MAシナリオを設計するときは、メールの文面より先に、達成したいゴール、開始のきっかけ、終了条件を決めます。そのうえで、BtoBで使われるシナリオの型を自社の顧客データと営業の進め方に合わせて調整します。
「何から設計すればよいかわからない」「シナリオを作ったが、成果を判断できない」「手作業の配信から移行したい」。こうした場合は、まず現在のフォローを振り返り、誰がどの状態の相手に何を届けているかを整理することから始められます。
MAシナリオ設計とは、リードの行動や状態をきっかけに、どの情報を、どの順番と間隔で、誰から届けるかを決め、自動実行できる形に落とし込むことです。配信の設定だけでなく、営業への引き渡しや配信停止まで含めて設計します。
この記事では、新規リード育成、商談化促進、失注復活、休眠掘り起こし、CS/アップセルの設計例を示します。各表にある期間・通数・タイミングは、運用を検討するための仮の設定例です。自社でそのまま採用する基準ではなく、顧客の検討過程、配信への反応、営業・CSの対応体制と照らして決めます。
本記事は「メールマーケティングとは?BtoB企業が成果を出すための基礎知識と実践ガイド」シリーズの一部です。
この記事でわかること
「シナリオをどう設計書にまとめ、どの順番で実装すればよい?」——その判断に必要な点を、次に解説します。
- シナリオの構成と設計手順 — トリガー・条件分岐・アクションを整理し、ゴールから効果測定まで決める方法
- 5つのシナリオの設計例 — 対象、開始条件、配信内容、終了条件を自社向けに調整するときの確認点
- シナリオ間の引き継ぎ — 商談化、失注、休眠など、状態が変わった相手の行き先を決める方法
- 実装の優先順位 — 必要なデータと担当者の運用が揃っているものから着手する判断方法
- 運用開始後の見直し — ゴールの達成状況と途中の反応を分けて確認し、変更する箇所を絞る方法
MAシナリオ設計の基本:手作業の配信を「仕組み」に置き換える
MAシナリオは、誰を対象にし、何をきっかけに動かし、どの状態になったら止めるかを示す設計図です。手作業で行っているフォローを確認し、自動化する処理と人が判断する処理を分けます。
スプレッドシートと手動配信の限界
資料をダウンロードした相手に手作業で連絡する場合、最初に確認したいのは送信履歴です。担当者が替わっても「何を送ったか」「次に誰が対応するか」を確認できる記録方法を決めます。
次に、配信リストと商談情報を照合します。商談中の相手にも育成メールが届く状態なら、商談状況を更新する担当者と、配信対象から除外する条件を決めます。情報の更新が間に合わない場合は、自動配信を始める前に更新手順を整えます。
シナリオの3要素
運用全体を整理する際は、MA運用の成功パターンと失敗パターンも参考になります。ここでは、個々のシナリオを組み立てる要素を確認します。
| 要素 |
説明 |
例 |
| トリガー |
シナリオを開始するきっかけ |
フォーム送信、スコア到達、日付条件 |
| 条件分岐 |
リードの状態に応じて処理を分ける |
開封有無、クリック有無、属性条件 |
| アクション |
実行する処理 |
メール送信、通知、プロパティ変更、リスト追加 |
設計時は、各アクションの実行後に対象者がどの状態になるかを確認します。たとえば営業への通知を入れるなら、通知を受けた担当者が何を確認し、いつ配信を止めるかまで決めます。プロパティを変更するなら、その値がほかのシナリオの開始条件や除外条件に使われていないかも確認します。
5つのシナリオを一本の流れで捉える
各シナリオの終了後に、相手をどこへ移すかを先に決めます。新規リードが商談に進んだ場合、失注した場合、反応が途絶えた場合では、次の対応が異なります。受注後は育成や失注復活の対象から外し、既存顧客向けの対応に引き継ぎます。
| 顧客の状態 |
担当するシナリオ |
次の行き先 |
| 新規リード |
新規リード育成 |
MQL到達 → 商談化促進/無反応 → 休眠掘り起こし |
| MQL |
商談化促進 |
商談化 → 営業のパイプラインへ/未商談 → ナーチャリングに戻す |
| 失注 |
失注復活 |
再商談 → パイプラインへ/無反応 → ナーチャリングに合流 |
| 休眠 |
休眠掘り起こし |
反応あり → ナーチャリング復帰/無反応 → 配信停止 |
| 既存顧客 |
CS/アップセル |
活用度に応じてアップセル提案またはCS連携 |
この表を自社の運用に当てはめる際は、状態を判定するデータと、そのデータを更新する担当者を確認します。判定できない状態があれば、移行を自動化する前に手動での確認方法を決めます。
シナリオ設計の6ステップ
メールの内容を決める前に、対象とゴールを定義します。以下の順に設計書を埋めると、登録対象、配信内容、終了条件を一緒に確認できます。
ステップ1〜2:ゴールとターゲットを決める
- ゴールの定義: シナリオで達成したい成果を明確にする
- ターゲットの特定: 対象となるリードの条件を決める
ゴールには、MQL化や商談申込のように記録から判定できる状態を選びます。「関心を高める」だけでは達成を確認できないため、何が記録されたら達成とみなすかを決めます。
ターゲットは属性だけでなく、商談中、失注済み、既存顧客などの状態も含めて定義します。対象が別のシナリオと重なる場合は、どちらを優先し、いつ一方を終了するかを決めてから次へ進みます。
ステップ3〜4:トリガーとステップを決める
- トリガーの設定: 何をきっかけにシナリオを開始するか
- ステップの設計: メールの内容・順序・間隔を決める
トリガーには、フォーム送信や取引ステージの変更など、記録を確認できる出来事を選びます。手動で更新する項目を使う場合は、更新漏れを誰が確認するかも設計書に記します。
各メールには役割を持たせます。最初に求められた情報を届け、その後に課題の整理、比較に役立つ情報、相談の案内へ進める構成が考えられます。間隔は仮置きし、内容の重複や配信停止の状況を見て調整します。
ステップ5〜6:分岐と効果測定を決める
- 分岐条件の設計: リードの反応に応じた分岐を設ける
- 効果測定の設計: 何を指標にシナリオの成果を判断するか
分岐は、担当者が対応を変えられる条件から作ります。たとえば商談予約が確認できたら配信を終了する、資料への反応があっても商談中なら営業対応を優先する、といった判断です。条件ごとに異なる対応を用意できない場合は、分岐を増やす前に一本道で始めます。
効果測定では、ゴールの達成状況を主に確認します。開封やクリックは、どの段階を見直すかを探る材料として扱い、ゴールの達成と混同しません。
| ステップ |
決めること |
次に進める状態 |
| 1. ゴール |
成果の定義を1つ |
ゴールをCRMのプロパティやステージで判定できる |
| 2. ターゲット |
対象リードの条件 |
他シナリオと対象が重ならない |
| 3. トリガー |
開始のきっかけ |
人の手を介さずに記録される事実になっている |
| 4. ステップ |
内容・順序・間隔 |
各メールの役割を一言で説明できる |
| 5. 分岐 |
反応別の処理 |
分岐が2〜3つに収まっている |
| 6. 効果測定 |
主指標と補助指標 |
測定のタイミングが決まっている |
表の数値は設計を単純に保つための例です。実際には、全分岐をテストでき、各分岐の対応担当が決まっているかで判断します。また、自動で記録されないトリガーを使う場合も、入力担当と確認方法が決まっていれば設計できます。
鉄板シナリオ1:新規リード育成シナリオ
新たに獲得したリードへ情報を届け、検討状況に応じて営業への引き渡しを判断するシナリオです。フォーム送信など、開始のきっかけを確認しやすい接点から設計します。
登録条件、メールの役割、分岐の置き方を具体的に検討するときは、MAワークフロー設計入門も参照してください。
設計の概要
次の期間・通数は仮の設計例です。自社では、資料を求めた目的と営業が引き受ける条件を先に決めてから調整します。
| 項目 |
内容 |
| トリガー |
資料DL、ウェビナー参加、ブログCTA経由の登録 |
| ゴール |
MQL化(一定スコア到達)→ 営業への引き渡し |
| 期間 |
30日間 |
| 通数 |
5〜7通 |
| 対象 |
新規リード全般 |
シナリオフロー
以下は、反応に応じた処理を検討するための例です。配信時期やスコアの閾値は、運用開始前に自社で決めます。
| タイミング |
条件 |
アクション |
| 即時 |
フォーム送信 |
お礼メール+追加コンテンツ |
| 3日後 |
メールを開封した |
課題深掘りコンテンツを送信 |
| 3日後 |
メールを開封していない |
件名を変えて再送(2日後) |
| 7日後 |
— |
導入事例メール |
| 事例メール後 |
料金ページを閲覧した |
営業に即時通知+商談案内メール |
| 事例メール後 |
料金ページを閲覧していない |
続きのシナリオへ |
| 14日後 |
— |
比較・選定ガイドメール |
| 21日後 |
— |
ウェビナー/相談会の案内 |
| 30日後 |
スコアが閾値に到達 |
MQL化、営業に引き渡し |
| 30日後 |
スコアが閾値未満 |
休眠シナリオに移行 |
設計のポイントと限界
最初に届ける情報は、相手が登録時に求めた内容と揃えます。その後の案内は、資料の閲覧や相談申込など、確認できる行動に応じて変えます。料金ページの閲覧を営業通知に使う場合も、その行動だけで商談希望と決めつけず、営業が確認する情報と連絡方法を決めます。
スコアの閾値は仮置きとし、営業に引き渡した後の結果を見て見直します。商談につながった相手とつながらなかった相手について、行動と属性を比較します。違いを説明できなければ、閾値の変更より先にスコアの付け方やMQLの定義を確認します。
無反応の相手を休眠シナリオへ移す際は、配信停止の意思表示がないか、ほかのシナリオの対象ではないかを確認します。
鉄板シナリオ2:商談化促進シナリオ
MQLに到達したリードについて、商談申込を促すためのシナリオです。営業が対応する条件、通知先、マーケティングの配信を止める条件を揃えることが中心になります。
MAの導入時に営業との役割分担や運用体制を整理する場合は、MA(マーケティングオートメーション)導入の教科書も参考になります。
設計の概要
表の期間・通数は仮の設定例です。営業が連絡できる体制と、既に進行中の商談を判定できるかを確認して調整します。
| 項目 |
内容 |
| トリガー |
MQL基準到達(スコア閾値超え or 特定行動) |
| ゴール |
商談(デモ・相談)の申込 |
| 期間 |
14日間 |
| 通数 |
4通 |
| 対象 |
MQL到達リード |
シナリオフロー
各タイミングは対応の順番を示す例です。営業担当者名で送るメールは、差出人と内容を担当者が確認できる運用を前提にします。
| タイミング |
条件 |
アクション |
| 即時 |
MQL到達 |
営業担当者からのパーソナルメール+営業担当者への通知 |
| 2日後 |
商談を予約した |
シナリオ終了 → オンボーディングシナリオへ |
| 2日後 |
商談を予約していない |
同業種の事例メール送信 |
| 5日後 |
メールに反応あり |
ROI試算/比較資料メール |
| 5日後 |
メールに反応なし |
営業に電話フォローを依頼 |
| 14日後 |
— |
期間限定の特別相談会案内 |
| 最終案内後 |
商談を予約した |
シナリオ終了 |
| 最終案内後 |
商談を予約していない |
ナーチャリングシナリオに戻す |
営業への引き渡しを仕組みにする
MQL到達の通知を受けた営業担当者が、商談履歴、問い合わせ内容、直近の反応を確認できるようにします。すでに商談が進んでいれば案内メールを止め、未対応なら担当者が連絡方法を決めます。
表には商談予約後の行き先としてオンボーディングシナリオを示しています。商談予約だけで受注後の案内を始めないよう、実装時には行き先の対象条件を確認し、自社の商談対応に合わせて調整します。商談化しなかった場合も、直ちに同じ案内を繰り返さず、育成配信へ戻す条件を決めます。
問い合わせフォームの内容を引き渡しに使う場合は、分類基準と振り分け先を決めます。次の画面は、問い合わせ内容の分類結果をもとに対応を分けるワークフローの例です。

分類をワークフローに組み込む際は、分類できない問い合わせの確認先も用意します。営業担当者名で送る最初のメールは、相手の相談内容と文面が合っているか、人が確認してから送る運用にします。
鉄板シナリオ3:失注復活シナリオ
失注した案件に対し、相手の状況が変わったときに再び相談できる接点を設計します。開始前に、失注理由と今後の情報提供に関する意向を確認します。
設計の概要
表の期間・通数は仮の設定例です。再連絡の時期は、失注理由、相手から聞いた検討時期、営業の対応方針を優先して決めます。
| 項目 |
内容 |
| トリガー |
商談ステータスが「失注」に変更 |
| ゴール |
再商談の獲得 |
| 期間 |
90日間 |
| 通数 |
4〜5通 |
| 対象 |
失注案件の担当者 |
シナリオフロー
次の内容は、失注理由によって案内を変える例です。案内するプラン、機能、事例、調査データが実際に用意できるかを確認してから採用します。
| タイミング |
条件 |
アクション |
| 即時 |
失注に変更 |
お礼+今後も情報提供する旨のメール |
| 30日後 |
失注理由:価格 |
新プラン/キャンペーン情報 |
| 30日後 |
失注理由:機能不足 |
新機能/アップデート情報 |
| 30日後 |
失注理由:タイミング |
業界トレンド+再検討のきっかけ |
| 30日後 |
失注理由:競合選定 |
差別化ポイント+新事例 |
| 60日後 |
— |
新着事例・ケーススタディ |
| 75日後 |
— |
業界レポート/調査データ |
| 90日後 |
— |
再提案の案内(「状況が変わっていましたら、改めてお話できれば幸いです」) |
失注理由の入力を分岐の前提にする
失注後の連絡では、営業が聞いた理由と相手の意向を優先します。再検討の時期を聞いている場合は、その時期に合わせます。情報提供を望まない相手は対象から除外します。表の時期は一律の待機期間として扱いません。
理由別の分岐を使うには、取引に失注理由が記録されている必要があります。選択式の項目を用意する場合も、選択肢だけでは表せない事情を確認できるようにします。理由が不明な案件に、推測で理由別のメールを送らないようにします。
理由が記録されてきたら、営業とマーケティングで内容を確認します。特定の理由が目立つ場合は、記録の仕方に偏りがないかを見たうえで、案内内容や提案方法を見直します。
鉄板シナリオ4:休眠リード掘り起こしシナリオ
一定期間反応を確認できないリードについて、情報提供を続けるか、配信を止めるかを判断するシナリオです。開封を確認できないことだけで関心がないと決めず、登録経緯やほかの接点も確認します。
設計の概要
表の休眠期間・通数は仮の設定例です。休眠の定義は、配信への反応だけでなく、営業とのやり取りやサイト上の行動を確認できる範囲に合わせて決めます。
| 項目 |
内容 |
| トリガー |
90日以上メール開封/サイト訪問なし |
| ゴール |
メール開封 or サイト訪問(再エンゲージメント) |
| 期間 |
30日間 |
| 通数 |
3〜4通 |
| 対象 |
休眠リード |
シナリオフロー
次のメール文面とタイミングは例です。差し込み項目の値、案内するコンテンツ、配信継続の確認方法を実装前に確かめます。
| タイミング |
条件 |
アクション |
| 即時 |
90日間アクションなし |
件名を工夫した再接触メール(例:「{姓}様、ご無沙汰しております。{業界}の最新動向をまとめました」) |
| 7日後 |
開封した |
人気コンテンツTOP3のまとめメール → 通常のナーチャリングシナリオに復帰 |
| 7日後 |
開封していない |
別角度の件名で再トライ(例:「{会社名}様の{業界}で注目される3つの変化」) |
| 14日後 |
いずれかのメールに反応あり |
ナーチャリングシナリオに復帰 |
| 14日後 |
反応なし |
最終メールへ |
| 30日後 |
— |
配信継続の確認メール(「引き続きメールをお届けしてよろしいですか?」) |
| 確認メール後 |
反応なし |
サプレッションリストに移動(配信停止) |
配信停止までを設計に含める
再接触の内容は、以前の登録目的と関係があるものを選びます。件名だけを変えて同じ案内を繰り返す前に、その情報が今も相手に必要かを確認します。
復帰の条件には、開封だけでなく、資料の閲覧や問い合わせなど、次の対応を判断できる行動を含めるか検討します。反応がなければ、決めた条件に従って配信を停止します。配信停止後に新たな登録があった場合の扱いは、登録条件と除外条件が衝突しないよう、社内テストで確認します。
鉄板シナリオ5:CS/アップセルシナリオ
既存顧客に対して、利用状況に応じた支援や追加サービスの案内を検討するシナリオです。まず顧客が現在のサービスを活用できているかを確認し、支援が必要な状態ならCSへの引き継ぎを優先します。
設計の概要
表の配信頻度は仮の設定例です。契約上の節目と、CSが顧客と接する機会に合わせて決めます。
| 項目 |
内容 |
| トリガー |
契約後の経過日数 or 利用状況のマイルストーン |
| ゴール |
上位プラン/追加サービスの検討開始 |
| 期間 |
契約期間に応じて継続 |
| 通数 |
月1〜2通(継続的) |
| 対象 |
既存顧客 |
シナリオフロー
次のタイミングと案内内容は設計例です。利用状況を判定できない段階では、活用度による分岐を有効にせず、CSが確認できる案内から始めます。
| タイミング |
条件 |
アクション |
| 契約開始から30日後 |
— |
活用状況レポート+Tips |
| 60日後 |
— |
活用度診断+改善提案 |
| 90日後 |
活用度が高い |
上位プランの事例紹介 → アップセル提案メール |
| 90日後 |
活用度が低い |
活用促進コンテンツ → CSチームに通知(解約リスク) |
| 契約更新2か月前 |
— |
更新案内+上位プランの提案 |
| 契約更新1か月前 |
— |
最終確認+特典案内 |
活用支援を先に置く理由
追加提案の前に、現在の利用状況と顧客の課題を確認します。利用が進んでいない場合は、使い方の案内やCSからの確認を先に行います。活用度が高い場合も、それだけで追加提案の希望があるとは判断せず、顧客が取り組みたいことと提案内容が合うかを確かめます。
契約日、更新日、利用状況を確認できなければ、表の分岐は動かせません。その場合は、確認できる契約情報に基づく案内から始めます。利用状況を記録する方法と、CSが確認する手順が決まってから分岐を追加します。
シナリオの優先順位の決め方とスモールスタート
実装順序は、期待する成果だけでなく、開始条件とゴールを判定できるか、対応する担当者がいるかで決めます。設計例を一度に設定する前に、動作と引き継ぎを確認できるものから始めます。
判断基準マトリクス
次の表は比較の出発点です。難易度、期待効果、優先順位は自社で確認した結果に置き換えて判断します。
| シナリオ |
設計難易度 |
期待効果 |
優先順位 |
| 新規リード育成 |
中 |
高 |
最優先 |
| 商談化促進 |
中 |
高 |
2番目 |
| 失注復活 |
中 |
中〜高 |
3番目 |
| 休眠掘り起こし |
低 |
中 |
4番目 |
| CS/アップセル |
高 |
中〜高 |
5番目 |
新規リード育成を検討するなら、登録経路と営業への引き渡し基準を確認します。商談化促進には、通知を受ける営業担当者と商談状況の更新が必要です。失注復活には失注理由、休眠掘り起こしには休眠と配信停止の定義、CS/アップセルには契約や利用状況の記録が必要になります。
推奨する実装順序と次へ進む目安
- まず: 新規リード育成シナリオ(汎用性が高く効果が見えやすい)
- 次に: 商談化促進シナリオ(営業との連携を確立)
- その後: 失注復活と休眠掘り起こし(既存資産の有効活用)
- 最後に: CS/アップセル(既存顧客データの蓄積が前提)
この順序は、必要な記録と対応体制が揃っている場合の例です。企業様によって最適な形は異なります。失注理由が安定して記録されているなら失注復活を先に検討できますし、既存顧客の支援が優先課題ならCS向けの案内から着手できます。
次へ進む条件は、現在のシナリオで対象者の登録、除外、ゴール達成、終了後の行き先を確認できることです。あわせて、次のシナリオに必要な項目が記録され、担当者が対応できるかを確かめます。ゴールの達成を測れない場合は、配信数を増やす前に判定方法を整えます。
HubSpotのワークフローで実装する
HubSpotで構築する場合は、登録条件、分岐、実行する処理をワークフローの設計に落とし込みます。利用できる機能や条件は、自社の契約内容とCreate workflowsを照らし合わせて確認します。設計書に書いた処理を設定できるかも、実装前にCreate workflowsで確認してください。
次の画面は、HubSpotのワークフロー一覧です。一覧を使って管理する際に、目的と対象を名前から判別できるかを考える材料になります。

ワークフロー名には「シナリオ種別_対象_ゴール」のような共通の形式を決めます。商談中の相手を育成配信から外す場合や、失注案件に関係する相手を対象にする場合は、コンタクトと取引の関連付け、取引ステージの更新方法を確認して登録条件と除外条件を設計します。
AIを使って設定案を整理する場合も、対象者の定義、営業・CSへの引き継ぎ、終了条件は担当者が確認します。画面での設定手順は「HubSpotワークフローの設定方法|通知・メール配信・AI活用・分岐設定を実演で徹底解説」で確認できます。
よくある設計ミスと仕組みでの回避方法
設定前に、登録条件、除外条件、分岐、終了条件を同じ設計書で確認します。テストでは、配信対象と配信対象外の両方で設定どおりに動作するか確かめます。
設計段階で起きやすいミス
次の表は、設定を点検するときの確認項目です。配信間隔や分岐数の数値は一律の基準とせず、自社の反応と運用負荷に合わせて判断します。
| ミス |
問題 |
回避方法 |
| 分岐が多すぎる |
複雑すぎて管理できない |
最初は分岐2〜3つまでに抑える |
| 配信間隔が短すぎる |
配信停止率が上昇 |
最低3日以上空ける |
| ゴールが曖昧 |
効果測定ができない |
シナリオごとに1つの明確なゴールを設定 |
| 全員に同じシナリオ |
関連性が低い |
最低限の属性セグメントで分ける |
| 終了条件がない |
いつまでもメールが届く |
終了条件(ゴール達成 or 期間終了)を設定する |
| テストなしで本番稼働 |
不具合や誤配信のリスク |
社内メンバーでテスト配信を実施してから稼働する |
特に配信間隔は、短いかどうかを日数だけで判断しません。同じ相手に届く別のメールも含めて確認し、内容の重複や配信停止の増加が見られたら見直します。
担当者に依存しない運用ルールを作る
設定を引き継げるよう、設計の判断と確認担当を記録します。分岐に使う項目については、誰が入力し、入力できない場合にどう扱うかまで決めます。
| ルール |
内容 |
| 設計書のひな形 |
6ステップの項目(ゴール・対象・トリガー・ステップ・分岐・指標)を埋める形で統一する |
| 命名ルール |
ワークフロー名・メール名にシナリオ種別と対象を入れる |
| 必須入力 |
分岐に使うプロパティ(失注理由など)を入力必須にする |
| テスト手順 |
社内メンバーを対象にテスト登録し、全分岐を一度通してから本番に切り替える |
| 振り返り |
本番稼働後2週間で初回の効果測定を行い、その後は定期的に見直す |
振り返りの時期は表の例をそのまま固定せず、ゴールの結果を確認できる時点で決めます。結果がまだ出ていない場合も、登録漏れや誤配信がないかは先に点検します。
効果測定から改善につなげる
まず、対象になった相手、配信が終了した理由、ゴールを達成した相手を確認します。そのうえで、途中の反応を見て変更箇所を絞ります。クリックが少ない場合は案内の内容とリンク先を、メールが届いていない場合は配信対象や除外条件を確認します。開封だけから関心の有無を決めつけないことも大切です。
分岐を追加するのは、反応の違いを確認でき、分岐後の対応を用意できたときです。違いが見えても担当者の対応が変わらないなら、分岐を増やす前に既存の案内を見直します。
関連する設計例を探す際は、メールマーケティング・MAカテゴリから、現在の課題に近い記事を確認できます。
よくある質問
Q1. MAシナリオは何本から始めるのがよいですか?
まず、登録から終了まで動作を確認できるシナリオを選びます。新規リード育成を選ぶ場合は、登録経路、MQLの定義、営業への引き渡し先を揃えます。その動作とゴールの判定を確認できてから、商談化促進など次のシナリオへ広げます。
Q2. メールの配信間隔はどのくらい空ければよいですか?
一律の日数では決められません。相手が求めた情報、メールごとの役割、ほかの配信との重なりを確認して仮の間隔を置きます。運用後は反応と配信停止の状況を見て見直します。相談申込など別の対応が必要な行動があれば、次の定期メールを待つかどうかも個別に判断します。
Q3. 失注したリードにすぐ連絡してもよいですか?
失注時に伝えた内容と、相手が今後の連絡を望むかを確認します。お礼や必要な連絡と、再提案の案内は分けて考えます。再検討の時期を聞いているなら、その情報を優先します。理由や意向が記録されていなければ、一律の期間で自動的に再提案を送る前に営業へ確認します。
Q4. 反応のない休眠リードはいつまでリストに残すべきですか?
休眠の定義と配信停止条件を先に決めます。メールの開封だけで判断せず、ほかの接点や配信継続の意向を確認します。反応を確認できず、定めた停止条件に当てはまる場合は配信対象から外します。新たな登録があった場合に配信を再開する条件も、停止条件と合わせて設計します。
Q5. シナリオの分岐はどこまで細かく作るべきですか?
分岐によって次の対応が変わる範囲に絞ります。まずゴール達成、対象外への変更、反応に応じた引き継ぎを確認します。追加したい条件があれば、その値を記録できるか、全経路をテストできるか、分岐後の担当者が決まっているかを確認してから設定します。
まとめ
MAシナリオは、顧客の状態に合わせて次の対応を決める設計です。型を参考にしながら、自社で確認できるデータと営業・CSの運用に合わせて組み立てます。
- 5つのシナリオは、各シナリオの終了条件と次の行き先を決めてつなぐ
- 設計の6ステップでは、ゴールと対象を先に定義してから配信内容を決める
- 営業・CSへの引き継ぎには、通知だけでなく、担当者が確認する情報と配信を止める条件を含める
- 理由や活用度による分岐は、必要な項目を記録でき、分岐後の対応が決まってから追加する
- 見直しでは、ゴールの達成状況を確認し、途中の反応を使って変更箇所を絞る
まずは、優先したいシナリオの設計書に、ゴール、対象、トリガー、配信の順番、分岐、測定方法を記入してください。次に、営業やCSへの引き継ぎと終了条件を確認し、社内で登録対象と除外対象をテストします。運用後は結果を確認し、必要な記録と担当体制が揃ったシナリオへ広げてください。
CRMを使った対象者の整理、営業への引き継ぎ、HubSpotでのワークフロー設計について相談したい場合は、StartLinkにお問い合わせください。現在の配信と顧客データを確認し、どのシナリオから着手できるか、開始条件・終了条件・測定方法をどう定めるかを一緒に整理します。
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