MAツール比較10選|BtoB企業の規模別の選び方と導入後に成果を出す設計

  • 2026年3月3日
  • 最終更新: 2026年10月20日
この記事の結論

MAツールは、機能表の記号の多さだけでは選べません。CRMと顧客データがつながり、自社の体制で使い続けられるかが選定の軸です。

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MAツールは、機能表の記号の多さだけでは選べません。CRMと顧客データがつながり、自社の体制で使い続けられるかが選定の軸です。

「MAツールを導入したいが、種類が多すぎてどれを選べばよいかわからない」「自社の規模や予算に合ったツールはどれなのか」「導入したのに、結局メール配信にしか使っていない」——MAツールの選定に悩むBtoB企業の担当者は少なくありません。

MAツール(マーケティングオートメーションツール)とは、見込み顧客の情報を集約し、メール配信・スコアリング・ワークフローなどの育成施策を自動化して商談につなげるためのツールです。選ぶときは、機能の数よりも「CRMと顧客データがつながるか」「自社の規模と運用体制で回し続けられるか」を先に判断することをおすすめします。

国内には多くのMAツールがあり、それぞれ機能・料金体系・得意領域が異なります。自社に合わないツールを導入すると、使いこなせずにコストだけがかさむ「MAツール難民」に陥るリスクがあります。本記事では、BtoB企業向けのMAツール10製品の特徴を整理し、企業規模別の考え方と、選定から導入後の運用までの進め方をまとめました。

本記事は「メールマーケティングとは?BtoB企業が成果を出すための基礎知識と実践ガイド」シリーズの一部です。


この記事でわかること

この分野の取り組みを検討されている方に向けて、MAツールを比較・選定するときに押さえたい内容を整理しています。

  • MAツール10製品の得意領域 — HubSpot・Marketo・SATORI・BowNowなど主要製品を、CRMとの関係と向いている企業の観点で比較します。
  • 企業規模別の選び方 — スタートアップから大企業まで、規模ごとに優先したい判断軸と検討候補を示します。
  • 選定で迷わないための7つの基準 — 機能・連携・拡張性・使いやすさ・サポート・総所有コスト・セキュリティで評価する方法を解説します。
  • 導入後に成果を出す進め方 — スモールスタートでの始め方と、属人化させない運用の仕組みづくりを紹介します。

MAツールを比較する前に整理したい「今の管理方法」の限界

比較表を眺める前に、いま顧客情報とメール配信をどこで管理しているかを整理しておくと、選定の軸がぶれにくくなります。

Excel・スプレッドシート管理で起きていること

展示会で集めた名刺リスト、Webの問い合わせリスト、営業が持っている顧客リストが、それぞれ別のファイルで管理されているケースがあります。この状態では、同じ人物の情報が複数のファイルに存在し、どれが最新かわからなくなりがちです。配信停止を希望した人に別リストからメールが届いてしまう、といった事故もファイルの分散から起こります。

また、メール配信の反応やWebサイトの閲覧履歴はスプレッドシートには残らないため、「誰が今検討を進めているのか」を営業が判断できません。結果として、営業は勘や記憶で追客先を選ぶことになり、担当者が変わると引き継ぎができなくなります。MAツールの検討は、こうした手作業と情報の分散をどこまで解消したいかを言葉にするところから始めるのがおすすめです。

MAツールで置き換わるもの・置き換わらないもの

MAツールを入れると、手作業の多くは仕組みに置き換わります。一方で、何を誰にいつ届けるかという設計は人が決める領域として残ります。

業務 Excel・手動管理(Before) MAツール導入後(After)
顧客情報の管理 リストごとに別ファイル、重複や差分が発生 1つのデータベースに集約し、重複を統合
メール配信 担当者が手動でリストを抽出して送信 条件に合う人へ自動でステップ配信
見込み度の判断 営業の勘や記憶に依存 行動履歴とスコアで判断
営業への引き渡し 口頭やチャットで個別に連絡 条件を満たした時点で自動通知・担当割り当て
効果測定 手作業で集計 レポート・ダッシュボードで常時確認
配信内容・シナリオ設計 人が考える 人が考える(ツールは実行を担う)

表の最終行のとおり、配信するコンテンツやシナリオの中身は、どのツールを選んでも自社で考える領域です。ツール選定と並行して、誰が設計と改善を担うのかを決めておくと、導入後に止まりにくくなります。

選定の軸は「CRMとのつながり」と「運用体制」

MAツールは、大きく「CRM一体型」と「CRM連携型」に分けられます。CRM一体型は、マーケティングで集めたリード情報と営業の商談情報が同じデータベースに入るため、リードが商談になり、受注して顧客になるまでを一続きで追えます。CRM連携型は、既存のCRMやSFAと接続して使う前提で、連携設計と保守を自社またはベンダーが担います。

もう1つの軸が運用体制です。高機能なツールほど設定の自由度が高い反面、使いこなすための工数と専門知識を求められます。専任のマーケティング担当者がいるのか、営業が兼任するのかによって、同じツールでも成果の出方は変わります。この2軸を先に決めておくと、次の比較表のどこを見ればよいかがはっきりします。


MAツール10選の比較一覧

ここでは、BtoB企業で検討されることの多いMAツール10製品を一覧で比較します。料金は各社で改定されることがあるため、本記事では金額ではなく、無料プランの有無・CRMとの関係・得意領域に絞って整理しました。最新の料金とプラン内容は、各社の公式サイトで比較してください。

10製品の概要と得意領域

この領域に関心がある方にはマーケティングオートメーション(MA)とは?仕組み・メリット・導入手順を解説もおすすめです。

No. ツール名 提供元 無料プラン CRMとの関係 日本語対応 得意領域
1 HubSpot Marketing Hub HubSpot ○ CRM一体型 ○ CRM・MA・営業・Web・サポートの一元管理
2 Marketo Engage Adobe × 連携型 ○ 大規模リスト管理、アトリビューション分析
3 Account Engagement(旧Pardot) Salesforce × Salesforce CRMと連携 ○ Salesforce CRMとのネイティブ連携
4 SATORI SATORI × 連携型 ○ 匿名リードへのアプローチ
5 BowNow クラウドサーカス ○ 連携型 ○ シンプルな操作での導入
6 SHANON MARKETING PLATFORM シャノン × 連携型 ○ イベント・セミナー管理
7 b→dash データX × 連携型 ○ CDPを内蔵したデータ統合
8 Brevo(旧Sendinblue) Brevo ○ CRM機能を搭載 △ メール配信、SMS連携
9 ActiveCampaign ActiveCampaign × CRM機能を内蔵 × 条件分岐の柔軟なメール自動化
10 Zoho Marketing Automation Zoho × Zoho CRMと連携 ○ Zohoアプリ群との統合

比較表の読み方

一覧表は候補を絞り込むための入口として使い、最終判断はデモやトライアルで行う流れをおすすめします。例えば「メール配信」「スコアリング」といった機能名が同じでも、設定できる条件の細かさや画面の操作感は製品ごとに異なるためです。

絞り込みは、次の順番で進めると迷いにくくなります。

  1. 「CRMとの関係」の列で決める ── 既存のCRMを使い続けるのか、CRMごと入れ替えるのかを決めます。Salesforce CRMを使い続けるならAccount Engagementが有力になり、CRMが未導入ならCRM一体型が候補の中心になります
  2. 「得意領域」の列で絞る ── 自社のマーケティングの主戦場(Web問い合わせ、セミナー、匿名訪問者の育成など)と重なる製品を2〜3本に絞ります
  3. デモで比べる ── その候補だけをデモで比べます

機能を比べるときの観点

機能を比較するときは、「その機能がある・ない」ではなく「自社の業務のどこで使うか」で見るのがポイントになってきます。例えばLP作成やSEO機能は、Webサイトからの問い合わせを主な獲得経路にしている企業には重要ですが、展示会やセミナーが中心の企業では優先度が下がります。

自社で使う場面を書き出し、その場面ごとに「必須」と「あれば良い」に分けておくと、機能の多いツールに引っ張られずに判断できます。必須の機能が1つでも欠けている製品は候補から外し、「あれば良い」機能の差は操作性やサポートと合わせて総合評価する、という分け方がわかりやすくなります。


CRM一体型・エンタープライズ向けのMAツール

ここからは各ツールの特徴を、グループごとに解説します。最初は、CRMとの一体運用やエンタープライズ規模での活用を想定した3製品です。いずれも高機能ですが、向いている企業ははっきり分かれます。

1. HubSpot Marketing Hub

具体的な実践方法はMA運用の成功パターンと失敗パターンで詳しく解説しています。

HubSpot Marketing Hubは、CRM・MA・SFA・Webサイト管理(Content Hub)・カスタマーサービスが1つのプラットフォームで動くオールインワン型の製品です。無料CRMをベースに、Free・Starter・Professional・Enterpriseのプランから必要な機能を段階的に追加できます。

強みは、マーケティングで獲得したリードと営業の商談、受注後の顧客対応が同じデータベースでつながる点です。

UIが直感的で学習コストが抑えやすく、AI機能のBreezeによる自動化や、日本語サポート体制も整っています。

ただし、ワークフローによる本格的な自動化は、Marketing HubではProfessional以上のプランで利用できる機能として提供されています(出典:HubSpot Product & Services Catalog)。無料プランやStarterで始める場合は、フォームとメール配信でリード獲得と接点づくりを固め、ステップ配信やスコアリングの自動化が必要になった段階でProfessionalへの移行を判断する、という進め方が現実的です。

向いている企業: スタートアップ〜中堅BtoB企業。特にCRMが未導入で、一体型を求める企業。

2. Marketo Engage

Marketo Engageは、Adobe Experience Cloudの一部として提供されるエンタープライズ向けのMAツールです。高度なパーソナライゼーションとアナリティクスを強みとしています。

大規模なリスト管理に対応し、どの施策が商談や受注に貢献したかを分析するアトリビューション分析に強みがあります。Adobe製品との連携や、グローバル展開への対応も特徴です。

ただし、設定の自由度が高いぶん、運用には専門知識を持つ担当者やチームを置く体制が前提になります。マーケティング組織がこれから立ち上がる段階では、機能を使い切れずに終わる可能性があるため、運用担当者を確保できるかを判断の分かれ目にするとよいです。

向いている企業: 大企業、グローバル展開企業。マーケティング組織が成熟している企業。

3. Account Engagement(旧Pardot)

Account Engagementは、Salesforce社が提供するBtoB特化のMAツールです。Salesforce CRMとのネイティブ連携が最大の強みです。

BtoB向けに設計された機能に加え、Einstein AIによるスコアリングを備えています。すでに営業部門がSalesforce CRMで商談管理をしている企業であれば、営業データとマーケティングデータを接続しやすい構成です。

ただし、CRM部分はSalesforce側の契約が別途前提になります。Salesforce CRMを使っていない企業がMAだけを目的に選ぶ場合は、CRMも同時に導入する規模の検討になるため、CRM一体型の製品と総所有コストを並べて比べることをおすすめします。

向いている企業: Salesforce CRMを利用中のBtoB企業。


国産MAツールの特徴

国産のMAツールは、日本語のサポート体制や、日本のBtoB商習慣に合わせた機能設計が特徴です。ここではSATORI・BowNow・SHANONの3製品を取り上げます。

それぞれ得意領域が明確なので、自社のマーケティングの中心がどこにあるかで選び分けます。

4. SATORI

SATORIは、匿名リード(Cookieベース)の管理機能が特徴的な国産MAツールです。フォーム入力などで実名化する前の訪問者にもアプローチできます。

匿名リードへのアプローチ機能に加え、ポップアップ・プッシュ通知機能を備え、国産ならではの手厚い日本語サポートを受けられます。Webサイトへの訪問は多いのに問い合わせにつながらない、という課題を持つ企業に適した設計です。

ただし、SATORIは単体では営業の商談管理を担う設計ではないため、営業側のCRM・SFAとの連携方法を事前に決めておくと運用がスムーズです。匿名訪問者の育成が主目的なら有力な候補になり、商談管理まで1つにまとめたいならCRM一体型と比べる、という判断になります。

向いている企業: 匿名リードの実名化に注力したい中堅BtoB企業。

5. BowNow

BowNowは、クラウドサーカス社が提供する国産MAツールです。無料プランから始められ、シンプルなUIが特徴です。

無料プランで基本機能を利用でき、操作がシンプルなため導入のハードルが低い点が強みです。国産ツールとして日本語サポートも充実しています。

ただし、元の比較ではワークフローやレポート、API連携は基本機能にとどまる位置づけです。まずMAを試したい段階には向いていますが、条件分岐の多いシナリオや詳細な分析を行う段階になったら、上位プランや他製品への移行を検討するタイミングと考えてください。

向いている企業: MA未経験の小規模BtoB企業。まず試してみたい企業。

6. SHANON MARKETING PLATFORM

SHANON MARKETING PLATFORMは、シャノン社が提供する国産MAツールです。イベント・セミナー管理に特に強みを持っています。

イベント・セミナー管理機能が充実しており、名刺管理との連携や、BtoBに特化した機能設計が特徴です。申込受付から当日の出欠管理、参加後のフォローまでを1つの流れで管理したい企業に向いています。

ただし、Webサイトからの問い合わせ獲得やSEOを主な獲得経路にしている企業では、強みが活きにくい場面があります。年間のリード獲得のうち、イベント・セミナー経由がどれだけを占めるかを判断材料にすると選びやすくなります。

向いている企業: セミナー・展示会中心のマーケティングを行うBtoB企業。


データ統合型・海外発のMAツール

残る4製品は、データ統合に強いプラットフォームと、海外で開発されたMAツールです。

多チャネル配信やメール自動化に強みがある一方、日本語対応や自社のCRM環境との相性で評価が分かれます。

7. b→dash

b→dashは、データX社が提供するデータマーケティングプラットフォームです。CDP(顧客データプラットフォーム:社内に散らばる顧客データを統合する仕組み)とMAが一体化しています。

ノーコードでのデータ統合に対応し、メール・LINE・SMS・アプリプッシュといった多チャネル配信ができます。複数のシステムに分かれた顧客データをまとめてから施策に使いたい企業に適しています。

ただし、統合するデータの設計に一定の工数がかかるため、データソースが少ない企業では機能を持て余すことがあります。統合したいシステムが複数あるかどうかを、候補に入れるかどうかの分かれ目にするとよいです。

向いている企業: 複数チャネルのデータ統合が必要な中堅〜大企業。

8. Brevo(旧Sendinblue)

Brevoは、フランス発のマーケティングプラットフォームです。メール配信を中心に、CRM・チャット・SMSの機能を提供しています。

無料プランから始められ、メール配信機能が充実しています。SMSやWhatsAppとの連携もあり、海外の顧客と接点を持つ企業にも使いやすい構成です。

ただし、元の比較では日本語対応やスコアリングは限定的な位置づけです。メール配信が主な用途であれば候補になりますが、スコアリングで見込み度を判定して営業に引き渡す運用まで考えている場合は、その機能を持つ製品と並べて評価することをおすすめします。

向いている企業: メール配信中心の小規模〜中規模企業。海外顧客がいる企業。

9. ActiveCampaign

ActiveCampaignは、米国発のMA/CRM統合プラットフォームです。高度なメール自動化が特徴です。

条件分岐を柔軟に組めるメール自動化と、CRM機能の内蔵が強みです。ステップ配信のシナリオを細かく作り込みたい企業に向いています。

ただし、元の比較では日本語対応は非対応の位置づけです。管理画面やサポートが英語中心になるため、社内の運用担当者が英語で設定・問い合わせを進められるかどうかが選定の前提条件になります。

向いている企業: 英語環境で運用できるスタートアップ・中小企業。

10. Zoho Marketing Automation

Zoho Marketing Automationは、Zoho社が提供するMAツールです。Zoho CRMをはじめとするZohoの各種アプリとの連携が強みです。

Zohoのエコシステムと統合でき、CRM連携を進めやすい点が特徴です。すでにZoho CRMや他のZohoアプリを使っている企業であれば、データの接続にかかる工数を抑えやすくなります。

ただし、Zoho製品を使っていない企業では、その強みが活きにくくなります。Zoho CRMを新たに導入するかどうかも含めて、CRMとMAをセットで比較するのが判断しやすい進め方です。

向いている企業: Zoho CRMを利用中、またはMAとCRMをセットで導入したい中小企業。


企業規模別に見るMAツールの選び方

同じツールでも、企業規模や組織体制によって向き・不向きが変わります。ここでは規模ごとに優先したい判断軸と検討候補を整理しました。なお、規模はあくまで目安で、実際には運用担当者の人数や既存のCRM環境のほうが判断に大きく影響します。

スタートアップ・小規模企業

この点についてはMAツールの選び方と比較ポイントが参考になります。

この規模では、専任のマーケティング担当者がいないことが多く、「無料または小さなプランで始められるか」「あとから拡張できるか」を優先します。

検討候補 理由
HubSpot 無料CRMとMAから始め、段階的に拡張できる
BowNow 無料で始められ、操作がシンプル
Brevo メール配信が中心なら必要な機能がそろう

判断の分かれ目は、顧客管理をこれから整えるかどうかです。顧客情報がまだExcelで管理されている段階なら、MAと同時にCRMの土台を作れるHubSpotが候補の中心になります。すでに別のCRMがあり、メールでの接点づくりだけを始めたいならBowNowやBrevoも選択肢に入ります。

中小企業

検討候補 理由
HubSpot CRM一体型で費用対効果を見込みやすく、拡張性がある
SATORI 国産サポートがあり、匿名リードに対応
SHANON セミナー・イベント中心の企業に適する

リードの獲得経路がWeb中心ならHubSpotやSATORI、セミナー中心ならSHANON、というように主戦場で分けると選びやすくなります。

中堅企業

複数の部門がMAのデータを使うようになり、機能・操作性・拡張性のバランスが求められる段階です。

検討候補 理由
HubSpot Professional 機能・操作性・拡張性のバランス
Account Engagement Salesforce CRMを利用中の企業に適する
SATORI 国産で手厚いサポート

この規模では、営業部門がすでに使っているCRMが判断を大きく左右します。Salesforce CRMを継続するならAccount Engagement、CRMごと見直すならHubSpot Professionalを軸に比較する流れが自然です。

大企業

マーケティング組織が成熟し、大規模なリスト管理や高度な分析、グローバル対応が求められる段階です。

検討候補 理由
Marketo エンタープライズ向けの高機能
HubSpot Enterprise CRM一体型での統合管理
Account Engagement Salesforceエコシステムとの連携

大企業では、ツールの機能差よりも、既存システムとの連携範囲と社内の運用体制が成果を分けます。専門チームで高度な分析を回すならMarketo、部門をまたいだデータの一元管理を優先するならHubSpot Enterprise、というように目的で選び分けるのがおすすめです。


MAツール選定の7つの基準

候補を2〜3製品に絞ったら、同じ物差しで比べて最終判断をします。ここでは7つの基準を3つのまとまりに分けて解説し、最後にチェックリストとして整理しました。各基準は「どうなっていればどちらを選ぶか」という判断の分かれ目まで書いています。

基準1〜3:機能要件・CRM連携・拡張性

基準1:必要機能の充足度

自社の業務で使う場面を洗い出し、機能を「必須」と「あれば良い」に分けます。必須の機能が1つでも欠けている製品は候補から外し、残った製品の中で「あれば良い」機能の差を比べます。

基準2:CRM/SFAとの連携性

既存のCRM/SFAとデータを双方向に同期できるかを見ます。双方向に同期できる、またはCRM一体型であれば、営業とマーケティングが同じ情報を見られます。片方向の連携にとどまる場合は、どちらのシステムを正とするか、更新のタイミングをどう揃えるかを運用ルールで決めることになり、その工数も比較に含めます。

基準3:スケーラビリティ

リード数の増加やユーザー追加、機能の追加にプラン変更で対応できるかを見ます。上位プランへ移行するだけで対応できる製品は、スモールスタートとの相性がよいと考えています。規模が大きくなったときに別製品への乗り換えが前提になる場合は、データ移行の手間まで見込んで判断します。

基準4〜5:使いやすさとサポート体制

基準4:UI/UXの使いやすさ

学習コストが高すぎると、設定を触れる人が限られ、運用が停滞します。デモやトライアルでは、実際に運用を担う担当者に「フォームを1つ作る」「メールを1通配信する」「配信結果を見る」という一連の操作を試してもらい、説明書を見ずに完了できたかを比較材料にするのがおすすめです。

基準5:サポート体制

日本語サポートの有無、問い合わせへのレスポンス速度、導入支援プログラムの内容を比べます。社内にMAの経験者がいない場合は、日本語で相談できる窓口や導入支援パートナーがいる製品を優先し、経験者がいる場合は機能面の評価の比重を上げる、という分け方が判断しやすくなります。

基準6〜7:総所有コストとセキュリティ

基準6:総所有コスト(TCO)

ライセンス費用だけでなく、初期設定費用、トレーニング費用、運用工数、連携開発費用を含めて比べます。CRM連携型の場合は連携開発と保守の費用が、エンタープライズ向け製品の場合は運用人員の費用が大きくなりやすいため、複数年で合計した金額で比較すると判断がぶれにくくなります。

基準7:セキュリティ・コンプライアンス

データの保管場所、暗号化、アクセス制御、GDPRや個人情報保護法への対応状況を比べます。自社のセキュリティ規程で求められる項目を先に一覧にし、各社の公開資料やセキュリティシートで満たせない項目がある製品は候補から外す、という順で進めると効率的です。

選定チェックリスト

最終判断の前に、次の表で抜け漏れを点検してください。

点検項目 満たせていない場合の次の行動
必須機能がすべて満たされている 欠けている機能を代替できる手段がなければ候補から外す
既存CRM/SFAとの連携方法が決まっている 双方向同期の可否と、正とするシステムを決める
複数年のTCOを算出している ライセンス以外の費用(設定・研修・運用工数・連携開発)を追加する
無料トライアルまたはデモで操作性を試した 運用担当者本人が基本操作を試す場を設ける
同業種・同規模の導入事例を把握している ベンダーに近い条件の事例を問い合わせる
サポート体制(日本語・レスポンス)を把握している 問い合わせ窓口と導入支援の内容を比べる
セキュリティ要件を満たしている 規程で求める項目を一覧にし、各社の回答を照合する
社内の運用担当者が決まっている 設計・配信・改善の担当者を決めてから契約に進む

HubSpot Marketing Hubを選ぶ場合の考え方

StartLinkはHubSpotの導入・運用支援を専門にしているため、ここではHubSpotを選ぶ場合に押さえたい考え方を整理します。ただし、ここまで見てきたとおり、既存のCRM環境や主なマーケティング施策によっては他の製品が合う場合もあります。HubSpotの強みと、向かないケースの両方を書いておきます。

一気通貫でつながる顧客データ

HubSpotの価値は、「一元管理」「自動化」「可視化」の3つがひとつの基盤の上で動く点にあると考えています。コンタクト(人)・会社・取引(商談)が関連付けられたデータベースになっているため、問い合わせをしたコンタクトが取引になり、受注して顧客になり、請求や継続対応へ進むまでの流れを1つの画面で追えます。

MAの機能だけを見ると他の製品と大きく変わらない部分もありますが、この流れの中で「MAがどこを担うか」を考えると違いが見えてきます。

MAはコンタクトを獲得・育成し、商談化できる状態で営業に渡すところまでを担当し、その後の取引管理や顧客対応はSales HubやService Hubが同じデータを使って引き継ぎます。Excelやチャットに情報が散らばる状態と比べて、過去のやり取りをたどれることが、部門間の連携をしやすくするポイントになってきます。

ワークフローとBreezeによる自動化

ワークフローは、条件に応じてメール配信・プロパティ更新・担当者への通知などを自動で実行する機能です。先に触れたとおり、Marketing HubではProfessional以上のプランで利用できます(出典:HubSpot Product & Services Catalog)。さらにAI機能のBreezeを組み合わせると、文章の内容を判断する処理もワークフローに組み込めます。

次の画面は、問い合わせ内容をAIで判定し、判定結果に応じて分岐したうえでレコードを更新するワークフローの例です。

問い合わせ内容をAI判定して分岐するワークフロー

問い合わせの分類のように、判断基準をルールとして書ける作業はAIに任せやすい領域です。一方で、ライフサイクルステージの定義やシナリオ設計、大型案件へのアプローチ内容、最終的なメール送信の判断は、人が担う領域として残すことをおすすめします。

AIが下書きや分類を行い、人が確認して送る、という役割分担にしておくと、自動化の範囲を広げてもリスクを抑えられます。ワークフローの具体的な設定方法は「HubSpotワークフローの設定方法|通知・メール配信・AI活用・分岐設定を実演で徹底解説」で解説しています。

HubSpotが向かないケース

HubSpotを検討する場合でも、次のケースでは他の製品のほうが合う可能性があります。

ケース 他の選択肢を検討したい理由
Salesforce CRMを継続利用する前提 Account EngagementのほうがCRMとの連携を組みやすい
セミナー・展示会がリード獲得の大半を占める イベント管理に強いSHANONの得意領域と重なる
匿名訪問者の育成が最優先 匿名リードへのアプローチ機能を持つSATORIの得意領域と重なる
Zoho製品で業務基盤を統一している Zohoエコシステムとの統合を優先したほうが連携工数を抑えやすい

また、Marketing Hubでは、メール配信などマーケティング目的で使うコンタクトを「マーケティングコンタクト」として区別し、これが課金の基準になります(出典:HubSpot Product & Services Catalog)。保有するコンタクトが多い企業では、すべてをマーケティングコンタクトにするのではなく、配信対象とする条件を決めてから設定すると、費用の見通しを立てやすくなります。


導入後に成果を出すための進め方

MAツールは、選定よりも導入後の運用体制とシナリオ設計が成果を左右します。ここでは、どのツールを選んだ場合にも共通する進め方を3つに分けて整理します。いきなりすべての機能を使おうとせず、効果が見えやすいところから段階的に広げていくのが基本の考え方です。

スモールスタートで始める範囲を決める

MAツールの機能を一度にすべて立ち上げるのは難しいため、最初に取り組む範囲を絞ることをおすすめします。例えば次の順番で進めると、各段階で何ができていれば次へ進めるかがわかりやすくなります。

段階 取り組む内容 次へ進む目安
1. データの集約 Excelや名刺のリストを取り込み、重複を統合する 顧客情報を1か所で検索できる状態になっている
2. 接点づくり フォームとメール配信を設定し、定期的に情報を届ける 配信と開封・クリックの結果が記録されている
3. 育成の自動化 ステップ配信とスコアリングを設定する 見込み度の高いリードが自動で抽出されている
4. 営業との連携 商談化の条件と引き渡しルールを決め、通知を自動化する 引き渡したリードの商談化状況をレポートで追える

ステップ配信のシナリオ設計は「ステップメールとは?BtoBで成果を出すシナリオ設計と配信のコツ」で詳しく解説しています。

ライフサイクルステージを自社に合わせて定義する

リードが「どの段階にいるか」を表すライフサイクルステージは、MAと営業をつなぐ共通言語です。リード、MQL(マーケティングが有望と判断したリード)、SQL(営業が対応すると判断したリード)、商談、顧客といった段階を、自社のカスタマージャーニーに合わせて定義していくのがポイントになってきます。BtoBとBtoCでは検討の流れが違うように、同じBtoBでも商材や営業体制によって区切り方は変わります。

見落とされやすいのが、失注後の扱いです。失注した商談をそのまま放置せず、ナーチャリングの対象に戻して再度メールで接点を持つ流れを作っておくと、時期を改めて検討が再開したときに商談化の機会をつかめます。このとき、失注理由を価格・競合・製品機能・時期・社内決裁といったカテゴリで記録しておくと、マーケティング側がどのコンテンツを届けるべきかを判断しやすくなります。メールの設計は「リードナーチャリングのメール設計術|BtoBで商談化率を高める配信戦略」も参考にしてください。

人ではなく仕組みで運用を回す

これを防ぐには、個人の力量に頼らず、新しく担当になった人でも引き継げる仕組みを作ることをおすすめします。具体的には、次の3つを運用ルールとして決めておくと効果的です。

  1. ワークフローやリストの名前に「目的」と「対象」を入れる命名ルールを決める
  2. プロパティ(顧客情報の項目)の追加・変更は管理者だけが行えるように権限を設定し、使っていない項目を増やさない
  3. 営業に引き渡す条件と、引き渡し後に営業が入力する必須項目を決め、ステージの移行時に入力されるように設定する

項目や設定を最小限に保つほど、担当者は必要な作業に集中でき、レポートの数字も信頼できるものになります。


よくある質問

MAツールとCRMは別々に導入すべきですか?

可能であれば、CRM一体型のMAツール(HubSpot、Zohoなど)を選ぶのがおすすめです。MAとCRMが別システムの場合、データ連携の設計・保守に工数がかかり、リード情報と商談情報が分断されるリスクがあります。すでにSalesforce CRMを利用中の場合は、Account Engagementとの組み合わせが現実的です。

MAツール導入後、成果が出るまでどのくらいかかりますか?

最初は初期設定とコンテンツの準備に時間を使い、その後リードナーチャリングの効果が少しずつ現れる流れが一般的です。期間は、既存のリードリストの質と量によって大きく変わります。リード数が少ない段階では、ナーチャリングの設計より先に、リードジェネレーション(獲得)施策を優先するのが効果的です。

社内にマーケティング専任者がいなくても運用できますか?

ツールの選び方次第で運用できます。BowNowやHubSpot Starterのようにシンプルな構成から始め、テンプレートやワークフローの自動化を活用すれば、営業担当者が兼任で運用するケースもあります。本格的に成果を出す段階ではコンテンツ制作やスコアリング設計の工数が増えるため、その時点で専任者の配置か外部パートナーの活用を検討するのが現実的です。

比較表に料金が載っていないのはなぜですか?

MAツールの料金やプラン構成は各社で改定されることがあり、記事に金額を載せると古い情報のまま判断してしまうおそれがあるためです。料金は各社の公式サイトで最新の情報を比較し、ライセンス費用だけでなく初期設定・研修・運用工数・連携開発を含めた総所有コストで判断することをおすすめします。


まとめ

MAツールの選定は、自社のマーケティング課題、規模、予算、既存ツール環境を総合的に考慮して行います。本記事の要点は次のとおりです。

  • 10製品の得意領域を把握する — CRMとの関係と主なマーケティング施策で、候補を2〜3製品に絞ります。
  • 企業規模別に判断軸を変える — 小規模では拡張性、中堅以上では既存CRMとの連携と運用体制が判断を左右します。
  • 7つの基準とチェックリストで比べる — 機能・連携・拡張性・使いやすさ・サポート・総所有コスト・セキュリティを同じ物差しで評価します。
  • 導入後は段階的に広げ、仕組みで回す — データの集約から始め、ライフサイクルステージと引き渡しルールを自社に合わせて定義します。

まずは、いま顧客情報がどのファイルやシステムに分かれているかを書き出すことから始めてみてください。そのうえで、次の3ステップで進めると選定が具体的になります。

  1. 自社の業務で使う場面を洗い出し、必須機能と「あれば良い」機能を分けてリストアップする
  2. 候補を2〜3製品に絞り、運用担当者本人が無料トライアルやデモで基本操作を試す
  3. 複数年の総所有コストを比較表にまとめ、運用担当者を決めたうえで社内決裁に進む

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著者情報

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今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。