ABMツール比較10選|FORCAS・ユーソナー・HubSpotの機能と選び方

  • 2026年3月3日
  • 最終更新: 2026年10月12日
この記事の結論

ABMツールは「3つの分類」と「自社のABM成熟度」から選びます。まずは統合プラットフォームで小さく始め、リストの精度が課題になった段階でデータ・インテリジェンス型のツールを足す順序をおすすめします。

ブログ目次


ABMツールは「3つの分類」と「自社のABM成熟度」から選びます。まずは統合プラットフォームで小さく始め、リストの精度が課題になった段階でデータ・インテリジェンス型のツールを足す順序をおすすめします。

ABMツールを比較する前に、自社で解決したい課題を整理しましょう。

ABMツールとは、ABM(アカウントベースドマーケティング)の実践に必要な、ターゲット企業の選定、エンゲージメント管理、効果測定を支えるツールの総称です。大きく「データ・インテリジェンス型」「エンゲージメント型」「統合プラットフォーム型」の3つに分類でき、自社のABMの成熟度や既存のマーケティングスタック、予算によって選ぶべきツールは変わります。

ABMツールは種類が多く、機能や価格帯もさまざまなため、「どのツールを選べばいいのか分からない」という声を多く耳にします。本記事では、日本のBtoB企業が導入を検討すべきABMツール10製品を取り上げて機能・特徴を比較し、ツール選定の判断基準と導入の進め方を整理します。

本記事は「BtoB広告運用の完全ガイド|8つの手法と費用対効果を最大化する戦略」シリーズの一部です。


この記事でわかること

ABMツールの種類と選び方を、CRM/MAとのつなぎ方まで含めて整理します。ツールを比較する前に押さえておきたい論点は次の5つです。

  • ABMツールの3つの分類 — データ・インテリジェンス型、エンゲージメント型、統合プラットフォーム型の役割の違いを整理します。
  • 主要ABMツール10製品の比較 — カテゴリ・主な機能・日本語対応の観点で、候補の絞り込み方を示します。
  • FORCAS・ユーソナー・HubSpotの特徴 — 3ツールの機能と、どの課題を持つ企業に向くかを比較します。
  • 自社に合うツールを選ぶ5つの判断基準 — 成熟度・既存スタック・ターゲット市場・予算・運用リソースから選定の分かれ目を示します。
  • 導入パターンとHubSpotでの運用設計 — ツールの組み合わせ方と、ターゲットアカウントから受注までを一つの流れで管理する設計を解説します。

ABMツールが必要になる背景

ABMは、狙う企業を先に決め、その企業に関わる複数の担当者へ部門横断でアプローチする手法です。

  • 対象 ── 「個人のリード」ではなく「企業(アカウント)」になります
  • 管理の単位 ── そのものが変わります

ここでは、ツールを比較する前に、なぜ専用の仕組みが必要になるのかを整理します。

スプレッドシートでのターゲット管理が抱える課題

ターゲット企業のリストを管理する際は、企業情報と接点の記録を整理しておきましょう。

  • 行動データ ── 広告やメールへの反応、ウェブサイトの閲覧といった行動データは、スプレッドシートには自動で入ってきません
  • 手作業の転記 ── 更新が遅れ、営業が動くべきタイミングを逃しやすくなります

ABMツールが担う3つの役割

ABMツールが解決するのは、大きく次の3つの仕事です。

役割 スプレッドシート運用での状態 ABMツール導入後の状態
ターゲット企業の選定 担当者の勘や過去の取引から手作業でリスト化 企業データや受注傾向をもとに条件でリストを作成
エンゲージメント管理 企業ごとの反応が複数のファイルに分散 企業単位で広告・メール・訪問の反応を集約
効果測定 施策ごとの数字を手作業で集計 アカウント単位のレポートで商談化・受注までを追跡

本記事では、この3つの役割のうち「どれが自社で一番詰まっているか」を、ツール選定の起点にすることをおすすめします。

ツール選定の前に決めておくこと

ツールを比較する前に、次の2点を社内で言語化しておくと、選定がぶれにくくなります。

  • 1つ目 ── ターゲットにしたい企業の条件(ICP:理想の顧客像)
  • 2つ目 ── ターゲット企業の誰が、どの状態になったら営業に引き渡すかという基準

判断の目安として、状態ごとの進め方は次のとおりです。

  • ICPがまだ言語化できていない ── まず既存のCRMにある受注企業の業種・規模を一覧にするところから始めます
  • ICPが決まっていて「リストの量や精度が足りない」 ── データ・インテリジェンス型の検討に進みます
  • ICPもリストもあるのに「誰が反応しているか分からない」 ── エンゲージメント管理ができるツールを優先します

ABMツールの3つの分類

ABMツールは機能の軸で3つのカテゴリに分類できます。どのカテゴリも「ABMツール」と呼ばれますが、担う範囲は大きく異なります。まず分類を押さえることで、10製品の比較表が読みやすくなります。

カテゴリ 主な機能 代表的なツール
データ・インテリジェンス型 ターゲット企業の選定、企業データ分析、インテントデータ FORCAS、ユーソナー、Sales Marker
エンゲージメント型 ターゲット企業へのパーソナライズド広告・コンテンツ配信 Demandbase、6sense
統合プラットフォーム型 CRM/MAにABM機能を統合、データ管理から実行まで一気通貫 HubSpot、Salesforce(+Pardot)

「データ・インテリジェンス型」と「統合プラットフォーム型」を組み合わせてABMを実践するケースがあります。

ABMそのものの考え方はABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基礎から実践まで徹底解説で詳しく解説しています。

データ・インテリジェンス型

ターゲット企業を「見つける」ためのツールです。企業データベースや企業データ分析、インテントデータ(企業がどんなテーマに関心を持っているかを示す行動データ)を使って、狙うべき企業を特定します。

ただし、このカテゴリのツール単体では、メール配信や商談管理といった「実行」の機能は持たない構成が一般的です。

  • 決めておくこと ── リストを作った後にどこでアプローチと進捗管理をするのか
  • 進め方 ── CRM/MA側とセットで決めておくと無駄がありません

エンゲージメント型

ターゲット企業に「届ける」ためのツールです。パーソナライズド広告やコンテンツ配信によって、特定の企業群へ集中的に接点を作ります。

  • 日本語対応欄が「△」「×」の製品が多い ── 海外製品が中心のカテゴリであり、選定時の大きな分かれ目になります
  • 日本市場が中心 ── まず他の2カテゴリで要件を満たせるかを見てから検討する順序が現実的です

統合プラットフォーム型

CRM/MAにABM機能を統合し、データ管理から実行・効果測定までを一つの基盤で回すタイプです。

コンタクト(担当者)・会社・取引のデータが同じデータベース上で紐づくため、「どの企業の誰が、どの施策に反応し、どの商談につながったか」を一つの画面で追えます。

  • 弱い点 ── 企業データベースや名寄せの機能は専用ツールに比べると弱く、後述の機能比較表でもHubSpotは「△(外部連携)」としています
  • 基本形 ── 統合プラットフォーム型を土台にし、不足する部分を専用ツールで補う構成が、本記事で整理する基本形です

ABMツール10製品の比較一覧

ここでは、日本のBtoB企業が検討候補に入れやすい10製品を、カテゴリ・主な機能・価格帯・日本語対応で一覧にします。

一覧表は候補を絞るための地図として使い、最終判断は後述の5つの判断基準で行う使い方をおすすめします。

ツール名(カテゴリ) 主な機能 価格帯(月額)/日本語対応
FORCAS(データ) 企業データベース、ターゲットリスト作成 公式情報で確認/◎
ユーソナー(uSonar)(データ) 法人データベース、名寄せ、企業分析 公式情報で確認/◎
Sales Marker(データ+インテント) インテントデータ、セールスシグナル 公式情報で確認/◎
HubSpot(統合プラットフォーム) CRM/MA+ABM機能(標準搭載) ABM機能はPro以上(料金は公式情報で確認)/◎
Salesforce + Pardot(統合プラットフォーム) CRM+MA+ABM機能 公式情報で確認/◎
Demandbase(エンゲージメント) ABM広告、インテントデータ、パーソナライゼーション 要問い合わせ/△
6sense(エンゲージメント) AIによるバイヤー行動予測、ABMオーケストレーション 要問い合わせ/×
Terminus(エンゲージメント) マルチチャネルABM、ABM広告 要問い合わせ/×
RollWorks(エンゲージメント) ABM広告、ターゲットアカウント管理 要問い合わせ/×
Marketo Engage(統合プラットフォーム) MA+ABM機能、Salesforce連携 公式情報で確認/◎

※本記事では具体的な金額を掲載していません。

ABMの進め方そのものを設計したい場合は、ABM戦略の立て方7ステップもあわせてお読みください。

一覧表の読み方

比較表は「カテゴリ」の列から読むのが近道です。自社に足りないものに応じて、次の行を中心に見ます。

  • 「狙う企業の特定」が足りない ── データ型の行
  • 「ターゲット企業への接点づくり」が足りない ── エンゲージメント型の行
  • 「データと実行の分断」がある ── 統合プラットフォーム型の行

同じカテゴリ内で複数の候補が残った場合は、「主な機能」の列で自社の課題に直結する機能があるかを比べます。

例えばデータ型の中でも、新規リスト作成を重視するのか、既存データの名寄せを重視するのかで、FORCASとユーソナーのどちらが合うかが変わります。

日本語対応で候補を絞る

日本語対応の欄は、運用を誰が担うかで重みが変わります。

  • 現場のマーケティング担当者や営業が日常的に画面を触る場合 ── 「◎」の製品から検討する方が定着しやすいと考えています
  • グローバル展開をしていて英語で運用できるチームがある場合 ── 「△」「×」の製品も候補に残します

判断に迷うときは、トライアルやデモの段階で、実際に運用する担当者に操作してもらい、日本語のサポート窓口の有無を問い合わせて記録しておくと比較しやすくなります。

料金欄の扱い方

料金は各社の公式窓口で確認してください。

見積もりを取ったら、月額費用だけでなく「誰が、週に何時間運用するか」を同じ表に並べて比較します。運用時間を確保できない製品は、料金にかかわらず候補から外す判断が妥当です。


主要3ツールの詳細比較

ここでは、FORCAS、ユーソナー、HubSpotの3つを比較します。

インテントデータの活用場面については、インテントデータとは?BtoBマーケティング・営業での活用法を徹底解説で具体例とともに紹介しています。

FORCAS

概要: BtoB企業データベースを持つABMツールです。企業データをもとに、自社のICPに合致するターゲット企業を効率的に特定できます。

主な機能:

  • 企業データベースからの条件検索
  • 受注傾向分析によるICP自動算出
  • ターゲットリストの自動スコアリング
  • CRM/MA連携(HubSpot、Salesforce等)
  • 業界・企業の最新ニュースアラート

強み:

  • 日本企業のデータ品質が高い
  • ICP設計の自動化でリスト作成が効率的
  • 直感的なUIで導入ハードルが低い

適した企業:

  • エンタープライズ向けのBtoB企業
  • ターゲットリスト作成に課題を抱える企業
  • 日本市場中心のビジネス

ユーソナー(uSonar)

概要: 法人データの名寄せ・統合に強みを持つデータプラットフォームです。自社が持つ顧客データと外部の法人データを統合し、正確なターゲットリストを構築できます。

主な機能:

  • 拠点単位の法人データベース
  • 顧客データの名寄せ・クレンジング
  • 企業属性データの付与(業種、従業員数、売上高等)
  • ABMターゲットリストの作成・管理
  • CRM/MA連携

強み:

  • 名寄せの精度
  • 拠点単位でのデータ管理が可能
  • 既存CRMデータの品質改善にも活用可能

適した企業:

  • 顧客データの重複・不整合に課題がある企業
  • 拠点単位でのターゲティングが必要な企業
  • データ基盤の整備から着手したい企業

HubSpot ABM機能

概要: CRM/MAプラットフォームにABM機能が標準搭載されています。

追加ツールを導入せずにABMを開始でき、広告・メール・コンテンツ・営業活動のデータが一つのプラットフォームに集約される点が強みです。

ABM向けの機能は、Marketing Hub Professional以上のプランで提供されています(出典:HubSpot Product & Services Catalog)。

主な機能:

  • ターゲットアカウントの設定・管理
  • アカウントエンゲージメントスコアの自動計算
  • ABMダッシュボード(概要レポート)
  • LinkedIn広告との直接連携
  • ワークフローによる自動化(営業通知、リードスコアリング)
  • アカウントベースのレポーティング

強み:

  • 追加ツールなしでABMを開始可能(Marketing Hub Pro以上)
  • CRM・MA・営業ツールが同じデータベース上で統合
  • 広告→リード獲得→ナーチャリング→商談の全体ROIを一元管理
  • 学習コストが低い(既存HubSpotユーザー)

適した企業:

  • HubSpotを既に導入済み、またはCRM/MAの導入を検討中
  • ABMをこれから始めたい(シンプルに始めたい)企業
  • 営業とマーケの連携基盤を一つのツールで構築したい企業

3ツールの機能比較表

3ツールの違いを機能ごとに並べると、それぞれの守備範囲がはっきりします。

表を見るときは「◎が多いツール」を探すのではなく、自社に足りない行でどのツールが◎になっているかを確認する使い方をおすすめします。

機能 FORCAS/ユーソナー HubSpot
企業データベース ◎/◎ △(外部連携)
ICP自動算出 ◎/○ ○
名寄せ・クレンジング ○/◎ △
エンゲージメント管理 △/△ ◎
広告連携 △/△ ◎(LinkedIn等)
メール・ナーチャリング ×/× ◎
営業ツール連携 ○/○ ◎(内蔵)
レポーティング ○/○ ◎
価格 高/中〜高 中(Pro以上)

データ基盤とエンゲージメント管理で役割が分かれる

表の構図は次のとおりです。

  • 上半分(企業データベース、ICP自動算出、名寄せ・クレンジング) ── FORCASとユーソナーが強い
  • 下半分(エンゲージメント管理、広告連携、メール・ナーチャリング、レポーティング) ── HubSpotが強い

つまり、データ型の2ツールは「誰を狙うか」を、HubSpotは「狙った企業とどう関係を深め、成果をどう測るか」を担います。

この構図から、本記事では「データ型ツールとHubSpotは競合ではなく、前工程と後工程の関係」と整理します。

どちらか一方を選ぶというより、自社の課題がどちらの工程にあるかで、先に入れるツールを決めるのが自然です。

自社の不足を表から特定する手順

次の3段階で表を読むと、優先すべきツールが見えてきます。

  1. 表の9行のうち、自社の現状で「できていない」行に印を付けます。
  2. 印が上半分に集中していれば、データ型(FORCASかユーソナー)を優先します。新規リストの不足ならFORCAS、既存データの重複や不整合ならユーソナーが候補です。
  3. 印が下半分に集中していれば、統合プラットフォーム型(HubSpot)を優先します。印が上下両方にある場合は、後述の「パターン1」のように統合プラットフォームから始め、データ型を後から足す順序をおすすめします。

ABMツール選定の5つの判断基準

比較表で候補を絞ったら、次は自社の状況に照らして選びます。ここでは、成熟度・既存スタック・ターゲット市場・予算・運用リソースの5つを判断基準として整理します。

どの基準も「どちらを選ぶか」の分かれ目を示していますので、自社に当てはめながら読み進めてください。

基準1:自社のABM成熟度

ABMにどこまで取り組めているかで、最初に入れるべきツールは変わります。

成熟度 推奨アプローチ
初期(これから始める) HubSpotなどの統合プラットフォームで小さく始める
成長期(リスト精度を上げたい) FORCAS/ユーソナーでデータ基盤を強化
成熟期(フルスケールABM) データツール+統合プラットフォームの組み合わせ

自社がどの段階かを判断するには、次の2点を見ます。

  • ターゲット企業のリストがCRMの中にあるか
  • ターゲット企業ごとの反応をレポートで見られるか

どちらもできていなければ初期、両方できていてリストの質に不満がある状態なら成長期と判断できます。

基準2:既存のマーケティングスタック

すでにCRM/MAを導入済みの場合、そのプラットフォームとの連携性を最優先に考えます。HubSpotユーザーならHubSpotのABM機能をまず試し、データの精度を高めたい段階でFORCASやユーソナーを追加するのが効率的です。

連携性を見るときは、データがどちら向きに、どの単位で同期されるかを候補ツールの担当者に聞き、表にまとめておきます。

  • 会社単位のデータがCRM側の会社レコードに自動で反映される ── 運用は続けやすくなります
  • CSVの手動インポートが前提 ── スプレッドシート運用と同じ転記作業が残るため、更新頻度を誰が担保するかまで決めてから導入する判断になります

基準3・4:ターゲット市場と予算

ターゲット市場については、次のとおりです。

  • 日本市場中心 ── FORCAS・ユーソナーが適しています
  • グローバル展開 ── Demandbase・6senseが適しています
  • 海外製品を選ぶ場合 ── 基準5の運用リソースとあわせて、英語での運用が可能かを判断材料に加えます

予算については、専用ツールの費用が確保できない場合、HubSpot Marketing Hub Professionalのみでスタートし、成果が出てから専用ツールに投資するアプローチが堅実です。

最初の数か月で「ターゲット企業からの商談がどれだけ生まれたか」をHubSpotのレポートで記録しておくと、専用ツールへの投資判断を数字で説明できるようになります。

基準5:運用リソース

専任のABM担当者がいない場合は、運用がシンプルなツールを選びましょう。高機能なツールも使いこなせなければ投資が無駄になります。

運用リソースを見積もるときは、次の3つの作業に、それぞれ誰が週何時間を割けるかを書き出します。

  • リストの更新
  • 施策の実行
  • レポートの確認

担当者が決まらない作業がある場合、その作業を自動化できるツール、もしくは既存の業務ツールの中で完結するツールを優先します。


ABMツール導入の成功パターン

判断基準を踏まえると、ツールの組み合わせ方は大きく3つのパターンに整理できます。どのパターンも、いきなり全部をそろえるのではなく、課題の大きい部分から順に整える考え方に立っています。

パターン 向いている状況 最初の一歩
パターン1: HubSpot一本でスタート ABM初期、専任担当者がいない ターゲットアカウントの設定
パターン2: FORCAS + HubSpot ICPは明確だがリストの量・精度が不足 FORCASでのリスト作成とHubSpotへの連携
パターン3: ユーソナー + CRM/MA 既存CRMデータの重複・不整合が多い 既存データの名寄せ・クレンジング

パターン1:HubSpot一本でスタート(推奨)

HubSpotのABM機能でターゲットアカウント管理を開始し、LinkedIn広告連携でアカウントベースの広告配信を行います。データの精度を上げたくなった段階でFORCAS等を追加します。

パターン2:FORCAS + HubSpotの組み合わせ

FORCASでICPに基づくターゲットリストを精緻に作成し、HubSpotでエンゲージメント管理・ナーチャリング・営業連携を行います。データの質と実行力の両方を高いレベルで確保できます。

このパターンに進む目安は、パターン1でターゲットアカウントへの施策が回り始め、次のような課題が出てきたタイミングです。

  • 「そもそも狙う企業の候補が足りない」
  • 「選んだ企業の精度に自信がない」

FORCASで作ったリストをHubSpotの会社レコードに反映し、そこから先の接点と商談はHubSpotで管理する役割分担にしておくと、データが二重にならずに済みます。

パターン3:ユーソナー + CRM/MAの組み合わせ

まずユーソナーで既存のCRMデータをクレンジング・名寄せし、データ基盤を整備した上でABMを展開します。CRMデータの品質に課題がある企業に特に有効です。

判断の分かれ目は、CRMの会社一覧を開いたときに、同じ企業が別名で複数登録されていないかです。

  • 重複が目立つ状態 ── ターゲットアカウントを設定すると、エンゲージメントが複数のレコードに分散し、スコアが正しく出ません
  • 判断 ── 重複が多ければパターン3から、少なければパターン1か2から始めるのが合理的です

HubSpotでABMを一気通貫で運用する設計

ABMツールを選んだ後に成果を左右するのは、ターゲットアカウントへの施策を、商談・受注までの流れとつなげて管理できるかどうかです。

ここでは、統合プラットフォーム型であるHubSpotを例に、ABMを全体フローの中に位置づける設計を整理します。

HubSpotのABM機能の具体的な設定方法は「HubSpotのABM機能で実践するアカウントベースドマーケティング|ターゲットアカウント設定からレポートまで」で解説しています。

ターゲットアカウントから受注までを1本の流れにする

HubSpotでは、ターゲットに指定した会社レコードに、その会社のコンタクト(担当者)と取引(商談)が紐づきます。

そのため、「ターゲット企業の誰が広告やメールに反応したか」から「どの取引が生まれ、どのステージにあるか」までを、同じ会社レコード上で追えます。

パイプライン設計で記録をそろえる

ここで効いてくるのが、取引側のパイプライン設計です。

  • 必須項目にする ── ターゲットアカウント由来の取引だと分かるプロパティを作成時の必須項目にしておけば、営業担当者が誰であっても同じ基準でデータが残ります
  • 仕組みにする ── 個人の記憶に頼らず、新しく入ったメンバーでも同じ集計が回る仕組みにしておくことが、ABMを継続させるうえで重要だと考えています

会社とコンタクトでステージを分けて管理する

ABMでは、コンタクトの数だけを見ると判断を誤ることがあります。リード数は多くても、会社単位で見ると実際に動いている企業は少ない、という状態が起こるためです。

そこで、ライフサイクルステージを会社とコンタクトのそれぞれで管理する設計をおすすめします。

  • 1社に複数の担当者がいる場合 ── 最も進んだ担当者のステージを会社のステージとして扱うと、「どの企業が商談フェーズにあるか」を会社一覧で把握できます
  • ステージの区切り ── 自社のカスタマージャーニーに沿って定義してください

失注アカウントを掘り起こしに戻す

ABMのターゲットは、一度失注しても狙い続ける価値のある企業であることが多いはずです。

失注した取引をそのまま放置せず、会社とコンタクトのライフサイクルステージを掘り起こし用のステージに戻し、ナーチャリングの対象に組み込む流れを作っておきます。

  • 理由が「時期」 ── 一定期間後に再アプローチ
  • 理由が「製品機能」 ── マーケティングや製品側へ共有

このように、理由ごとに次の行動を決めておくと、失注データが次の施策の材料になります。

AIで調査を補い、判断は人が行う

ターゲット企業の情報収集は、AIに任せやすい作業の一つです。以下の画面は、スマートプロパティによって会社一覧の項目にAIが自動で値を入力した結果です。

スマートプロパティで会社一覧にAI自動入力された結果

商談前の調査も同様です。以下の画面は、取引レコード上でBreezeが企業情報や最新ニュースを自動で収集している例です。

取引レコード上でBreezeが企業情報・最新ニュースを自動収集

  • 人が判断すべき領域 ── どの企業をターゲットアカウントにするか、大型案件になりそうな企業にどんな提案を送るかは、人が判断すべき領域だと考えています
  • おすすめの役割分担 ── AIが集めた情報は下調べとして使い、ターゲットの選定や最終的なメッセージの判断は担当者が行う、という役割分担をおすすめします

導入前に知っておきたい限界と向かないケース

どのABMツールにも得意・不得意があります。導入後に「思っていたのと違う」とならないよう、ここでは各カテゴリの限界と、向かないケースを率直に整理します。

HubSpot単体では企業データベースと名寄せが弱い

機能比較表のとおり、HubSpotは企業データベースが「△(外部連携)」、名寄せ・クレンジングが「△」です。

次の場合は、HubSpotだけで解決しようとすると手作業が増えます。

  • ゼロから新しいターゲット企業を大量に探したい場合
  • 既存データの重複が多い場合

判断の目安は次のとおりです。この順序で検討するのが現実的です。

  • 候補を既存顧客・商談履歴から十分に挙げられる ── HubSpot単体で始める
  • 候補が足りないと感じた ── その時点でFORCASを検討する
  • 重複の整理に手が回らないと感じた ── その時点でユーソナーを検討する

海外製品は日本語での運用を前提にしない

導入前に、管理画面とサポートの対応言語を確認してください。

  • グローバル展開をしていて英語で運用できる体制がある ── 候補に残す
  • そうでない ── 日本語対応「◎」の製品で要件を満たせるかを先に検討する

迷う場合は、トライアル期間中に現場の担当者がどれだけ画面を開いたかを記録し、その結果で判断するのも一つの方法です。

高機能ツールは運用体制が無いと使われない

ツールを選ぶ際は、自社の運用体制も確認しましょう。

担当者を決められない作業が残る場合は、その機能を使わない前提でプランや製品を選び直すのが妥当です。


よくある質問

Q1. ABMツールにはどのような種類がありますか?

機能軸で3つに分類できます。ターゲット企業の選定や企業データ分析を担う「データ・インテリジェンス型」(FORCAS、ユーソナー、Sales Marker)、パーソナライズド広告・コンテンツ配信を担う「エンゲージメント型」(Demandbase、6sense)、CRM/MAにABM機能を統合した「統合プラットフォーム型」(HubSpot、Salesforce+Pardot)です。データ型と統合型を組み合わせて実践するケースがあります。

Q2. FORCASとユーソナーはどう使い分ければよいですか?

新規のターゲットリストを作りたいならFORCAS、既存顧客データの重複や不整合を解消したいならユーソナーです。FORCASは企業データベースと受注傾向分析によるICP自動算出が強みで、ユーソナーは法人データの名寄せと拠点単位でのデータ管理が強みです。自社のCRMの会社一覧に重複が多いかどうかが、選び分けの分かれ目になります。

Q3. ABMをこれから始める場合、どのツールから入るべきですか?

統合プラットフォーム型1本での開始が現実的です。HubSpotであればMarketing Hub Professional以上でターゲットアカウント管理、アカウントエンゲージメントスコアの自動計算、ABMダッシュボード、LinkedIn広告連携が使えるため、追加ツールなしで始められます。リストの精度を上げたくなった段階でFORCASやユーソナーを追加する順序であれば、投資が無駄になりにくくなります。

Q4. 専用ツールの予算が確保できない場合はどうすればよいですか?

専用ツールを見送り、HubSpot Marketing Hub Professionalのみでスタートして成果が出てから投資する進め方が堅実です。判断材料は予算だけではなく運用リソースもあります。専任のABM担当者がいない状態で高機能なツールを導入しても使いこなせず投資が無駄になるため、運用がシンプルなツールを選ぶ視点を持っておくと判断がぶれません。


まとめ

ABMツール選定のポイントを整理します。

  • 3つの分類を理解する — データ型・エンゲージメント型・統合型の違いを押さえ、自社に足りない工程を特定します。
  • 成熟度に合わせて選ぶ — ABM初期は統合プラットフォーム1本で始め、課題が見えた段階でツールを追加します。
  • 既存スタックとの連携を重視する — CRM/MAとの連携がスムーズなツールを選ぶことで、データの分断を防げます。
  • 日本市場にはFORCAS・ユーソナー — 日本企業のデータに強い国内ツールは、日本市場中心のABMに向いています。
  • HubSpotはCRM/MAとABM機能が一体 — 追加ツールなしでABMを始められ、ターゲットアカウントから受注までを一つの流れで管理できます。

まずは、自社のCRMにある既存顧客と商談中の企業から、ターゲットにしたい企業を書き出すところから始めてみてください。次の行動は、以下の3ステップが目安です。

  1. 機能比較表の9行のうち、自社で「できていない」行に印を付け、不足が「データ基盤」と「エンゲージメント管理」のどちらにあるかを特定します。
  2. 5つの判断基準に沿って、候補を2〜3製品に絞り、見積もりと運用担当者・運用時間を同じ表にまとめます。
  3. 選んだツールで、ターゲットアカウントを少数に絞って設定し、会社単位のステージと商談の動きをレポートで追い始めます。

このテーマに関連する記事はWeb広告・ABMカテゴリで網羅的にまとめています。

ABMツールの選定やCRM/MAとの連携設計にお悩みの方は、StartLinkにご相談ください。貴社のABM成熟度と事業規模に合ったツール構成をご提案いたします。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、StartLinkまでお気軽にお問い合わせください。


あわせて読みたい

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpotゴールドパートナーのStartLinkが、HubSpot導入・AI活用・CRM整備・業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け


株式会社StartLinkは、事業推進に関わる「販売促進」「DXによる業務効率化(ERP/CRM/SFA/MAの導入)」などのご相談を受け付けております。 サービスのプランについてのご相談/お見積もり依頼や、ノウハウのお問い合わせについては、無料のお問い合わせページより、お気軽にご連絡くださいませ。

関連キーワード:

サービス資料を無料DL

著者情報

7-1

今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。