「営業レポートを作るたびにExcelで集計し直している」「経営会議の前にデータを整理する作業で半日かかる」——こうした課題を抱えている企業は少なくありません。
HubSpot Data Studioは、CRMに蓄積されたデータをノーコードで可視化・分析できるレポーティング環境です。SQLやBIツールの知識がなくても、ドラッグ&ドロップでダッシュボードやカスタムレポートを構築できます。
本記事では、Data Studioの基本的な使い方から実務で成果を出すための設計ポイントまで、HubSpot導入支援の現場で見えてきた活用のコツを交えて解説します。
この記事でわかること
- HubSpot Data Studioの基本概念と位置づけ
- ノーコードでレポートを作成する具体的な手順
- ダッシュボード設計のベストプラクティス
- 複数データソースを組み合わせた高度な分析方法
- よくある失敗パターンと回避策
HubSpot Data Studioとは
概要と位置づけ
HubSpot Data Studioは、HubSpotプラットフォーム内のデータ可視化・分析機能です。従来のレポート機能をさらに拡張し、複数のオブジェクト(コンタクト・会社・取引・チケット等)を横断した分析が可能になっています。
ここが結構ミソになってくるのですが、Data StudioはHubSpotのCRMデータと直接接続しているため、外部BIツールへのデータエクスポートや連携設定が不要です。データの鮮度がリアルタイムに保たれるため、「先月のレポートと今月のレポートで集計基準が違う」といった問題が起きにくくなります。
Data Hubとの関係
Data Studioは可視化・レポーティングに特化した機能であり、Data Hub(旧Operations Hub)が担うデータ同期・クレンジング・品質管理と補完関係にあります。Data Hubで整えたデータをData Studioで分析する、という全体フローを意識いただくと効果的です。
Data Studioの基本的な使い方
ステップ1:ダッシュボードを作成する
HubSpotの「レポート」メニューからダッシュボードを新規作成します。テンプレートから始めるか、ゼロから構築するかを選択できます。
まずはテンプレートを使っていただくのがおすすめです。営業会議用、マーケティングKPI用、カスタマーサクセス用など、用途別のテンプレートが用意されています。
ステップ2:レポートを追加する
ダッシュボードにレポートを配置していきます。Data Studioでは以下の3種類のレポート作成方法があります。
| レポート種別 |
特徴 |
適するケース |
| 既存レポート |
HubSpotが標準で用意 |
基本KPIの確認 |
| 単一オブジェクトレポート |
1つのオブジェクトを分析 |
取引件数・金額の推移 |
| カスタムレポート |
複数オブジェクトを横断 |
マーケから営業への転換率 |
実は新しく作らなくてもすでにあるレポートで足りるケースがあります。まず土台は既存のもので作りつつ、足りない部分だけカスタマイズしていただくという形がいいのかなと思います。
ステップ3:フィルターと期間設定
ダッシュボード全体に適用するフィルターを設定します。担当者別・チーム別・期間別など、会議の目的に合わせてフィルターを用意しておくと、その場でドリルダウンできて便利です。
実務で使えるダッシュボード設計パターン
営業会議用ダッシュボード
営業会議では、パイプラインの進捗と受注予測が最も重要な指標です。以下のレポートを配置するのが効果的です。
- パイプライン全体のファネルレポート(取引ステージ別件数・金額)
- 今月のクローズ予定案件一覧
- 担当者別の受注見込み(加重金額ベース)
- 前月比の商談創出数推移
例えば1,000万円の案件を3件持っている営業の方がいたとして、全部アポ取得段階だった場合、受注確度10%をかけると300万円というフォーキャストになります。こうした加重金額ベースの管理をData Studioで可視化できるのが大きなメリットです。
経営会議用ダッシュボード
経営層にはサマリーレベルの情報が必要です。詳細な操作画面ではなく、「数字がパッと見える」ダッシュボードを設計しましょう。
ダッシュボードを意味合いごとに営業会議用・経営会議用・タスク管理ボード、といった形で分けていただくとシーンで使い分けていただくことができます。
マーケティングKPIダッシュボード
リード獲得数、MQL転換率、チャネル別のコンバージョン率など、マーケティング部門が追うべき指標を集約します。ライフサイクルステージの推移レポートを入れておくと、ナーチャリングの効果測定にも使えます。
Data Studioの応用テクニック
複数オブジェクトの組み合わせ分析
Data Studioの真価は、複数オブジェクトを横断して分析できるところです。例えば、「マーケティングキャンペーン→リード獲得→商談化→受注」という一気通貫のフローを1つのレポートで可視化できます。
時点データの固定化
HubSpotのデータはリアルタイムで更新されるため、「先月時点での受注見込み」と「今月時点での受注見込み」で数字がずれることがあります。ダッシュボードの定期配信機能を使って、毎週水曜朝8時にPDF/PowerPoint形式で自動送信する設定にしておくと、スナップショットとしてデータを保存できます。
カスタムレポートビルダーの活用
単一レポートで足りない場合は、カスタムレポートビルダーで2軸グラフやピボットテーブルを作成します。ただし、Professionalプラン以上が必要になる点にはご注意ください。カスタムレポートとワークフロー、この2つがProfessionalへのアップグレードを検討する際の大きな判断ポイントになります。
Data Studio活用の注意点と限界
プラン別の制限
| プラン |
レポート数上限 |
カスタムレポート |
ダッシュボード配信 |
| 無料 |
基本レポートのみ |
不可 |
不可 |
| Starter |
制限あり |
制限あり |
不可 |
| Professional |
100件 |
可 |
可 |
| Enterprise |
500件 |
可(拡張) |
可 |
Proプランではレポート100件という上限があります。レポートが増えてきたら、古いものを整理するか、Enterpriseへのアップグレードを検討する必要があります。
Data Studioだけでは解決できないこと
Data Studioはあくまで「可視化」のツールです。データの品質が悪ければ、レポートの信頼性も下がります。まずCRMへのデータ入力を「仕組み化」することが前提になります。必須入力プロパティの設定やワークフローによる自動入力で、データ品質を担保した上でData Studioを活用いただくのが正しい順序です。
また、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理しているデータをData Studioで分析したい場合は、まずHubSpotにインポートする必要があります。スプレッドシートでの管理が続いている限り、Data Studioの恩恵は限定的になるかなと思います。
まとめ
HubSpot Data Studioは、ノーコードでビジネスデータを可視化できる強力なツールです。ただし、最大の効果を発揮するには「正しいデータが入っている」ことが前提となります。
まずは営業会議用のダッシュボードを1つ作るところから始めて、段階的にマーケティングKPIやカスタマーサクセスのレポートを追加していく形がおすすめです。CRMにデータが蓄積されるほどレポートの精度が上がり、データドリブンな意思決定が可能になります。
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よくある質問(FAQ)
Q. Data StudioはHubSpotの無料プランでも使えますか?
基本的なレポート機能は無料プランでも利用できます。ただし、カスタムレポートやダッシュボードの定期配信など、実務で特に役立つ機能はProfessional以上で利用可能です。まず無料プランで基本的なレポートを確認いただき、分析ニーズが増えてきた段階でアップグレードを検討するのが現実的です。
Q. Data StudioとGoogleのLooker Studio(旧Data Studio)は違うものですか?
はい、まったく別のサービスです。HubSpot Data StudioはHubSpotプラットフォーム内のレポーティング機能であり、Google Looker Studioは外部BIツールです。HubSpot Data StudioはCRMデータと直接接続しているため、データ連携の設定が不要という大きな利点があります。
Q. ExcelのレポートをData Studioに移行するにはどうすればいいですか?
まずExcelで管理しているデータの中で、HubSpotにインポートすべきものを整理します。コンタクト・会社・取引データをHubSpotに取り込んだ上で、Data Studioでレポートを再構築する流れになります。一度にすべて移行するのではなく、まずは営業パイプラインのデータから始めるのがおすすめです。
Q. 外部データソース(Google AnalyticsやSNS広告など)のデータも可視化できますか?
HubSpotと連携済みのデータソースであれば、Data Studioで分析できます。Google Analyticsのデータや広告プラットフォームの成果データは、HubSpotの連携機能を通じて取り込めます。ただし、HubSpotに入っていないデータは可視化できないため、まず連携設定を完了させる必要があります。