業務量調査の進め方|工数分析で改善余地を定量化しリソース配分を最適化する

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業務量調査とは、組織内の各業務にどれだけの工数(時間・人員)が投入されているかを定量的に把握する調査です。デロイトの調査(2024年)によると、ホワイトカラーの業務時間のうち約40%が「付加価値を生まない業務」に費やされており、業務量の定量化によって改善余地が初めて見えてきます。

「人が足りない」「業務が回らない」——こうした訴えは多くの組織で聞かれますが、本当に人手が不足しているのか、それとも業務の配分や進め方に問題があるのかは、定量的なデータがなければ判断できません。

本記事では、業務量を定量化するための調査手法と、その結果をリソース配分の最適化に活かす方法を解説します。

この記事でわかること

「人が足りない」という訴えが正しいのか、業務の配分に問題があるのかは、定量的なデータがなければ判断できません。本記事では、業務量を科学的に計測し、リソース配分の最適化に活かす方法を解説します。

こんな方におすすめ: 人員増員の判断材料を定量的に整理したい経営者・管理職の方、業務の工数を可視化してリソース配分を見直したい業務改善担当者の方

  • タイムスタディ・ワークサンプリング・自己申告型の3つの調査手法と、業務タイプ別の使い分け基準
  • 各手法のメリット・デメリット比較と、自社の規模・業務特性に適した手法の選び方
  • 調査結果を「付加価値作業」「付随作業」「ムダ」に分類し、改善余地を定量化する分析フレームワーク
  • 人員増強・業務自動化・外注判断に使えるリソース配分最適化の基準
  • 「監視されている」と感じさせずに業務量調査を現場に受け入れてもらうための進め方

業務量調査が経営判断に不可欠な理由

業務量調査の進め方

「忙しい」を数値化する

経営者が人員増加や業務委託の判断をする際、現場の「忙しい」という主観的な訴えだけでは適切な判断ができません。業務量調査を実施することで、「どの業務に・誰が・どれだけの時間を投入しているか」が数値で明らかになり、以下の経営判断が可能になります。

  • 人員増加が本当に必要か、業務の効率化で対応できないか
  • どの業務を自動化・外注すべきか
  • 部門間のリソース配分は適切か
  • 新規事業やプロジェクトに投入できる余力はあるか

付加価値分析の起点

業務量調査の結果を「付加価値を生む業務」と「付加価値を生まない業務」に分類することで、改善のレバレッジポイントが見えてきます。

トヨタ自動車では、全ての作業を「付加価値作業」「付随作業(必要だが直接価値を生まない)」「ムダ(排除すべき作業)」の3つに分類し、ムダの排除と付随作業の削減に継続的に取り組んでいます。業務効率化の全体戦略と優先順位の決め方については、業務効率化の進め方で詳しく解説しています。

3つの調査手法の比較

手法1:タイムスタディ(時間研究)

タイムスタディは、業務の各ステップにかかる時間をストップウォッチで直接計測する手法です。製造業のライン作業で広く使われてきましたが、オフィス業務にも適用可能です。

実施手順:

  1. 対象業務を作業要素に分解する
  2. 各作業要素の所要時間を複数回計測する
  3. 計測データから標準時間を算出する(平均値に余裕率を加算)
  4. 標準時間をもとに、業務全体の必要工数を算出する

メリット:

  • 客観的で精度の高いデータが得られる
  • 各作業要素の所要時間がわかるため、改善ポイントが明確
  • 標準時間の設定に活用できる

デメリット:

  • 計測者のコストがかかる
  • 被観察者が意識して普段と異なる動きをする(ホーソン効果)
  • 非定型業務の計測には不向き

コマツでは、工場だけでなくバックオフィス業務にもタイムスタディを適用し、事務処理の標準時間を設定する取り組みを行っています。

手法2:ワークサンプリング

ワークサンプリングは、ランダムなタイミングで担当者の作業内容を観察・記録し、統計的に業務の構成比を推定する手法です。

実施手順:

  1. 業務カテゴリ(分類項目)を事前に定義する
  2. 観察のタイミングをランダムに設定する(1日10〜20回程度)
  3. 設定したタイミングで担当者の作業内容を記録する
  4. 観察結果を集計し、各業務カテゴリの構成比を算出する

メリット:

  • タイムスタディに比べて計測コストが低い
  • 複数の担当者を同時に観察できる
  • 被観察者への心理的負荷が比較的小さい

デメリット:

  • 個別の作業要素の正確な所要時間はわからない
  • 統計的に有意な結果を得るには十分な観察回数が必要
  • 非定型業務の細かな内訳は把握しにくい

手法3:自己申告型(タイムシート・業務日報)

担当者自身が業務内容と所要時間を記録する手法です。最も広く使われている調査方法で、デジタルツール(Toggl・Clockify等)を活用すれば記録の負荷を軽減できます。

実施手順:

  1. 業務カテゴリと記録ルール(粒度・頻度)を定義する
  2. 記録ツール(タイムシート・アプリ・スプレッドシート)を配布する
  3. 一定期間(通常2〜4週間)、担当者に業務時間を記録してもらう
  4. 記録データを集計・分析する

メリット:

  • 大規模な組織でも低コストで実施可能
  • 担当者自身の業務認識が向上する(記録すること自体に改善効果がある)
  • 長期間のデータ収集が可能

デメリット:

  • 記録の正確性が担当者のモチベーションに依存する
  • 記録忘れ・丸め・実態との乖離が発生しやすい
  • 記録作業自体が担当者の負担になる

リクルートでは、プロジェクト単位での工数管理にタイムシート方式を採用し、プロジェクトの採算管理とリソース配分の最適化に活用しています。

手法選択の判断基準

判断基準 タイムスタディ ワークサンプリング 自己申告型
精度 高い 中程度 低〜中
コスト 高い 中程度 低い
対象規模 小規模向き 中規模向き 大規模可能
非定型業務 不向き やや不向き 対応可能
現場負荷 中程度 低い 中程度
導入のしやすさ 難しい 中程度 容易

実務的には、まず自己申告型で全体像を把握し、改善優先度の高い業務領域に対してタイムスタディやワークサンプリングで精密分析を行う「2段階アプローチ」が効果的です。

調査結果の分析フレームワーク

付加価値分類

調査結果を以下の3つに分類し、改善余地を定量化します。

分類 定義 改善方針
付加価値業務 顧客や組織に直接価値を提供する業務 提案書作成、顧客対応、製品開発 質の向上に注力
付随業務 直接価値は生まないが業務遂行に必要な業務 データ入力、報告書作成、会議 効率化・自動化
ムダ 排除しても業務品質に影響しない業務 二重入力、不要な承認、待ち時間 即座に排除

ダイキン工業では、間接部門の業務を上記の3分類で分析し、付随業務の自動化とムダの排除によって間接業務のコスト削減を実現しています。

業務ポートフォリオ分析

業務を「頻度×1回あたりの所要時間」のマトリクスで整理し、改善の優先順位を決定します。

所要時間:大 所要時間:小
頻度:高 最優先で改善(自動化・効率化) 効率化の余地を検討
頻度:低 標準化・テンプレート化 現状維持

高頻度×高所要時間の業務は、改善による累積効果が最も大きいため、最優先で取り組みます。

リソース配分の最適化

データに基づく人員配置の判断

業務量調査の結果は、以下の人員配置判断に活用できます。

ケース1:業務量に対して人員が過剰

特定の部門で業務量に対して人員が余っている場合、他部門への異動や新規業務の割り当てを検討します。

ケース2:業務量に対して人員が不足

不足の原因が「ムダ・付随業務の過多」であれば、まず業務改善で対応します。改善後もなお不足する場合に、増員やアウトソーシングを検討します。

ケース3:業務の偏在

同じ部門内で特定の担当者に業務が集中している場合、業務の再配分やマルチスキル化で対応します。

キーエンスでは、営業担当者の業務量を定量的に分析し、顧客対応に集中できるよう、付帯業務のサポート体制を整備していることが知られています。

自動化・アウトソーシングの判断基準

業務量調査の結果をもとに、各業務を「内製・自動化・アウトソーシング」のいずれに振り分けるかを判断します。

判断基準 内製(手作業) 自動化(RPA・AI) アウトソーシング
判断が必要 適している 不向き 条件付きで可能
定型的 コスト高 最適 可能
高頻度 コスト高 最適 可能
機密性が高い 適している 適している 慎重に検討
コア業務 適している 支援として活用 不向き

業務量調査を成功させるための実務ポイント

ポイント1:調査の目的を透明に共有する

業務量調査は、現場にとって「監視されている」「人員削減の布石ではないか」という不安を引き起こす可能性があります。調査の目的が「業務改善とリソースの適正配分」であることを事前に明確に伝え、経営層から直接メッセージを発信することが重要です。

ポイント2:適切な期間を設定する

業務量は時期によって変動します。繁忙期と閑散期の両方を含む期間(通常4〜8週間)でデータを収集し、年間を通じた平均的な業務量を把握します。月末・四半期末などのピーク時のみのデータでは、実態を正しく反映できません。

ポイント3:業務カテゴリの粒度を適切に設定する

業務カテゴリが粗すぎると改善ポイントが見えず、細かすぎると記録の負担が大きくなります。通常は15〜25カテゴリ程度が適切です。

ポイント4:結果を必ずフィードバックする

調査に協力した現場に対して、結果と改善計画をフィードバックすることが不可欠です。「調査だけして何も変わらなかった」という体験は、次回以降の調査への協力を得られなくなる原因になります。

パナソニックでは、業務量調査の結果を現場にフィードバックし、現場主導の改善活動に結びつける仕組みを構築しています。

まとめ

業務量調査は、「忙しい」を「どの業務に何時間」に変換し、経営判断の精度を高めるための基盤です。

  • 3つの手法(タイムスタディ・ワークサンプリング・自己申告型)は、精度・コスト・対象規模で使い分ける
  • 実務的には自己申告型で全体像を把握し、重点領域でタイムスタディを実施する2段階アプローチが効果的
  • 調査結果は付加価値分類(付加価値・付随・ムダ)で分析し、改善余地を定量化する
  • リソース配分の判断(増員・異動・自動化・アウトソーシング)にデータを活用する
  • 調査の目的の透明な共有と結果のフィードバックが、現場の協力を得るための鍵

業務量の定量化なくして、業務改善もリソース最適化もありません。調査結果をもとにプロセスの停滞箇所を特定したい場合は業務プロセスのボトルネック特定と解消法を、改善成果を経営に示すKPI設計については業務効率化の生産性指標と測定方法もあわせてご覧ください。間接業務のコスト削減に特化した分析手法については間接業務の削減方法も参考になります。まずは自己申告型の簡易調査から始めてみてください。


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。