件数を増やすほど営業担当の負担も増えるため、持続しにくい戦略です。アプローチ先を絞る判断材料として、インテントデータが使われるようになっています。

3. データ活用技術の進化

AI・機械学習の発展により、大量のオンライン行動データからインテントシグナルを検出できるようになりました。

これまで「勘と経験」に頼っていた「誰に、いつアプローチすべきか」の判断を、データで裏付けられるようになっています。自社で優先度を判断する際は、次の順に見ていくのがおすすめです。

  • 自社サイトへの問い合わせ前の行動(閲覧ページや資料ダウンロード)が営業担当から見えていない場合 ── 背景1の影響を受けている可能性が高く、自社データの整備から始める価値があります。
  • 架電リストの選定基準が担当者ごとにばらばらな場合 ── 背景2の影響が大きく、スコアによる優先順位づけが効きます。

実践ステップ1・2:インテントデータの収集とスコアリング設計

ここからは、インテントセールスを4つのステップに分けて解説します。前半の2ステップは「どの企業を優先するか」を決める準備の段階です。データを集める範囲と、それを点数に変えるルールを決めます。

ステップ1: インテントデータを収集・統合する

まず、インテントデータの収集基盤を整えます。データには、自社で取得できるファーストパーティデータと、外部サービスから取得するサードパーティデータがあります。

データソース 種類 取得方法
自社サイト訪問データ ファーストパーティ HubSpot、GA4
メール開封・クリック ファーストパーティ HubSpot、MAツール
フォーム送信・DL ファーストパーティ HubSpot、MAツール
Web検索行動 サードパーティ Sales Marker
業界メディア閲覧 サードパーティ Bombora、FORCAS
競合サイト訪問 サードパーティ Sales Marker、6sense
SNSエンゲージメント サードパーティ LinkedIn Sales Navigator

実践のコツ: まずはファーストパーティデータ(HubSpotで取得可能なデータ)から始め、効果を実感してからサードパーティデータを追加しましょう。

収集で起きがちなのが、ツールごとに出力したリストをスプレッドシートに貼り付けて管理する運用です。

次のリストが別々のシートにあると、同じ企業が複数のシートに載り、担当者がそれぞれ別に連絡してしまうといった差分が起きます。

  • サイト訪問のリスト
  • 展示会の名刺リスト
  • 外部ツールの検知リスト

シグナルはコンタクト・会社のレコードに集約し、1社の行動履歴を1か所で見られる状態にしておくことをおすすめします。

サードパーティデータを追加するかどうかは、次の分かれ目で判断できます。

  • 自社サイトの訪問や資料ダウンロードが営業担当の手元で見えていない段階なら ── まずファーストパーティデータの整備を優先します。
  • 自社データは見えているものの、検知できる企業数が営業のアプローチ余力に対して少ない場合 ── サードパーティデータの追加を検討する順番です。

ステップ2: インテントスコアリングを設計する

収集したインテントデータを「スコア」として定量化し、アプローチの優先順位を決めます。以下は設計例です。

インテントスコアの設計例:

アクション スコア
関連キーワードの検索(サードパーティ) +10
自社ブログ記事の閲覧 +5
事例ページの閲覧 +15
価格ページの閲覧 +20
資料ダウンロード +25
競合比較記事の閲覧(サードパーティ) +15
ウェビナー参加 +20
問い合わせフォーム送信 +50

スコア閾値とアクション:

スコア ステータス 推奨アクション
0〜30 低インテント ナーチャリングコンテンツの配信
31〜60 中インテント パーソナライズドメールの送信
61〜80 高インテント 営業担当による個別アプローチ
81以上 超高インテント 即時の電話アプローチ

設計例の配点は、「検討が深まるほど点数が高くなる」という考え方を示したものです。ブログ閲覧のような情報収集の行動より、価格ページの閲覧や資料ダウンロードのような比較検討の行動に重みを置いています。

HubSpotのリードスコアリングツールでは、次の種類のスコアを分けて作成できます(出典:Understand the lead scoring tool)。

  • 行動に基づくエンゲージメントのスコア
  • 企業規模や業種などの属性に基づくフィットのスコア

行動だけで点数をつけると、ターゲット外の企業や学生、競合他社の閲覧でもスコアが上がるため、属性のスコアと組み合わせて判断する設計をおすすめします。

スコアを自社の受注データに合わせて調整する

配点と閾値は、そのまま使うより自社の受注データで調整していく前提で置くのが現実的です。商材の単価や検討期間によって、価格ページの閲覧が持つ意味は変わります。

調整は次の手順で進めます。

  1. 直近に受注した取引と失注した取引を並べ、商談化する前にどの行動があったかをコンタクトの行動履歴で見比べる
  2. 受注した取引の多くに共通する行動があれば配点を上げ、受注・失注のどちらにも同じように出ている行動は配点を下げる
  3. 閾値を超えたのにアポにならなかった企業が続く場合は、閾値を上げるか、属性スコアの条件を厳しくする
  4. 変更した日付と内容をスコア設計のメモに残し、次の見直しで変更前後を比べられるようにする

ここで大事なのは、調整の判断基準を担当者の感覚ではなく、受注・失注の記録に置くことです。


実践ステップ3・4:アプローチの実行と効果測定

後半の2ステップは、優先順位をつけた企業に実際にアプローチし、その結果を測る段階です。メッセージとチャネルをインテントの強さに合わせて変え、結果を取引として記録して次の改善につなげます。

ステップ3: パーソナライズドアプローチを実行する

インテントデータに基づいて、相手の関心テーマに合わせたアプローチを行います。

メール文面の設計例(高インテント企業向け):

件名: [企業名]様の[関心テーマ]に関するご提案
[担当者名]様
お世話になっております。[自社名]の[営業担当名]です。

[業界名]における[関心テーマ]について、御社でもご検討を
進めていらっしゃるのではないかと存じます。

弊社では[同業種]のお客様を中心に、[関連ソリューション]の
導入を支援しており、平均[成果指標]の改善を実現しています。

御社のご状況に合わせた具体的なご提案をさせていただければと
思いますが、15分程度のお時間をいただけないでしょうか。
[CTA: 日程調整リンク]

  • テンプレートの[成果指標] ── 自社で実績として説明できる数値だけを入れてください。
  • 根拠を示せない数値を入れるより ── 「[同業種]のお客様での取り組み内容」を具体的に書くほうが、受け取った側の信頼を損ねにくくなります。

アプローチチャネルの使い分け:

インテントレベル 推奨チャネル 理由
超高インテント 電話→メール 即時性が重要
高インテント メール→LinkedIn→電話 マルチタッチで接触確率を上げる
中インテント メール→コンテンツ配信 まだ検討初期なので押しすぎない

メールを書く前の下調べには、CRM上のAI機能が使えます。以下の画面は、取引レコード上でBreezeが企業情報や最新ニュースを収集した例です。

レコードを開くだけで、商談準備に必要な最新情報を把握できます。

取引レコード上でBreezeが企業情報・最新ニュースを自動収集

AIが集めた情報は、あくまで文面を考えるための材料です。

関心テーマの読み違いや古い情報が混ざることもあるため、送信前に営業担当が内容を読み、相手の状況に合っているかを判断してから送る運用をおすすめします。

ステップ4: 効果測定と改善を行う

以下は効果測定のKPIの設計例です。

KPI 計測方法 目標値
アポ率 アプローチ数÷アポ獲得数 10%以上
商談化率 アポ数÷商談数 30%以上
インテント起点の受注率 インテント経由商談÷受注数 非インテント比1.5倍以上
営業サイクル短縮 初回接触〜受注の日数 20%以上短縮
  • 率として集計するときは ── 分子と分母の向きをそろえてください(例:アポ率はアポ獲得数÷アプローチ数)。
  • 目標値も出典を確認できていない設計例のため ── まずは自社の導入前の数値を基準にし、そこからの変化で評価するのが現実的です。

測定で効いてくるのが、取引に「インテント起点かどうか」を記録しておくことです。

  • 取引作成時にリードソースや起点となったシグナルをプロパティとして入力するルールにしておけば ── インテント経由と非インテント経由の受注率をレポートで比べられます。
  • この項目が空欄のままだと ── 表のうち3行目以降は計測できません。

失注した企業を次のシグナルで掘り起こす

効果測定は、受注の数を見るだけでなく失注の理由を見る場でもあります。本記事では、この流れを「失注→ナーチャリングに戻す→シグナルが再び強まったら再アプローチ」というループとして整理します。

具体的には、失注時にライフサイクルステージをナーチャリングの段階に戻し、スコアが閾値を超えたら担当者に通知する、という2つのルールを組み合わせます。

失注理由によって、次のように分けて扱うのがおすすめです。

  • 失注理由が「時期」の企業 ── このループに乗せます。
  • 「製品機能」の企業 ── 理由をマーケや開発に共有して、提供内容の見直しの材料にします。

主要インテントセールスツールの役割と選び方

インテントセールスに使われるツールは、データの取り方と得意な領域がそれぞれ異なります。どれか1つで完結させるより、「どのデータを取るか」と「どこで管理・実行するか」を分けて考えると選びやすくなります。

実務での比較はインテントデータツール比較で具体例とともに紹介しています。

Sales Marker

日本発のインテントセールスプラットフォームです。

  • Web検索行動のインテントデータをリアルタイムで検知 ── 「今、特定のキーワードを検索している企業」を特定できます。
  • アプローチリストの自動生成 ── 部署・担当者レベルでのアプローチリストを自動生成する機能も搭載しています。

自社サイトにまだ来ていない企業の検討を捉えたい場合に、サードパーティデータの取得手段として位置づけられます。

FORCAS

企業データベースとインテント分析を組み合わせたABMプラットフォームです。企業データベースからICP(理想的な顧客像)に合致する企業を特定し、行動データと掛け合わせてターゲットリストを精緻化します。

「そもそもどの企業を狙うべきか」というターゲット設計から見直したい場合に向いています。

LinkedIn Sales Navigator

LinkedInのプレミアム営業ツールです。ターゲット企業の人事異動、投稿、エンゲージメントなどのシグナルをモニタリングし、接触のタイミングを見極められます。

企業単位ではなく、意思決定に関わる個人の動きを追いたい場合の手段です。

HubSpot Sales Hub + Breeze

HubSpotのCRM/営業ツールにAI機能「Breeze」を組み合わせることで、インテントセールスの基盤を構築できます。

  • 自社サイト訪問企業のリアルタイム検知
  • コンタクトの行動履歴に基づくスコアリング
  • Breezeによるバイヤーインテントの検出
  • 営業担当への自動アラート通知
  • シーケンス(ステップメール)の自動化

ほかの3つがシグナルを「取る」ことに強みを持つのに対し、HubSpotはシグナルを受け止めて、スコア・通知・アプローチ・取引管理・効果測定までをつなぐ「管理と実行の場所」として位置づけられます。

組み合わせ方は次のように判断できます。

確認すること 結果 次に進む方向
自社サイトの行動データがCRMで見えているか 見えていない HubSpotでファーストパーティデータの整備から始める
自社データで検知できる企業数に対して営業の余力があるか 余力がある Sales Markerなどでサードパーティデータを追加する
狙うべき企業像が社内で一致しているか 一致していない FORCASなどでターゲット設計から見直す
意思決定者の個人の動きを追う必要があるか 必要がある LinkedIn Sales Navigatorの活用を検討する

外部ツールを追加する場合も、検知結果はCRMの会社・コンタクトのレコードに集約しておくことをおすすめします。

ツールごとの画面で確認する運用にすると、ステップ1で触れたリストの分散が、ツールの数だけ起きてしまいます。


HubSpotでインテントセールスを始める手順

ここでは、HubSpotを使ってインテントセールスを実装する手順を整理します。いきなりすべての機能を組むのではなく、ファーストパーティデータで回る最小の形を作ってから広げていく順番をおすすめします。

6つの実装手順

  1. HubSpot CRMにコンタクト・企業情報を整備: 既存のリードや企業情報をCRMに集約
  2. リードスコアリングを設定: 行動ベースのスコアリングルールを構築
  3. 通知ワークフローを設定: スコアが閾値を超えた際に営業担当に自動通知
  4. シーケンスを設計: インテントレベル別の自動メールシーケンスを構築
  5. Breeze Intelligenceを活用: 企業データのエンリッチメントとインテント検出を自動化
  6. ダッシュボードでKPIをモニタリング: アポ率・商談化率・受注率を継続追跡

各手順は、前の手順ができていることが前提になっています。

  • 1つ目でコンタクトと会社が関連付いていなければ ── スコアを会社単位で見られません。
  • 3つ目の通知を設定する前に、「通知を受けた担当者が何をするか」を決めておかなければ ── 通知は届いても行動につながりません。

シーケンスは、次の条件を満たすユーザーが利用できる機能です(出典:Create and edit sequences)。

  • Sales HubまたはService HubのProfessional・Enterprise
  • 該当するシートを割り当てられたユーザー

導入前に、アプローチを担当するメンバーにシートが割り当てられているかを契約内容と照らし合わせておくと、手順4で止まらずに進められます。

スコアリングの設定方法の詳細は「HubSpotリードスコアリング設定ガイド|スコアリングモデルの設計から運用改善まで」で解説しています。

小さく始めて段階的に広げる

6つの手順を一度に整えようとすると、設計に時間がかかり、運用が始まる前に関係者の熱が冷めてしまうことがあります。本記事では、次の3段階で広げる進め方を提案します。

段階 やること 次の段階に進む目安
第1段階 CRMへの集約、行動ベースのスコア、閾値超えの通知 通知を受けた担当者が、その日のうちに次の行動を決められている
第2段階 インテントレベル別のシーケンス、取引への起点記録 インテント起点の取引がレポートで集計できている
第3段階 Breeze Intelligenceの活用、サードパーティデータの追加 自社データだけでは対象企業が足りないと判断できている

第1段階の通知は、受け取った担当者が当日中に行動を決められる条件に絞るのがポイントです。1〜2週間運用してみて、開かれないまま残った通知があれば、その条件を外すか閾値を上げて調整していきます。

AIに任せる範囲と人が判断する範囲

手順5のBreeze Intelligenceは、企業データのエンリッチメント(不足している企業情報の補完)を担います。

以下の画面は、スマートプロパティによって会社一覧にAIで値が自動入力された結果です。手作業で調べて埋めていた企業情報が、一覧の中で埋まっていきます。

スマートプロパティで会社一覧にAI自動入力された結果

AIを取り入れるときは、任せる作業と人が判断する作業を分けておくことをおすすめします。

AIに任せやすい作業 人が判断する作業
企業情報のWebリサーチと補完 スコアの配点と閾値の決定
行動履歴やレコードの要約 最終的なメール送信の判断
パーソナライズメールの下書き 大型案件へのアプローチ内容
問い合わせ内容の分類 失注理由の解釈と改善策の決定
  • 特に、案件規模が大きくなりそうな企業へのアプローチ ── AIが作った下書きをそのまま送らず、リサーチ結果を参考にしながら営業担当が文面を書くほうが望ましいと考えています。
  • AIが生成する日本語の文面 ── ビジネスメールの丁寧さが足りないことがあるため、プロンプトに敬語やビジネス上の作法を守るよう指示を入れておくと、手直しの量を減らせます。

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担当者に依存しない仕組みにする

インテントセールスは、うまくいっている担当者のやり方に頼ると、その人が異動したときに止まってしまいます。

シグナルの受け取り方から商談の記録までをCRMのルールとして決めておくことで、新しく入ったメンバーでも同じ水準で回せるようになります。ここでは、仕組み化のための3つの観点を紹介します。

スプレッドシートでのシグナル管理から抜け出す

インテントセールスを始めたばかりの段階では、検知した企業をスプレッドシートにまとめ、担当者を割り振る運用がよく見られます。

この方法は始めやすい反面、シートの更新が手作業になり、誰がいつ連絡したかがシートとメールとチャットに分散していきます。

CRMに集約すると、会社レコードを開けばその企業の閲覧履歴、メールのやり取り、過去の商談がひと続きで見られます。

  • 判断の分かれ目 ── 「シグナルを受けた担当者が、その企業との過去のやり取りを1か所で確認できるか」です。
  • 確認に複数のシートやツールを行き来しているなら ── CRMへの集約を先に進める段階です。

パイプラインとつなげて商談の質を見る

アポが増えても、それが受注につながっていなければインテントセールスの効果とは言えません。アプローチの結果を取引として登録し、パイプラインで追える状態にしておくことが前提になります。

例えば、取引を作成するステージで「起点となったシグナル」を必須入力にしておけば、担当者が入力を忘れることなく、インテント起点かどうかのデータがそろっていきます。

必須項目は、レポートで使うものに絞るのがおすすめです。項目が増えすぎると入力の負担が上がり、空欄や適当な値が増えるためです。

引き継げるルールとして文書化する

スコアの配点、閾値、通知を受けたときの対応、チャネルの使い分けは、担当者の頭の中ではなく、CRMの設定と社内のルールとして残しておきます。

必須入力プロパティは、新しく入ったメンバーにとって「この段階で何を確認すべきか」を教える役割も果たします。ルールを決めるときは、次の順で進めると抜け漏れが少なくなります。

  1. 閾値ごとに「誰が・何日以内に・どのチャネルで」動くかを決める
  2. それをワークフローの通知先と、取引ステージの必須項目に落とし込む
  3. 決めたルールと設定の対応表を社内で共有し、変更したときは日付と理由を追記する

導入の注意点と正直な限界

インテントセールスは、使い方を誤ると相手に不信感を与えたり、営業チームの反発を招いたりします。

また、データで分かることと分からないことの線引きを理解しておかないと、シグナルを過信した判断につながります。ここでは、導入時の注意点と、この手法の限界を率直に整理します。

「気持ち悪い」と思われないアプローチを

インテントデータの活用で「なぜこの企業は私たちの行動を知っているのか」と不信感を持たれるリスクがあります。

直接「御社が〇〇を検索しているのを確認しました」と伝えるのではなく、「〇〇業界で〇〇の課題が増えており」のように業界課題として自然に話題にするのがベストプラクティスです。

文面を送る前には、次の観点で見直すことをおすすめします。

  1. 相手の具体的な閲覧ページや検索語に触れている表現があれば ── 業界や役職に共通する課題の表現に置き換えます。
  2. 相手が「自分に関係のある話だ」と感じられる具体性が残っているかを読み返す ── 一般論になりすぎていれば、相手の業界の事情を1文加えます。

営業チームのマインドセット変革

インテントセールスは「数をこなす」営業から「質を追求する」営業への転換です。最初は営業担当の中に「アプローチ数が減ることへの不安」が生まれがちですが、成果データ(アポ率の向上)で説得しましょう。

成果データで説得するためには、導入前の数値を記録しておくことが出発点になります。

行動量を評価指標にしている場合は、評価の軸もアポ率や商談化率に移していかないと、担当者はアプローチ数を減らすことに抵抗を感じたままになります。

最初は一部のメンバーで試し、導入前と同じ定義で集計した数値を並べて共有すると、チーム全体へ広げる判断がしやすくなります。

データだけでは判断できないこと

インテントデータには限界もあります。

  • サードパーティのシグナルは企業単位で検知されることが多い ── その企業の中の誰が関心を持っているのかまでは分からない場合があります。
  • 閲覧や検索の行動 ── 比較検討だけでなく、競合調査や学習目的でも発生します。

そのため、シグナルは「アプローチの優先順位を決める材料」として扱い、「購入意欲が高いと断定する根拠」としては扱わないことをおすすめします。

次のように扱います。

  • シグナルが強いのにアポにならない企業が続いた場合 ── スコア設計に戻って、属性の条件や配点を見直します。
  • シグナルが弱くても既存の関係が深い企業 ── データとは別に営業担当の判断でアプローチしてかまいません。

よくある質問

Q1. インテントセールスとは何ですか?

インテントセールスとは、インテントデータ(購買意図データ)を活用し、見込み客が購買検討を行っているタイミングを検知して営業アプローチを行う手法です。インテントデータの収集、シグナルの解釈、タイミング・チャネル・メッセージを合わせたアプローチの3つの要素で構成されます。リスト上の全企業に当たるのではなく、検討が動いている企業から優先して接触する点が従来の営業との違いです。

Q2. インテントセールスはどのような手順で進めますか?

データ収集、スコアリング設計、パーソナライズドアプローチ、効果測定の4ステップで進めます。最初は自社サイトの訪問やメールの反応、資料ダウンロードといったファーストパーティデータから始め、効果を確かめてからサードパーティデータを追加する順番がおすすめです。ツールの比較はインテントデータツール比較で紹介しています。

Q3. インテントセールスで注意すべき点は何ですか?

インテントデータの活用で「なぜこの企業は私たちの行動を知っているのか」と不信感を持たれるリスクがあります。直接「御社が〇〇を検索しているのを確認しました」と伝えるのではなく、「〇〇業界で〇〇の課題が増えており」のように業界課題として自然に話題にするのがベストプラクティスです。また、シグナルは優先順位を決める材料であり、購入意欲を断定する根拠にはならない点も押さえておくことをおすすめします。

Q4. なぜインテントセールスが重要なのですか?

買い手が営業に会う前にオンラインで情報収集を進めるようになり、問い合わせを待つだけでは比較検討の終盤からしか関われないケースがあるためです。加えて、テレアポや一斉メールで接点を作る手法は効率が落ちやすく、アプローチ先を絞る判断材料が求められています。ABMとあわせて考えたい方は、ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基礎から実践まで徹底解説もあわせてお読みください。

Q5. HubSpotだけでインテントセールスは始められますか?

自社サイトの訪問、メールの反応、フォーム送信といったファーストパーティデータを使う範囲であれば、HubSpotのスコアリング、ワークフローの通知、シーケンスを組み合わせて始められます。自社サイトに来ていない企業の検討まで捉えたい場合は、Sales Markerなどの外部ツールでサードパーティデータを追加し、検知結果をHubSpotの会社・コンタクトに集約する構成が考えられます。


まとめ

インテントセールスは、BtoB営業を「量」から「質」へ進化させるデータドリブンな手法です。本記事の要点を整理します。

  1. 定義: インテントデータを活用し、購買意図のあるタイミングでアプローチする営業手法
  2. 4ステップ: データ収集→スコアリング設計→パーソナライズドアプローチ→効果測定
  3. 始め方: まずはHubSpotのファーストパーティデータから開始し、段階的にサードパーティデータを追加
  4. 仕組み化: シグナルをCRMに集約し、通知・必須入力・失注からの掘り起こしまでをルールにして、担当者が替わっても回る形にする
  5. 注意点: 相手に「監視されている」と感じさせない自然なアプローチを心がけ、シグナルを購入意欲の断定に使わない

HubSpotは、CRM・MA・Sales Hubが統合されているため、インテントセールスに必要な「データ収集→スコアリング→アプローチ自動化→効果測定」の工程を一つのプラットフォームでつなげられます。

まずは、自社サイトで取れている行動データを営業担当が見られる状態にするところから始めてみてください。次の3ステップで進めると、無理なく形にできます。

  1. 直近の受注・失注の取引を並べ、商談化する前にどの行動があったかを洗い出す
  2. その結果をもとに、行動ベースのスコアと、閾値を超えたときの通知ルールを1つだけ作る
  3. 通知から生まれた取引に「起点となったシグナル」を記録し、導入前の数値と比べる

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著者情報

7-1

今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。