スキルマップとは、業務に必要なスキルとメンバーの習熟度を一覧にし、育成やアサインの判断に使う表です。項目を並べるだけでなく、観察できる行動で評価し、次の判断につなげることが要点です。
「誰に何を任せられるか、すぐに判断できない」「育成の優先順位がマネージャーによって変わる」「Excelで作った表の更新が止まっている」。こうしたときは、表を作り直す前に、評価の根拠と使い道を確認する必要があります。
本記事では、対象業務の選び方から評価基準、ギャップ分析、育成計画へのつなぎ方までを5ステップで解説します。ExcelやHubSpotで管理する場合の判断基準も整理します。育成の全体設計から確認したい方は、オンボーディング設計ガイドも参照してください。
この記事でわかること
チームの育成やアサインを担うマネージャーが、スキルマップを作り、評価結果を実際の判断に使うまでの順序を確認できます。
- スキルマップの読み取り方 — 個人の育成課題とチーム全体の課題を、表のどこから見分けるかを説明します。
- 5ステップの作成手順 — 項目の洗い出しからギャップ分析まで、次に進む前の確認点を示します。
- 育成・配置・採用・後継者計画での活用 — それぞれの場面で、評価結果に何を照らして判断するかを整理します。
- 更新を続ける運用方法 — 管理場所、更新担当、評価結果の使い道を決める手順を紹介します。
スキルマップとは何か
スキルマップは、「誰が・何を・どの水準でできるか」を一覧にした表です。「力量管理表」「スキルマトリクス」とも呼ばれます。まず構成要素を押さえ、表からどのような判断ができるかを見ていきます。
定義と構成要素
スキルマップとは、業務に必要なスキルを縦軸に、チームメンバーを横軸にとり、各スキルの習熟度を数値やレベルで評価した一覧表です。「力量管理表」「スキルマトリクス」とも呼ばれます。
構成要素は、スキル項目、評価基準、メンバーごとの評価結果です。同じレベルでも評価者によって意味が違えば、育成やアサインの判断に使いにくくなります。項目を増やす前に、そのレベルに当てはまる行動を評価者同士で説明できるか確認してください。
営業チームの例で読み取る
以下は、営業チームを想定したスキルマップの例です。数値は読み取り方を示すための仮の評価です。
| スキル項目 |
田中(営業リーダー) |
鈴木(営業担当) |
佐藤(新人) |
| CRM操作 |
4 |
3 |
1 |
| 提案書作成 |
4 |
2 |
1 |
| 顧客ヒアリング |
3 |
3 |
2 |
| データ分析 |
2 |
3 |
1 |
| プレゼンテーション |
4 |
2 |
2 |
※ 4段階評価(1=未習得〜4=組織をリード)
列を縦に見ると、各メンバーの育成課題を探せます。例えば佐藤のCRM操作と提案書作成は、他の項目と比べて評価が低い状態です。ただし、低い項目をすべて同時に研修対象にするのではなく、担当する業務に先に必要な行動を選びます。
行を横に見ると、チーム内で教えられる人がいるかを確認できます。データ分析は鈴木の評価が最も高いため、田中がこの業務を担う必要があるなら、鈴木に手順を確認する案が考えられます。一方、顧客ヒアリングは突出した評価の人がいません。まずヒアリングで確認すべき事項を揃え、実際の記録を見ながら評価基準を確かめる方が、担当者を決めやすくなります。
表から課題を見つけたら、評価の根拠を確認します。低い評価が経験機会の不足によるものなら実践の場を、高い評価が特定の案件だけに基づくものなら別の場面での確認を検討してください。
スキルマップが効く状況・効きにくい状況
スキルマップの対象にしやすいのは、業務の手順や成果物があり、できたかどうかを行動で確かめられる仕事です。営業、カスタマーサポート、経理などでも、職種名だけで判断せず、対象業務ごとに確認します。
判断の目安は、「この業務の手順を新人向けに書き出せるか」です。書き出せるなら必要な行動をスキル項目にします。書き出せない場合は、先に担当者と手順を整理し、何を評価するかを決めてから進めてください。手順の整理には研修マニュアルの作り方も参考になります。業務が変わったときは、以前の項目が現在の判断に使えるか見直します。
Excel管理のスキルマップが形骸化する理由
Excelでの管理が適切かどうかは、ファイル形式だけでは決まりません。更新が止まった場合は、参照する版を特定できるか、各項目を評価できるか、結果を判断に使っているかの順に確認します。
ファイルが分散し、最新版がわからなくなる
部署や評価期ごとにファイルがある場合は、同じメンバーの評価日と評価結果が揃っているか確認してください。食い違うときは、育成やアサインの判断で参照するファイルを決め、その更新担当と過去の評価の保管場所を明確にします。
次の判断に進める条件は、マネージャーが対象者の現行評価とその根拠を見つけられることです。見つけられなければ、評価を追加する前に管理場所を整理します。
項目が増え続けて評価できなくなる
新しい項目を追加する前に、評価の根拠となる行動、評価する人、結果の使い道を確認します。いずれかが決まらない項目は、まず業務の中で必要性を確かめ、評価対象に入れるか判断してください。
項目が多くて更新できない場合は、直近の育成やアサインで使った項目から残します。使われなかった項目も直ちに不要と決めず、今後の担当業務で必要になるかを確認して統合・保留を選びます。
評価が判断に使われず「作業」になる
評価を終えたら、どの項目を根拠に育成施策やアサインを決めたか記録します。どの判断にも使わなかった場合は、項目の定義が曖昧なのか、評価結果を見る場がないのかを分けて確認してください。前者なら行動指標を直し、後者なら面談や担当決定の手順に参照する場を設けます。
次の表は、管理上の課題と対策を対比した例です。各列はExcelという形式の性質や、特定の仕組みに備わる機能を示すものではありません。まず現行の管理でどちらの状態に近いかを確認し、必要な人が評価日・根拠・過去の評価を追える方法を選んでください。
| 観点 |
Excelでの管理 |
仕組みとしての管理 |
| データの置き場所 |
部署・期ごとにファイルが分散 |
1か所に集約し履歴も残す |
| 項目数 |
追加しやすく膨らみがち |
編集権限を絞り、追加は合議で決める |
| 更新のきっかけ |
担当者の気づき次第 |
人事評価のタイミングに組み込む |
| 判断への接続 |
表を見る人の解釈に依存 |
育成施策・アサインの記録と同じ場所で参照 |
例えばファイルが分散していても、参照する版、更新担当、履歴の保管場所が決まっていれば、直ちに管理方法を変える必要はありません。反対に、一か所に集めても評価の根拠が残らなければ、判断に使える状態にはなりません。
スキルマップの作成手順①:スキル項目の洗い出しと分類
作成は、スキル項目の洗い出し、カテゴリ分類、評価基準設定、現状評価、ギャップ分析の5ステップで進めます。最初に決めるのは「何を評価するか」です。
ステップ1:スキル項目の洗い出し
対象チームの業務を順に書き出し、各段階で必要な行動を挙げます。職務記述書や業務マニュアルを確認し、現場マネージャーにも実際の手順を聞きます。営業なら、コンタクトの獲得、取引の作成、提案・見積もり、受注、請求という流れの中で、次の段階へ進むために何を確認し、記録するかを見ます。
挙げた項目は、「この評価が変わったら、育成施策かアサインが変わるか」で絞り込みます。変わらない項目は評価対象にする理由を再確認してください。必要な行動と使い道を説明できたら、分類に進みます。
ステップ2:スキルのカテゴリ分類
残した項目を、育成方法を選びやすい単位に分類します。次の表は分類の例です。
| カテゴリ |
定義 |
スキル例 |
| テクニカルスキル |
業務固有の専門スキル |
プログラミング、設計、会計知識、CRM操作 |
| ビジネススキル |
職種横断で求められるスキル |
プレゼンテーション、プロジェクト管理、データ分析 |
| ヒューマンスキル |
対人関係に関するスキル |
コミュニケーション、リーダーシップ、交渉力 |
分類したら、各項目を実務のどの場面で確認できるかを考えます。手順に沿った操作なら作業記録、対話に関わる行動なら面談や同席時の観察など、根拠を確認する方法が異なります。確認方法が決まらない項目は、名称が広すぎないか見直してください。
技術領域やキャリアパスごとに分類する方法もあります。分類名を揃えることより、同じカテゴリの項目を育成やアサインの判断で一緒に見られることを優先します。
スキルマップの作成手順②:評価基準の設定と現状評価
項目が決まったら、各レベルで何ができるかを定義します。その後、根拠となる行動を確認して現状を評価します。
ステップ3:評価基準の設定
次の表は4段階評価の例です。レベルの名称だけで決めず、対象業務に当てはめた行動指標を用意します。
| レベル |
定義 |
行動指標の例 |
| 1 |
知識がなく、業務に適用できない |
研修を受講したことがない、用語の意味を理解していない |
| 2 |
基本的な知識があり、指導を受ければ業務に適用できる |
マニュアルを見ながら作業できる、先輩の指導下で対応可能 |
| 3 |
独力で業務に適用でき、他者に教えることもできる |
単独で月次レポートを作成できる、後輩への指導実績がある |
| 4 |
高度な応用が可能で、組織のスキル向上をリードできる |
新しい手法を開発し組織に展開できる、社外研修の講師を務められる |
例えばExcelスキルのレベル3を定義するなら、担当業務のレポートを単独で作成できるかを確認します。「理解している」のように根拠を示しにくい表現が残ったら、「どの成果物や記録を見れば判断できるか」を書き足してください。
表の行動指標も、そのまま全職種に当てはめるものではありません。研修の受講歴だけでは業務での行動を判断できない場合は、実際の作業を確認する方法を加えます。評価者が同じ行動を見て同じレベルを選べるか、対象者を限定して確かめてください。解釈が分かれた項目は、全員を評価する前に指標を修正します。
ステップ4:現状評価の実施
自己評価と上司評価を、同じ行動指標に沿って行います。それぞれが根拠にした業務や成果物も確認してください。評価が違う項目は、どちらが正しいかを先に決めず、見ていた行動や担当業務の違いを面談で確かめます。
合意したレベルとその理由を記録したら、目標レベルとの比較に進みます。根拠を確認できない項目は無理にレベルを確定せず、次にどの業務場面で確認するかを決めます。
評価の進め方の判断基準
初回評価を広げる前に、次の条件を確認してください。
| 確認すること |
結果 |
進め方 |
| 全項目に行動指標が書けているか |
書けていない項目がある |
その項目は評価対象から外し、指標ができてから追加する |
| 評価者が複数いるか |
複数いる |
同じメンバーを2人で評価し、基準の解釈を揃えてから全員へ広げる |
| 評価結果を本人に開示するか |
開示する |
面談の時間を先に確保してから評価を始める |
指標が揃っていても、根拠となる業務をまだ経験していない人の評価は保留できます。確認する業務場面を決め、観察後に評価へ戻してください。
スキルマップの作成手順③:ギャップ分析から育成計画へ
現状評価だけでは、次に何をするかは決まりません。担当業務に必要な目標レベルと比べ、差がある項目から育成施策を選びます。
ステップ5:ギャップ分析と育成計画への接続
目標レベルは、役職名だけで一律に決めず、担当する業務で必要な行動から設定します。現状との差を出したら、その業務をいつ担うか、教えられる人や教材があるかを確認します。
以下は、営業チームの佐藤を想定した例です。目標、施策、実施頻度はいずれも例示であり、実際には担当業務に合わせて決めます。
| スキル項目 |
現状レベル |
目標レベル |
ギャップ |
育成施策 |
| CRM操作 |
1 |
3 |
2 |
OJT(鈴木がメンター)+ eラーニング |
| 提案書作成 |
1 |
2 |
1 |
テンプレート活用+上司レビュー |
| 顧客ヒアリング |
2 |
3 |
1 |
同行営業(田中に帯同)月4回 |
| データ分析 |
1 |
2 |
1 |
Excel研修+鈴木の勉強会参加 |
| プレゼンテーション |
2 |
3 |
1 |
社内プレゼン機会の付与(月1回) |
施策を選ぶ際は、研修や同席の実施回数だけで終えず、次にどの業務を本人が担い、何を見て習得を確認するかまで決めます。実践する業務が用意できない場合は、目標レベルや施策の順序を見直してください。
育成施策の優先順位を決める
表の例ではCRM操作のギャップが最も大きく、OJTが設定されています。ただし、差の大きさだけで優先順位は決めません。まず担当する業務に欠かせないかを確認し、次に他の業務の前提になるか、実践する機会を用意できるかを見ます。
例えば取引の記録を担当するなら、必要事項を入力できることが先に求められます。一方、当面担当しない業務の項目は、差が大きくても育成開始を後にできます。施策を決めたら、どの行動を確認できれば目標に近づいたと判断するかも決めてください。
育成施策を「人」ではなく「仕組み」に割り当てる
表には、メンターや帯同先として田中・鈴木の名前があります。育成を担当する人を決める際は、その人が教える内容を手順や確認項目にも残します。
CRM操作なら、メンターが実際の入力を見ながら教える内容と、取引ステージごとに確認する項目を分けて整理します。担当者が変わった場合も同じ行動指標で確認できるかが、次に進む条件です。確認できなければ、教材や手順を補ってから対象者を広げます。
スキルマップの活用場面
スキルマップは、育成計画に加えてアサイン、採用要件、後継者計画を考える材料になります。それぞれ、表だけで結論を出さず、担当業務や今後の予定と照らして判断します。
育成計画の策定
個人ごとの目標レベルと現状の差を確認し、必要な行動に合わせて育成施策を選びます。同じ課題がチーム内に広がっている場合は、共通の手順や教材を整える判断にも使えます。
判断の分かれ目は、課題が特定の人にあるか、チームに共通するかです。前者なら個別の実践機会やOJTを、後者なら手順の整備や勉強会を検討します。求めるスキル自体が変わる場合は、現在の評価項目を増やす前に目標を見直します。計画の立て方はリスキリング計画の立て方も参考にしてください。
プロジェクトアサインの最適化
アサインでは、まず業務に不可欠なスキルと、担当しながら習得できるスキルを分けます。前者は現状評価の根拠を確認し、後者は教える人と確認の機会を用意できるかを見ます。
例えば、主担当に必要な行動をすでに示せる人を置き、育成対象者を副担当にする方法があります。表のレベルだけで決めず、現在の業務量や案件の条件も確認してください。副担当の役割と、次にどの行動を評価するかが決まれば、アサイン後の育成にもつながります。
採用要件の明確化
チーム内で必要なスキルを担える人がいるか、育成で補えるかを確認します。社内で習得するための実践機会や教える人を用意できるなら、まず育成計画に入れる判断ができます。
必要な業務を担うまでに育成が間に合わない場合や、教える人を確保できない場合は、必要な行動を採用要件として整理します。入社後に何を教えるかは中途採用のオンボーディングとあわせて検討してください。
後継者計画
ある業務を担える人が限られる場合は、属人化の可能性を確認します。ただし、同じレベルの人が少ないことだけでリスクを決めず、その業務が止まった場合の影響と、代わりに担うまでに必要な手順を見ます。
優先して引き継ぐ業務が決まったら、担当者が判断に使う情報を手順書やテンプレートに残し、別のメンバーが実行できるか確かめます。実行できない箇所があれば、手順に足りない判断材料を確認して補います。書き起こし方は暗黙知を形式知に変換する方法で解説しています。
HubSpotでスキルマップを仕組みとして運用する
HubSpotでスキル情報を扱う場合は、まず閲覧できる人、編集する人、育成やアサインの記録と一緒に見る必要があるかを確認します。条件が合えば、社員のスキルデータをCRMのレコードに関連付けて管理する方法があります。ここでは、業務データを評価の根拠として参照する手順と、管理方法を選ぶ際の条件を整理します。
社員スキルとCRMレコードを関連付ける
社員のレコードを顧客と同じコンタクトとして持つ場合は、双方を区別できる設計が必要です。スキル項目や評価値をどこに置くかは、利用するレコード、閲覧・編集の範囲、評価履歴の確認方法を決めてから検討します。
項目を追加する際は、管理者が行動指標と使い道を確認する手順にします。判断に使う項目だけを残せるか、変更後も過去の評価を読み取れるかを確かめてください。
営業スキルとパイプラインをつなぐ
営業チームでは、スキル項目に対応する業務の記録を探すと、評価の根拠を確認しやすくなります。次の表は、確認先を整理した例です。業務データは行動を話し合う材料として使い、数値だけでレベルを決めないようにします。
| スキル項目 |
業務フロー上の位置 |
業務データで見るポイント |
| 顧客ヒアリング |
コンタクト獲得〜取引の作成・初回提案 |
初回提案に進んだ取引の記録に、課題やニーズが残っているか |
| 提案書作成 |
提案〜見積もり提示 |
見積もり提示のステージに進む取引の割合 |
| CRM操作 |
すべての段階(受注・請求まで) |
ステージ移行時の必須項目が埋まっているか |
| データ分析 |
受注・失注後の振り返り |
失注理由などの記録を自分で集計・解釈できているか |
例えば顧客ヒアリングを評価するなら、取引の記録に必要な情報が残っているかを見たうえで、本人がどのように聞き取ったかを確認します。記録がない場合は、ヒアリングの行動と記録方法のどちらを見直すべきかを分けてください。提案書作成でも、取引が次の段階に進んだ割合だけでは作成能力を判断できません。提案書の内容と、本人が担った範囲を併せて確認します。
レポートで実績とスキルを突き合わせる
担当者別のレポートを参照する際は、表示項目と集計条件を先に確認します。次の画面は、担当者ごとの業務状況を確認するレポートの例です。

スキルの評価と業務の結果が合わないように見えるときは、まず評価に使った行動指標が現在の業務に合っているかを確認します。合っていれば、対象の案件を見て、担当範囲や進め方に違いがないかを話し合います。
次の画面は、担当者ごとの目標と実績を見比べるレポートの例です。対象期間と担当範囲を揃えてから参照してください。

成果だけでスキルを評価すると、担当する顧客や商材の違いを見落とす可能性があります。レポートから確認すべき業務場面を探し、育成テーマはその場面の行動指標と記録を見て決めます。
この方法の限界と向かないケース
管理場所を選ぶ分かれ目は、評価を誰が閲覧・編集できるべきかです。チーム内で育成やアサインに使う情報と、処遇の判断に使う評価情報では、必要な閲覧範囲が異なります。
処遇と結びつく評価を厳しく限定して扱う場合は、その情報の管理場所を先に決めてください。HubSpotで扱う範囲を育成やアサインに必要な情報に限る方法もあります。情報を分ける場合は、どちらを正式な評価として参照するかも明確にします。
形骸化させない運用のポイント
更新が止まる理由は一つとは限りません。更新の担当やタイミングが決まっていない場合も、評価結果の使い道が見えない場合もあります。ここでは、更新と活用を続けるための確認点を整理します。
更新サイクルを人事評価のタイミングに合わせる
人事評価の面談でスキルマップを使うなら、面談前に誰が評価を更新し、どの記録を確認するかを決めます。面談後は、合意したレベル、育成施策、次に確認する行動を残します。人事評価とは別にアサイン判断で使う場合は、その判断前にも必要な項目を見直してください。
HubSpotで管理する場合は、最終評価日を記録し、対象の評価期より前の日付のままの人を確認する方法があります。抽出したら機械的に評価を変えるのではなく、担当者が更新の要否と根拠を確認します。
「使われている実感」を作る
面談では、評価結果をどの育成施策やアサインの判断に使ったか、本人に説明します。例えば新しい担当を任せるなら、根拠にした行動と、次に任せる業務の範囲を伝えてください。
判断に使われない項目があれば、行動指標が曖昧なのか、そもそも担当業務に必要ないのかを確認します。前者なら指標を修正し、後者なら項目の統合や保留を検討します。
スモールスタートで段階的に広げる
まずは1つのチームで、業務フローの中核に関わる項目から試します。評価ができた時点では広げず、その結果を使って育成やアサインを決められたかを確認してください。
次の表は段階的な広げ方の例です。各段階の条件を、運用を見直す目安として使います。
| 段階 |
やること |
次へ進む条件 |
| 1. 試行 |
1チーム・中核スキルだけで評価する |
評価結果を使って育成施策を1つ以上決められた |
| 2. 定着 |
人事評価のタイミングで更新し、アサインにも使う |
2回目の評価で前回との差分を説明できた |
| 3. 拡張 |
他チームへ広げ、共通スキルの基準を揃える |
部署をまたいでも同じ行動指標で評価できた |
| 4. 連携 |
業務データのレポートと並べて運用する |
成果と評価のずれを面談で話し合えている |
条件を満たせない段階では、評価の根拠、更新担当、判断に使う場のどこに問題があるかを確認します。原因に合わせて直してから、対象を広げます。表中の施策数や評価回数は、この進め方を示す例です。実際には、判断の記録を残せたか、前回から変わった理由を説明できるかで次の段階を決めてください。
AIと人の役割を分ける
AIを使うなら、職務記述書や業務マニュアルをもとに、スキル項目や行動指標の文案を作る用途から始めます。マネージャーは、その文案が実際の業務に合い、記録や観察で確認できるかを確かめます。
目標レベル、個人の評価、アサインや処遇への反映は、業務の状況と評価の根拠を確認したうえで人が判断します。
| AIに任せやすいこと |
人が判断すること |
| 職務記述書からスキル項目の候補を出す |
どの項目を評価対象に残すか |
| 行動指標の文案を作る |
指標が自社の業務実態に合っているか |
| 面談メモの要約 |
合意するレベルと育成テーマ |
| 研修教材の下書き |
アサインや処遇への反映 |
よくある質問
Q1. スキルマップの項目はどのくらいの数から始めればよいですか?
決まった項目数から始める必要はありません。対象チームの中核業務を書き出し、評価が変われば育成かアサインの判断も変わる項目を残してください。各項目の行動指標と評価担当を決められたら試行し、使われなかった項目は理由を確認して見直します。
Q2. 自己評価と上司評価が大きく食い違った場合はどうすればよいですか?
双方が根拠にした業務場面と行動を確認します。自己評価が高い場合は本人の挙げた行動を指標と照らし、低い場合は上司が確認した行動を具体的に伝えます。見ている業務が違ったなら、同じ場面を確認してからレベルを決めてください。合意した結果と理由は次回の比較に使えるよう記録します。
Q3. スキルマップはExcelで管理し続けてもよいですか?
Excelでも、参照する版、更新担当、評価日、過去の評価を確認できれば運用できます。複数チームに広げる前に、必要な人が同じ評価を参照できるか、閲覧範囲を管理できるか、育成やアサインの記録と照らせるかを確認してください。難しい点があれば、その条件を満たす管理方法を検討します。企業様によって最適な形は異なります。
Q4. スキルマップを人事評価や報酬に直結させてもよいですか?
まず、育成のための評価と処遇のための評価で、目的と閲覧できる人を分けて整理してください。処遇に使う場合は、評価基準、根拠の記録、本人への説明方法、閲覧範囲を決めてから運用を検討します。育成用のスキルマップをそのまま処遇に当てはめず、必要な情報を誰が管理するか確認することが先です。
まとめ
スキルマップは、項目とレベルを埋めるだけでは育成計画になりません。業務に必要な行動を定義し、評価の根拠を揃え、結果を次の判断に使うところまで設計します。
- 作成は、スキル項目の洗い出し、分類、評価基準の設定、現状評価、ギャップ分析の順に進めます。
- 育成の優先順位は、レベル差だけでなく、担当業務に必要な時期と実践機会を踏まえて決めます。
- 更新が止まったら、参照する版、評価できる項目、結果を使う場を順に確認します。
まずは1つのチームの中核業務を対象に、次の順序で始めてください。
- 業務の流れを書き出し、各段階で必要な行動をスキル項目にする
- 行動を確認できる評価基準を作り、自己評価と上司評価の根拠を揃える
- 担当業務に必要な目標と比べて育成施策を決め、次の面談やアサイン判断で結果を見直す
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、StartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
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