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「リードは集まっているのに、なかなか商談につながらない」「マーケティング施策の成果を数値で説明できない」——こうした課題を抱えているBtoB企業は少なくありません。
BtoBマーケティング戦略とは、法人顧客の獲得・育成・商談化を体系的に設計し、KPIで進捗を管理しながら継続的に改善していくための全体計画です。ファネル設計によって顧客の購買プロセスを可視化し、各段階で適切な施策を実行することで、マーケティングROIを最大化できます。
この記事では、BtoBマーケティング戦略の立て方をファネル設計・KPI設定・HubSpotでの実行管理という3つの観点から解説します。
この記事でわかること
- BtoBマーケティングにおけるファネル設計の考え方と具体的なステージ定義
- ファネル各段階のKPI設計とモニタリングの方法
- HubSpotを使ったファネル管理・KPIトラッキングの実践手順
- マーケティングと営業の連携を強化するための仕組み化のポイント
BtoBマーケティング戦略とは?全体像を理解する
BtoBマーケティング戦略とは、見込み顧客(リード)の獲得から育成、商談化、受注までの一連のプロセスを設計し、各施策を連動させて成果を最大化する取り組みです。
BtoCと比較すると、BtoBでは以下の特徴があります。
| 項目 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 意思決定者 | 複数人(担当者・上長・経営層) | 個人 |
| 購買サイクル | 数ヶ月〜1年以上 | 即日〜数週間 |
| 検討プロセス | 論理的・比較検討重視 | 感情・ブランド重視 |
| 単価 | 高額(数十万〜数千万円) | 比較的少額 |
| 顧客数 | 限定的 | 大量 |
BtoBでは購買サイクルが長く意思決定者が複数いるため、ファネル全体を設計して各段階で適切なアプローチを仕組み化することが結構ミソになってきます。
ファネル設計の基本|5つのステージと施策の対応
BtoBマーケティングファネルの5ステージ
BtoBマーケティングファネルは、大きく以下の5段階に分けて考えるのが基本です。
| ステージ | 状態 | 主な施策 |
|---|---|---|
| 認知(Awareness) | 課題に気づき、情報収集を開始 | SEO、ブログ、SNS、展示会、広告 |
| 興味・理解(Interest) | 解決策を調べ始める | ホワイトペーパー、ウェビナー、メルマガ |
| 比較・検討(Consideration) | 具体的なツール・サービスを比較 | 事例紹介、製品デモ、導入ガイド |
| 商談(Decision) | 提案・見積もりを受け購入を判断 | 個別提案、ROI試算、トライアル |
| 受注・顧客化(Purchase) | 契約・導入 | オンボーディング、カスタマーサクセス |
ここで重要なのは、自社のビジネスに合ったステージを定義するということです。企業様によって商材や営業プロセスは異なりますので、汎用的なフレームワークをそのまま使うのではなく、自社の顧客がどのように購買判断を進めるかを可視化して設計いただくのがいいかなと思います。
ファネル設計の3ステップ
ステップ1:カスタマージャーニーの可視化
まずは自社の顧客がどのような経路で認知から受注に至るのかを整理します。スプレッドシートで管理されている企業様も多いかと思いますが、HubSpotのライフサイクルステージ機能を活用すると、各段階のコンタクト数をリアルタイムで把握できます。
ステップ2:各ステージの定義と担当部門の明確化
「このコンタクトはMQLなのかSQLなのか」が属人的に判断されていると、マーケと営業の間で認識のずれが起きます。各ステージの定義を明文化し、担当部門を決めることがポイントになってきます。
例えば以下のような設計です。
| ステージ | 定義 | 担当部門 |
|---|---|---|
| リード | フォーム送信・名刺交換で情報を取得 | マーケティング |
| MQL | スコアリング基準を満たしたホットリード | マーケティング → IS |
| SQL | ISが商談可能と判断 | インサイドセールス |
| 商談中 | 提案・見積もりのプロセスに入った | フィールドセールス |
| 顧客 | 受注・契約締結 | カスタマーサクセス |
ステップ3:HubSpotへの実装
定義が固まったら、HubSpotのライフサイクルステージとパイプラインに実装します。ワークフローを使って、スコアリング閾値を超えたリードを自動でMQL化したり、取引ステージの移行に必須プロパティを設定したりすることで、仕組みとしてファネル管理ができるようになります。
KPI設計|ファネル各段階で追うべき指標
KPI設計の基本原則
BtoBマーケティングのKPIは、最終目標(KGI)から逆算して設定するのが鉄則です。例えば「年間売上1億円」というKGIがあるなら、受注単価・受注率・商談数・MQL数・リード数を逆算して各ファネルステージのKPIを設定します。
ファネル別KPI一覧
| ファネル段階 | KPI例 | 計測ツール |
|---|---|---|
| 認知 | セッション数、オーガニック流入数、広告インプレッション | HubSpotトラフィックアナリティクス |
| 興味・理解 | フォームCV数、資料DL数、ウェビナー参加数 | HubSpotフォーム・LP |
| 比較・検討 | MQL数、MQL化率、スコアリング推移 | HubSpotリードスコアリング |
| 商談 | SQL数、商談創出数、商談金額 | HubSpotパイプライン |
| 受注 | 受注件数、受注金額、受注率、LTV | HubSpotレポート |
コンバージョンレート(CVR)で全体を俯瞰する
ファネルの各ステージ間のコンバージョンレートを追うことで、どこにボトルネックがあるのかが見えてきます。
例えば以下のような数値です。
- リード → MQL化率:20-30%
- MQL → SQL化率:30-40%
- SQL → 商談化率:50-60%
- 商談 → 受注率:20-30%
全体のCVRが「率の掛け算」であることを理解すると、どの率を改善すれば最もROIが上がるかという構造的な視点を持てるようになります。これがBtoBマーケティングのKPI管理で結構ミソになってくるところです。
HubSpotでファネル管理を実装する方法
ライフサイクルステージの設定
HubSpotのライフサイクルステージは、コンタクトが購買プロセスのどの段階にいるかを管理する機能です。設定画面(歯車マーク → データ管理 → ライフサイクルステージ)から、自社に合ったステージを定義できます。
推奨されるステージ構成は以下のとおりです。
リード → MQL(ホットリード)→ SQL → 商談 → 顧客
↓
失注掘り起こし(ナーチャリングに戻る)
+ アプローチNG(営業・競合他社からの問い合わせ)
+ 社内(自社メンバー)
ここで注目したいのが「失注掘り起こし」のループです。失注した案件をそのまま放置するのではなく、ナーチャリングに戻してメール配信やウェビナー案内で再アプローチする仕組みを組んでおくと、過去のリード資産を有効活用できます。
パイプライン設計のポイント
営業プロセスを管理するパイプラインは、以下の4要素で設計するのが効果的です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 取引ステージ | 受注率が変化するポイントでステージを分ける |
| 受注確度(角度) | 各ステージでの受注確率を設定し、加重金額でフォーキャストを算出 |
| ステージ定義 | 各ステージの明確な定義を社内で共有し属人化を防ぐ |
| 必須入力プロパティ | ステージ移行時に必須入力を強制しデータ品質を担保 |
例えば1,000万の案件を3件持っていたとしても、それがまだアポ取得段階(受注確率10%)なら、フォーキャストは300万という計算になります。こうした加重金額の考え方を取り入れることで、精度の高い売上予測ができるようになります。
ワークフローによる自動化
スプレッドシートで管理していると、ステージ変更やリードの振り分けがどうしても手動になりがちです。HubSpotのワークフローを使えば、以下のような処理を自動化できます。
- スコアリング基準を満たしたリードを自動でMQLに昇格
- フォーム送信時にISへ自動通知+担当者割り当て
- 失注した取引を「掘り起こし」ステージに移動してナーチャリングメールを自動配信
- メール90日間未開封のコンタクトをマーケティング対象外に
ワークフローとカスタムレポートの必要性が出てきたら、Professionalプランへのアップグレードを検討いただくのがいいかなと思います。この2つの機能がProfessional検討の大きな判断ポイントになります。
ダッシュボードでKPIをモニタリング
HubSpotのダッシュボード機能を使えば、ファネル各段階のKPIをリアルタイムで可視化できます。
おすすめは会議シーン別のダッシュボード構成です。
- 経営会議用:受注金額、パイプライン総額、ファネル全体のCVR
- 営業会議用:商談進捗、フォーキャスト、担当者別パフォーマンス
- マーケ会議用:リード獲得数、MQL数、チャネル別CVR
まず既存のレポートテンプレートで土台を作り、足りないところだけカスタムレポートで補うというアプローチが効率的です。ダッシュボードの定期配信(例:毎週水曜朝8時)を設定しておけば、その時点のスナップショットを残せるので、月次比較にも活用できます。
マーケティングと営業の連携を強化する仕組み
SLA(サービスレベルアグリーメント)を定める
マーケと営業の連携で最も重要なのは、MQLの定義とSLAを明文化することです。
例えば以下のようなルールを設定します。
- マーケ → 営業:MQL基準を満たしたリードを月100件パス
- 営業 → マーケ:パスされたリードに48時間以内にコンタクト
- 共通:月1回のアライメントミーティングでCVRを確認・改善
失注分析で改善サイクルを回す
失注した案件の理由をカテゴリー分類(価格・競合・機能不足・時期尚早・社内決裁NG等)してレポート化すると、マーケ・営業・プロダクトの各部門にフィードバックできます。
例えば「機能不足」による失注が多ければプロダクト開発へのインプットになりますし、「時期尚早」が多ければナーチャリングの強化が必要という判断ができます。Salesforceをお使いの方であれば「商談ロスト分析」に近い概念ですが、HubSpotでも取引のクローズ理由プロパティとレポートを組み合わせて同様の分析が可能です。
注意点・よくある失敗
KPIを設定しすぎない
追うべき指標が多すぎると、結局どこにフォーカスすべきかわからなくなります。まずは受注目標や受注件数といったやりやすいところから捉えていただいて、段階的にKPIを拡張していくのがおすすめです。
ファネルの「漏れ」を放置しない
リードがMQLからSQLに進まない場合、その原因がスコアリング基準の問題なのか、コンテンツの質の問題なのか、営業のフォロー漏れなのかを切り分ける必要があります。HubSpotのファネルレポートを使えば、どの段階で離脱が多いかを可視化できます。
ツールに頼りすぎない
HubSpotのようなMAツールは強力ですが、ツールだけで戦略は完成しません。まずは自社の顧客理解と営業プロセスの整理から始め、それをツールで仕組み化・自動化するという順序が大切です。
まとめ
BtoBマーケティング戦略は、以下のステップで構築していきます。
- ファネル設計:自社の購買プロセスに合わせたステージ定義
- KPI設定:KGIから逆算した各ステージの目標値
- HubSpotでの実装:ライフサイクルステージ・パイプライン・ワークフローの設定
- モニタリング:ダッシュボードによるリアルタイムの数値把握
- 改善サイクル:CVR分析と失注分析に基づくPDCA
まずはファネルの定義とKGIの設定から始めて、段階的にHubSpotでの自動化を構築していきましょう。CRMにデータが蓄積されるほど、スコアリングやフォーキャストの精度が上がり、より効果的なマーケティング戦略を立てられるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. BtoBマーケティング戦略を立てる際、最初に何から始めればよいですか?
まずはKGI(最終目標)を明確にし、そこから逆算してファネル各段階のKPIを設定するのがおすすめです。その上で、現在の各ステージのCVRを計測し、最もインパクトのあるボトルネックから改善に着手いただくのがいいかなと思います。
Q2. ファネルモデルは古いと言われていますが、BtoBでもまだ有効ですか?
ファネルモデルは直線的な購買プロセスを前提としているため、顧客の回遊的な行動をすべてカバーできるわけではありません。しかしBtoBでは比較的購買プロセスが明確なケースが多いため、基本フレームワークとしてのファネルは依然有効です。HubSpotが提唱するフライホイールやループマーケティングの考え方を組み合わせることで、より包括的な戦略設計が可能になります。
Q3. HubSpotの無料版でもファネル管理はできますか?
基本的なライフサイクルステージの管理やコンタクトの追跡は無料版でも可能です。ただし、ワークフローによる自動化やカスタムレポートによる詳細分析はProfessionalプラン以上で利用可能な機能です。スモールスタートで無料版から始め、月200〜300件超のリードを扱うようになった段階でProfessionalへのアップグレードを検討いただくのがいいかなと思います。
Q4. マーケティングと営業の連携がうまくいかない場合、どうすればよいですか?
最も効果的なのは、MQLの定義を両部門で合意し、SLA(サービスレベルアグリーメント)として文書化することです。加えて、HubSpotのダッシュボードでMQL→SQL→商談のCVRを共有し、月次のアライメントミーティングで改善点を議論する仕組みを作ると、認識のずれを防げます。
Q5. KPIはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
月次でKPIのモニタリングを行い、四半期ごとにKPI自体の妥当性を見直すのが一般的です。特に新規事業や導入初期は、ファネルのCVRが安定するまでに数ヶ月かかるため、最初の半年は柔軟にKPIを調整いただくことをおすすめします。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。