HubSpotターゲットアカウント機能の活用法|理想顧客プロファイル設計とABM実行

  • 2026年3月12日
  • 最終更新: 2026年3月12日

ブログ目次

「大口顧客を狙ったアカウントベースドマーケティング(ABM)を始めたいが、何から手をつければよいか分からない」

「ターゲット企業にアプローチしているが、組織的にどの担当者にリーチできているか把握できていない」

——こうした課題を持つBtoBマーケティング・営業チームは少なくありません。

HubSpotのターゲットアカウント機能は、ABM(Account-Based Marketing)を実行するための専用ツールセットです。ICP(理想顧客プロファイル)の定義、ターゲットアカウントの指定、アカウントレベルのエンゲージメント追跡、購買委員会(Buying Committee)の管理を一元的に行えます。

この記事では、HubSpotのターゲットアカウント機能を活用してABMを推進するための設定手順・運用方法・効果測定までを体系的に解説します。

この記事でわかること

  • ABMとインバウンドマーケティングの関係性
  • ICP(理想顧客プロファイル)の定義方法とHubSpotでの設定
  • ターゲットアカウントの選定基準と登録手順
  • アカウントレベルのエンゲージメント追跡
  • ABMダッシュボードの構築と活用
  • 購買委員会(Buying Committee)の役割管理

本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。

ABMとインバウンドマーケティングの関係

ABM(Account-Based Marketing)とインバウンドマーケティングは対立する概念ではなく、補完関係にあります。HubSpotでは両方のアプローチを統合的に運用できる点が大きな強みです。

HubSpot取引ボード(ABM進捗管理)

比較表

項目インバウンドマーケティングABM
アプローチ広く集客 → 絞り込み最初から絞り込み → 深掘り
ターゲット個人(コンタクト)企業(アカウント)
KPIリード数、MQL数ターゲットアカウントのエンゲージメント
コンテンツ汎用的な教育コンテンツ企業固有のパーソナライズコンテンツ
適する商材月額〜数十万円の中単価商材年額数百万円以上の高単価商材
HubSpotの機能ブログ、フォーム、ワークフローターゲットアカウント、ABMダッシュボード

Terminus社の調査によれば、ABMを導入した企業の87%がインバウンドマーケティングと併用しており、「どちらか一方」ではなく「両方を使い分ける」のが現代のBtoBマーケティングの主流です。

ICP(理想顧客プロファイル)の定義

ICPを構成する要素

HubSpot会社一覧(ターゲットアカウント)

ICPの定義は、既存の優良顧客のデータを分析することから始めます。以下の要素を整理します。

カテゴリ項目
企業属性業種SaaS、製造、コンサルティング
企業属性従業員数50〜500名
企業属性年商5億〜50億円
企業属性地域東京、大阪、名古屋
組織特性部門マーケティング部門が存在する
組織特性決裁プロセスCxOレベルの承認が必要
課題ビジネス課題リード獲得の効率化、CRMの統合
テクノロジー使用ツールSalesforce、Excel管理からの移行

HubSpotでICPを設定する手順

  1. 「コンタクト」→「ターゲットアカウント」→「ICP」 を開く
  2. ICP Tierの条件を設定する(業種・従業員数・年商など)
  3. HubSpotのAI推奨機能が、既存顧客データに基づいてICP条件を提案(Marketing Hub Professional以上)
  4. 推奨条件をレビューし、自社のビジネス判断で調整
  5. ICPの条件を確定し保存

HubSpotのBreeze AIを活用すると、過去の受注データを分析し、ICPに適合する企業の特徴を自動的に抽出してくれます。たとえば「従業員数100〜300名のIT企業が最も受注率が高い」といったインサイトが得られます。

ターゲットアカウントの設定と管理

ターゲットアカウントの登録方法

HubSpotでターゲットアカウントを指定するには、会社レコードの「ターゲットアカウント」プロパティを「はい」に設定します。登録方法は3つあります。

  1. 手動設定: 会社レコードを開き、「ターゲットアカウント」をオンにする
  2. 一括インポート: CSVファイルで「ターゲットアカウント = はい」の列を含めてインポート
  3. ワークフロー自動化: ICP条件に合致する会社を自動的にターゲットアカウントに設定

ターゲットアカウントの推奨数

ABMの効果を最大化するには、ターゲットアカウントの数を適切にコントロールする必要があります。

チーム規模推奨ターゲットアカウント数理由
営業1〜3名20〜50社一人あたり10〜20社に注力
営業4〜10名50〜200社チーム全体でカバー
営業11名以上200〜500社Tier分けで優先度管理

ターゲットアカウント数が多すぎると、各アカウントへのアプローチが薄くなり、ABMの強み(深い関係構築)が失われます。Demandbase社の調査では、ABMの成果が高い企業は1営業あたり平均15社のターゲットアカウントに集中しているとされています。

ターゲットアカウントのTier分け

ターゲットアカウントをさらに3段階のTierに分類し、リソース配分を最適化します。

Tier基準アプローチ方法リソース配分
Tier 1ICPに完全合致 + 購買シグナルあり1:1パーソナライズ60%
Tier 2ICPに合致セグメント別カスタマイズ30%
Tier 3ICPの一部合致プログラマティック(自動化)10%

アカウントレベルのエンゲージメント追跡

エンゲージメントスコア

HubSpotのターゲットアカウント機能では、アカウント(会社)レベルのエンゲージメントを自動的にスコアリングします。個人レベルのスコアだけでなく、「この企業全体として、どれくらい自社に関心を持っているか」を可視化できます。

エンゲージメントスコアは以下の要素で構成されます。

  • ウェブサイト訪問者数(同一企業ドメインからのアクセス数)
  • メール開封・クリック数(企業に紐づくコンタクト全体の合計)
  • フォーム送信数
  • ミーティング予約数
  • 通話・メモなどの営業アクティビティ数

エンゲージメントの推移分析

ターゲットアカウントのエンゲージメント推移を時系列で追跡することで、以下の判断が可能になります。

  • エンゲージメント急上昇: 購買検討が活性化している可能性 → 営業アプローチの好機
  • エンゲージメント横ばい: ナーチャリングコンテンツの見直しが必要
  • エンゲージメント低下: 競合に流れている可能性 → 緊急フォロー

購買委員会(Buying Committee)の管理

購買委員会とは

BtoBの高単価商材では、意思決定が一人で行われることはほとんどありません。複数の関係者(購買委員会)が関与し、それぞれ異なる視点で導入を検討します。HubSpotでは、各コンタクトに「購買役割(Buying Role)」を割り当てることで、購買委員会の構成を管理できます。

購買役割の種類

役割定義アプローチのポイント
意思決定者(Decision Maker)最終承認権限を持つROI・経営インパクトの訴求
予算管理者(Budget Holder)予算配分の権限を持つコスト対効果・投資回収期間
チャンピオン(Champion)社内推進者・味方社内説得用の資料提供
インフルエンサー(Influencer)間接的に影響力を持つ専門的なデモ・事例共有
エンドユーザー実際に使用する人操作性・導入のしやすさ
ブロッカー(Blocker)導入に反対する人懸念の解消・代替案の提示

HubSpotでの購買役割の設定

  1. コンタクトレコードを開く
  2. 関連する会社レコードとのアソシエーションを確認
  3. 「購買役割」プロパティに該当する役割を設定
  4. ターゲットアカウント画面で、購買委員会の全体像を確認

購買委員会のカバー率目標

ABMの成功には、ターゲットアカウントの購買委員会メンバー全員にリーチすることが重要です。

  • 最低ライン: 意思決定者 + チャンピオンの2名にリーチ
  • 推奨ライン: 購買委員会の4名以上にリーチ
  • 理想ライン: 全役割にリーチ + 定期的なエンゲージメント維持

6sense社のデータによれば、購買委員会の4名以上にリーチしている商談は、1名のみの商談と比較して受注率が3.2倍高いとされています。

ABMダッシュボードの構築

推奨するABMレポート

レポート名表示形式目的
ターゲットアカウント概要数値カード全体のアカウント数・エンゲージメント平均
Tier別エンゲージメント棒グラフTier間のエンゲージメント差を可視化
購買委員会カバー率ゲージ各アカウントの意思決定者へのリーチ状況
アカウント別パイプラインテーブルターゲットアカウントの取引進捗一覧
エンゲージメントトレンド折れ線グラフ月次のエンゲージメント推移

HubSpotには、ABM専用のダッシュボードテンプレートが用意されています。「レポート」→「ダッシュボード」→「新規作成」→「ABM」 を選択すると、ABMに最適化されたレポートが自動配置されたダッシュボードが生成されます。

よくある質問(FAQ)

Q1: ターゲットアカウント機能はどのプランで使えますか?

ターゲットアカウント機能は、Marketing Hub Professional以上、またはSales Hub Professional以上で利用できます。ABMダッシュボードテンプレートやAIによるICP推奨機能もProfessional以上で利用可能です。無料プランやStarterプランでは、手動でのターゲットアカウント管理(プロパティの設定)のみ可能です。

Q2: ターゲットアカウントの数に上限はありますか?

HubSpotではターゲットアカウントの数に技術的な上限はありません。ただし、ABMの効果を最大化するにはチーム規模に応じた適切な数に絞ることが重要です。全ての会社をターゲットアカウントに設定してしまうと、ABMの「集中投資」という本来の目的が失われます。

Q3: ABMとリードスコアリングは併用すべきですか?

はい、ABMとリードスコアリングの併用を強く推奨します。ABMはアカウントレベル(企業単位)の優先度を決定し、リードスコアリングはコンタクトレベル(個人単位)の優先度を決定します。「ターゲットアカウントに属する高スコアのコンタクト」が、最も優先的にフォローすべきリードです。

Q4: ABMの効果測定にはどの指標を使うべきですか?

ABMの効果測定では、従来のリード数ベースのKPIではなく、アカウントベースの指標を使用します。具体的には、ターゲットアカウントからの商談創出数、ターゲットアカウントの受注率、ターゲットアカウントの平均取引額、購買委員会のカバー率などが主要な指標です。HubSpotのABMダッシュボードでこれらを一元的に監視できます。


カテゴリ: HubSpot機能ガイド | HubSpot


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。