DX推進指標の活用ガイド|経産省フレームワークで自社のDX進捗を定量評価する方法

この記事の結論

経産省DX推進指標の構成要素と評価の仕組み。「経営のあり方・仕組み」と「IT基盤の構築」の2軸で構成される評価フレームワークの全体像を解説します。

ブログ目次

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経産省DX推進指標の構成要素と評価の仕組み。「経営のあり方・仕組み」と「IT基盤の構築」の2軸で構成される評価フレームワークの全体像を解説します。

「DXを推進しているが、どこまで進んでいるのかわからない」「経営層にDXの効果を説明できない」。多くの企業でDX推進担当者が直面するこの課題に対して、経済産業省は2019年に「DX推進指標」を策定しました。

DX推進指標は、企業が自社のDX進捗状況を定量的に評価するための自己診断フレームワークです。しかし、その存在を知っていても「具体的にどう活用すればいいのか」がわからず、実際に運用できている企業はまだ少数にとどまります。

本記事では、DX推進指標の構成と評価方法を解説するとともに、自社のDX進捗を定量的に把握し、改善アクションにつなげるための具体的な活用方法を紹介します。


この記事でわかること

DXの進捗を定量的に評価し、経営層に効果を説明したいDX推進担当者に向けた記事です。

  • 経産省DX推進指標の全体像 — 「経営」と「IT基盤」の2軸で構成される評価の仕組みを解説します
  • 自己診断の具体的な手順 — スコアリングの方法と結果の読み方をステップバイステップで紹介します
  • DX効果を測る指標の設計方法 — 業務効率化・売上・顧客満足度を定量的に測るKPIの作り方を解説します
  • 診断結果を経営判断に活かす方法 — 結果から投資の優先順位を決め、具体的なアクションに落とし込む手順を紹介します

「DXの進捗を定量的に把握したい」「経営会議でDXの成果を報告するための指標が欲しい」とお悩みの経営企画・DX推進担当者の方に、特におすすめの内容です。


DX推進指標とは

DX推進指標は、経済産業省が2019年7月に公表した、企業のDX推進状況を自己診断するためのフレームワークです。

項目 内容
策定 経済産業省(2019年7月)
目的 企業のDX推進状況を可視化し、アクションにつなげる
対象 業種・規模を問わず全企業
構成 「DX推進のための経営のあり方・仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2軸
診断方式 自己診断(0〜5の6段階評価)
提出先 IPA(情報処理推進機構)に匿名でベンチマーク提出可能

DX推進指標の成熟度レベル

DX推進指標では、各項目を以下の6段階で評価します。

レベル 状態 具体的な内容
レベル0 未着手 DXに関する取り組みが行われていない
レベル1 一部での散発的実施 一部の部門で個別にデジタル化が行われている
レベル2 一部での戦略的実施 経営戦略に基づきDXが一部の領域で推進されている
レベル3 全社戦略に基づく部門横断的推進 全社的なDX戦略のもと、部門横断でDXが推進されている
レベル4 全社戦略に基づく持続的実施 DXが全社的に定着し、継続的な改善が行われている
レベル5 グローバル市場におけるデジタル企業 デジタル技術による競争優位が確立され、グローバルに展開

IPAの調査(2023年)によると、日本企業の約70%がレベル0〜1に該当し、レベル3以上に達している企業は約10%にとどまります。


DX推進指標の2つの軸と評価項目

DX推進指標は大きく2つの軸で構成されています。

軸1:DX推進のための経営のあり方・仕組み

経営戦略・組織・人材・企業文化の観点からDX推進の態勢を評価します。

カテゴリ 主な診断項目 評価ポイント
ビジョン DXビジョンが明確に定義されているか 経営トップが自らの言葉でDXの方向性を示しているか
経営トップのコミットメント 経営トップがDXに対して明確なコミットメントを示しているか 予算・人材・権限を適切に配分しているか
仕組み DXを推進する体制が整備されているか CDO/CIOの設置、推進組織の権限と予算
マインドセット・企業文化 挑戦を促す企業文化があるか 失敗を許容し、実験的な取り組みを推奨する風土
推進・サポート体制 DX人材の確保・育成が計画的に行われているか デジタル人材の採用計画、リスキリング施策
人材育成・確保 DXに必要なスキルセットが定義されているか 社内外のDX人材の育成プログラム

軸2:DXを実現するITシステムの構築

DXの基盤となるITシステムの整備状況を評価します。

カテゴリ 主な診断項目 評価ポイント
体制・仕組み IT部門の位置づけと体制は適切か IT部門が「コストセンター」ではなく「バリュードライバー」として位置づけられているか
ビジョン実現の基盤としてのITシステム構築 全体最適を意識したIT戦略があるか 部門別の個別最適ではなく、データ連携を前提とした設計
ITシステムに求められる要素 データ活用基盤が整備されているか データの収集・蓄積・分析・活用の基盤
事業部門のオーナーシップ 事業部門がITシステムに主体的に関わっているか IT部門への丸投げではなく、事業部門が要件を主導
ガバナンス・体制 IT投資の評価基準は適切か ROIだけでなく、DX推進への貢献度を含めた評価

DX推進指標を使った自己診断の進め方

自己診断を効果的に実施するための具体的な手順を解説します。

Step 1:診断チームの編成

DX推進指標の自己診断は、IT部門だけでなく経営層と事業部門を含めたクロスファンクショナルチームで実施することが重要です。

参加者 役割 担当する評価領域
経営層(CEO/CDO/CIO) DXビジョンと戦略の評価 経営のあり方全般
事業部門責任者 事業側のDX活用状況の評価 ビジネスプロセス、顧客接点
IT部門責任者 ITシステムの現状評価 ITシステム構築全般
DX推進担当 全体のファシリテーション 横断的な連携、進捗管理
外部アドバイザー 客観的な視点の提供 ベンチマーク比較、改善提案

Step 2:現状の評価(As-Is)

各診断項目について、6段階のレベルで自社の現状を評価します。

評価のポイント:

  • 自己評価は過大評価になりがちなので、具体的な根拠(定量データや実績)をもとに判断する
  • 複数メンバーで個別に評価した後、議論して合意を形成する
  • 部門間で認識のギャップがある場合、そのギャップ自体がDXの課題を示している

Step 3:目標の設定(To-Be)

現状評価をもとに、1年後・3年後の目標レベルを設定します。

現状レベル 1年後の現実的な目標 3年後の目標
レベル0 レベル1 レベル2
レベル1 レベル2 レベル3
レベル2 レベル3 レベル3〜4
レベル3 レベル3〜4 レベル4

1段階の向上には通常1〜2年かかると想定し、無理のない目標を設定することが重要です。

Step 4:ギャップ分析とアクションプランの策定

As-IsとTo-Beのギャップから、優先的に取り組むべき課題を特定します。

分析の視点 内容
ギャップの大きさ 現状と目標の差が大きい項目を優先
事業インパクト 改善した場合の事業への影響度が大きい項目を優先
実現可能性 短期間・低コストで改善できる項目(クイックウィン)を先行
依存関係 他の項目の前提条件となる項目を先行

DXの効果を測定するKPI設計

DX推進指標による定性的な評価に加えて、DXの効果を定量的に測定するKPIの設計も重要です。

領域別のDX KPI例

DXの領域 KPI例 測定方法
営業DX リード獲得数、商談化率、受注率 CRM(HubSpotなど)のダッシュボード
マーケティングDX Webサイト訪問数、CVR、CAC(顧客獲得コスト) MA(マーケティングオートメーション)ツール
業務効率化 作業時間削減率、ペーパーレス率、手作業の自動化率 業務工数管理ツール
顧客体験 NPS、顧客満足度、解約率(チャーンレート) アンケート調査、CRMデータ
データ活用 データに基づく意思決定の割合、ダッシュボード利用率 利用ログ分析

KPI設計の4つのポイント

ポイント 内容
1. ビジネス成果に紐づける 「システム導入数」ではなく「売上向上率」「コスト削減額」で測定
2. 先行指標と遅行指標の両方を設定 ダッシュボード利用率(先行)→データに基づく意思決定(遅行)
3. 測定可能な指標にする 定性的な「DX文化の浸透度」ではなく、「全社員のデジタルツール利用率」で測定
4. 定期的にレビューする 月次/四半期でKPIをレビューし、目標未達の場合はアクションを修正

CRMを活用すれば、営業・マーケティング領域のKPIを自動的に可視化できます。HubSpot完全ガイドでは、CRMダッシュボードの構築方法を詳しく解説しています。


DX推進指標を経営に活かす方法

DX推進指標は「診断して終わり」ではなく、継続的な経営改善ツールとして活用することが重要です。

活用シーン別のアプローチ

活用シーン 具体的な活用方法 期待効果
経営会議 DX推進指標のスコア推移を報告し、投資判断に活用 DX投資の合理的な意思決定
中期経営計画 DX推進指標の目標レベルを計画に組み込む DXと経営戦略の整合性確保
ベンチマーク IPAの業種別ベンチマークと比較して自社のポジションを把握 競合他社との相対的な位置づけの認識
人材育成 診断で明らかになったスキルギャップに基づいた研修計画 効果的なDX人材育成
パートナー選定 自社の弱みを補うパートナーの選定基準として活用 効率的な外部リソースの活用

IPAベンチマークの活用

IPAでは、DX推進指標の自己診断結果を匿名で提出した企業のデータを集計し、業種別・規模別のベンチマークレポートを公開しています。

活用方法 内容
業種別比較 同業種の平均スコアと自社スコアを比較
規模別比較 同規模企業との比較で相対的な位置を把握
経年比較 前年の自社スコアとの比較で進捗を確認
項目別分析 特に弱い項目を特定し、重点的に改善

DX推進指標と連動させるべき他の評価フレームワーク

DX推進指標だけでなく、他の評価フレームワークと組み合わせることで、より包括的なDX評価が可能です。

フレームワーク 策定者 特徴 DX推進指標との関係
DX認定制度 経産省 DXに取り組む企業を公的に認定 DX推進指標がレベル2以上の企業が申請対象
DX銘柄 経産省+東証 DX優良企業を株式市場で評価 DX推進指標の高スコア企業が選定対象
COBIT 2019 ISACA ITガバナンスの国際標準 ITシステム構築の評価を補完
デジタルガバナンス・コード 経産省 DXの経営者向けガイドライン DX推進指標の上位概念として位置づけ

DX認定を取得することで、税制優遇(DX投資促進税制)の適用や、DX銘柄への選定対象となるなど、実務的なメリットも得られます。


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まとめ

DX推進指標は、自社のDX進捗を客観的に評価し、改善アクションにつなげるための強力なツールです。「経営のあり方・仕組み」と「ITシステムの構築」の2軸で現状を可視化し、目標とのギャップから優先すべき施策を特定できます

押さえておきたいポイントは以下の通りです。

  • 重要なのは、DX推進指標を「一度診断して終わり」にするのではなく、経営会議での報告、中期経営計画への組み込み、人材育成計画への反映など、継続的な経営改善サイクルに組み込むことです
  • まずは経営層を含む少人数のチームで自己診断を実施し、自社の現在地を確認するところから始めてください
  • DXは一足飛びにレベル5を目指すものではなく、小さなステップを積み重ねて着実にレベルを上げていくものです
  • CRMの導入による顧客データの活用から始め、データドリブンな意思決定の文化を育てることが、DX推進の確実な第一歩となります

よくある質問

Q. DX推進指標の自己診断はどのくらいの頻度で実施すべきですか?

年1回の定期実施が推奨されています。大規模なDXプロジェクトの前後など、重要な節目で追加実施することも効果的です。ただし、頻繁に実施しすぎると形骸化するリスクがあるため、年1〜2回が適切です。

Q. 中小企業でもDX推進指標は活用できますか?

活用できます。DX推進指標は企業規模を問わず設計されており、中小企業向けの簡易版も公開されています。全35項目すべてを詳細に評価する必要はなく、まずは「経営トップのコミットメント」「データ活用基盤」「人材育成」の3項目から始めることを推奨します。

Q. DX推進指標のスコアが低かった場合、何から着手すべきですか?

最も効果的なのは、「顧客接点のデジタル化」から始めることです。CRMの導入による顧客データの一元管理は、短期間で効果が見えやすく、組織全体のDXマインドを醸成する効果もあります。具体的なツール選定についてはDXツールガイドを参考にしてください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。