リスキリング計画の立て方|AI時代に必要なスキルの特定から研修設計までの実践ガイド

  • 2026年3月10日
  • 最終更新: 2026年3月11日

ブログ目次

この記事でわかること

  • リスキリングの計画策定で最初に取り組むべきスキルギャップ分析の方法
  • AI時代に優先的に習得すべきスキル領域の特定基準
  • 既存社員の学習意欲を維持する研修プログラムの設計方法
  • リスキリングの成果を定量的に測定する指標の設計

生成AIの急速な普及により、多くの企業が「既存社員のスキルセットが事業の方向性と合わなくなってきている」という課題に直面しています。経済産業省が推進する「リスキリング」は、デジタル化やAI活用に対応するために、社員が新たなスキルを身につけることを支援する取り組みです。

日本経済団体連合会(経団連)の提言でも、DX推進に必要な人材の育成を既存社員のリスキリングで補うことの重要性が強調されています。しかし、多くの企業では「何から始めればいいかわからない」「計画は立てたが実行に移せない」という状態で足踏みしています。

本記事では、リスキリング計画を策定し、実行に移すための具体的なステップを解説します。

リスキリングが求められる背景

技術変化のスピード

AIやクラウド、データ分析の技術は急速に進化しており、数年前のスキルセットでは対応できない業務が増えています。世界経済フォーラム(WEF)のレポートでは、2027年までに全労働者の約6割が何らかのリスキリングを必要とするとされています。

人材獲得競争の激化

DX人材やAI人材の採用市場は過熱しており、外部からの採用だけでは必要な人材を確保できません。富士通は2020年からDX人材の育成を本格化し、全社員13万人を対象としたリスキリングプログラムを展開しています。社内のDX人材を段階的に増やす戦略を推進しています。

既存社員の生産性向上

新規採用よりも、業務知識を持つ既存社員に新しいスキルを身につけさせる方が、即戦力としての立ち上がりが早いです。業界知識 + 新スキルの掛け算が、企業の競争力の源泉となります。

リスキリング計画策定の5ステップ

ステップ1:事業戦略から逆算したスキル要件の定義

リスキリングは「流行っているスキルを学ばせる」のではなく、自社の事業戦略が求めるスキルから逆算して設計します。3〜5年後の事業計画を基に、どの領域でどのようなスキルが必要になるかを特定します。

日立製作所では、中期経営計画に基づいてデジタル人材の育成領域を定義し、AI・データサイエンス・クラウドの3領域を重点育成対象として設定しています。

ステップ2:現状スキルの棚卸し(スキルギャップ分析)

社員の現在のスキルレベルを評価し、ステップ1で定義した目標との差分(ギャップ)を分析します。スキルマップを活用して全社的なスキルの分布を可視化し、ギャップが大きい領域を特定します。

この段階で重要なのは、全社一律ではなく、部署や職種ごとに必要なスキルレベルを分けて定義することです。経理部門にプログラミングの高度なスキルは不要ですが、データ分析ツールの活用スキルは必要、というように粒度を調整します。

ステップ3:優先順位の設定

全てのスキルギャップを一度に埋めることは現実的ではありません。以下の基準で優先順位をつけます。

優先順位基準 評価の観点 高優先度の例
事業インパクト そのスキルが事業の成果にどれだけ直結するか AI活用による業務自動化スキル
緊急度 そのスキルがいつまでに必要か 法改正対応に伴うシステム操作スキル
習得の難易度 短期間で習得できるか、中長期の育成が必要か BIツール操作(短期習得可能)
対象人数 何名の社員がリスキリングを必要としているか 全社員向けのデータリテラシー

ステップ4:研修プログラムの設計

優先度の高いスキル領域から順に、研修プログラムを設計します。

社内研修と外部研修の組み合わせ:自社の業務に直結するスキルは社内研修で、汎用的な技術スキル(AI活用、データ分析ツール等)は外部の研修サービスや資格取得プログラムを活用するのが効率的です。

実務プロジェクトとの連動:研修で学んだスキルを実際の業務プロジェクトで適用する機会を意図的に設計します。KDDIでは、リスキリング研修の受講者が学んだスキルをすぐに実務で活かせるよう、DXプロジェクトへの配置転換と研修を連動させるプログラムを運用しています。

学習コミュニティの形成:同時期にリスキリングに取り組む社員同士がナレッジを共有し、モチベーションを維持できるコミュニティをつくります。勉強会やSlackチャンネルでの情報共有が有効です。

ステップ5:効果測定と計画の見直し

リスキリングの成果を定量的に測定し、計画を継続的に見直します。測定指標としては、以下を設定します。

指標区分 測定項目 測定タイミング
学習指標 研修完了率、資格取得率、テストスコアの平均点 研修期間中〜終了直後
行動指標 新しいスキルを実務で活用した件数、DXプロジェクトへの参加率 研修終了後1〜3ヶ月
成果指標 リスキリング対象者の業務生産性の変化、デジタルツール活用度の向上率 研修終了後3〜6ヶ月

AI時代に優先すべきスキル領域

現時点でリスキリングの優先度が高いスキル領域は以下の通りです。

スキル領域 具体的な習得内容 対象者 習得の段階
データリテラシー Excel関数 → BIツール(Tableau、Power BI等) → データに基づく意思決定手法 全社員 初級〜中級(3〜6ヶ月)
AI活用スキル 生成AI(ChatGPT、Claude等)の業務活用、AIツール選定基準の理解、AI出力の評価・検証 全社員(特にビジネス部門) 初級〜中級(1〜3ヶ月)
プロジェクトマネジメント アジャイル開発の基礎、ステークホルダーマネジメント、要件定義 DX推進担当・ビジネス側担当者 中級(3〜6ヶ月)

NTTグループでは、グループ全体でAIリテラシー教育を展開し、技術者だけでなくビジネス部門の社員にもAIの基礎知識と活用手法を習得させるプログラムを実施しています。また、DXプロジェクトの推進においては、技術者だけでなくビジネス側の担当者がプロジェクトマネジメントスキルを持つことで、IT部門との協業がスムーズになります。

学習意欲を維持する3つの工夫

リスキリングの最大の障壁は、社員の学習意欲の維持です。

  • キャリアパスとの接続:リスキリングが自分のキャリアアップにつながることを明示します。スキル習得後のポジション変更や給与反映のルールを事前に示します
  • 小さな成功体験の設計:短期間で成果が見えるマイルストーンを設定し、達成感を感じられる設計にします
  • 経営層のコミットメント:リスキリングが会社の戦略として重要であることを、経営層が自らメッセージとして発信します。三井住友フィナンシャルグループでは、トップ自らがDX推進の重要性を社内に発信し、リスキリングへの全社的な機運を醸成しています

CRMを活用したリスキリングデータの管理

リスキリングの進捗データを散在させず、一元管理する仕組みが重要です。HubSpotを活用すれば、社員ごとのスキル評価データ、研修受講履歴、資格取得状況をカスタムプロパティとして管理し、ダッシュボードで全社のリスキリング状況を俯瞰できます。

部署別・スキル領域別のギャップ分析をレポートで自動生成し、経営層への報告や次期計画の策定に活用できる体制を整えることで、リスキリングを一時的な施策ではなく、継続的な人材戦略として定着させることが可能になります。

まとめ

本記事では、リスキリング計画の立て方について、スキルギャップ分析から研修設計、効果測定までの具体的なステップを解説しました。

  • リスキリング計画は、事業戦略から逆算したスキル要件の定義から始まり、現状の棚卸し、優先順位付け、研修プログラムの設計、効果測定の5ステップで策定します
  • AI時代にはデータリテラシー、AI活用スキル、プロジェクトマネジメントの3領域が優先度の高い育成対象です
  • 計画倒れに終わらせないためには、キャリアパスとの接続、小さな成功体験の設計、経営層のコミットメントで社員の学習意欲を維持する仕組みが不可欠です

リスキリングの進捗データを一元管理し、戦略的な人材育成を推進したい方は、HubSpotの無料CRMを活用したデータ管理基盤の構築から検討してみてください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。