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「営業の属人化が解消できない」「マーケが集めたリードが商談につながらない」「受注後のフォローが手薄で解約が増えている」——こうした課題に対する解決策として、多くのBtoB企業が注目しているのが「THE MODEL」と呼ばれる営業プロセスモデルです。
THE MODELは、セールスフォース・ドットコム(現Salesforce)の日本法人で実践され、福田康隆氏の著書によって広く知られるようになった営業組織の分業モデルです。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4つの部門が連携し、顧客の獲得から成功までを一貫して管理します。
本記事では、THE MODELの定義と背景から、4部門の具体的な役割とKPI、導入のステップ、成功・失敗パターン、そしてHubSpotでの実装方法まで実践的に解説します。
この記事でわかること
- THE MODELの定義と誕生の背景
- 4部門(マーケ・IS・FS・CS)の具体的な役割とKPI
- THE MODEL導入の5ステップ
- 成功する企業と失敗する企業の違い
- 自社の規模に合わせたTHE MODELの適用方法
- HubSpotでTHE MODELを実装する方法
THE MODELとは
定義
THE MODELとは、BtoBの営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つの機能に分業し、各部門がそれぞれのKPIに責任を持ちながら、一連の顧客体験を提供する営業組織モデルです。
THE MODELの基本構造
マーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス → カスタマーサクセス
(リード獲得) (商談機会の創出) (受注) (継続・拡大)
| 部門 | 役割 | 主要KPI | アウトプット |
|---|---|---|---|
| マーケティング | 見込み顧客の獲得・育成 | リード数、MQL数 | MQL(有望リード) |
| インサイドセールス(IS) | 商談機会の創出 | コール数、商談化率 | SQL(商談候補) |
| フィールドセールス(FS) | 提案・交渉・受注 | 商談数、受注率、受注金額 | 受注 |
| カスタマーサクセス(CS) | 顧客の成功と継続利用 | 解約率、NPS、アップセル | 継続・拡大 |
THE MODELが生まれた背景
THE MODELが注目される背景には、BtoBの営業環境の大きな変化があります。
| 従来の営業 | THE MODELの営業 |
|---|---|
| 一人の営業が全プロセスを担当 | 4つの専門部門が連携 |
| 属人的なスキルに依存 | プロセスとデータに基づく |
| 新規と既存を同じ営業が担当 | 新規獲得と既存深耕を分業 |
| 成果が個人の能力に左右される | 組織として再現性のある仕組み |
| 顧客データが個人に蓄積 | CRMに一元管理 |
THE MODELの数式
THE MODELの本質は、各段階の「量」と「転換率」を数式で管理することにあります。
売上 = リード数 × 商談化率 × 受注率 × 受注単価
この数式の各要素を各部門が責任を持って改善することで、組織全体として売上を最大化します。
4部門の役割とKPI
マーケティング部門
役割: 見込み顧客(リード)を獲得し、育成してインサイドセールスに引き渡す
主要な活動:
- コンテンツマーケティング(ブログ、ホワイトペーパー)
- デジタル広告の運用
- ウェビナー・イベントの企画・運営
- メールナーチャリング
- リードスコアリング
KPI:
| KPI | 説明 | 目標設定の考え方 |
|---|---|---|
| リード獲得数 | 新規リードの総数 | 売上目標から逆算 |
| MQL数 | 商談化の可能性が高いリード数 | リード数×MQL化率 |
| CPL | リード1件あたりの獲得コスト | チャネル別に管理 |
| MQL化率 | リードからMQLへの転換率 | 10〜25%が目安 |
| パイプライン貢献額 | マーケ起因の商談金額 | 全体の40〜60%が理想 |
インサイドセールス(IS)部門
役割: MQLに対して電話やメールでアプローチし、商談の機会を創出してフィールドセールスに引き渡す
主要な活動:
- MQLへの初回コンタクト(電話・メール)
- ヒアリングによるニーズ・課題の把握
- BANT条件の確認
- 商談アポイントの設定
- フィールドセールスへの引き継ぎ
インサイドセールスの2つのタイプ:
| タイプ | SDR(Sales Development Rep) | BDR(Business Development Rep) |
|---|---|---|
| アプローチ対象 | インバウンドリード(MQL) | アウトバウンドターゲット |
| 活動 | MQLのフォローアップ | ターゲット企業への新規開拓 |
| 重要スキル | ヒアリング力、BANT確認 | リサーチ力、アプローチ力 |
| KPI | 商談化率 | アポイント獲得数 |
KPI:
| KPI | 説明 | 目標設定の考え方 |
|---|---|---|
| 架電数/メール数 | アクティビティの量 | 1日30〜50コールが目安 |
| コネクト率 | 繋がった率 | 架電の20〜30% |
| 商談化率 | MQLから商談に繋がった率 | 30〜50% |
| SQL数 | 商談化したリード数 | MQL数×商談化率 |
| 平均対応速度 | MQL受領から初回コンタクトまでの時間 | 5分以内が理想、24時間以内が最低ライン |
フィールドセールス(FS)部門
役割: SQLに対して提案・交渉を行い、受注を獲得する
主要な活動:
- 初回商談(ヒアリング・課題整理)
- 提案書・見積書の作成
- デモンストレーション
- 稟議支援
- 契約交渉・クロージング
KPI:
| KPI | 説明 | 目標設定の考え方 |
|---|---|---|
| 商談数 | 保有する商談の総数 | SQL数×商談受諾率 |
| 受注率 | 商談から受注への転換率 | 15〜30%が目安 |
| 受注金額 | 獲得した契約金額の合計 | 受注数×平均受注単価 |
| 平均受注単価 | 1件あたりの受注金額 | アップセル・クロスセルで向上 |
| 営業サイクル | 商談開始から受注までの期間 | 業種・単価による |
| パイプライン金額 | 保有商談の合計金額 | 月間目標の3〜4倍が理想 |
カスタマーサクセス(CS)部門
役割: 受注後の顧客が「成功」を実感できるよう支援し、継続利用とアップセル・クロスセルを実現する
主要な活動:
- オンボーディング(導入支援)
- 定期的なレビューミーティング
- 利用状況のモニタリング
- 追加提案(アップセル・クロスセル)
- 解約防止(チャーン防止)
KPI:
| KPI | 説明 | 目標設定の考え方 |
|---|---|---|
| 解約率(Churn Rate) | 一定期間内に解約した顧客の割合 | 月次1%以下が理想 |
| NRR(Net Revenue Retention) | 既存顧客からの売上維持率 | 100%以上が目標 |
| NPS | 顧客ロイヤルティ指標 | 業界ベンチマーク以上 |
| アップセル率 | 上位プランへの移行率 | — |
| ヘルススコア | 顧客の健康状態を示すスコア | 独自設計 |
THE MODEL導入の5ステップ
ステップ1:現状の営業プロセスを可視化する
まず、現在の営業プロセスを「リード獲得→商談→受注→顧客維持」の流れで書き出し、各段階の量と転換率を把握します。
ステップ2:各段階の定義とKPIを設計する
MQL、SQL、商談の定義を明確にし、各部門のKPIを設定します。
定義のすり合わせで決めるべきこと:
| 項目 | 決定事項 |
|---|---|
| リードの定義 | どの情報が揃ったらリードとするか |
| MQLの基準 | スコア閾値、属性条件 |
| SQLの基準 | BANT条件のどこまで満たす必要があるか |
| 引き渡しのタイミング | いつ、どのように次の部門に引き渡すか |
| リサイクルの条件 | SQLにならなかったMQLをどう扱うか |
ステップ3:CRM/MAツールを整備する
THE MODELを実践するには、全部門が共通のデータ基盤を使うことが前提です。CRM/MAツールで以下を管理します。
- リード情報の一元管理
- ライフサイクルステージの追跡
- 部門間の引き継ぎの記録
- パイプラインの可視化
- KPIダッシュボード
ステップ4:段階的に分業を進める
一度にすべてを分業するのではなく、段階的に組織を構築します。
| 段階 | 体制 | 対象企業規模 |
|---|---|---|
| Phase 1 | マーケ担当を1名配置、営業がIS+FSを兼任 | 〜30名 |
| Phase 2 | IS担当を独立、マーケ+IS+FSの3部門体制 | 30〜100名 |
| Phase 3 | CS担当を独立、4部門体制を完成 | 100名〜 |
| Phase 4 | 各部門に専任マネージャーを配置、データドリブン経営 | 300名〜 |
ステップ5:定期的にレビューし、改善を繰り返す
月次で全部門が集まり、ファネル全体の数値をレビューします。
月次レビューのアジェンダ:
- 各部門のKPI達成状況の確認
- ファネルのボトルネック特定
- 部門間の引き継ぎ品質の確認
- 改善アクションの決定
- 次月の目標設定
成功パターンと失敗パターン
成功パターン
| パターン | 特徴 |
|---|---|
| データドリブン | 感覚ではなくデータに基づいて意思決定 |
| 部門間コミュニケーション | 定期的な連携会議とフィードバックループ |
| 段階的導入 | 一度にすべてを変えず、段階的に分業を進める |
| 顧客視点 | 部門の壁を越えて、顧客体験の一貫性を重視 |
| ツールの統合 | 全部門が同一のCRM/MAプラットフォームを使用 |
失敗パターン
| パターン | 原因 | 回避策 |
|---|---|---|
| サイロ化 | 各部門が自部門のKPIだけを追求 | 全体の売上・LTVを共通の上位KPIとする |
| MQL/SQLの品質問題 | 定義が曖昧で営業が「使えない」と感じる | 定義を明確にし、定期的に見直す |
| ツール未整備で導入 | Excelで無理に管理しようとする | CRM/MA導入を先に行う |
| 一気に導入して混乱 | 現場の理解と準備が追いつかない | Phase分けで段階導入 |
| IS/CSの役割が形骸化 | 結局FSが全部やっている | ISの成果を可視化し、価値を証明する |
HubSpotでTHE MODELを実装する方法
HubSpotはTHE MODELの実装に最適なプラットフォームの一つです。
ライフサイクルステージの活用
| THE MODELの段階 | HubSpotライフサイクルステージ | 自動化 |
|---|---|---|
| リード | Lead | フォーム送信時に自動設定 |
| MQL | Marketing Qualified Lead | スコア閾値到達で自動遷移 |
| SQL | Sales Qualified Lead | ISが手動で変更 or ワークフローで自動化 |
| 商談 | Opportunity | 取引(Deal)作成時に自動遷移 |
| 顧客 | Customer | 取引ステージ「受注」時に自動遷移 |
HubSpotの機能とTHE MODELの対応
| 部門 | 活用するHubSpot機能 |
|---|---|
| マーケティング | Marketing Hub(メール、LP、フォーム、ブログ、ワークフロー) |
| インサイドセールス | Sales Hub(シーケンス、タスク、コール、ミーティングリンク) |
| フィールドセールス | Sales Hub(パイプライン管理、見積書、フォーキャスト) |
| カスタマーサクセス | Service Hub(チケット、ナレッジベース、フィードバック) |
ダッシュボードの設計
HubSpotのレポート機能を使い、THE MODELの各段階を一元的に可視化するダッシュボードを構築します。
必須のレポート:
- ファネルレポート(各ステージの量と転換率)
- パイプラインレポート(商談の進捗状況)
- チャネル別リード獲得レポート
- 部門別KPI達成状況
まとめ
THE MODELは、BtoBの営業プロセスを4つの専門部門で分業し、データに基づいて管理する組織モデルです。属人的な営業から脱却し、再現性のある仕組みを構築することで、安定的な売上成長を実現します。
導入のポイントをまとめると以下の通りです。
- まずは現状の営業プロセスを可視化し、各段階の数値を把握する
- MQL/SQLの定義を明確にし、マーケと営業で合意する
- CRM/MAツール(HubSpot等)を導入し、データ基盤を整備する
- 段階的に分業を進め、無理のないペースで組織を構築する
- 月次レビューでファネル全体を確認し、ボトルネックを特定・改善する
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。