ABM(アカウントベースドマーケティング)は、ターゲット企業を絞り込み、営業とマーケが一体となって受注率を高める戦略だ。7つのステップで体系的に設計することで再現性が生まれる。
ABM(アカウントベースドマーケティング)の概念は理解していても、「具体的にどう戦略を立てればいいのか」「営業チームとどう連携すればいいのか」で悩む企業は少なくありません。ABMは従来のリードベースマーケティングとは根本的にアプローチが異なるため、戦略設計の段階で正しいフレームワークを持つことが成功の鍵を握ります。
ABM戦略の7ステップ全体像に取り組む企業が増えていますが、具体的な進め方で迷うケースは少なくありません。
ABMで成果を出している企業に共通するのは、「営業とマーケティングが同じ目標に向かって協働している」ことです。両部門が別々のKPIを追いかけている状態では、ABMの本来の力を引き出すことはできません。組織横断のアライメント(整合性)こそが、ABMの最大の成功要因です。
本記事では、ABM戦略を7つのステップで体系的に解説します。各ステップで「何を決め、誰が動き、どう測定するか」を具体的にお伝えしますので、そのまま自社の戦略策定に活用していただけます。
本記事は「BtoB広告運用の完全ガイド|8つの手法と費用対効果を最大化する戦略」シリーズの一部です。
この記事でわかること
- ABM戦略を構築する7つのステップの全体像 — HubSpotはABM戦略の実行に必要な機能を一つのプラットフォームで提供しています。
- ICP(理想顧客プロファイル)の設計方法 — ICPは「自社にとって最も価値のある企業の共通特徴」を言語化したものです。
- ターゲットアカウントリストの作り方と優先順位付け — ICPに基づいて、具体的な企業リストを作成し、優先度を付けます。
- アカウント別パーソナライゼーションの実践手法 — ターゲットアカウントごとに、どんなメッセージを、どのチャネルで、誰に届けるかを設計します。
- マルチチャネルでのアカウント攻略アプローチ — ターゲットアカウントには複数チャネルから一貫したメッセージを届けます。
- 営業×マーケティング連携を成功させる仕組み — 少人数でも成果を出せる体制づくりのポイントを実践的に解説します。
- ABMの効果測定と改善サイクルの回し方 — 期待できる効果と成果を最大化するための条件を具体的にお伝えします。
営業・CRMの取り組みを検討されている方に、
ABM戦略の7ステップ全体像
ABM戦略は以下の7ステップで構築します。ステップ1〜3が「計画フェーズ」、ステップ4〜5が「実行フェーズ」、ステップ6〜7が「測定・改善フェーズ」です。
この領域に関心がある方にはABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基礎から実践まで徹底解説もおすすめです。
| ステップ |
内容 |
主担当 |
所要期間目安 |
| 1 |
ICP(理想顧客プロファイル)の定義 |
マーケ×営業 |
1〜2週間 |
| 2 |
ターゲットアカウントリストの作成 |
マーケ×営業 |
1〜2週間 |
| 3 |
アカウント別パーソナライゼーション設計 |
マーケ |
2〜3週間 |
| 4 |
マルチチャネル施策の実行 |
マーケ×営業 |
継続 |
| 5 |
営業連携とハンドオフ設計 |
営業×マーケ |
継続 |
| 6 |
効果測定とKPIモニタリング |
マーケ |
月次 |
| 7 |
改善と拡大 |
マーケ×営業 |
四半期 |
ステップ1: ICP(理想顧客プロファイル)を定義する
ICPは「自社にとって最も価値のある企業の共通特徴」を言語化したものです。過去の受注データを分析し、以下の観点から定義します。
具体的な実践方法はABMツール比較10選で詳しく解説しています。
ICP設計のフレームワーク
フィルモグラフィック(企業属性):
- 業界・業種(SIC/NAICSコード)
- 企業規模(売上高・従業員数)
- 所在地(本社・拠点)
- 成長率・資金調達状況
テクノグラフィック(技術環境):
- 利用中のツール・システム
- IT投資の傾向
- デジタル成熟度
ビヘイビオラル(行動特性):
- 過去の購買パターン
- 情報収集チャネル
- 意思決定プロセス
ICP策定の実践手順
- 受注データを抽出: 過去2〜3年の受注企業リストをCRMから出力
- 高LTV企業を特定: 受注金額×継続率×アップセル実績で上位20%を抽出
- 共通特徴を分析: 上位企業の業界・規模・課題・導入背景の共通点を整理
- ネガティブプロファイルも定義: 「解約率が高い企業」「商談が長期停滞した企業」の共通特徴も把握
- 営業チームの定性情報を加味: データだけでなく、営業現場の肌感覚も反映
ステップ2: ターゲットアカウントリストを作成する
ICPに基づいて、具体的な企業リストを作成し、優先度を付けます。
この点についてはMA(マーケティングオートメーション)導入の教科書が参考になります。
Tier分けの基準
| Tier |
対象数 |
基準 |
アプローチ |
| Tier 1 |
10〜30社 |
ICPに完全合致+大型案件の可能性 |
1to1の完全カスタマイズ |
| Tier 2 |
30〜100社 |
ICPにほぼ合致+中型案件の可能性 |
セグメント別カスタマイズ |
| Tier 3 |
100〜500社 |
ICPの一部合致+育成対象 |
テクノロジー活用の自動化 |
リスト作成に使える情報源
- CRMの既存データ(過去の商談・失注・休眠顧客)
- インテントデータ(関連トピックを検索している企業)
- 業界データベース(帝国データバンク、SPEEDA等)
- 営業チームのウィッシュリスト
- 展示会・セミナーの来場者データ
- 競合の導入事例ページ
リスト策定会議の進め方
営業とマーケティングの合同会議で、以下のアジェンダで議論します。
- ICPの確認と合意
- Tier 1候補企業のノミネーション(営業各人が3〜5社提案)
- 各候補のスコアリングと優先順位付け
- Tier 2・3の基準確認とリスト確定
- 各アカウントの担当営業のアサイン
ステップ3: アカウント別パーソナライゼーション設計
ターゲットアカウントごとに、どんなメッセージを、どのチャネルで、誰に届けるかを設計します。
パーソナライゼーションの4レベル
| レベル |
内容 |
工数 |
適用Tier |
| L1: 業界カスタマイズ |
業界別の課題・事例を反映 |
低 |
Tier 3 |
| L2: 企業規模カスタマイズ |
規模に応じたソリューション提案 |
低〜中 |
Tier 2-3 |
| L3: 企業固有カスタマイズ |
企業の経営課題・ニュースに基づく提案 |
中〜高 |
Tier 1-2 |
| L4: 個人カスタマイズ |
キーパーソンの関心・経歴に基づく提案 |
高 |
Tier 1 |
コンテンツマッピング
各アカウントの検討フェーズに応じて、提供するコンテンツを設計します。
| フェーズ |
コンテンツ例 |
目的 |
| 認知 |
業界レポート、市場トレンド記事 |
課題の気づき |
| 興味 |
導入事例(同業種)、比較ガイド |
解決策の理解 |
| 検討 |
ROI計算ツール、デモ動画 |
導入効果の具体化 |
| 評価 |
提案書、カスタムデモ |
意思決定の支援 |
ステップ4: マルチチャネル施策を実行する
ターゲットアカウントには複数チャネルから一貫したメッセージを届けます。
ABMで活用する主要チャネル
| チャネル |
施策 |
効果 |
| LinkedIn広告 |
企業名指定広告、役職ターゲティング |
認知・興味喚起 |
| パーソナライズドメール |
企業課題に特化したメール |
興味・検討促進 |
| コンテンツマーケティング |
業界特化ブログ、ホワイトペーパー |
信頼構築 |
| ウェビナー・イベント |
業界限定セミナー、ラウンドテーブル |
関係深化 |
| ダイレクトメール |
パーソナライズされた郵送物 |
注目獲得 |
| 営業アウトリーチ |
電話・メール・SNS経由のコンタクト |
商談化 |
ポイントは「同じアカウントに、異なるチャネルから、一貫したストーリーで接触する」ことです。チャネル間のメッセージがバラバラにならないよう、コンテンツカレンダーで管理しましょう。
ステップ5: 営業連携とハンドオフを設計する
ABMの最大の差別化ポイントは、営業とマーケティングの緊密な連携です。
連携のための仕組み
共有すべき情報:
- アカウントのエンゲージメントスコア(HubSpotで自動計算)
- キーパーソンのアクティビティ(メール開封、コンテンツ閲覧、サイト訪問)
- アカウントのバイイングシグナル(価格ページの閲覧、デモ動画の視聴など)
定例ミーティングの設計:
| 頻度 |
内容 |
参加者 |
| 週次 |
Tier 1アカウントの進捗レビュー |
営業担当+マーケ担当 |
| 月次 |
全ターゲットアカウントの状況レビュー |
営業マネージャー+マーケマネージャー |
| 四半期 |
ABM戦略全体のレビューと次期計画 |
営業部長+マーケ部長+経営層 |
ハンドオフの基準
マーケからの営業ハンドオフは、以下のようなシグナルに基づいて判断します。
- エンゲージメントスコアが一定閾値を超えた
- 価格ページやデモページを複数回閲覧した
- ホワイトペーパーを3回以上ダウンロードした
- ウェビナーに参加した
- 問い合わせフォームから連絡があった
ステップ6: 効果測定とKPIモニタリング
ABMの効果測定は、従来のMQL数ではなく、アカウント単位の指標で行います。
ABMダッシュボードの構成
| カテゴリ |
KPI |
計測頻度 |
| リーチ |
ターゲットアカウントへの広告インプレッション数 |
週次 |
| エンゲージメント |
アカウントエンゲージメントスコア、サイト訪問回数 |
週次 |
| カバレッジ |
アカウント内の接触済みキーパーソン数 |
月次 |
| パイプライン |
ABM経由の商談数・パイプライン金額 |
月次 |
| 受注 |
ABM経由の受注数・受注金額・受注率 |
四半期 |
| ROI |
ABMプログラム全体のROI |
四半期 |
ステップ7: 改善と拡大
四半期ごとに以下の観点で振り返り、戦略を改善します。
振り返りチェックリスト:
- ICPの定義は正しかったか(受注企業がICP通りか)
- ターゲットリストの精度は十分だったか
- パーソナライゼーションのレベルは適切だったか
- チャネルミックスの配分は最適だったか
- 営業×マーケの連携は機能していたか
- KPIの目標値は現実的だったか
改善が確認できたら、ターゲットアカウント数を段階的に拡大していきます。
HubSpotでABM戦略を実装する
HubSpotはABM戦略の実行に必要な機能を一つのプラットフォームで提供しています。
- ターゲットアカウントプロパティ: アカウントのTier・ステージ・優先度を管理
- ABMダッシュボード: ターゲットアカウントのエンゲージメント状況を一覧表示
- LinkedIn広告連携: ターゲットリストを直接LinkedIn広告に同期
- ワークフロー: エンゲージメントスコアに基づく営業通知の自動化
- レポート: ABM経由のパイプライン・受注の貢献度を可視化
HubSpotで実現するABM戦略の立て方7ステップ
ABM戦略の立て方7ステップを実務に落とし込むには、CRMツールの活用が不可欠です。詳しくは「HubSpotのABM機能で実践するアカウントベースドマーケティング|ターゲットアカウント設定からレポートまで」で解説しています。
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まとめ
- 1. ICP定義: 受注データから理想の顧客像を明確化する 2. リスト作成: Tier分けでターゲットを優先順位付けする 3. パーソナライゼーション: アカウントの課題に応じたコンテンツを設計する 4. マルチチャネル実行: 複数チャネルから一貫したメッセージを届ける 5. 営業連携: エンゲージメントデータに基づくハンドオフを設計する 6. 効果測定: アカウント単位のKPIで成果を可視化する 7. 改善・拡大: 四半期ごとに振り返り、段階的にスケールさせる
- 最も重要なのは、営業とマーケティングが「同じターゲットリストを見て、同じ目標を追いかける」体制を作ることです
- HubSpotのABM機能を活用すれば、この連携をデータドリブンに実現できます
ABM戦略の設計や営業×マーケ連携の仕組みづくりにお悩みの方は、HubSpotゴールドパートナーのStartLinkにご相談ください。貴社のビジネスモデルに最適なABM戦略の策定から、HubSpotを活用した実装・運用までトータルでサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
Q1. ABM戦略の立て方7ステップとは何ですか?
ABM戦略の立て方7ステップとは、企業の業務効率化や成果向上を目的とした取り組み・手法のことです。本記事で解説している通り、適切な設計と運用が成功の鍵となります。導入前に自社の課題を明確にし、段階的に取り組むことが推奨されます。
Q2. ABM戦略の7ステップ全体像で最も重要なポイントは何ですか?
最も重要なのは、明確な目標設定とKPIの定義です。ゴールが曖昧なまま施策を進めると、効果測定ができず改善サイクルが回りません。まず「何を達成したいか」を具体的な数値で定義し、そこから逆算して施策を設計することが成功への近道です。
Q3. ABM戦略の立て方7ステップを始める際の最初のステップは?
最初のステップは現状分析です。自社の課題を洗い出し、優先順位をつけたうえで、最もインパクトの大きい領域から着手します。いきなり全体を変えようとせず、小さく始めて成功体験を積み重ねるアプローチが効果的です。HubSpotなどのツールを活用すれば、データに基づいた意思決定が可能になります。
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