小売・多店舗DXの実践ガイド|POS×CRM×在庫を統合して店舗運営を最適化する

  • 1970年1月1日
  • 最終更新: 2026年4月15日
この記事の結論

小売・多店舗DXとは、POSレジ・在庫システム・EC・LINE公式などに分散した顧客データと販売データを統合し、店舗ごとの運営最適化・顧客ロイヤリティ向上・在庫効率化を同時に実現するデジタル変革です。単店舗から多店舗への展開において、各店のKPIを可視化してベンチマークする仕組みをつくることが、スケーラブルな小売経営の核心となります。

ブログ目次

記事の内容を、そのまま実務に落とし込みたい方向け

HubSpot導入、AI活用、CRM整備、業務効率化までをまとめて支援しています。記事で気になったテーマを、そのまま相談ベースで整理できます。


小売・多店舗DXとは、POSレジ・在庫システム・EC・LINE公式などに分散した顧客データと販売データを統合し、店舗ごとの運営最適化・顧客ロイヤリティ向上・在庫効率化を同時に実現するデジタル変革です。単店舗から多店舗への展開において、各店のKPIを可視化してベンチマークする仕組みをつくることが、スケーラブルな小売経営の核心となります。

「各店のPOSデータがバラバラで、全体の売上・在庫状況をリアルタイムに把握できない」「会員アプリとECサイトと実店舗で顧客情報が別管理になっている」「新店を出すたびに本部の管理コストが倍増していく」——多店舗展開する小売業の経営者や店舗運営担当者から聞かれるこうした課題は、いずれもDXの設計次第で解決できる問題です。

しかし、小売業は業種・業態によって業務構造が大きく異なり、「とりあえずITツールを導入する」だけでは効果が出ません。本記事では、POSレジの選定から始まり、CRM連携・在庫自動化・多店舗KPI管理・ロイヤリティプログラム設計まで、小売・多店舗DXを段階的に進めるための実践的な道筋を解説します。


この記事でわかること

小売業・多店舗チェーンの経営者・店舗運営責任者・DX推進担当者に向けた実践的なガイドです。

  • POSレジ選定の観点 — スマレジ・ユビレジ等の比較と、CRM連携・データ活用を前提にした選定基準を解説します。
  • OMO顧客データ統合の設計 — オンライン(EC・LINE)とオフライン(実店舗)の顧客データを統合し、一人ひとりの購買行動を可視化する方法を紹介します。
  • 在庫・発注・補充の自動化 — 多店舗間の在庫移動や自動補充発注の仕組みをどう設計するかを解説します。
  • 多店舗KPIの可視化とベンチマーク — 店舗ごとの売上・客数・客単価・在庫回転率を統合ダッシュボードで管理する方法を紹介します。
  • ロイヤリティプログラム・アプリ・LINE連携 — 顧客継続購買を促すデジタル施策とその設計ポイントを解説します。
  • HubSpotによる顧客台帳統合 — POSからCRMへのデータ連携・顧客セグメント・MAとの接続・D2C/EC併用ブランドの顧客管理を紹介します。
  • スモールスタートで進める段階設計 — 1店舗からでも始められる優先順位とロードマップを示します。

小売・多店舗DXに取り組むべき3つの背景

1. 顧客接点の多様化と「分断」問題

実店舗・EC・SNS・アプリ・LINE公式——現代の小売業では顧客との接点が急増しています。しかし多くの企業では、これらの接点ごとにシステムが分断されており、「ECで購入した顧客が実店舗に来ても、スタッフが購買履歴を知らない」「アプリ会員とPOS会員が別人として管理されている」という状態が常態化しています。

この「顧客の分断」は、パーソナライズされた対応ができないだけでなく、ロイヤリティプログラムの効果も半減させます。顧客体験の向上を軸にDXを設計することが、競合との差別化につながります。

2. 多店舗展開における管理コストの増大

1店舗・2店舗の段階では人力で回せていた管理業務が、5店舗・10店舗と拡大するにつれて急速に複雑化します。「各店長からの日報をExcelで集計して本部に共有する」「発注は各店舗の担当者がそれぞれ電話・FAXで行う」——こうした運用は、スタッフの時間を消耗させながら、本部の意思決定に必要なリアルタイムデータを欠いた状態を生み出します。

多店舗展開のスケーラビリティを確保するには、管理コストが店舗数に比例して増えない仕組みを構築することが不可欠です。

3. EC・D2Cとの並走による顧客管理の複雑化

自社ECサイトやD2Cブランドを展開しながら実店舗も運営する企業では、オンライン購買とオフライン購買のデータが別々に管理されているケースがほとんどです。同一顧客が「ECで購入した常連客」であり「週1で来店する実店舗ファン」でもある場合、その全体像が見えないと適切なアプローチが取れません。

CRMを顧客台帳の中心に据え、全チャネルのデータを統合することが、D2C/EC並走型小売業のDXの核心です。


POSレジ選定の観点|CRM連携を前提にした比較

主要POSサービスの比較

小売業のDXにおいて、POSレジはデータ収集の起点となる最重要システムです。単なるレジ機能だけでなく、CRMや在庫管理システムとのAPI連携可否が選定の核心になります。

POSサービス 得意業態 CRM連携 在庫管理 多店舗対応 月額費用目安
スマレジ アパレル・雑貨・飲食・小売全般 API公開(HubSpot連携可) 標準搭載 最大9,999店舗 0円〜(プランによる)
ユビレジ 飲食・カフェ・テイクアウト Webhook対応 オプション 多店舗プラン対応 1万円〜/月
Square スモール〜中規模小売 API公開 標準搭載 対応 0円〜(決済手数料型)
Airレジ 小規模店舗・美容・飲食 限定的 基本のみ 限定的 無料
POS+(ポスタス) ドラッグ・コンビニ型 EDI対応 高機能 本部管理機能充実 要見積

選定で最も重視すべき観点は「データをAPIで外部に出せるか」です。 スマレジはAPI公開レベルが高く、HubSpotとのカスタム連携実績も多いため、CRMへのデータ統合を視野に入れる場合の第一候補になります。

POS選定時に確認すべき5点

POSを選ぶ際には、現在の業務要件だけでなく、3年後の多店舗展開・データ活用を見据えた確認が必要です。

  1. API・Webhook対応の有無: CRM・ECとのリアルタイム連携に必要です。「CSV出力のみ」のシステムは将来的に限界に当たります。
  2. 顧客情報の管理粒度: 氏名・電話番号だけでなく、購買履歴・ポイント残高・来店頻度を管理できるかを確認します。
  3. 多店舗間の在庫参照: 別店舗の在庫を検索・取り寄せできる機能があるかどうかは顧客体験に直結します。
  4. HW(ハードウェア)の柔軟性: iPadベースのクラウドPOSは汎用機材で動作するため、機材コストを抑えられます。
  5. サポートと導入支援体制: 小売業は年末年始・セール期など繁忙期が集中します。障害時のサポート体制を確認します。

OMO設計|オンライン×オフラインの顧客データ統合

OMOとは何か、なぜ小売DXで重要か

OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインの顧客接点を統合し、顧客にとって一貫した購買体験を提供するアプローチです。「EC閲覧データを元に実店舗でのおすすめを変える」「来店履歴がある顧客にはECのカート離脱メールの文面を変える」といった施策が、OMOの具体例です。

OMOを実現するためには、顧客IDの統合が前提条件になります。「ECサイトの会員ID」「POSのポイントカードID」「LINE公式のユーザーID」「アプリのデバイスID」を、CRMの1つのコンタクトレコードに名寄せする設計が必要です。

顧客IDを統合するための設計ステップ

ステップ1: 会員番号の統一

EC・アプリ・POS会員で共通の会員番号を発行します。新規会員登録時に電話番号またはメールアドレスを必須入力とし、これをキーにして各システムの顧客データを紐づけます。

ステップ2: CRMをマスターデータとして設定

HubSpot CRMをすべてのシステムの顧客情報源(Single Source of Truth)として設定します。POS・EC・LINEからの顧客データはすべてHubSpotのコンタクトレコードに集約します。

ステップ3: 行動データの統合

実店舗の購買履歴(POS)、ECの閲覧・購入履歴、LINE開封・クリック履歴をHubSpotのタイムラインに記録します。これにより、スタッフが来店時に「この方は先週ECで閲覧していた商品を購入しに来たのかもしれない」と文脈を持った接客ができるようになります。

チャネル別データ統合の構成例

チャネル 連携データ CRMへの格納先
POSレジ(スマレジ) 購買日時・商品・金額・来店回数 カスタムプロパティ・タイムライン
ECサイト(Shopify等) 閲覧履歴・カート・購入・返品 タイムライン・取引レコード
LINE公式アカウント 友達追加・メッセージ開封・クリック タイムライン・リスト
アプリ ポイント残高・スキャン行動・位置情報 カスタムオブジェクト
実店舗スタッフ メモ・接客履歴・クレーム対応 コンタクトのメモ・チケット

在庫・発注・補充の自動化

多店舗在庫管理の課題

単店舗なら「在庫が少なくなったら発注する」という運用でも回せますが、10店舗・20店舗になると、「A店では在庫過剰なのにB店では欠品している」「本部が全店の在庫状況をリアルタイムに把握できない」「発注業務が各店舗に分散していて管理が非効率」という問題が表面化します。

自動化の設計ポイント

在庫の集中管理

クラウドPOSとWMS(倉庫管理システム)を連携させ、全店舗の在庫状況を本部がリアルタイムに一覧できる環境を整えます。スマレジの場合、在庫管理機能が標準搭載されており、商品・店舗・ロット別の在庫数をダッシュボードで確認できます。

自動補充発注のロジック

各SKUに「発注点(安全在庫)」と「発注量」を設定し、在庫数が発注点を下回ったタイミングで自動的に本部または仕入先へ発注リクエストが生成される仕組みを構築します。これにより、各店舗スタッフが発注判断をする必要がなくなり、欠品・過剰在庫の両方を抑制できます。

店舗間移動の効率化

A店で余剰になっている在庫をB店に移動する「店間移動」の仕組みをシステム化します。本部がダッシュボードで余剰・不足を検知し、移動指示を出す運用フローを設計することで、廃棄ロスと欠品損失を同時に削減できます。

季節変動への対応

過去の販売データを分析し、季節・曜日・イベントごとの需要変動パターンを把握します。繁忙期前に自動的に安全在庫水準を引き上げる設定や、セール期の追加発注トリガーを設計することで、機会損失を最小化できます。


多店舗KPIの可視化とベンチマーク

店舗間で比較すべきKPI

多店舗展開で最も効果的な管理手法は、店舗間のKPIをベンチマークして「なぜこの店が高いのか・低いのか」を分析することです。全店舗のデータが統合されて初めて、優秀店舗の成功要因を他店に横展開できるようになります。

KPI指標 定義 分析の観点
日別・月別売上 レシートベースの売上金額 前月比・前年同月比・予算比
客数(来店者数) レジ通過人数またはカウンター計測 時間帯・曜日別の変動パターン
客単価 売上÷客数 商品ミックス・アップセル効果
転換率(CVR) 購買客数÷来店者数 接客品質・商品配置の影響
在庫回転率 売上原価÷平均在庫金額 過剰在庫・欠品の判断基準
リピート率 2回以上購買の顧客比率 ロイヤリティ施策の効果測定
会員獲得率 新規会員登録数÷来店者数 CRM活用の前提となる指標

ダッシュボードの設計方針

HubSpot CRMのカスタムレポートとダッシュボード機能を活用し、本部が全店舗のKPIをリアルタイムで確認できる環境を構築します。重要なのは「見るだけ」のダッシュボードではなく、「アクションにつながる設計」です。

例えば、「リピート率が全店平均より10ポイント低い店舗」を自動でフラグ立てし、その店舗の会員へのフォローアップキャンペーンを優先的に実施するというトリガーを設定することで、データから施策への自動連鎖が生まれます。

今枝が繰り返し強調するように、「KPIは見るためではなく、動くために設計する」という思想がDX推進の核心です。数値を可視化しても、それをアクションに変換するワークフローがなければ、ダッシュボードは単なる壁飾りになります。


ロイヤリティプログラム・アプリ・LINE公式連携

小売業における顧客継続購買の仕組み

新規顧客獲得のコストはリピート顧客維持の5倍以上とされており、小売業のDXにおいて既存顧客のロイヤリティを高める施策は最も高い投資対効果を持ちます。デジタルツールを活用したロイヤリティプログラムの設計が、持続的な収益増加の鍵となります。

ポイントプログラムのデジタル化

紙のスタンプカードや磁気カードのポイントプログラムは、顧客データが貯まらないという致命的な弱点があります。アプリ・LINE・会員Webと連携したデジタルポイントプログラムに移行することで、以下の価値が生まれます。

  • 来店・購買の都度、顧客プロフィールにデータが積み上がる
  • ポイント残高・有効期限の自動通知でリピート来店を促進できる
  • 購買金額・頻度に応じた会員ランク制度で、上位顧客の優遇ができる
  • ポイント失効前のリマインドメールやLINEプッシュでCVRが向上する

LINE公式アカウント連携の活用

LINE公式アカウントは、開封率がメールの10倍以上と言われており、小売業の顧客コミュニケーションで最も費用対効果が高いチャネルの一つです。LINE連携で実現できる主な施策を整理します。

  • 友達追加→会員登録の自動化: LINE登録時に自動でCRMのコンタクト作成と会員ID発行を行います。
  • 購買後のサンクスメッセージ: POS購買データをトリガーに、自動でLINEへのクーポンや関連商品のご案内を送信します。
  • セグメント配信: 購買履歴・ポイントランク・来店頻度に基づいたセグメント別メッセージで、開封率・クリック率を最大化します。
  • 誕生日・記念日クーポン: CRMに登録された誕生日情報を元に、自動で特別クーポンをLINE送信します。

HubSpotとLINE公式アカウントはAPI連携ツール(Make・Zapier等)を経由して繋げることができ、LINE経由の顧客行動をCRMのタイムラインに記録することが可能です。HubSpotのワークフロー機能を活用すれば、購買トリガーからのメッセージ配信を自動化できます。


HubSpotで実現する小売業の顧客台帳統合

なぜ小売業にHubSpotが有効なのか

HubSpotはBtoB向けのCRMと思われがちですが、BtoC小売業の顧客管理においても非常に有効です。特に以下の理由から、多店舗・D2C・EC併用型の小売業との相性が高いと言えます。

  • マーケティングオートメーション(MA)が標準搭載: メール・LINE・SMSなど複数チャネルへのシーケンス配信が設定できる
  • カスタムプロパティで業種特化の項目を自由に追加: 「累計購買金額」「最終来店日」「お気に入り店舗」「会員ランク」など小売業特有の項目を設定できる
  • ダッシュボード・レポートが柔軟: 店舗別・商品別・会員セグメント別のレポートをカスタム設計できる
  • API連携先が豊富: Shopify・スマレジ・Zapier・Makeなど主要ツールとの連携実績が多い

BtoC小売とBtoB卸で異なるCRM設計

同じ小売業でも、エンドユーザー向け(BtoC)と法人・卸先向け(BtoB)では、CRMの設計が大きく異なります。

BtoC小売では「コンタクト」レコードを中心に、購買履歴・会員ランク・セグメントを管理します。顧客数が多いため、セグメント配信・自動フォローアップの設計が重要になります。

一方、BtoB卸(取引先小売チェーンや法人顧客向け)では、「会社」レコードを中心に、担当者・取引条件・商談パイプラインを管理します。卸売業DXのCRM活用では、得意先・仕入先の両方を管理する商流管理の設計が必要です。

D2C/EC併用ブランドでは、ECサイト(Shopify等)の購買データをHubSpotに同期し、実店舗のPOSデータとマージする「統合顧客台帳」の設計が核心になります。ExcelからCRMへの移行は、顧客管理のデジタル化における最初の一手として有効です。

HubSpot連携の具体的な構成例

[POS(スマレジ)]
      ↓ API連携(Make/Zapier)
[HubSpot CRM]
      ↑ API連携(Shopify Plugin)
[EC(Shopify)]
      ↑ LINE MCP / API連携
[LINE公式アカウント]
      ↑ カスタム連携
[会員アプリ]

この構成により、どのチャネルで購買・行動が発生しても、HubSpotのコンタクトレコードにリアルタイムで集約されます。HubSpotのワークフロー(Marketing Hubの活用を参照)を設定することで、来店・購買・ポイント失効などのイベントをトリガーにした自動アクションが実現します。


スモールスタートで進める小売DXの段階設計

多店舗DXを「全部一度に」進めようとすると、プロジェクトが肥大化して失速するケースが多く見られます。今枝が一貫して推奨する「スモールスタート→段階的拡張」の考え方を小売DXに適用すると、以下のようなロードマップになります。

フェーズ1:データの土台を作る(1〜3ヶ月)

まず最初に取り組むべきは、「顧客データと販売データを一元管理できる土台の構築」です。具体的には以下を実施します。

  • クラウドPOSの導入またはAPI連携の設定(既存POSのデータエクスポート確認)
  • HubSpot CRMの初期設定(カスタムプロパティ・パイプライン設計)
  • POSデータのCRM連携(購買日時・金額・商品カテゴリをコンタクトに同期)

この段階でEC・LINE・アプリとの全面統合を目指す必要はありません。まず「実店舗購買履歴がCRMに蓄積される状態」を作ることが最優先です。

フェーズ2:顧客コミュニケーションを自動化する(3〜6ヶ月)

データの土台ができたら、次は「顧客への自動コミュニケーション」を設計します。

  • メール・LINEでの来店後フォローアップの自動化
  • リピート来店を促すポイント残高通知・クーポン配信
  • 休眠顧客(最終来店から90日以上)へのウィンバック施策

この段階では完璧なパーソナライズは不要です。「購買後に自動でサンクスメッセージが届く」「誕生日に特典クーポンが届く」というシンプルな仕組みから始めるだけで、リピート率の改善効果を実感できます。

フェーズ3:多店舗のKPI管理を統合する(6〜12ヶ月)

顧客管理とコミュニケーション自動化ができたら、多店舗管理の効率化に着手します。

  • 全店舗の売上・在庫データを統合ダッシュボードに集約
  • 店舗間KPIのベンチマーク設計と異常検知の仕組み
  • 在庫自動補充発注のルール設定

フェーズ4:データ活用による成長投資(12ヶ月〜)

蓄積されたデータを元に、より高度な施策に取り組みます。

  • 顧客セグメント×商品レコメンデーションの最適化
  • LTV(顧客生涯価値)最大化に向けたロイヤリティプログラムの設計
  • 新店出店判断へのデータ活用(エリア別会員分布・来店頻度分析)

多店舗DXで陥りやすい3つの失敗パターン

失敗1:POSを刷新したがデータを活用していない

新しいクラウドPOSを導入して販売管理は便利になったが、蓄積されたデータがPOSシステムの中に閉じており、CRMやMAと連携していないケースは非常に多く見られます。「データが溜まっているのに活用できていない」状態は、最もよくある機会損失です。

対策: POS導入時から「このデータをどこに、どう活用するか」を設計してから選定する。

失敗2:会員制度とポイントがデジタルと連携していない

紙のスタンプカードや磁気ポイントカードを続けている限り、顧客データは貯まりません。「デジタル移行を検討したが、既存会員の反発が怖くて先送りにしている」という状況は、競合との差を広げ続けるだけです。

対策: まず新規会員からデジタルポイントに移行し、既存会員には移行インセンティブ(ポイント増量等)を提供する段階的移行を設計する。

失敗3:各店舗の運用が属人化して本部管理が機能しない

本部でKPIダッシュボードを構築しても、各店舗でのデータ入力が不統一だと、比較可能なデータが集まりません。「A店はPOSで会員登録を勧めているが、B店では声がけしていない」という運用の属人化が、データの品質を低下させます。

対策: 本部が統一の業務フローと入力ルールをマニュアル化し、店舗スタッフ向けの研修と運用確認の仕組みを設ける。営業DXの進め方で解説している標準化の手法も参考になります。


小売・多店舗DXの推進やHubSpotを活用した顧客台帳統合については、StartLinkにご相談ください。スマレジ・Shopify・LINE公式アカウントとHubSpotを連携した統合顧客管理の設計から、多店舗KPI管理のダッシュボード構築、ロイヤリティプログラムの設計まで、実務に即した段階的な支援を行っています。

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まとめ

小売・多店舗DXを成功させるための要点を整理します。

  • POSはデータ活用を前提に選ぶ: API公開レベルが高いスマレジなど、CRM・ECと連携できるクラウドPOSを起点にデータ基盤を構築することが、全ての施策の前提条件になります。
  • OMO設計で顧客IDを一本化する: EC・実店舗・LINE・アプリに分散した顧客データをHubSpotに名寄せすることで、チャネルを横断したパーソナライズ対応と正確なロイヤリティ管理が可能になります。
  • 在庫は集中管理で欠品と過剰在庫を同時に防ぐ: 多店舗展開では在庫管理の分散が機会損失と廃棄ロスの両方を生む。発注点管理と店間移動の仕組みをシステム化することが収益率の改善に直結します。
  • KPIはダッシュボードで「動くために」設計する: 店舗間ベンチマークで下位店舗を早期に検知し、自動的にフォローアップキャンペーンが発動する設計が、データ活用の本質です。
  • スモールスタートで段階的に拡張する: フェーズ1で実店舗購買履歴のCRM蓄積から始め、自動化・KPI統合・データ活用へと順番に積み上げることで、プロジェクトを失速させずに全体DXを実現できます。

まずは「実店舗購買データがCRMに蓄積される状態」を作ることが最初のゴールです。クラウドPOSとHubSpotのAPI連携を構築するだけで、顧客管理の質が根本的に変わります。


よくある質問(FAQ)

Q1: 小売業のDXは何から始めるべきですか?

まずクラウドPOSの導入またはAPI連携の設定から始め、購買データをCRMに蓄積する土台を作ることが最優先です。データが蓄積され始めたら、会員登録のデジタル化→フォローアップ自動化の順に展開します。最初から全チャネル統合を目指す必要はなく、「実店舗購買履歴がCRMに入る状態」を最初のゴールに設定してください。

Q2: スマレジとHubSpotは直接連携できますか?

スマレジはAPI・Webhookを公開しており、MakeやZapierなどのiPaaS(統合プラットフォーム)を経由してHubSpotと連携できます。購買イベント発生時にHubSpotのコンタクトを作成・更新したり、カスタムプロパティに購買情報を書き込むことが可能です。完全自動化には開発コストがかかりますが、定期的なCSVエクスポート→インポートから始めることもできます。

Q3: 多店舗展開している場合、CRMはどう設計すればよいですか?

HubSpotでは「コンタクト」レコードに「担当店舗」「お気に入り店舗」「最終来店店舗」などカスタムプロパティを追加することで、店舗別の顧客管理が可能です。店舗ごとのチームを作成し、担当エリアの顧客のみ閲覧・編集できる権限設定も可能なので、本部と各店舗の役割分担を明確にした設計ができます。

Q4: LINE公式アカウントとHubSpotを連携するにはどうすればよいですか?

LINE公式アカウントのMessaging APIとHubSpot APIを、Make(旧Integromat)やZapierを経由して連携させるのが最も一般的な方法です。LINE友達追加→HubSpotコンタクト作成、LINE経由のメッセージ送信→HubSpotタイムライン記録、HubSpotワークフロートリガー→LINE Pushメッセージ送信、といった双方向の自動化が実現します。

Q5: D2CブランドがECと実店舗の顧客データを統合するには何が必要ですか?

まずEC(Shopify等)とPOS(スマレジ等)のそれぞれに「共通の顧客IDまたはメールアドレス」を持たせることが前提条件です。次に、HubSpotをマスターデータとして、ShopifyのHubSpotプラグインとPOSのAPI連携を設定します。同一メールアドレスを持つコンタクトの購買履歴が自動的に統合され、オンライン×オフライン双方の行動履歴が1つのレコードで確認できるようになります。

Q6: 小売業のDXに必要な予算目安はどれくらいですか?

スモールスタートであれば、クラウドPOS(スマレジ月額0円〜)+HubSpot CRM(無料プランから)+Make/Zapier連携(月額2,000〜5,000円)の組み合わせで、月額数万円以内から始められます。会員アプリや高度なMA機能を追加していく段階で費用は増えますが、最初から大規模投資をする必要はありません。各ステップの効果を確認しながら予算を配分する「段階的投資」を推奨します。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink 代表取締役。累計150社以上のHubSpotプロジェクト支援実績を持ち、Claude CodeやHubSpotを軸にしたAI活用支援・経営基盤AXのコンサルティング事業を展開。
HubSpotのトップパートナー企業や大手人材グループにて、エンタープライズCRM戦略策定・AI戦略ディレクションを経験した後、StartLinkを創業。現在はCRM×AIエージェントによる経営管理支援を専門とする。