営業とマーケティングの連携SLA設計|HubSpotでリード引き渡しプロセスを最適化

  • 1970年1月1日

ブログ目次


「マーケティングがリードを渡しても営業がフォローしない」「営業から見ると、マーケが渡すリードの質が低い」——営業部門とマーケティング部門の間でこうした不満が生まれるのは、多くのBtoB企業で共通する課題です。

営業・マーケティング連携SLA(Service Level Agreement)とは、マーケティング部門と営業部門の間で「どのようなリードを」「いつまでに」「どのようにフォローするか」を明文化した合意のことです。 SLAを設計・運用することで、リードの引き渡しプロセスが明確になり、両部門の連携が劇的に改善します。

この記事では、SLAの設計方法からHubSpotでの実装、運用のポイントまで詳しく解説します。


この記事でわかること

  • 営業・マーケティング連携SLAの基本概念と必要性
  • MQL・SQLの定義とリードステージの設計方法
  • HubSpotでのSLA実装手順(ライフサイクルステージ・ワークフロー・レポート)
  • SLA運用の成功パターンと改善サイクル

なぜ営業・マーケティング連携SLAが必要なのか

取引一覧画面(リストビュー)

連携が機能しない企業の典型パターン

多くのBtoB企業で見られる営業・マーケ間の課題は以下のとおりです。

課題 マーケティング側の主張 営業側の主張
リードの質 十分なリードを渡している 質が低く商談にならない
フォロー速度 リードを渡したのに対応が遅い 優先度が判断できない
定義の不一致 MQLの基準は明確にしている その基準が現場の感覚と合わない
成果の帰属 リード獲得に貢献している 商談化は営業の努力

こうした課題の根本原因は、リードの定義・引き渡し基準・フォロープロセスが明文化されていないことにあります。SLAはこれらを解決する仕組みです。

SLAがもたらす効果

SLAを導入することで、以下の効果が期待できます。

  • リード対応速度の向上: フォロー期限が明確になるため、対応が迅速化
  • リード品質の向上: MQL基準が明確になるため、マーケもスコアリング精度を改善
  • 商談化率の向上: 適切なタイミングで適切なリードを営業に引き渡し
  • 部門間の信頼関係構築: 数値ベースの合意により感覚的な不満が減少
  • 改善サイクルの確立: 定量的なKPIで改善ポイントを特定

SLA設計の4ステップ

ライフサイクルステージ設定

ステップ1: リードステージの定義

SLA設計の第一歩は、ライフサイクルステージを使ってリードの各段階を明確に定義することです。

ステージ 定義 担当部門
サブスクライバー メルマガ登録やニュースレター登録のみ マーケティング
リード フォーム送信や資料ダウンロードでコンタクト情報を取得 マーケティング
MQL(Marketing Qualified Lead) マーケティングが「営業フォローの価値あり」と判定 マーケティング→営業
SQL(Sales Qualified Lead) 営業が「商談の可能性あり」と判定 営業
商談(Opportunity) 具体的な提案・見積もりのフェーズ 営業
顧客(Customer) 受注・契約締結 営業→CS

MQL基準の設計

MQLの基準は、属性スコア行動スコアの組み合わせで設計します。

属性スコア(最大40点)

項目 スコア
役職が決裁者レベル +15 部長以上、役員
ターゲット業種 +10 製造業、IT
従業員数が50名以上 +10 中堅企業以上
ターゲットエリア +5 首都圏

行動スコア(最大60点)

項目 スコア
料金ページ閲覧 +15 検討段階の強いシグナル
事例ページ閲覧 +10 導入検討の兆候
資料ダウンロード +10 コンテンツ関心
メール開封・クリック(3回以上) +10 継続的な関心
ウェビナー参加 +10 積極的な情報収集
ブログ3記事以上閲覧 +5 情報収集段階

MQL判定基準: 合計スコア 50点以上 → MQL化して営業に引き渡し

ステップ2: 引き渡しプロセスの設計

MQLが発生したら、営業に引き渡すプロセスを設計します。

項目 SLA内容
通知方法 HubSpotワークフローからSlack通知 + メール通知 + タスク自動作成
引き渡し情報 コンタクト名、会社名、スコア、直近のアクティビティ、流入元
初回フォロー期限 MQL化から24時間以内
フォロー方法 電話 or メール(コンタクトの行動履歴に応じて選択)
フォロー回数 最低3回(初回→3日後→7日後)

ステップ3: 営業側のSLA

営業側が守るべきSLAも明確に定義します。

SLA項目 基準値 測定方法
初回フォロー速度 MQL化から24時間以内 HubSpotのタスク完了時間
フォロー完了率 引き渡しリードの95%以上 ワークフロー完了率
SQL判定期限 MQL引き渡しから5営業日以内 ライフサイクルステージ変更日
フォロー結果の記録 全件CRMに記録 コンタクトのアクティビティログ

ステップ4: マーケティング側のSLA

マーケティング側が守るべきSLAも定義します。

SLA項目 基準値 測定方法
月間MQL創出数 月○件以上 ライフサイクルステージレポート
MQL→SQL転換率 20%以上 ファネルレポート
リード品質スコア 平均50点以上 スコアリングレポート
ナーチャリング完了率 リードの70%以上をMQL化またはDisqualify ナーチャリング進捗レポート

HubSpotでのSLA実装手順

ワークフロー一覧

1. ライフサイクルステージの設定

HubSpotには標準でライフサイクルステージが搭載されています。「設定」→「プロパティ」→「ライフサイクルステージ」で各ステージの定義を確認・カスタマイズします。

デフォルトのステージは以下の通りです。

  1. Subscriber(サブスクライバー)
  2. Lead(リード)
  3. MQL(Marketing Qualified Lead)
  4. SQL(Sales Qualified Lead)
  5. Opportunity(商談)
  6. Customer(顧客)
  7. Evangelist(エバンジェリスト)

2. リードスコアリングの設定

Marketing Hub Professional以上では、スコアリングを設定できます。

  1. 「設定」→「プロパティ」で「HubSpot Score」プロパティを開く
  2. 「正のスコア基準」でスコアを加算する条件を設定
  • ページビュー(特定URLを含む): +15点
  • フォーム送信: +10点
  • メールクリック: +5点
  1. 「負のスコア基準」でスコアを減算する条件を設定
  • 30日間アクティビティなし: -10点
  • メール配信停止: -20点

3. MQL自動判定ワークフローの構築

ワークフローを使って、スコア基準を満たしたリードを自動的にMQL化します。

ワークフロー設定例:

  • トリガー: HubSpot Score ≧ 50
  • アクション1: ライフサイクルステージを「MQL」に変更
  • アクション2: コンタクト所有者にメール通知
  • アクション3: Slack通知(チャネル: #sales-mql-alerts)
  • アクション4: タスク作成「MQLフォロー: [コンタクト名]」(期限: 24時間後)

4. 営業フォローSLAの自動監視

営業が期限内にフォローしたかを監視するワークフローも構築します。

フォロー遅延アラートワークフロー:

  • トリガー: ライフサイクルステージが「MQL」に変更された
  • 遅延: 24時間待機
  • 条件分岐: 最新のアクティビティ(メール送信 or 電話)が24時間以内にあるか
  • Yes(フォロー済み): ワークフロー終了
  • No(未フォロー): マネージャーにアラート通知

5. SLAダッシュボードの作成

カスタムレポートを使って、SLAの達成状況を可視化するダッシュボードを作成します。

推奨レポート:

レポート名 内容 種類
月間MQL創出数 月ごとのMQL数推移 棒グラフ
MQL→SQL転換率 MQLからSQLへの転換率 ファネルレポート
初回フォロー速度 MQL化からフォローまでの平均時間 数値レポート
営業担当別フォロー完了率 担当者ごとのSLA達成率 テーブルレポート
リード品質スコア分布 MQLのスコア分布 ヒストグラム
リードソース別SQL率 流入経路別のSQL転換率 棒グラフ

SLA運用の成功パターン

パターン1: 週次のSLAレビューミーティング

営業・マーケティングの両部門が参加する週次ミーティングを実施し、以下をレビューします。

  • 前週のMQL数とSQLへの転換率
  • フォローSLAの達成状況
  • 営業からのフィードバック(リード品質の評価)
  • 翌週のキャンペーン予定と想定MQL数

パターン2: MQL基準の四半期見直し

MQL基準は固定ではなく、実績データに基づいて四半期ごとに見直します。

  • SQL転換率が低い場合 → MQL基準を厳しくする(閾値を上げる)
  • MQL数が不足する場合 → MQL基準を緩和する or ナーチャリング強化
  • 特定のスコア項目とSQL転換に相関がない場合 → スコア配分を見直す

パターン3: リサイクルプロセスの設計

営業が「今ではない」と判断したMQLをマーケティングに戻すリサイクルの仕組みも重要です。

  1. 営業がMQLを「Disqualified(不適格)」ではなく「リサイクル」としてマーク
  2. リサイクルされたリードはライフサイクルステージを「リード」に戻す
  3. マーケティングがナーチャリングプログラムに再投入
  4. 再度スコアがMQL基準に達したら、営業に再引き渡し

HubSpotでは、カスタムプロパティ「リサイクル理由」を作成し、営業にリサイクル理由を記録してもらうことで、マーケティングのナーチャリング施策の改善にも活用できます。


よくある失敗と対策

失敗1: SLAを作って終わりにする

問題: SLAを定義しても、運用・モニタリングをしなければ形骸化する

対策: ダッシュボードで常時可視化し、週次レビューで定期的にチェックする。SLA違反のアラート通知を自動化して、リアルタイムでの対応を促す。

失敗2: MQL基準が現場と乖離している

問題: マーケティングが設定したMQL基準が、営業の実感と合わない

対策: 初期のMQL基準は営業と共同で設計する。運用開始後も、SQL転換率のデータに基づいて四半期ごとに基準を調整する。

失敗3: 営業のフォロー負荷が高すぎる

問題: MQL数が多すぎて営業がフォローしきれない

対策: MQL基準を引き上げるか、営業人員を増やす。または、インサイドセールス(SDR/BDR)チームを設置して一次フォローを分担する。

失敗4: リサイクルプロセスがない

問題: 営業が「今ではない」と判断したリードが放置され、再アプローチの機会を逃す

対策: リサイクルプロセスを明確に定義し、ワークフローで自動化する。リサイクルリードの再MQL化率もKPIとしてモニタリングする。


まとめ

営業・マーケティング連携SLAは、BtoB企業のリード管理における最も重要な仕組みの1つです。

  • リードステージの定義: MQL・SQLの基準を明確化
  • 引き渡しプロセスの明文化: 通知方法・フォロー期限・フォロー方法を合意
  • 双方のSLA設定: マーケはMQL数と品質、営業はフォロー速度と完了率
  • HubSpotでの自動化: スコアリング・ワークフロー・ダッシュボードで運用を効率化
  • 定期的な見直し: 四半期ごとにデータに基づいてSLAを改善

まずはMQLの定義と営業への引き渡しプロセスの合意から始め、段階的にSLAを拡充していくことをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q1. SLAはどの規模の企業から必要ですか?

営業とマーケティングがそれぞれ1名以上いる企業であれば、SLAの導入効果があります。少人数であっても、リードの定義とフォロープロセスを明文化しておくことで、属人化を防ぎスムーズな連携が可能になります。

Q2. MQLの基準は最初から厳密に設計すべきですか?

最初は仮説ベースで設計し、3ヶ月程度運用した後にデータに基づいて調整するアプローチが現実的です。最初から完璧な基準を作ろうとすると導入が遅れます。まずは始めてみて、SQL転換率のデータを見ながら改善していくのが効果的です。

Q3. HubSpotのどのプランでSLAを実装できますか?

基本的なライフサイクルステージ管理は全プランで可能です。ただし、スコアリングやワークフロー自動化を活用したSLAの本格運用にはMarketing Hub Professional以上が必要です。

Q4. インサイドセールス(SDR)チームがいる場合のSLAはどうなりますか?

MQL→SDRフォロー→SQL判定→営業(AE)引き渡しという3段階のSLAになります。SDRにはMQLフォロー速度と接続率のSLA、営業(AE)にはSQL→商談化のSLAを設定します。HubSpotではチーム別のワークフローとダッシュボードで管理できます。

Q5. SLAの見直し頻度はどのくらいが適切ですか?

四半期に1回の見直しが推奨です。ただし、MQL→SQL転換率が大幅に低下(15%以下)した場合は、即座にMQL基準の見直しを行うべきです。市場環境やマーケティング施策の変化に応じて、柔軟に調整してください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。