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「MAツールを導入したが、ワークフロー機能をどう使えばいいかわからない」「手動でやっている作業をどこまで自動化できるのか知りたい」——MAツールの真価は、ワークフロー(自動化シナリオ)をいかに設計・活用するかにかかっています。しかし、何をどう自動化すべきかがわからず、ワークフロー機能を使いこなせていないBtoB企業は多いのが実情です。
ワークフローとは、「特定の条件が満たされたら、事前に定義したアクションを自動実行する」仕組みです。手作業で行っていたリードのフォロー、セグメント分類、営業への通知などを自動化することで、マーケティングの効率と精度を飛躍的に向上させます。
本記事では、ワークフローの基本概念から、BtoBで自動化すべき5つのシナリオの具体的な設計パターン、設計手順(トリガー→条件→アクション)、そしてHubSpotワークフローの具体例まで、ワークフロー設計の入門知識を体系的に解説します。
この記事でわかること
- MAワークフローの基本概念と構成要素
- BtoBで優先的に自動化すべき5つのシナリオ
- ワークフロー設計の手順(トリガー→条件→アクション)
- HubSpotワークフローの具体的な設定例
- ワークフロー設計で避けるべきアンチパターン
- 効果測定と継続的な改善の方法
MAワークフローの基本概念
ワークフローとは
MAにおけるワークフローとは、「もし〇〇が起きたら、△△を自動実行する」というルールの集合体です。プログラミングの「if-then」ロジックと同じ考え方で、マーケティングプロセスを自動化します。
ワークフローの3つの構成要素
| 構成要素 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| トリガー(Trigger) | ワークフローを開始する条件 | フォーム送信、スコア到達、日付条件 |
| 条件(Condition) | 分岐やフィルタリングの条件 | 業種がIT、スコアが50点以上 |
| アクション(Action) | 実行する処理 | メール送信、プロパティ更新、通知 |
ワークフローの種類
| 種類 | トリガーの起点 | 利用シーン |
|---|---|---|
| コンタクトベース | コンタクトの行動・属性変化 | リードナーチャリング、スコアリング |
| 会社ベース | 会社情報の変化 | ABM(アカウントベースドマーケティング) |
| 取引ベース | 商談の状態変化 | 商談フォロー、失注復活 |
| チケットベース | サポートチケットの変化 | CS対応自動化 |
| 日付ベース | 特定の日付条件 | 契約更新、記念日メール |
BtoBで自動化すべき5つのシナリオ
自動化シナリオの優先順位
| 優先度 | シナリオ | 効果 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 最優先 | ①リードの自動分類+初期フォロー | 工数大幅削減 | 低 |
| 高 | ②リードナーチャリングメールの自動配信 | 商談化率向上 | 中 |
| 高 | ③営業への自動通知+タスク作成 | 対応速度向上 | 低 |
| 中 | ④リードスコアリングの自動更新 | 精度向上 | 中 |
| 中 | ⑤データ整備の自動化 | データ品質維持 | 低〜中 |
シナリオ①: リードの自動分類+初期フォロー
目的: 新規リードを自動分類し、適切な初期フォローを実行する
ワークフロー設計:
[トリガー] フォーム送信(資料DL、問い合わせ等)
↓
[アクション] ライフサイクルステージを「リード」に設定
↓
[条件分岐] フォームの種類は?
├── 資料DL → リードソースを「コンテンツDL」に設定
│ → 資料DLフォローのナーチャリングシナリオに登録
├── 問い合わせ → リードソースを「問い合わせ」に設定
│ → 営業にSlack通知
│ → 営業にフォロータスクを自動作成
└── ウェビナー申込 → リードソースを「ウェビナー」に設定
→ リマインドメールシナリオに登録
↓
[アクション] お礼メールを即時送信
↓
[条件分岐] ターゲットICP(業種+従業員規模)に合致?
├── YES → 「優先リード」プロパティをONに設定
└── NO → 通常のナーチャリングフローへ
設計のポイント:
- フォームの種類によって後続アクションを分岐させる
- ICP判定を自動化し、優先リードにフラグを立てる
- お礼メールは即時配信が鉄則(5分以内が理想)
シナリオ②: リードナーチャリングメールの自動配信
目的: リードの検討段階に応じたメールを自動配信し、商談化を促進する
ワークフロー設計:
[トリガー] 「資料DLフォローシナリオ」リストに登録
↓
[アクション] メール1送信: お礼+関連コンテンツ
↓ 待機: 3日
[条件分岐] メール1を開封した?
├── YES → メール2A送信: 課題深掘りコンテンツ
└── NO → メール2B送信: 件名を変えてメール1を再送
↓ 待機: 4日
[アクション] メール3送信: 導入事例
↓ 待機: 7日
[条件分岐] スコアが50点以上?
├── YES → メール4A送信: デモ・相談案内
│ → 営業にSlack通知
└── NO → メール4B送信: ウェビナー案内
↓ 待機: 7日
[条件分岐] ゴール達成(商談予約 or MQL到達)?
├── YES → シナリオ終了(ゴール達成)
└── NO → メール5送信: 個別相談の最終案内
→ シナリオ終了
設計のポイント:
- 開封/クリックの有無で分岐を設ける
- スコアリングと連動させ、ホットリードを早期に営業に引き渡す
- ゴール達成条件を設定し、達成したら配信を停止する
シナリオ③: 営業への自動通知+タスク作成
目的: ホットリードの行動を即座に営業に通知し、フォロータスクを自動作成する
ワークフロー設計:
[トリガー] 以下のいずれかの行動
・料金ページを閲覧
・デモ依頼フォームを送信
・スコアがMQL基準(80点)に到達
↓
[アクション] ライフサイクルステージを「MQL」に更新
↓
[条件分岐] コンタクトにオーナー(営業担当)が割り当て済み?
├── YES → オーナーにSlack通知
│ → オーナーにフォロータスクを作成(期限: 48時間以内)
└── NO → ラウンドロビンでオーナーを自動割り当て
→ 割り当てられた営業にSlack通知
→ フォロータスクを作成(期限: 48時間以内)
↓
[アクション] 社内チャットに通知
「MQL到達: {コンタクト名} / {会社名} / スコア: {スコア} / トリガー: {行動}」
通知に含めるべき情報:
| 情報 | 理由 |
|---|---|
| コンタクト名・会社名 | 即座に誰か特定できる |
| スコアと内訳 | 関心度と関心領域がわかる |
| トリガーとなった行動 | 何に関心があるかがわかる |
| 過去の行動履歴サマリー | 会話の準備ができる |
| コンタクトレコードへのリンク | CRMで詳細をすぐ確認 |
シナリオ④: リードスコアリングの自動更新
目的: リードの行動と属性に基づいてスコアを自動更新し、MQLの判定を自動化する
ワークフロー設計:
[トリガー] コンタクトが以下のアクションを実行
■ 行動スコアの加算
・メール開封 → +2点
・メールリンクをクリック → +5点
・ブログ記事を閲覧 → +3点
・事例ページを閲覧 → +7点
・料金ページを閲覧 → +15点
・資料をダウンロード → +10点
・ウェビナーに参加 → +12点
・デモを申込 → +20点
■ 属性スコアの設定(初回のみ)
・ターゲット業種に合致 → +10点
・従業員規模がターゲットレンジ → +5点
・役職が決裁権あり → +10点
■ 減点スコア
・30日間アクションなし → -5点
・60日間アクションなし → -15点
・配信停止 → -50点
[条件分岐] スコアが80点以上?
├── YES → MQL判定ワークフロー(シナリオ③)を起動
└── NO → スコアを更新して待機
HubSpotでの実装:
HubSpotのProfessionalプラン以上では、カスタムスコアリングプロパティを使ってスコアの自動計算が可能です。
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| スコアプロパティ | 「HubSpot Score」または「カスタムスコア」 |
| 正のスコア条件 | 行動+属性の条件と点数を設定 |
| 負のスコア条件 | 不活性やネガティブ行動の減点を設定 |
| MQL閾値 | 80点以上でMQL判定ワークフローを起動 |
シナリオ⑤: データ整備の自動化
目的: CRM/MAのデータ品質を自動的に維持・向上させる
ワークフロー設計:
■ 重複リードの検知
[トリガー] 新規コンタクト作成
→ [条件] 同じメールドメインのコンタクトが存在?
→ [アクション] 管理者に通知(重複確認依頼)
■ データ補完
[トリガー] コンタクトの「会社名」が空白
→ [条件] メールドメインから会社名を推定可能?
→ [アクション] 会社名を自動入力
■ ライフサイクルステージの自動更新
[トリガー] 商談が「受注」に変更
→ [アクション] コンタクトのステージを「顧客」に更新
→ [アクション] 会社のステージを「顧客」に更新
■ 不活性リードの自動分類
[トリガー] 90日間アクションなし
→ [アクション] 「休眠」プロパティをONに設定
→ [アクション] 休眠掘り起こしシナリオに登録
自動化すべきデータ整備タスク:
| タスク | 自動化方法 | 効果 |
|---|---|---|
| ライフサイクルステージ更新 | 商談ステージ変更をトリガー | 手動更新の漏れ防止 |
| リードソースの統一 | フォーム送信元で自動分類 | 正確なアトリビューション |
| 休眠フラグの付与 | 非アクティブ期間で自動判定 | 休眠リストの自動生成 |
| 重複の検知 | メールアドレス/ドメインで照合 | データ品質の維持 |
| 所有者の自動割り当て | ラウンドロビン or 条件分岐 | 営業の負荷分散 |
ワークフロー設計の手順
ステップ1: ゴールを定義する
「このワークフローで何を達成したいか」を明確にします。
ゴール定義テンプレート:
| 項目 | 内容(記入例) |
|---|---|
| ワークフロー名 | 資料DL後フォローシナリオ |
| ゴール | 資料DLリードの30%をMQL化する |
| 対象者 | 資料DLしたBtoBリード |
| 期間 | 30日間 |
| 成功指標 | MQL転換率30%以上 |
ステップ2: トリガーを設定する
ワークフローを開始する条件を設定します。
トリガーの種類:
| カテゴリ | トリガー例 |
|---|---|
| フォーム系 | フォーム送信、特定フォーム送信 |
| メール系 | メール開封、リンククリック |
| ページ系 | 特定ページ閲覧、ページ閲覧回数 |
| プロパティ系 | プロパティ値の変更、スコア到達 |
| リスト系 | リストへの追加/削除 |
| 日付系 | 特定日付、コンタクト作成日からN日後 |
ステップ3: 条件分岐を設計する
リードの状態に応じて処理を分岐させます。
分岐条件の設計チェックリスト:
- 最初の分岐は本当に必要か(シンプルに保つ)
- 各分岐の先に十分なアクションが設計されているか
- 分岐の条件が明確で、漏れがないか
- 分岐の深さは3階層以内に収まっているか
ステップ4: アクションを設定する
各ステップで実行するアクションを設定します。
主なアクション:
| アクション | 内容 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| メール送信 | マーケティングメールを送信 | 最高 |
| 待機 | 次のアクションまでの待機時間 | 最高 |
| プロパティ更新 | コンタクト/会社のプロパティを変更 | 高 |
| 内部通知 | チームメンバーにメール/Slack通知 | 高 |
| タスク作成 | 営業のフォロータスクを作成 | 中 |
| リスト追加/削除 | 静的リストへの追加/削除 | 中 |
| 別ワークフローに登録 | 他のワークフローを起動 | 中 |
ステップ5: テストと公開
テストのチェックリスト:
- テスト用コンタクトでワークフロー全体を動作確認
- 各分岐が正しく動作するか確認
- メールの内容・リンクが正しいか確認
- 通知が正しい宛先に届くか確認
- タスクが正しい担当者に作成されるか確認
- ゴール達成時にワークフローが正しく終了するか確認
ワークフロー設計のアンチパターン
| アンチパターン | 問題 | 対策 |
|---|---|---|
| 分岐が深すぎる | 管理不能になる | 分岐は3階層以内。複雑な場合はワークフローを分割 |
| トリガーが広すぎる | 意図しないコンタクトが登録される | トリガーにフィルター条件を追加 |
| 待機時間なしの連続メール | スパム扱いされる | メール間に最低3日の待機を入れる |
| ゴール未設定 | ワークフローが永遠に動き続ける | 必ずゴール条件と終了条件を設定 |
| テストなしの本番稼働 | 誤動作・誤配信のリスク | テスト用コンタクトで必ず検証 |
| ワークフローの乱立 | 競合・重複が発生 | ワークフローの命名規則と一覧管理を徹底 |
HubSpotワークフローの具体例
HubSpotワークフローの基本操作
HubSpotのワークフローはビジュアルエディタで設計します。
| 操作 | 方法 |
|---|---|
| トリガー設定 | 「トリガーを設定」からコンタクト/会社/取引の条件を選択 |
| アクション追加 | 「+」ボタンからアクションを選択してドラッグ |
| 条件分岐 | 「if/thenブランチ」を追加し、条件を設定 |
| 待機 | 「遅延」アクションで待機時間を設定 |
| テスト | 「テスト」タブからテスト用コンタクトで実行 |
| 公開 | 「確認して公開」で本番稼働 |
利用可能なプラン
| 機能 | Free | Starter | Professional | Enterprise |
|---|---|---|---|---|
| 基本ワークフロー | × | × | ○ | ○ |
| ワークフロー数上限 | - | - | 300 | 1,000 |
| カスタム分岐条件 | - | - | ○ | ○ |
| 予測スコアリング | - | - | × | ○ |
| カスタムイベントトリガー | - | - | × | ○ |
注: ワークフロー機能はMarketing Hub Professional以上で利用可能です。Starter以下の場合は、シンプルなメール自動化(シーケンス)を活用します。
効果測定と改善
ワークフロー単位のKPI
| KPI | 計測方法 | 目標値目安 |
|---|---|---|
| 登録数 | ワークフローに登録されたコンタクト数 | トリガー条件による |
| 完走率 | 最終ステップまで到達した割合 | 60%以上 |
| ゴール達成率 | ゴール条件を満たした割合 | シナリオによる |
| メール開封率(ワークフロー内) | 各メールの開封率 | 25%以上 |
| メールCTR(ワークフロー内) | 各メールのクリック率 | 3%以上 |
| 中断率 | 途中で離脱した割合 | 40%以下 |
改善のサイクル
| 頻度 | 確認事項 |
|---|---|
| 週次 | 登録数・中断率の異常値確認 |
| 月次 | 各ステップのパフォーマンスレビュー、ボトルネック特定 |
| 四半期 | ワークフロー全体の見直し、新規シナリオの追加検討 |
まとめ
MAワークフローは、BtoBマーケティングの効率化と成果向上の要です。5つの基本シナリオをマスターすれば、マーケティングプロセスの大部分を自動化できます。
- ワークフローはトリガー→条件→アクションの3要素で構成される
- 最優先で自動化すべきは①リード自動分類と③営業通知(工数削減効果が大きく、難易度が低い)
- 次に②ナーチャリングメールと④スコアリングで商談化率を向上
- ⑤データ整備の自動化でデータ品質を維持
- アンチパターンを避け、シンプルなワークフローから段階的に拡張
- テストを必ず実施し、本番稼働後も継続的に改善する
次のアクション:
- 現在手動で行っているマーケティング業務を棚卸しする
- 最優先のシナリオ(リード自動分類 or 営業通知)から設計する
- テスト用コンタクトで動作確認し、本番稼働する
- 月次で効果を測定し、改善点を洗い出す
HubSpotのワークフロー機能は、ビジュアルエディタでノーコード設計が可能です。本記事で紹介した5つのシナリオすべてを、直感的な操作で実装できます。StartLinkでは、MAワークフローの設計からHubSpotでの実装、運用最適化まで一貫してサポートしています。ワークフローの設計にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。