ゼロパーティデータとは?Cookie規制下のBtoBデータ戦略と収集・活用法

  • 2026年3月3日
  • 最終更新: 2026年10月5日
この記事の結論

ゼロパーティデータは、顧客が「知っておいてほしい」と自ら差し出す情報です。Cookieに頼らないBtoBマーケティングは、この申告データをCRMで次の行動につなげる設計から始まります。

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ゼロパーティデータは、顧客が「知っておいてほしい」と自ら差し出す情報です。Cookieに頼らないBtoBマーケティングは、この申告データをCRMで次の行動につなげる設計から始まります。

「リターゲティング広告が以前ほど成果につながらない」「ウェビナーのアンケート回答がスプレッドシートに溜まったまま、営業に渡っていない」「資料ダウンロードは増えたのに、相手が何に困っているのかがわからない」——サードパーティCookieの制限が進む中で、BtoBマーケティングの現場ではこうした声が聞かれます。

ゼロパーティデータとは、顧客が自らの意思で企業に提供するデータのことです。アンケート回答、プリファレンス設定、フィードバックなど、顧客が「あなたに知っておいてほしい」と自発的に共有する情報で、本人の明示的な意思に基づくため、プライバシーの観点で扱いやすく信頼性の高いデータです。

これまで当たり前のように利用していたサードパーティデータによるターゲティングが制限される一方で、新たなデータソースとしてゼロパーティデータが注目を集めています。本記事では、ゼロパーティデータの定義から収集方法、活用戦略、そしてBtoBマーケティングでの実践的な導入方法までを解説します。

本記事は「AIマーケティングとは?BtoB企業の活用事例と導入ステップ」シリーズの一部です。


この記事でわかること

この分野の取り組みを検討されている方に、ゼロパーティデータの位置づけから、集め方、CRMでの管理と活用、HubSpotでの実装までを順に整理します。

  • ゼロパーティデータの定義と他のデータ区分との違い — ゼロ・ファースト・セカンド・サードの4区分を、信頼性と規制リスクの観点で比較します。
  • Cookie規制がBtoBマーケティングに与える影響 — リターゲティングやアトリビューション計測など、影響を受ける施策と置き換え先を整理します。
  • ゼロパーティデータの収集方法5選 — アンケートからイベント登録フォームまで、接点ごとの選び方を表で示します。
  • 収集したデータの活用戦略とプライバシー配慮 — 申告内容ごとにメール・営業アプローチを分岐させる設計と、回答者に信頼される運用のポイントを解説します。
  • HubSpotでのゼロパーティデータ管理と活用 — フォーム、カスタムプロパティ、ワークフローなどを、コンタクトから請求までの流れのどこに置くかを示します。

この記事を読み終えるころには、自社で最初に整えるゼロパーティデータの収集接点が決められます。まずは現行のフォーム項目を一つ点検してください。


データ区分の全体像とゼロパーティデータの位置づけ

ゼロパーティデータを戦略に組み込む前に、自社が扱っているデータがどの区分に当たるのかを整理しておくと、施策の優先順位が決めやすくなります。区分ごとに信頼性と規制リスクが異なるため、同じ「顧客データ」でも使い方を分けて考えます。ここでは4区分の違いと、申告データと観測データの使い分けを説明します。

4つのデータ区分

マーケティングで活用するデータは、取得方法と主体によって4つに分類されます。Cookie規制の背景も含めた詳細はCookie規制でBtoBマーケティングはどう変わる?対策と代替手法を解説をご覧ください。

データ区分 定義 例 信頼性 規制リスク
ゼロパーティデータ 顧客が自発的に提供 アンケート回答、好み設定 最高 最低
ファーストパーティデータ 自社で直接収集 Web閲覧履歴、購買履歴 高 低
セカンドパーティデータ パートナー企業から取得 提携先の顧客データ 中 中
サードパーティデータ 第三者が収集・販売 Cookie、DMP経由の行動データ 低 高

表を上から下へ読むと、取得の主体が顧客本人から遠ざかるほど、信頼性が下がり規制リスクが上がる関係になっています。ゼロパーティとファーストパーティはどちらも自社で直接得るデータですが、「本人が申告したか」「自社が観測したか」で区別します。

ゼロパーティデータの4つの特徴

ゼロパーティデータが他のデータと根本的に異なるのは、顧客の明示的な意思に基づいている点です。

  • 正確性 — 顧客自身が申告するため、推定データより正確
  • 合意性 — 自発的に提供されるため、プライバシー懸念が小さい
  • 文脈性 — 顧客の意図や好みが直接的にわかる
  • 鮮度 — 収集時点の最新情報

一方で、ゼロパーティデータは「申告した時点」の情報です。鮮度は収集時点では高いものの、検討状況や担当者が変われば古くなります。更新の機会を設計に組み込む方法は、後半のプライバシー配慮の節で扱います。

申告データと観測データの使い分け

例えば、フォームで「導入検討時期:半年以内」と回答した人が、その後しばらくWebサイトに来ていないケースがあります。このとき、申告値と行動データのどちらを信じるかで次の打ち手が変わります。本記事では次のように整理します。

判断したいこと 優先するデータ 理由
何に困っているか、何に関心があるか ゼロパーティデータ(申告値) 本人の言葉でしか得られない情報のため
いま検討が動いているか ファーストパーティデータ(行動履歴) 申告時点からの変化が反映されるため
どんな会社か(業種・規模など) 申告値を正とし、推定値は補助 申告が無い項目だけ推定で埋める

申告値と行動データが食い違ったときは、申告値を消さずに残したまま、行動データを根拠にフォローの優先度だけを下げる運用をおすすめします。申告値を上書きしてしまうと、顧客が何と言っていたかが後から追えなくなるためです。


Cookie規制がBtoBマーケティングに与える影響

Cookie規制の影響は、広告配信だけでなく、効果測定やターゲティングの仕組み全体に及びます。まず規制とブラウザ対応の状況を把握し、そのうえで自社の施策のうち何がサードパーティCookieに依存しているかを洗い出す順番が進めやすいと考えています。影響を受ける施策ごとに、ゼロパーティデータでどう置き換えるかも合わせて整理します。

規制の現状

以下の表は、執筆時点の規制とブラウザ対応の状況をまとめたものです。ブラウザ各社の方針は変更されることがあるため、施策の判断に使う前に各ブラウザと規制当局の公式発表で最新の状況を確かめてください。個別化施策の全体像はパーソナライゼーションBtoB完全ガイドもあわせてお読みください。

規制・ブラウザ対応 状況 BtoBへの影響
GDPR(EU) 施行中 同意なきデータ利用が違法
改正個人情報保護法(日本) 施行中 Cookie情報も個人関連情報に
Safari(ITP) サードパーティCookie完全ブロック済 リターゲティング不可
Chrome サードパーティCookie廃止方針 最大シェアブラウザでの影響大
Firefox(ETP) サードパーティCookieブロック済 トラッキング制限

日本の改正個人情報保護法では、Cookieなどの識別子に紐づく情報が「個人関連情報」として位置づけられ、提供先で個人データとして取得されることが想定される場合の第三者提供について規律が設けられています(出典:個人情報保護委員会)。

BtoBマーケティングへの具体的影響

  1. リターゲティング広告の精度低下 — サードパーティCookieに依存した広告配信が困難に
  2. アトリビューション計測の精度低下 — マルチタッチの貢献度分析が不正確に
  3. 外部DMPの活用制限 — サードパーティデータの購入・利用が制約
  4. ルックアライク配信の精度低下 — 類似オーディエンスの作成精度が低下

BtoBでは購買に関わる人が複数いて検討期間も長いため、「どの接点が商談につながったか」を広告の計測だけで追う方法は、もともと限界がありました。Cookie規制は、その限界を表面化させたものと捉えるのが実務的だと考えています。

自社施策の依存度を棚卸しする手順

影響の大きさは、自社がサードパーティCookieにどれだけ依存してきたかで変わります。次の順番で棚卸しすると、置き換えの優先度が決まります。

  1. 現在のマーケティング施策を一覧にし、それぞれ「サードパーティCookieを使っているか」を記入する
  2. 使っている施策について、その施策の成果指標が経営報告や予算判断に使われているかを記入する
  3. 経営報告に使われている施策から順に、下表の置き換え先を検討する
影響を受ける施策 判断の分かれ目 ゼロパーティデータでの置き換え先
リターゲティング広告 再訪の目的が「検討の後押し」か 関心テーマ別のメール配信に移す
アトリビューション計測 商談化の経路を説明する必要があるか フォームで「何をきっかけに知ったか」を申告してもらう
外部DMPによるターゲティング 狙いたい業種・課題が明確か 診断コンテンツで業種・課題を申告してもらう
ルックアライク配信 優良顧客の共通点を説明できるか 既存顧客アンケートで導入理由を集め、条件を言語化する

広告をすべて止める必要はありません。広告で獲得した接点を、ゼロパーティデータを集めるフォームや診断に誘導し、その後のコミュニケーションをCRM側で引き継ぐ形に組み替えるのが現実的な進め方です。


ゼロパーティデータの収集方法5選

ゼロパーティデータは、顧客が「答えたい」と思える接点を用意して初めて集まります。BtoBで実践しやすい方法は、アンケート、プリファレンスセンター、インタラクティブコンテンツ、段階的プロファイリング、ウェビナー・イベント登録フォームの5つです。それぞれ得意な場面が異なるため、最後に接点ごとの選び方を示します。

方法1・2:アンケート・サーベイとプリファレンスセンター

方法1:アンケート・サーベイ

最も直接的な収集方法です。顧客満足度調査、ニーズ調査、製品フィードバックを通じて、顧客の意見・課題・ニーズを直接収集します。

BtoBでの活用例は次のとおりです。

  • 導入前の課題ヒアリングフォーム
  • 製品利用後の満足度アンケート
  • 業界トレンドに関する意識調査

回答率を高めるコツは次のとおりです。

  • 質問数を、次のアクションに使うものだけに絞る
  • 回答にかかる所要時間を冒頭で明示する
  • 回答者にインセンティブを提供する(レポート、ウェビナー招待など)
  • 結果のサマリーを回答者に共有する

方法2:プリファレンスセンター

顧客が自分の情報や受信設定を自由に管理できる画面を提供します。設定項目の例は次のとおりです。

  • メール受信頻度の選択(週次・月次・四半期)
  • 関心のあるトピックの選択
  • 希望する連絡手段(メール・電話・チャット)
  • 業種・役職の自己申告

プリファレンスセンターは、配信停止を防ぐ仕組みとしても働きます。「すべて停止」しか選べない状態だと、関心の薄いテーマのメールが続いた時点で関係が途切れますが、テーマ単位で選べれば、関心のあるテーマの配信だけは残してもらえます。

方法3:インタラクティブコンテンツ

クイズ、診断ツール、ROI計算機など、ユーザーの参加を促すコンテンツで自然にデータを収集します。

コンテンツ種類 収集できるデータ BtoBでの活用例
課題診断ツール 現状の課題、優先度 「CRM成熟度診断」
ROI計算機 予算規模、期待効果 「MAツール導入ROI算出」
適性診断クイズ ニーズ、志向性 「最適なCRMプラン診断」
ベンチマーク比較 自社の現状数値 「業界平均との比較レポート」

インタラクティブコンテンツは、回答した瞬間に診断結果という見返りが返ってくる点が強みです。ただし、制作と保守に手間がかかります。診断の設問や結果の文面を見直す担当者を決められない段階では、まずアンケートやフォームの設問改善から始め、問い合わせの多いテーマが固まってから診断コンテンツに進む順番をおすすめします。

方法4・5:段階的プロファイリングとイベント登録フォーム

方法4:段階的プロファイリング(プログレッシブプロファイリング)

初回は最小限の情報のみを求め、その後のタッチポイントで段階的に情報を追加収集していく手法です。フォーム入力の負荷を分散させることで、離脱を抑えつつデータを蓄積できます。HubSpotでの実装方法は、後半のHubSpotの節で説明します。

方法5:ウェビナー・イベント登録フォーム

ウェビナーやイベントの登録時に、テーマに関連した質問を含めることで、参加者の課題や関心を事前に把握します。例えば、営業管理がテーマのウェビナーであれば「現在の案件管理の方法」を選択式で聞いておくと、当日の説明の比重を調整でき、終了後のフォローも回答に合わせて分けられます。

接点ごとの収集方法の選び方

5つの方法は、顧客との関係の深さによって向き不向きが分かれます。本記事では次のように整理します。

顧客との関係 向いている方法 主に聞くこと
初めての接点(匿名に近い) インタラクティブコンテンツ、段階的プロファイリング 課題の種類、業種
比較検討中 ウェビナー・イベント登録フォーム、課題ヒアリングフォーム 検討時期、決裁プロセス、現在の管理方法
メール配信を受けている見込み客 プリファレンスセンター 関心テーマ、受信頻度
既存顧客 満足度アンケート 導入理由、改善要望

迷ったときは、「その接点で顧客が得るものは何か」を先に書き出してください。見返りを一言で説明できない接点では、質問を増やしても回答は集まりにくいため、聞く項目を減らすか、別の接点に回します。


集める前に決めるデータ項目の設計

ゼロパーティデータの取り組みがうまくいかない原因は、収集方法よりも「集めた後にどこへ入れるか」が決まっていないことにあるケースが多いと考えています。回答がフォームツールやスプレッドシートに散らばると、営業もマーケティングも使えないデータになります。ここでは、収集を始める前に決めておきたい項目設計の考え方を説明します。

スプレッドシート管理で起きること

ウェビナーごとにアンケート結果をスプレッドシートに書き出し、展示会の名刺は別のシート、問い合わせ内容はメールの受信箱、という管理をしている場合、次のようなことが起きます。

  • 同じ人が複数のシートに別の表記で登録され、どれが最新の回答かわからない
  • 営業が商談前に見たい「その人が何に困っていると言っていたか」が、どこにあるか探せない
  • 回答を見てメールを送り分ける作業が手動になり、担当者が休むと止まる

この状態は、担当者の頑張りでは解消しにくいものです。回答がフォームから直接CRMのコンタクトに入り、過去の回答とやり取りが1つのレコードで見える状態にすることで、引き継ぎや新任の担当者でも同じ情報から動けるようになります。

「次の行動が変わる質問」だけを残す

質問を増やすほど回答者の負担は増え、管理する項目も増えます。使われない項目が大量に残ると、入力する側も見る側も、どれが大事な項目なのかわからなくなります。質問案ごとに次の基準で判断します。

確認すること 結果 次の判断
この回答によって、配信内容・営業の動き・提案内容のどれかが変わるか 変わる 採用し、どの行動につなげるかを決めておく
同上 変わらない 質問から外す
行動データや既存の情報で代わりに把握できるか できる 質問せず、既存データを使う
回答者が答えにくい内容(予算額など)か 答えにくい 選択肢を幅のある区分にするか、後の接点に回す

この基準で残った項目だけを、CRMのプロパティとして用意します。

回答形式とプロパティの型を揃える

自由記述は顧客の言葉がそのまま残る一方で、セグメントやワークフローの条件には使いにくい形式です。分岐の条件に使う項目は選択式にし、選択肢の値をCRM側のプロパティと同じにしておくと、回答がそのまま条件として使えます。HubSpotのプロパティでは、ドロップダウン選択、ラジオ選択、複数チェックボックス、単一行テキストなどのフィールドタイプを選べます(出典:Create and edit properties)。

本記事では、「分岐に使う項目は選択式」「顧客の言葉を残したい項目は自由記述」の2本立てで設計することをおすすめします。自由記述の回答は、後述するAIによる分類や、営業が商談前に読む情報として活かせます。


ゼロパーティデータの活用戦略

集めたゼロパーティデータは、申告内容に応じて次のアクションが自動で分かれる状態になって初めて価値を生みます。ここでは活用を4ステップで整理し、データの種類ごとの使い方と、失注や休眠の顧客を掘り起こす流れへの組み込み方を説明します。個別の施策ではなく、獲得から商談、失注後の再接点までを一続きのフローとして設計するのがポイントになってきます。

活用の4ステップ

  1. データの統合 — 収集したゼロパーティデータをCRMに一元管理
  2. セグメントの構築 — 課題・関心・購買段階に基づくセグメントを作成
  3. コンテンツの最適化 — セグメントごとに最適なコンテンツを配信
  4. 効果測定と改善 — パーソナライズ施策のKPIを計測し継続改善

各ステップは、前の段が整ってから次に進むのが進めやすい順番です。

ステップ 次へ進む目安
1. データの統合 主要なフォームの回答が、手作業なしでCRMのプロパティに入っている
2. セグメントの構築 各セグメントに、それぞれ別の配信内容を用意する理由を説明できる
3. コンテンツの最適化 セグメントごとのメールやコンテンツが配信され、反応が記録されている
4. 効果測定と改善 セグメント別の反応を比べ、設問や配信内容の見直しを決めている

具体的な活用シーン

収集したデータ 活用方法
関心テーマ テーマ別のメールシーケンスに振り分け
導入検討時期 タイミングに合わせた営業アプローチ
現在の課題 課題に対応するコンテンツの自動配信
予算規模 適切なプラン・サービスの提案
決裁プロセス 意思決定者向けの資料の追加提供

この表の上2行はマーケティング側の配信設計、下2行は営業側の提案準備に効く項目です。例えば「導入検討時期」を申告した見込み客について、時期が近い区分を選んだ人は営業のフォロー対象に、時期未定の人はテーマ別のメール配信に残す、という分岐を決めておくと、マーケティングと営業の間で引き渡しの基準が揃います。

失注・休眠を掘り起こすループに組み込む

ゼロパーティデータは、商談が失注した後にも使えます。商談時に申告してもらった課題や検討時期は、失注後もコンタクトに残ります。失注したコンタクトを掘り起こしの対象として扱い、申告済みの課題に関連するコンテンツを配信し続け、反応があった段階で改めて検討状況を聞く、という流れにすると、一度途切れた関係を再び商談につなげやすくなります。

失注理由を選択式で記録しておくと、掘り起こしの内容も分けられます。理由が「時期」であれば検討時期を改めて聞くアンケートを、「製品機能」であればその機能に関する情報を、という形で、申告データと失注理由を組み合わせて次の接点を決めます。


HubSpotでのゼロパーティデータ管理と活用

HubSpotは、ゼロパーティデータの収集から活用まで一貫して対応できます。フォームで集めた回答がコンタクトのプロパティに入り、そのままリストやワークフローの条件として使えるため、スプレッドシートを経由せずに配信や営業連携までつなげられます。ここでは機能の役割と、コンタクトから請求までの流れの中での置きどころを説明します。

機能一覧と役割

機能 用途
フォーム アンケート・登録フォームで直接収集
プログレッシブフィールド 段階的なデータ収集
カスタムプロパティ ゼロパーティデータの格納
スマートリスト 収集データに基づくセグメント
ワークフロー セグメント別の自動ナーチャリング
スマートコンテンツ Web表示の動的パーソナライズ

表の上から順に「集める→入れる→分ける→届ける」の流れになっています。導入時は、フォームとカスタムプロパティで「集めて入れる」までを先に固め、分岐の条件が決まってからスマートリストとワークフローを設定する順番が進めやすいと考えています。

コンタクトから請求までの流れに置く

ゼロパーティデータはマーケティング部門だけのものではありません。HubSpotではコンタクト・会社・取引・チケットが関連付けで紐づくため、申告データを営業やカスタマーサクセスの場面でも参照できます。本記事では次のように置きどころを整理します。

段階 使う申告データ 使い方の例
コンタクト(見込み客) 関心テーマ、現在の課題 ワークフローでテーマ別の配信に振り分ける
取引(商談) 導入検討時期、予算規模、決裁プロセス 営業が提案内容と提案先を決める材料にする
顧客 導入理由、満足度、改善要望 活用支援の優先度を決め、製品・サービス改善に共有する
請求・契約更新 利用状況の自己申告、今後の関心 更新や追加提案の前に改めて聞き、提案内容を合わせる

取引の段階で営業が改めて同じことを聞き直すと、顧客にとっては「前にも答えたのに」という体験になります。商談に入った時点で、コンタクトに入っている申告データを取引レコードから見られるようにしておくと、営業は申告内容を前提にした会話から始められます。

プログレッシブフィールドで段階的に集める

プログレッシブフィールドは、フォームで既に値がわかっている項目を表示する代わりに、あらかじめ用意した別の質問を表示する機能です。利用には Marketing Hub Professional または Enterprise が必要になります(出典:Use progressive fields in forms)。

設定の順番は次のとおりです。

  1. 「次の行動が変わる質問」の基準で残した項目に、聞く順番をつける(初回は連絡に必要な最小限、2回目以降に課題、検討時期の順など)
  2. フォームのプログレッシブフィールド設定で、既知の項目と置き換える質問の順番を登録する
  3. 運用を始めたら、2回目以降の質問への回答がプロパティに入っているかを、リストで定期的に見る

回答が入らない項目が続く場合は、その質問を後ろに回すか、別の接点(ウェビナー登録など)で聞く方に切り替えます。

AI(Breeze)と申告データの役割分担

HubSpotのAI機能であるBreezeを使うと、会社の業種や規模などの情報をAIで補完できます。以下の画面は、Breezeのスマートプロパティで会社一覧にAIが情報を自動入力した結果です。

スマートプロパティで会社一覧にAI自動入力された結果

AIで補完できる会社情報は質問から外せるため、フォームでは本人にしか答えられない課題や関心に集中できます。一方で、AIが補完した値は推定であり、本人の意思を表すものではありません。本記事では次のように役割を分けることをおすすめします。

AIに任せること 人が判断すること
会社情報(業種・規模など)の補完 どの申告項目を聞くかの設計
自由記述の回答のカテゴリ分類 セグメントの定義と配信内容の決定
申告内容を踏まえたメール文面の下書き 送信前の内容確認と送信判断
レコード情報の要約 大型案件への個別アプローチ

AIによる分類や下書きは、運用の初期段階ほど人が見直してから使う形が安全です。BreezeのAI機能の全体像は「HubSpotのAI活用を総まとめ|Breeze全機能の比較と業務別おすすめ活用パターン」で、CRMとAIを組み合わせた活用の方向性は「AI CRMの活用トレンドと実践的な導入ステップ」で解説しています。


データ収集時のプライバシー配慮

ゼロパーティデータは顧客の同意に基づくデータですが、集め方や使い方を誤ると、かえって信頼を損ないます。重要なのは、「顧客にデータを提供してもらう代わりに、価値あるコンテンツ・体験を返す」という等価交換の関係を保つことです。ここでは、回答してもらう前、回答してもらった後、時間が経った後の3つの場面に分けてポイントを整理します。

利用目的と見返りを回答の前に示す

フォームやアンケートの冒頭で、「回答をどう使うか」と「回答すると何が得られるか」を短く示します。例えば「ご回答内容に合わせて、関連する事例資料をお送りします」のように、利用目的と見返りを1文で伝えると、回答者は答える範囲を自分で判断できます。

利用目的に書いていない使い方をしたくなったときは、その時点で目的の記載を見直すか、改めて本人に聞く方を選びます。個人情報の取り扱いに関する考え方は、個人情報保護委員会のサイトで公開されている情報をもとに、自社の法務担当と整理しておくことをおすすめします。

受信設定を尊重する仕組みを作る

プリファレンスセンターで「月次」を選んだ人に週次の配信が届けば、申告してもらった意味がなくなります。申告された受信頻度や関心テーマは、配信リストの条件に直接組み込み、担当者が配信のたびに手で除外する運用にしないことがポイントです。手作業の除外は、担当者が変わったときや繁忙期に抜けが出やすいためです。

申告値の鮮度を保つ

ゼロパーティデータは申告した時点の情報なので、時間が経つと実態とずれていきます。次の場面を、申告値を更新してもらう機会として設計に組み込みます。

更新の機会 聞き直す項目の例
ウェビナー・イベントの登録時 現在の課題、検討時期
一定期間反応がない見込み客への配信 関心テーマ、受信頻度
失注後の掘り起こし 検討時期、失注時からの状況の変化
契約更新の前 利用状況、今後の関心

申告日もプロパティに記録しておくと、「いつ時点の回答か」が営業にも伝わり、古い申告値を前提にした提案を避けられます。


小さく始めて段階的に広げる進め方

ゼロパーティデータの取り組みは、収集方法を一度にすべて揃えようとすると、設問の設計とCRMの設定が追いつかなくなります。既にある接点のフォームを見直すところから始め、使える項目が増えてから配信の自動化や診断コンテンツに広げる順番をおすすめします。ここでは段階の分け方と、この取り組みが向かないケースを率直に整理します。

3段階の進め方

段階 やること 次の段階へ進む目安
第1段階:既存フォームの見直し 問い合わせ・資料請求フォームに、次の行動が変わる質問を選択式で加え、回答をカスタムプロパティに入れる 回答がCRMに自動で入り、営業が商談前に参照している
第2段階:分岐の自動化 申告内容をもとにリストを作り、ワークフローでテーマ別の配信や営業への通知を設定する セグメント別の配信が動き、反応の違いが見えている
第3段階:接点の拡張 プリファレンスセンター、診断コンテンツ、既存顧客アンケートを追加し、失注後の掘り起こしにもつなげる 申告データが商談から契約更新まで参照されている

第1段階の時点で、マーケティングと営業の双方が「この項目は誰がどう使うか」に合意しておくと、第2段階以降の分岐条件が決めやすくなります。

向かないケースと限界

ゼロパーティデータには限界もあります。顧客が答えてくれなければデータは集まらず、接点そのものが少ない事業では、サードパーティデータの代わりになるほどの量を得るまでに時間がかかります。また、申告内容は本人の認識であり、組織としての実際の決裁状況とずれることもあります。

そのため、ゼロパーティデータだけで全体を置き換えるのではなく、自社サイトでの行動データ(ファーストパーティデータ)と組み合わせて判断する前提で設計するのが現実的です。接点が少ない段階では、まず接点を増やす施策(コンテンツやウェビナー)を優先し、その接点に申告の機会を組み込む順番で考えてください。

関連テーマの全体像

BtoBマーケティングの全体像はBtoBマーケティング完全ガイドで体系的にまとめています。また、このテーマのカテゴリ全体はAI・マーケティングトレンドで網羅しています。


よくある質問

ゼロパーティデータとファーストパーティデータは何が違いますか?

顧客が自発的に申告したか、自社が観測したかの違いです。ゼロパーティデータはアンケート回答や好みの設定など顧客が自らの意思で提供する情報で、ファーストパーティデータはWeb閲覧履歴や購買履歴のように自社が直接収集する行動データです。ゼロパーティデータは顧客自身の申告なので推定データより正確で、明示的な意思に基づくため、本記事の4区分の表でも規制リスクが最も低い区分に位置づけています。

Cookie規制でBtoBマーケティングは具体的に何ができなくなりますか?

サードパーティCookieに依存した施策が使いにくくなります。影響が大きいのは、リターゲティング広告の精度低下、マルチタッチのアトリビューション計測の不正確化、外部DMPから購入したデータの利用制約、ルックアライク(類似オーディエンス)配信の精度低下の4点です。ブラウザ各社の対応状況は変わることがあるため、自社の施策がどれに依存しているかを棚卸しし、経営報告に使っている施策から置き換えを検討する進め方をおすすめします。

ゼロパーティデータはどうやって集めればよいですか?

顧客が答えたくなる接点を用意します。実践的なのは、アンケート・サーベイ、受信設定や関心トピックを本人が管理できるプリファレンスセンター、課題診断ツールやROI計算機などのインタラクティブコンテンツ、段階的プロファイリング、ウェビナー・イベント登録フォームの5つです。回答率を上げるには、質問を次の行動に使うものだけに絞り、所要時間を明示し、レポートやウェビナー招待などの見返りを用意し、結果のサマリーを回答者に還元することが有効です。

集めたデータはどう使えばよいですか?

CRMに一元管理したうえで、申告内容ごとに次のアクションを分岐させます。関心テーマはテーマ別メールシーケンスへの振り分け、導入検討時期は営業アプローチのタイミング調整、現在の課題は対応コンテンツの自動配信、予算規模は適切なプランの提案、決裁プロセスは意思決定者向け資料の追加提供、という形です。HubSpotであればフォームとプログレッシブフィールドで収集し、カスタムプロパティに格納、スマートリストとワークフローで配信まで一貫して運用できます。


まとめ

Cookie規制の進行に伴い、サードパーティデータに依存したマーケティングは続けにくくなりつつあります。ゼロパーティデータは、顧客の意思に基づく正確でプライバシーに配慮したデータとして、これからのBtoBマーケティングの土台になるものです。

  • ゼロパーティデータは本人の申告データで、行動データと組み合わせて使い分けると判断がぶれにくくなります
  • 収集方法は、アンケート、プリファレンスセンター、インタラクティブコンテンツ、段階的プロファイリング、イベント登録フォームの5つが実践的で、顧客との関係の深さで選び分けます
  • 集める前に「次の行動が変わる質問」だけに絞り、分岐に使う項目は選択式でCRMのプロパティと揃えます
  • 申告データはコンタクトから取引、顧客、契約更新まで参照できるようにし、失注後の掘り起こしにもつなげます
  • 「データを提供してもらう代わりに、価値あるコンテンツ・体験を返す」という等価交換の関係を保つことが、継続して申告してもらう前提になります

まずは、いま使っている問い合わせ・資料請求フォームの見直しから始めてください。次の3ステップで進められます。

  1. 既存のフォームとアンケートを一覧にし、回答がどこに保存されているかを書き出す
  2. 各質問を「次の行動が変わるか」で判定し、残す質問を選択式に整えてCRMのプロパティに対応させる
  3. 申告内容で分けたいセグメントを1つ決め、そのセグメント向けの配信を1本設定する

ゼロパーティデータをどこまで集めるかは、企業ごとに異なります。顧客との接点数や商材の検討期間によって、設けるべき質問とタイミングの最適解は変わります。まずは一つのフォームで回答と行動の食い違いを観察し、営業が実際に使えることを確かめてから接点を広げてください。申告データは集めることではなく、次の行動につながる設計にすることが価値を生みます。

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著者情報

7-1

今枝 / Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。