BtoB広告の費用は施策・業種・競合状況で大きく変動します。相場は「答え」ではなく、自社の数字と比べるための物差しです。
「広告代理店から提案をもらったが、この金額が妥当なのか判断できない」「月50万円の広告費に対して、何件リードが取れれば合格なのか社内で説明できない」「予算は使っているが、受注までつながったかを誰も追えていない」——BtoB広告の予算策定では、こうした声をよくお聞きします。
BtoB広告の費用相場とは、施策ごとのCPC(クリック単価)・CPM(インプレッション単価)・CPL(リード獲得単価)の一般的なレンジのことです。ただし相場は「いくら払えばよいか」の答えではなく、自社のCPLや受注率と照らし合わせて投資判断をするための基準線として使うものです。本記事では施策別・業種別の相場を整理したうえで、年間予算規模に応じた配分の考え方と、広告費を受注まで追跡する仕組みづくりをお伝えします。
本記事は「BtoB広告運用の完全ガイド|8つの手法と費用対効果を最大化する戦略」シリーズの一部です。
この記事でわかること
広告予算の策定や社内稟議の根拠づくりに悩まれている方に向けて、施策別・業種別の相場からROI計算、CRMでの受注追跡までの考え方をまとめました。
- 施策別の費用相場レンジ — リスティング・SNS広告・DSP・オフライン施策それぞれのCPC・CPM・CPL・最低月額予算の目安を一覧で整理しています。
- 業種別のCPL相場と、その差が生まれる理由 — 同じ広告手法でも業種によってCPLは数倍変わります。なぜ変わるのかを含めて読み解きます。
- 年間予算規模別の配分モデル4パターン — 年間300万円以下から3,000万円以上まで、規模ごとに「何本の施策に張るか」の考え方が変わります。
- ROI計算テンプレートと自社数値の当てはめ方 — CPLだけでは投資判断ができません。商談化率・受注率・受注単価まで含めた計算式をお伝えします。
- 広告費を受注まで追跡する仕組みの作り方 — スプレッドシートの広告レポートとCRMが分断されている状態から抜け出すための設計をご紹介します。
広告予算の策定や、社内稟議のための根拠づくりに悩まれている方に向けて書いています。最後まで読むと、自社の年間予算に対してどの施策にいくら配分し、どの数値を見て継続・撤退を判断するかを、自分の言葉で説明できるようになります。
BtoB広告の費用相場を「そのまま使ってはいけない」理由
相場表を見ると、つい「自社のCPLは相場より高いから失敗だ」と判断しがちです。しかしBtoBの場合、CPLの高低と事業へのインパクトは、そのまま一致するとは限りません。まずは相場をどう扱うべきか、前提を揃えておきます。
相場は「レンジ」であって「基準値」ではない
後述の表で示すとおり、リスティング広告のCPLは10,000〜80,000円と8倍の幅があります。この幅は、次のような変数の積み重ねで生まれます。
- キーワードの競合度
- 商材単価
- ランディングページの完成度
- ターゲット企業規模
つまり相場の中央値に自社を当てはめること自体に意味は薄く、「自社はレンジのどこにいて、なぜそこにいるのか」を説明できるかが重要になってきます。
CPLの高さは、受注単価とセットで評価する
CPL30,000円は、受注単価300万円の商材なら十分に成立します。一方でCPL5,000円でも、受注単価30万円で受注率が数%なら赤字です。BtoB広告の評価軸は常に「CPL × 商談化率 × 受注率 × 受注単価」の掛け算であり、CPL単体で良し悪しを語ることはできません。
相場データは時間とともに動く
広告単価は入札競争の結果として決まるため、市場環境やプラットフォームの仕様変更で変動します。本記事の数値も、相場観を掴むための出発点としてお使いいただき、実際の投資判断は自社の実測値を優先することをおすすめします。「他社がいくら使っているか」より「自社の1リードがいくらの売上を生んでいるか」のほうが、はるかに再現性のある判断材料になります。
施策別の費用相場一覧
まずはデジタル広告とオフライン施策の費用レンジを一覧で整理します。最低月額予算の目安も併記していますので、「この施策は今の予算規模で張れるのか」の判断にお使いください。実務での応用についてはBtoB広告運用の完全ガイドで具体例とともに紹介しています。
デジタル広告の費用相場
| 施策 |
CPC相場 |
CPM相場 |
CPL相場 |
最低月額予算目安 |
| リスティング広告(Google) |
300〜2,000円 |
— |
10,000〜80,000円 |
30万円〜 |
| リスティング広告(Yahoo!) |
200〜1,500円 |
— |
8,000〜60,000円 |
20万円〜 |
| ディスプレイ広告(GDN) |
50〜300円 |
100〜500円 |
15,000〜50,000円 |
15万円〜 |
| LinkedIn広告 |
300〜1,500円 |
1,000〜5,000円 |
5,000〜30,000円 |
30万円〜 |
| Meta広告(Facebook) |
100〜500円 |
300〜1,500円 |
3,000〜15,000円 |
15万円〜 |
| X広告(旧Twitter) |
50〜300円 |
300〜1,000円 |
2,000〜10,000円 |
10万円〜 |
| YouTube広告 |
— |
300〜1,000円 |
10,000〜50,000円 |
20万円〜 |
| DSP(BtoB特化) |
100〜500円 |
300〜2,000円 |
10,000〜40,000円 |
30万円〜 |
| リターゲティング |
100〜500円 |
200〜800円 |
5,000〜20,000円 |
10万円〜 |
この表で着目いただきたいのは、CPCの低さとCPLの低さが連動しないという点です。X広告はCPC50〜300円と低い一方で、購買意欲の高さはリスティング広告に及びません。CPCが低い施策は「認知の入り口」、CPCが高い施策は「刈り取り」と役割が異なるため、同じ土俵で比較しないことがポイントになってきます。
最低月額予算の目安が意味するもの
表の最低月額予算は、機械学習の最適化が回り始め、施策の良し悪しを判断できるデータ量が溜まる目安とお考えください。この件数では商談化率や受注率を算出するには母数が足りず、継続・撤退の判断ができません。予算を薄く広く撒くより、判断ができる水準まで1施策に寄せるほうが、結果として学習が速く進みます。
オフライン広告の費用相場
| 施策 |
費用目安 |
リーチ |
効果測定 |
| タクシー広告 |
300万〜1,500万円/月 |
経営者層 |
困難 |
| 交通広告(電車内) |
50万〜500万円/月 |
ビジネスパーソン |
困難 |
| 業界紙・専門誌広告 |
30万〜200万円/回 |
業界関係者 |
中程度 |
| 展示会出展 |
50万〜500万円/回 |
業界関係者 |
可能 |
| ダイレクトメール |
500〜2,000円/通 |
特定企業 |
可能 |
ただし、オフライン施策は効果測定の難易度が上がります。タクシー広告や交通広告は「見た人が後日社名で検索して問い合わせる」という経路をたどるため、広告とコンバージョンを1対1で紐づけることが構造的にできません。効果測定が困難な施策に予算を割く場合は、指名検索数やダイレクト流入の推移といった間接指標を事前に決めておくことをおすすめします。
その点、展示会とダイレクトメールは接触した企業・担当者が特定できるため、CRMに取り込めば受注まで追跡が可能です。オフライン施策から始めるなら、まず測定可能なものから手をつけるのが現実的です。
業種別のCPL相場と、差が生まれる要因
同じリスティング広告でも、業種によってCPLは数倍変わります。ここでは業種別の目安と、その差が何から生まれているのかを整理します。この領域に関心がある方にはBtoB広告のROI測定方法もおすすめです。
業種別CPLの目安
| 業種 |
平均CPL |
CPL幅 |
主な要因 |
| IT・SaaS |
15,000円 |
5,000〜50,000円 |
競合が多くCPCが高い |
| コンサルティング |
25,000円 |
10,000〜80,000円 |
高単価キーワードが多い |
| 製造業 |
12,000円 |
5,000〜30,000円 |
ニッチKWで効率的 |
| 人材・HR |
10,000円 |
3,000〜30,000円 |
検索ボリュームが大きい |
| 金融・保険(法人) |
30,000円 |
15,000〜100,000円 |
規制業種で競合激しい |
| マーケティング支援 |
15,000円 |
5,000〜40,000円 |
自社もマーケに強い |
| 建設・不動産(法人) |
20,000円 |
8,000〜60,000円 |
検索ボリューム少 |
| 物流・倉庫 |
8,000円 |
3,000〜20,000円 |
競合が少ない |
CPLを押し上げる3つの構造要因
表の「主な要因」欄を整理すると、CPLの差は大きく3つの構造から生まれています。
- 競合の密度 ── IT・SaaSや金融・保険のように広告出稿企業が多い領域では、同じキーワードの入札競争でCPCが上がり、CPLも連動して上昇します
- 検索ボリューム ── 建設・不動産(法人)のようにボリュームが少ない領域では、限られた検索回数の中でコンバージョンを取る必要があるため、1件あたりの単価が高くなります
- キーワードの単価帯 ── コンサルティングのように商材単価が高い領域は、そもそも高単価キーワードが中心になります
逆に言えば、物流・倉庫や製造業のようにニッチなキーワードで戦える領域は、CPLを抑えやすい構造にあります。自社がどの構造に置かれているかを把握すると、「CPLを下げる努力をすべきか」「CPLは受け入れて受注単価側を上げるべきか」の方針が見えてきます。
自社業界の相場だけで目標CPLを決めない
業種別の平均値は便利ですが、そのまま目標CPLにするのは危険です。同じ「製造業」でも、部品供給と設備投資では受注単価が一桁違います。目標CPLは業種平均からではなく、次章のROI計算式から逆算して決めることをおすすめします。企業様によって最適なCPL水準は異なりますので、あくまで平均値は「大きく外れていないか」のチェック用としてお使いください。
年間予算規模別の推奨配分モデル
予算規模によって「何本の施策に張れるか」が変わります。ここでは4つの規模帯ごとに、配分の考え方をモデルとして整理します。具体的な実践方法はBtoBのCPL(リード獲得単価)相場一覧で詳しく解説しています。
モデル1: 年間300万円以下(月額25万円以下)
年間300万円以下の規模では「選択と集中」が最重要です。1〜2施策に絞り込みます。
| 施策 |
配分 |
年間予算 |
期待CPL |
期待リード数 |
| リスティング広告 |
70% |
210万円 |
15,000円 |
140件/年 |
| リターゲティング |
30% |
90万円 |
10,000円 |
90件/年 |
| 合計 |
— |
300万円 |
— |
230件/年 |
この規模で3施策以上に分散させると、各施策の月額が最低予算目安を下回り、どれも判断できないまま1年が終わります。まずは検索意欲が顕在化しているリスティングに主軸を置き、取りこぼしをリターゲティングで拾う構成が現実的です。
モデル2: 年間300万〜1,000万円(月額25〜80万円)
基盤施策を固めつつ、チャネルを拡大する段階です。
| 施策 |
配分 |
年間予算 |
期待リード数 |
| リスティング広告 |
40% |
120〜400万円 |
80〜270件 |
| SNS広告(LinkedIn/Meta) |
25% |
75〜250万円 |
50〜250件 |
| リターゲティング |
15% |
45〜150万円 |
45〜150件 |
| ディスプレイ/動画 |
20% |
60〜200万円 |
30〜100件 |
| 合計 |
— |
300〜1,000万円 |
205〜770件/年 |
顕在層だけでは頭打ちになるため、潜在層へのアプローチを追加します。ただしSNS広告やディスプレイで獲得したリードは、リスティング経由よりも検討度が低い傾向があります。同じ「リード1件」として扱うと営業側の負荷が上がりますので、獲得チャネルごとにリードの質を分けて管理する設計が必要になってきます。
モデル3: 年間1,000万〜3,000万円(月額80〜250万円)
フルファネルの広告展開が可能になる規模です。
| 施策 |
配分 |
年間予算 |
| リスティング広告 |
30% |
300〜900万円 |
| SNS広告 |
25% |
250〜750万円 |
| ABM/DSP |
15% |
150〜450万円 |
| リターゲティング |
10% |
100〜300万円 |
| 動画広告 |
10% |
100〜300万円 |
| コンテンツプロモーション |
10% |
100〜300万円 |
ABM/DSPが選択肢に入ってくるのがこの段階です。ターゲットリストを持って特定企業に配信する以上、CRM側に「どの企業を狙っているか」のリストが整備されていることが前提になります。ターゲットアカウントの管理がスプレッドシートのままだと、配信リストと営業のアプローチ先がずれていく原因になります。
モデル4: 年間3,000万円以上
オフライン施策も含めた統合マーケティングが可能です。デジタル70%:オフライン30%を目安に、タクシー広告や展示会も組み合わせます。この規模では施策数が増えるぶん、効果測定の設計が追いつかないと「何が効いたかわからないまま予算だけ増える」状態に陥りやすくなります。予算を増やす前に、次章以降の測定基盤を整えておくことをおすすめします。
こうして規模ごとに施策数と主眼を整理すると、次の表のようにまとめられます。
| 年間予算 |
施策数の目安 |
主眼 |
つまずきやすい点 |
| 〜300万円 |
1〜2本 |
顕在層の刈り取り |
分散させて判断不能になる |
| 300万〜1,000万円 |
3〜4本 |
潜在層への拡大 |
リードの質の差を管理できない |
| 1,000万〜3,000万円 |
5〜6本 |
フルファネル |
ターゲットリストの整備不足 |
| 3,000万円〜 |
オフライン含む |
統合展開 |
効果測定の設計が追いつかない |
ROI計算テンプレートで投資判断の共通言語をつくる
CPLだけを見ていると、社内で「広告費が高いか妥当か」の水掛け論になりがちです。受注までの転換率を含めたROI計算式を共通言語にすることで、増額・減額の議論が数字ベースになります。
基本計算式
広告ROI(%) = (広告経由の売上 − 広告費) ÷ 広告費 × 100
シミュレーション例
| 項目 |
数値 |
算出方法 |
| 月間広告費 |
50万円 |
— |
| CPL |
15,000円 |
— |
| 月間獲得リード数 |
33件 |
50万÷15,000円 |
| MQL転換率 |
30% |
— |
| MQL数 |
10件 |
33件×30% |
| 商談化率 |
40% |
— |
| 商談数 |
4件 |
10件×40% |
| 受注率 |
25% |
— |
| 受注数 |
1件 |
4件×25% |
| 平均受注単価 |
200万円 |
— |
| 月間広告経由売上 |
200万円 |
1件×200万円 |
| 月間ROI |
300% |
(200万-50万)÷50万 |
テンプレートの使い方と、目標CPLの逆算
自社の実績データ(CPL、MQL転換率、商談化率、受注率、平均受注単価)を代入してROIを算出します。ROIが安定的にプラスで推移していれば、広告予算の増額を検討する余地があると考えられます。
さらにこの式は逆向きにも使えます。受注単価と各転換率が分かっていれば、「ROIを成立させるために許容できるCPLの上限」が算出できます。業種平均のCPLと比べるのではなく、自社の事業構造から許容CPLを導き出すほうが、はるかに実務的な目標設定になります。
この計算が成立するための前提
ただし、この計算にはひとつ大きな前提があります。MQL転換率・商談化率・受注率・受注単価が、広告チャネル別に実測できていることです。多くの企業様では、広告管理画面でCPLまでは見えていても、その先の商談化率や受注率は営業側のスプレッドシートにあり、両者が突き合わされていません。この状態ではROIは「エイヤで置いた仮の数字」にしかならず、投資判断の根拠になりません。次章では、この分断をどう解消するかを見ていきます。
広告費を受注まで追跡する仕組みをつくる
BtoB広告の費用対効果を正しく測る最大の壁は、データの分断です。広告媒体の管理画面、MAのフォーム送信ログ、営業のスプレッドシート——これらが別々に存在している限り、本当のROIは算出できません。ここではCRMを軸にした仕組み化の考え方をお伝えします。
スプレッドシート運用が破綻する構造
月次で広告レポートをスプレッドシートに転記し、営業の受注一覧と目視で突き合わせる。この運用は、リード数が数十件のうちは回りますが、数百件になると破綻します。同じ企業から複数名が資料請求したときに名寄せができない、担当者が退職すると集計方法が引き継がれない、集計に数日かかるため月中の軌道修正ができない——といった問題が積み重なるためです。
これは担当者の能力の問題ではなく、仕組みの問題です。人が頑張って転記する運用は、その人がいなくなった時点で止まります。新人が着任しても同じ精度でレポートが出る状態にするには、データが最初から一箇所に集まる設計にしておく必要があります。
CRMを軸にした一気通貫のデータ設計
広告経由のリードを受注まで追跡するには、以下の流れが一本の線でつながっている必要があります。
| 段階 |
記録する情報 |
CRM上のオブジェクト |
| 広告接触 |
流入元チャネル・キャンペーン名 |
コンタクト(元のソース) |
| リード獲得 |
フォーム送信内容・獲得日 |
コンタクト |
| 企業単位の名寄せ |
同一企業からの複数リードの統合 |
会社 |
| 商談化 |
商談金額・ステージ・受注確度 |
取引 |
| 受注・失注 |
受注金額・失注理由 |
取引 |
HubSpotではコンタクト・会社・取引がリレーションデータベースとして紐づくため、広告経由で獲得したコンタクトがどの会社に属し、どの取引につながり、いくらで受注したかを一気通貫で追えます。
広告管理機能を使えば、Google広告やMeta広告のアカウントを連携し、広告費とリード・商談・受注を同じダッシュボードで見ることも可能です。詳しくは「HubSpotの広告管理機能|Facebook・Google広告のROI計測・リード追跡を一元化する方法」で解説しています。
以下の画面は、HubSpotの会社レコードです。広告経由で獲得したコンタクトも、このように会社単位で束ねて管理できます。

リードだけでなく「会社単位」でも見る
BtoB広告の効果を測る際、コンタクト数だけを見ていると実態を見誤ります。リード数は多いのに商談が増えないという相談の背景には、この重複が隠れていることがよくあります。コンタクト単位と会社単位の両方でレポートを持ち、「リード数」と「アプローチ対象企業数」を分けて追うことをおすすめします。
失注理由を広告改善につなげる
受注まで追跡する仕組みが整うと、失注理由の分析が広告改善に直結します。失注理由を「価格」「競合他社」「製品機能」「時期」「社内決裁」といったカテゴリーで分類し、チャネル別に集計してみてください。特定チャネルからのリードだけ「時期が合わない」失注が突出しているなら、そのチャネルはまだ検討段階が早い層に当たっている可能性があります。この場合は広告を止めるのではなく、即時商談化を狙わずナーチャリング経路に流す設計に変えるほうが合理的です。
失注したリードも、ライフサイクルステージを掘り起こし対象に戻してステップメールの配信対象にすれば、広告費で獲得した資産を捨てずに済みます。広告→リード→商談→失注→掘り起こし→再商談というループとして設計することが、結果的に広告費の実効的なCPAを下げることにつながります。
広告運用の改善余地を洗い出す7つの視点
配分を決めたあとは、同じ予算でどれだけ成果を伸ばせるかの改善サイクルに入ります。ここでは運用面での代表的な改善視点を整理します。
配信側の改善(1〜4)
- 1. 除外キーワードの徹底管理 ── リスティング広告で除外キーワードを適切に設定することで、無駄なクリックを削減できるケースがあります。検索クエリレポートを週次で確認し、意図と異なるクエリを除外に追加する運用を習慣化します
- 2. 配信時間帯の最適化 ── BtoB広告は平日の業務時間帯に集中配信することで、コンバージョン率が高まり、結果的にCPLが改善する傾向があります。ただし商材によっては、業務時間外に情報収集する層が一定数います。時間帯別のCV実績を確認してから絞り込むのが安全です
- 3. オーディエンスの段階的絞り込み ── 最初は広めのオーディエンスでデータを蓄積し、CVが発生してから類似オーディエンスや高パフォーマンスセグメントに集中します。最初から絞り込みすぎると、機械学習が最適化するためのデータが溜まりません
- 4. クリエイティブの定期更新 ── 同じ広告クリエイティブを長期間使い続けると、CTRが低下(広告疲れ)します。月に1回はクリエイティブを更新することをおすすめします
受け皿側の改善(5〜7)
- 5. ランディングページの継続改善 ── LP上のフォーム通過率をわずかに改善するだけで、CPLは大幅に低下します。A/Bテストを月次で実施しましょう。広告側の改善余地が尽きたと感じたら、受け皿側に伸びしろが残っていることが多いです
- 6. マイクロコンバージョンの活用 ── 「問い合わせ」だけでなく、「資料DL」「ウェビナー参加」などの軽いCVを計測し、機械学習の最適化に活用します。特に受注までのリードタイムが長い商材では、最終CVだけでは学習データが不足します
- 7. CRMデータによるオフライン転換の追跡 ── 広告からのリードがその後「商談化」「受注」したかをCRMで追跡し、本当にROIの高い施策に予算を集中させます。前章の仕組みが整っていれば、この7番目は改善インパクトが出やすい項目になります
| 改善視点 |
効きやすい場面 |
効きにくい場面 |
| 除外キーワード |
クリックは多いがCVが少ない |
すでにクエリが絞られている |
| 配信時間帯 |
予算が時間帯に薄く分散している |
商材の検討が業務時間外中心 |
| LP改善 |
流入はあるがフォーム通過率が低い |
そもそも流入が少ない |
| CRM追跡 |
リードの先が見えていない |
リード数が判断に足りない |
予算策定のフレームワークと最初の進め方
最後に、実際に予算を組むときの手順を整理します。いきなり年間予算を確定させるのではなく、逆算と検証を組み合わせて精度を上げていく進め方をおすすめします。
ステップ1: 年間の受注目標から逆算する
必要受注数 → 必要商談数 → 必要MQL数 → 必要リード数 → 必要広告費
受注目標から各転換率で割り戻し、必要リード数を出します。そこにCPLを掛ければ必要広告費が算出できます。転換率の実測値がない場合は、ROI計算テンプレートの数値を仮置きして始め、3ヶ月後に実測値に差し替えていくのが現実的です。
ステップ2: 競合の広告投資を推定する
Google広告の透明性センターやSimilarWebなどで、競合の広告活動を推定し、市場での適正投資額を把握します。ただし推定はあくまで参考情報です。競合が多額を投じているからといって同額を投じる必要はなく、むしろ競合が手薄なキーワードやチャネルを見つけるために使うほうが有効です。
ステップ3: テスト予算で検証する
3ヶ月間のテスト予算(年間予算の15〜20%)で実際のCPL・CVRを検証し、本格投資の判断材料を揃えます。このテスト期間中に、広告→コンタクト→取引の追跡ができる状態をCRM側で作っておくと、検証結果がそのまま本格投資の設計に使えます。
スモールスタートの具体的な順序
一度にすべてを整えるのは難しいので、まずは次の順序をおすすめしています。
- まずは1施策・3ヶ月のテストからスタート ── 広告経由リードの流入元がCRMに記録される状態を作ります
- 商談になったかを追う ── そのリードが商談になったかを取引オブジェクトで追えるようにします
ここまでできて初めて、チャネル別のROIが数字で語れるようになります。チャネル追加や配分の最適化は、その後の話と考えていただいてよいかと思います。
企業様によって商材単価も営業体制も異なりますので、最適な配分の形は一律ではありません。相場表はあくまで出発点として使い、テスト期間や四半期の区切りで自社の実測値に上書きしていくサイクルを回すことが、予算策定の精度を高める土台になります。
よくある質問
Q1. BtoB広告は月いくらから始められますか?
施策によって最低月額予算の目安が異なります。
- 10万円から ── X広告、リターゲティング
- 15万円から ── ディスプレイ広告(GDN)、Meta広告
- 20万円から ── Yahoo!リスティング、YouTube広告
- 30万円から ── Googleリスティング、LinkedIn広告、BtoB特化DSP
以上が目安です。年間300万円以下の規模では施策を1〜2本に絞り、リスティング70%・リターゲティング30%のような集中配分が現実的です。
Q2. 広告予算はどのように配分するのが最適ですか?
年間予算の規模で配分の考え方が変わります。
- 300万円以下 ── 「選択と集中」でリスティングとリターゲティングの2本
- 300万〜1,000万円 ── リスティング40%・SNS広告25%・リターゲティング15%・ディスプレイ/動画20%
- 1,000万〜3,000万円 ── ABM/DSPやコンテンツプロモーションを加えたフルファネル
- 3,000万円以上 ── デジタル70%対オフライン30%を目安に展示会やタクシー広告も組み合わせます
ただしこれはモデルであり、自社の受注単価と営業体制に応じた調整が前提になります。
Q3. 業種別のCPL相場はどのくらいですか?
業種別のCPLは、次の金額が目安です。
- 物流・倉庫 ── 平均8,000円
- 人材・HR ── 10,000円
- 製造業 ── 12,000円
- IT・SaaSとマーケティング支援 ── 15,000円
- 建設・不動産(法人) ── 20,000円
- コンサルティング ── 25,000円
- 金融・保険(法人) ── 30,000円
ただしCPLだけで費用対効果は判断できません。CPLが高くても受注単価や商談化率が高ければROIは十分にプラスになりますので、目標CPLはROI計算式から逆算して決めることをおすすめします。
Q4. 広告のROIはどう計算すればよいですか?
「(広告経由の売上 − 広告費)÷ 広告費 × 100」で算出し、パーセント表示にします。記事のシミュレーションでは、月間広告費50万円・CPL15,000円で33件のリードを獲得し、MQL転換率30%で10件、商談化率40%で4件、受注率25%で1件、平均受注単価200万円と置くと月間ROIは300%になります。自社のCPL・MQL転換率・商談化率・受注率・受注単価を代入し、ROIが安定的にプラスになっていれば増額を検討する余地があります。
Q5. 広告の効果測定にCRMは必須ですか?
リード獲得までの測定であれば広告管理画面でも可能です。ただし商談化率や受注率まで含めたROIを算出するには、リードのその後を記録する場所が必要になります。スプレッドシートでの突き合わせも不可能ではありませんが、リード数が増えると名寄せや引き継ぎで破綻しやすいため、コンタクト・会社・取引が紐づくCRMで仕組み化しておくほうが、長期的には運用負荷が下がります。
まとめ
BtoB広告の費用相場は、投資額を決めるための答えではなく、自社の数字を評価するための物差しです。本記事の要点を整理します。
- 相場はレンジで捉える — リスティングのCPLは10,000〜80,000円と幅があります。中央値に合わせるのではなく、自社がレンジのどこにいるかを説明できる状態を目指します
- CPLは単体で評価しない — 商談化率・受注率・受注単価との掛け算で評価し、目標CPLはROI計算式から逆算します
- 予算規模に応じて施策数を決める — 年間300万円以下なら1〜2本、1,000万円超でフルファネル。分散させすぎると判断材料が揃いません
- 測定基盤を先に作る — 広告→リード→商談→受注が一本の線でつながって初めて、ROIが実数になります
- 失注もループに戻す — 失注理由をチャネル別に分析し、掘り起こし対象として再活用することで、広告費で獲得した資産を捨てずに済みます
最初の一歩としては、いきなり配分を変えるのではなく、現在出稿中の1チャネルについて、獲得リードが商談・受注まで到達したかを追える状態を作ることをおすすめします。具体的には次の3ステップです。
- 直近3ヶ月の広告経由リードを洗い出し、流入元チャネルがコンタクト情報として記録されているかを確認する
- そのコンタクトが会社レコードに紐づき、取引として商談化しているかを突き合わせる
- チャネル別にリード数・商談数・受注数・受注金額を集計し、ROI計算式に当てはめて実測値を出す
この3ステップが回り始めると、次の予算策定は推測ではなく実績から組み立てられるようになります。CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのHubSpotゴールドパートナーのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
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