「攻めのDX」経営ガイド|守りのIT投資から売上を生むDXへ転換する方法

  • 2026年3月23日
  • 最終更新: 2026年4月25日
この記事の結論

攻めのDXと守りのDXの明確な違いを解説します。日本企業が「守り」に偏る3つの構造的原因を解説します。

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpot導入、AI活用、CRM整備、業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


攻めのDXと守りのDXの明確な違いを解説します。日本企業が「守り」に偏る3つの構造的原因を解説します。

日本企業のIT投資の約8割が「守り」に分類されています。基幹システムの維持管理、セキュリティ対策、老朽化したシステムの更新。これらは事業を継続するために不可欠ですが、新たな売上や競争優位を生み出すものではありません。

経済産業省が「DXレポート」で指摘した「2025年の崖」は、まさにこの守りのIT投資が経営資源を圧迫し、攻めの投資に回せないという構造的な問題を示しています。

CRMを「顧客データを保管する場所」として使うか、「売上を生み出す成長エンジン」として活用するか。この違いこそが、守りのDXと攻めのDXの本質的な差です。

この記事では、守りのIT投資から脱却し、売上を生む「攻めのDX」へ転換する具体的な方法を解説します。


この記事でわかること

DX投資の社内稟議を通したいDX推進担当者・情報システム部門の方に向けた記事です。

  • 攻めのDXと守りのDXの明確な違い — ここで強調すべきは、守りのDXを否定しているのではないということです。
  • 日本企業が「守り」に偏る3つの構造的原因 — 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、IT予算の約70%がシステムの運用・保守に費やされています。
  • 攻めのDXに転換する5つのアプローチ — 最も着手しやすく、効果が見えやすい攻めのDXは「顧客体験のデジタル化」です。
  • 先進企業の「攻めのDX」成功事例 — 既存のサプライチェーンとデジタルマーケティングを組み合わせた攻めのDXです。
  • 自社のDXポートフォリオを見直す方法 — まず、現在のIT・DX関連投資を全て洗い出し、「守り」と「攻め」に分類します。

守りのIT投資から売上を生むDXへ転換する方法を体系的に整理しました。この記事を読むことで、「攻めのDX」経営ガイドの全体像を理解し、自社で実践するための具体的な知識が得られます。


攻めのDXと守りのDXの違い

定義と比較

観点 守りのDX 攻めのDX
目的 コスト削減・業務効率化 売上拡大・新規事業創出
対象 社内業務プロセス 顧客接点・ビジネスモデル
投資判断 ROI(コスト削減額) 事業成長への貢献度
リスク 低(既存業務の改善) 中〜高(新しい取り組み)
成果の出方 短期(半年〜1年) 中長期(1〜3年)
推進主体 IT部門・管理部門 事業部門・経営層
具体例 ペーパーレス化、ERP導入 EC展開、データ活用サービス

守りと攻めは「二者択一」ではない

ここで強調すべきは、守りのDXを否定しているのではないということです。守りの基盤があってこそ攻めのDXが機能します。問題は、守りに偏りすぎて攻めの投資ができない状態が続いていることです。

理想的な投資配分は「守り:攻め=6:4」から段階的に「5:5」へ移行し、最終的には「4:6」を目指すことです。


日本企業が「守り」に偏る3つの構造的原因

原因1:レガシーシステムの重荷

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、IT予算の約70%がシステムの運用・保守に費やされています。2000年代に導入した基幹システムが老朽化し、その維持管理だけで予算が消える構造です。

原因2:リスク回避の意思決定文化

攻めのDXには「失敗するかもしれない」投資が含まれます。しかし、日本企業の多くは「確実にリターンが見込める投資」しか承認されない意思決定プロセスを持っています。

原因3:DXの推進主体がIT部門に閉じている

攻めのDXは顧客体験や事業モデルに関わるため、事業部門が主導すべきです。しかし多くの企業でDXがIT部門に任されており、結果として「社内システムの改善」に終始してしまいます。


攻めのDXに転換する5つのアプローチ

アプローチ1:顧客体験の再設計から始める

最も着手しやすく、効果が見えやすい攻めのDXは「顧客体験のデジタル化」です。

施策 内容 期待効果 投資規模
CRM導入・活用 顧客データの統合と営業プロセスの可視化 商談成約率の向上
MA(マーケティング自動化) リード獲得から育成までの自動化 リード獲得コスト削減
カスタマーポータル 顧客向けセルフサービス基盤の構築 顧客満足度向上・問い合わせ削減 中〜大
データ分析基盤 顧客行動データの分析と施策最適化 LTV向上・解約率低減

CRMを成長エンジンとして設計し、自社のビジネスに合った形で顧客体験を変革することが、攻めのDXの最も確実な入口です。

アプローチ2:データマネタイゼーション

自社が保有するデータを新たな収益源に変えるアプローチです。製造業であれば設備の稼働データ、小売業であれば購買データなど、事業活動で蓄積されるデータには大きな価値があります。

アプローチ3:プラットフォーム型ビジネスへの進化

自社の強みをプラットフォーム化し、エコシステムの中心に位置するモデルへの転換です。

アプローチ4:サブスクリプション・リカーリングモデルへの転換

製品の販売(売り切り)からサービスの継続提供(サブスクリプション)へのビジネスモデル転換です。デジタル技術がこの転換を可能にします。

アプローチ5:AI・自動化による生産性の飛躍的向上

守りのDXで削減したコストと人的リソースを、攻めの活動に再配分するアプローチです。

段階 取り組み 解放されるリソース 攻めへの再配分先
第1段階 定型業務のRPA化 事務作業時間の30% データ分析・企画業務
第2段階 AI予測・レコメンド導入 判断業務の一部 顧客対応・新規開拓
第3段階 業務プロセス全体の自動化 運用工数の50% 新規事業開発

先進企業の「攻めのDX」成功事例

ワークマン:データ活用で「作業服」から「アウトドア」へ

ワークマンは顧客購買データの分析から「作業服ユーザー以外の潜在需要」を発見し、「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」という新業態を創出しました。既存のサプライチェーンとデジタルマーケティングを組み合わせた攻めのDXです。

ミスミ:「meviy」で製造業のEC化を実現

ミスミは金型部品のオーダーメイド製造において、3D CADデータをアップロードするだけで即座に見積もり・発注できるプラットフォーム「meviy」を開発しました。従来2週間かかっていた見積もりプロセスを数秒に短縮し、製造業の購買体験を根本から変革しています。

日立製作所:Lumadaで「モノ売り」から「コト売り」へ

日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を中核に、製品販売からソリューション提供へとビジネスモデルを転換しました。工場の稼働データ分析、鉄道の予防保全、エネルギーマネジメントなど、データを起点とした価値提供型ビジネスを展開しています。

丸井グループ:「売る」から「共創する」小売りへ

丸井グループは、従来型の百貨店モデルから「D2Cブランドとの共創プラットフォーム」へと転換を進めています。売場をD2Cブランドの体験の場として提供し、フィンテック(エポスカード)との組み合わせで顧客データ基盤を構築。デジタルとリアルを融合した新しい小売モデルを実現しています。


自社のDXポートフォリオを見直す方法

ステップ1:現在のDX投資を分類する

まず、現在のIT・DX関連投資を全て洗い出し、「守り」と「攻め」に分類します。

分類 具体的な投資項目 金額 比率
守り(維持) 基幹システム運用保守
守り(改善) 業務効率化ツール導入
攻め(既存強化) CRM活用・MA施策
攻め(新規創出) 新サービス開発・PoC

ステップ2:攻めの投資比率の目標を設定する

3年計画で攻めの投資比率を段階的に引き上げる目標を設定します。

ステップ3:守りの投資を効率化して原資を作る

クラウド移行によるインフラコスト削減、SaaS活用による開発・保守コスト削減など、守りの投資を効率化して攻めの原資を確保します。

小さく始めて成果を出し、その成果を根拠に次の投資を獲得するサイクルを回すことが、攻めのDXへの転換を持続可能にします。


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まとめ

攻めのDXへの転換は、日本企業が国際競争力を維持・強化するために避けられない課題です。

重要なポイントを振り返ります。

  • 攻めのDXは「売上拡大・新規事業創出」を目的とし、守りのDXは「コスト削減・業務効率化」を目的とする
  • 日本企業が守りに偏る原因は「レガシーの重荷」「リスク回避文化」「IT部門任せ」の3つ
  • 攻めへの転換は顧客体験の再設計から始めるのが最も着手しやすい
  • 守りの効率化で原資を作り、攻めの投資比率を段階的に引き上げる
  • スモールスタートで成功実績を作り、組織の信頼を得ながらスケールさせる

CRMを単なるデータベースではなく成長のエンジンとして活用する。この発想の転換こそが、攻めのDX経営の出発点です。

DX経営の全体戦略については経営DX戦略ガイドをご覧ください。攻めのDXの基盤となるCRM活用についてはHubSpot完全ガイドで詳しく解説しています。


FAQ

Q. 攻めのDXに取り組む最適なタイミングはいつですか?

A. 守りの基盤がある程度整った段階です。ただし「完璧に整ってから」を待つ必要はありません。守りの効率化と攻めの小規模実験を並行して進めるのが現実的です。

Q. 攻めのDXに必要な人材はどう確保すべきですか?

A. 技術人材の採用だけでなく、事業を理解したDX人材の育成が重要です。外部のコンサルティングパートナーと連携しながら、社内にナレッジを蓄積していくアプローチが効果的です。

Q. 攻めのDXの失敗を経営層にどう説明すればよいですか?

A. 事前に「探索的投資枠」として予算を確保し、失敗も含めた学習プロセスとして報告する仕組みを作ります。重要なのは「失敗から何を学び、次にどう活かすか」を明示することです。

Q. BtoB企業でも攻めのDXは有効ですか?

A. はい、むしろBtoB企業こそ攻めのDXの恩恵が大きい領域です。営業プロセスのデジタル化、顧客データ活用による提案精度向上、セルフサービスポータルの構築など、顧客体験を変革する余地が大きいからです。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。