利益率改善の実践方法|粗利・営業利益率を高める価格・コスト・商品設計の見直し

この記事の結論

粗利・営業利益・経常利益の違いと、それぞれが示す経営の何を表すか。利益率改善で最初に取り組むべき施策の優先順位。

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粗利・営業利益・経常利益の違いと、それぞれが示す経営の何を表すか。利益率改善で最初に取り組むべき施策の優先順位。

「売上は増えているのに、利益が残らない」「原価は下げられない、でも利益率を改善したい」——利益率の改善は、中小企業経営者が最も頭を悩ませる課題のひとつです。

利益率が低いと、売上が増えるほど資金繰りが苦しくなるという逆説が生まれます。忙しくなるのに余裕がなくなる。この状態から抜け出すには、売上を増やす前に利益率の構造を改善することが先決です。

この記事では、粗利・営業利益・経常利益という3つの利益レイヤーごとに、改善施策と優先順位を整理します。数値例を用いた具体的な計算方法も解説します。


この記事でわかること

売上が伸びても利益が残らない構造から脱却するために、粗利・営業利益・経常利益の3層それぞれで取り組むべき改善施策と優先順位を解説します。

  • 粗利・営業利益・経常利益の違いと、それぞれが示す経営の何を表すか — 経常利益率は「営業利益±営業外収支」で決まります。中小企業の場合、営業外収支の大半は支払利息などの金融費用です。
  • 利益率改善で最初に取り組むべき施策の優先順位 — 粗利率の改善が一定水準に達したら、次は営業利益率の改善に取り組みます。
  • 粗利率を改善する3つのアプローチとその効果 — 粗利率(売上総利益率)の改善は、以下の3つの方向性があります。
  • 営業利益率を改善するための固定費コントロール手法 — 利益率改善において、全体の数字だけを見ていても原因の特定が難しいです。
  • CRMデータを使った顧客別・案件別の利益率分析方法 — 利益率改善の施策は、どの利益レイヤーを対象にするかによって内容が大きく変わります。

対象読者: 売上成長に対して利益率の低さに課題を感じている中小企業の経営者・事業責任者


3つの利益レイヤーを理解する

利益率改善の施策は、どの利益レイヤーを対象にするかによって内容が大きく変わります。まず3つの利益の違いを整理しておきます。

利益の階層構造

利益の種類 計算式 意味
売上総利益(粗利) 売上高 − 売上原価 事業の基礎的な収益力
営業利益 粗利 − 販管費 本業での稼ぐ力
経常利益 営業利益 ± 営業外収支 事業全体の収益力
当期純利益 経常利益 − 特別損益 − 税金 最終的な手残り

粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100

たとえば売上高1,000万円、売上原価400万円、販管費500万円の企業の場合:

  • 粗利:600万円(粗利率60%)
  • 営業利益:100万円(営業利益率10%)

この企業が営業利益率を10%から15%に改善するには、売上高を維持したまま50万円のコスト削減か、同じコスト構造で売上高を167万円増やす必要があります。

どの利益レイヤーから改善すべきか

利益率改善の優先順位は「粗利率 → 営業利益率 → 経常利益率」の順です。なぜなら、粗利率が低いと販管費をいくら削っても限界があるためです。まず事業の基礎的な収益構造を改善することが、持続可能な利益率改善の前提です。


粗利率を改善する3つのアプローチ

粗利率(売上総利益率)の改善は、以下の3つの方向性があります。

アプローチ1:価格設定の見直し

最も利益率改善効果が大きいのが、価格の引き上げです。価格を5%引き上げただけで、同じ原価構造でも粗利率が大きく改善します。

たとえば、売上高100万円・原価70万円(粗利率30%)の商品の価格を5%引き上げると:

  • 売上高:105万円
  • 原価:70万円(変わらず)
  • 粗利:35万円(粗利率33.3%)

価格引き上げへの抵抗感が大きい場合は、サービスの付加価値向上(アップセル・クロスセル)によって単価を上げる方法も有効です。

アプローチ2:変動費率の削減

変動費(原材料費・外注費・販売手数料など)の比率を下げることで粗利率を改善できます。主な手法は以下の通りです。

仕入れ単価の見直し(複数社見積もり、数量割引の活用)や、外注比率の最適化(内製化できる工程の特定)が代表的です。サービス業の場合は、人件費の効率(1人当たり売上高)の改善が変動費率削減に直結します。

アプローチ3:ミックス(商品・サービス構成)の最適化

粗利率が高い商品・サービスの売上比率を高めることで、全体の粗利率が改善します。この「ミックス改善」は、値上げや原価削減より取り組みやすいケースが多いです。

まず自社の商品・サービスごとに粗利率を算出し、高粗利商品の比率を高める営業活動を意識的に強化します。CRMで商談データを管理していれば、案件ごとの粗利率を追跡することが可能です。


営業利益率を改善するための固定費コントロール

粗利率の改善が一定水準に達したら、次は営業利益率の改善に取り組みます。営業利益率の改善は「固定費の削減」か「売上高の拡大による固定費の薄まり」のいずれかです。

固定費の分類と削減の優先順位

固定費の種類 削減難易度 アプローチ
SaaSツール費 未使用ツールの解約・プランダウン
広告宣伝費 低〜中 ROI測定→効果の低い媒体の削減
外注費(固定契約) 成果連動型への変更
人件費 生産性向上による実質削減
家賃・設備費 中長期的なダウンサイジング検討

固定費の削減で重要なのは「使っていないが支払い続けているコスト」を特定することです。SaaSツールや固定契約の外注費は、見直しやすいにもかかわらず放置されていることが多い領域です。中小企業庁の調査(2023年度)によれば、中小企業の平均的なSaaSツール契約数は導入から2年で約30%増加しており、使用頻度の低いツールが混在しているケースが多いとされています。

損益分岐点の把握と活用

営業利益率を改善するもう一つのアプローチは、損益分岐点(BEP:Break-Even Point)を把握して、それを上回る売上高を確実に達成することです。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 粗利率

たとえば固定費が月300万円、粗利率が40%の場合:

損益分岐点売上高 = 300万 ÷ 0.4 = 750万円

この数字を把握しておくことで、「今月は損益分岐点を超えているか」を毎月確認できます。


経常利益率の改善

経常利益率は「営業利益 ± 営業外収支」で決まります。中小企業の場合、営業外収支の大半は支払利息などの金融費用です。経常利益率を高めるには、まず営業利益率を改善することが本筋です。


CRMデータを使った顧客別・案件別の利益率分析

利益率改善において、全体の数字だけを見ていても原因の特定が難しいです。「どの顧客・どの案件が利益率を押し下げているか」を特定することが、改善施策の精度を上げる鍵です。

HubSpotのようなCRMを使っている場合、商談ごとの売上金額・原価・粗利を記録し、顧客別・案件タイプ別に粗利率を分析できます。この分析によって、以下のような意思決定が可能になります。

粗利率が著しく低い顧客・案件の特定と、その受注方針の見直し。高粗利率の案件を多く持つ顧客セグメントへの営業リソース集中。低粗利案件の価格交渉や、原価構造の見直し。

CRMは「営業ツール」ではなく、利益率改善のための「経営分析ツール」として活用することで、施策の優先順位が明確になります。

案件別粗利率分析の例

顧客・案件タイプ 売上高 粗利率 課題
大手・長期継続顧客 月200万 25% 価格が固定、原価削減余地あり
中堅・スポット顧客(高粗利) 月100万 55% 高粗利、商談増加を検討
中堅・スポット顧客(低粗利) 月80万 15% 低粗利、価格見直しor終了を検討

まとめ

利益率改善は「粗利率→営業利益率→経常利益率」の順で手を付けるのが鉄則で、上流の粗利率から着手しないと、いくら固定費を削っても成果が出ず疲弊するだけの改善活動になります。粗利率改善のアプローチは「価格設定の見直し」「変動費率の削減」「ミックスの最適化」の3本柱で、特に価格を5%引き上げるだけでも営業利益への波及効果は想像以上に大きいため、真っ先に検討する価値があります。固定費削減については、使っていないSaaSツールや慣性で続いている固定外注費から着手するのが効率的で、損益分岐点を把握しておくと毎月の利益状況を直感的に読めるようになります。CRMデータを使った顧客別・案件別の粗利率分析を仕組み化し、「利益が出る構造」を経営者が設計する姿勢を持つことが、個別の頑張りに頼らない持続的な改善体制につながります。


よくある質問

Q. 粗利率と営業利益率のどちらを優先して改善すべきですか?

A. まず粗利率の改善を優先してください。粗利率が低い状態で固定費を削減しても、構造的な収益性の課題は解決しません。粗利率を改善した上で、固定費のコントロールによって営業利益率を高める順序が基本です。

Q. 値上げをすると顧客が離れてしまうのではないかと心配です。

A. 価格引き上げへの不安は自然な感情ですが、提供する価値に見合った価格設定は長期的な事業継続のために必要です。まず粗利率が低い案件・顧客を特定し、そこから価格の見直しを交渉することが現実的なアプローチです。

Q. 営業利益率の目標値はどう設定すればいいですか?

A. 業種によって異なりますが、中小企業では営業利益率5%以上が一つの目安です。自社の直近3年の推移を確認した上で、業界平均と比較しながら現実的な目標を設定してください。

Q. CRMで顧客別の利益率を分析するには何が必要ですか?

A. 商談ごとに売上金額と原価(外注費・直接人件費など)を入力する運用ルールを整えることが第一歩です。HubSpotであれば、商談にカスタムプロパティを追加することで粗利率を管理できます。


StartLinkのCRM活用による案件別利益率可視化サポート

StartLinkはHubSpotゴールドパートナーとして、CRMと会計データをつなぐ設計支援を行っています。HubSpotの案件オブジェクトに粗利率のカスタムプロパティを設計し、「Sync for freee」でfreeeの実績と突き合わせることで、顧客別・案件別の利益率を営業戦略と並べて見えるようにするご相談を承っています。Claude Codeエージェントを使った利益率レポートの自動化もご提案可能です。原価計算システムの構築、管理会計制度の設計、記帳・決算業務の代行は対応範囲外ですが、「CRMから案件別利益率を見える化して営業判断に使いたい」というご相談はお気軽にどうぞ。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。