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「The Modelを導入して分業体制は整った。しかし、部門間の壁が厚くなり、顧客体験が分断されている気がする」「海外のSaaS企業はフライホイールという概念を使っているが、The Modelとどう違うのか」「自社にはどちらが合うのか、そもそも選ばなければいけないのか」――こうした問いを抱える営業責任者・経営者が増えています。
BtoB営業の世界には、組織設計の土台となる2つの代表的なフレームワークがあります。ひとつは、福田康隆氏が提唱し日本のSaaS企業に広く普及した「The Model」。もうひとつは、HubSpotが提唱した「フライホイール」です。両者はしばしば対立構造で語られますが、本質的には「営業プロセスをどう設計するか」という問いに対する、異なる角度からの回答です。
本記事では、スペックの羅列や表面的な比較ではなく、2つのフレームワークの設計思想の違いを掘り下げます。どちらが優れているかではなく、それぞれの思想が何を前提とし、どのような組織課題を解決しようとしているのか。その本質を理解することで、自社に最適なフレームワークの選び方――あるいは組み合わせ方――が見えてきます。
この記事でわかること
- The Modelとフライホイール、それぞれのフレームワークの基本構造と成り立ち
- 2つのフレームワークの設計思想における根本的な違い(顧客観・組織観・成長観)
- The Modelが最も力を発揮する企業フェーズ・事業特性
- フライホイールが最も力を発揮する企業フェーズ・事業特性
- 「The Model + フライホイール」のハイブリッド設計の考え方と実装アプローチ
- フレームワーク実装の基盤としてのCRMの役割
- 自社に最適なフレームワークを選ぶための判断フロー
The Modelの概要|分業と効率化の営業フレームワーク
The Modelは、BtoB営業プロセスをマーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス → カスタマーサクセスの4つの機能に分業し、各部門が明確なKPIを持って顧客をリレー方式で引き渡していく営業組織モデルです。
このフレームワークの本質は「営業プロセスの工場化」にあります。属人的な営業活動を、再現性のある分業プロセスに置き換えることで、組織として予測可能な成果を生み出す。各部門がそれぞれのKPIに責任を持ち、プロセス全体をデータで可視化する。この考え方は、日本のBtoB企業に「科学的な営業」の概念を持ち込み、多くのSaaS企業の急成長を支えました。
| 機能 | 主な役割 | 代表的なKPI |
|---|---|---|
| マーケティング | リード(見込み顧客)の獲得・育成 | リード数、MQL数 |
| インサイドセールス | リードの精査・商談機会の創出 | 商談化数、商談化率 |
| フィールドセールス | 商談の推進・受注獲得 | 受注数、受注金額 |
| カスタマーサクセス | 契約継続・アップセル・解約防止 | 解約率、NRR(売上維持率) |
The Modelの設計思想の核心は、プロセスの分解と各ステップの最適化にあります。全体を部分に分け、それぞれの部分を磨き上げることで、総体としての営業成果を高める。製造業の品質管理に通じるこの発想が、The Modelの強みであり、同時に後述する構造的な限界の根源でもあります。
フライホイールの概要|顧客中心の循環型フレームワーク
フライホイール(Flywheel)は、HubSpotが従来のセールスファネルに代わるモデルとして提唱した、顧客を中心に据えた循環型の成長フレームワークです。物理学のフライホイール(弾み車)から着想を得ており、一度回り始めると慣性の力で回転し続ける性質を、ビジネスの成長モデルに応用しています。
フライホイールはAttract(惹きつける)→ Engage(信頼関係を築く)→ Delight(感動させる)の3つのフェーズが円環状に連なり、顧客が中心に位置します。Delightフェーズで感動した顧客が口コミや紹介を通じて新たなAttractを生み出し、循環が加速していく。これがフライホイールの基本メカニズムです。
| フェーズ | 目的 | 関わる機能 |
|---|---|---|
| Attract(惹きつける) | 価値あるコンテンツや体験で見込み顧客を引き寄せる | マーケティング、セールス |
| Engage(信頼関係を築く) | 顧客の課題に寄り添い、最適な解決策を提示する | セールス、カスタマーサクセス |
| Delight(感動させる) | 期待を超える体験を提供し、顧客を推奨者に変える | カスタマーサクセス、全社 |
フライホイールの設計思想で特に重要なのは、「摩擦(Friction)」という概念です。フライホイールの回転を遅くする要因――たとえば部門間の情報断絶、煩雑な契約プロセス、サポート対応の遅延など――を「摩擦」と捉え、これを徹底的に排除することが成長の鍵とされます。逆に、顧客の成功体験を増幅する力(Force)を加えることで、フライホイールの回転はさらに加速します。
設計思想の根本的な違い|4つの視点で比較する
The Modelとフライホイールは、同じ「BtoB営業をどう設計するか」という問いに対して、根本的に異なるアプローチを取ります。その違いを4つの視点から整理します。
視点1:顧客との関係性の捉え方――ファネル vs 循環
The Modelの根底にあるのはファネル(漏斗)型の顧客観です。多くのリードを入口に投入し、プロセスの各段階で絞り込みながら、最終的に受注に至る顧客を獲得する。この直線的なプロセスにおいて、顧客はファネルの上から下へと「流れていく」存在です。受注がゴールであり、カスタマーサクセスはその延長線上に位置づけられます。
一方、フライホイールは循環型の顧客観を採用しています。受注は終わりではなく、新たなサイクルの始まりです。満足した顧客が次の顧客を呼び、その顧客がまた次の顧客を呼ぶ。顧客は「処理される対象」ではなく、「成長を推進する主体」として位置づけられます。
視点2:組織設計の考え方――分業 vs 統合
The Modelは機能別の分業を基本原理とします。各部門が専門性を高め、それぞれのKPIに責任を持つことで、プロセス全体の品質を担保する。この考え方は、製造業のライン生産方式と共通する思想です。
フライホイールは部門横断の統合を志向します。Attract・Engage・Delightの各フェーズには複数の部門が関与し、ひとつの部門だけが特定のフェーズを担うわけではありません。マーケティングもセールスもカスタマーサクセスも、すべてのフェーズに何らかの形で貢献する。部門の壁を越えて顧客体験を一貫させることが、組織設計の最優先事項となります。
視点3:成長のドライバー――効率化 vs 顧客体験
The Modelにおける成長のドライバーはプロセスの効率化です。リード獲得効率を高め、商談化率を改善し、受注までのリードタイムを短縮する。各ステップの数値を改善することが、成長に直結するという考え方です。
フライホイールにおける成長のドライバーは顧客体験の質です。顧客が感動する体験を提供できれば、口コミ・紹介・事例化を通じて、マーケティングコストをかけずに新たな顧客を獲得できる。短期的な効率ではなく、中長期的な顧客体験への投資が成長を加速させるという発想です。
視点4:KPIの設計思想――部門別 vs 全体最適
The Modelでは、各部門が自部門のKPIに責任を持つ設計が基本です。マーケティングはリード数、インサイドセールスは商談化数、フィールドセールスは受注数、カスタマーサクセスは解約率。この明確なKPI分担が、The Modelの管理しやすさの源泉です。
フライホイールでは、顧客の成功と収益全体の指標がKPIの中核に置かれます。NPS(顧客推奨度)、NRR(売上維持率)、顧客紹介率、LTV(顧客生涯価値)など、「顧客がどれだけ成功し、どれだけ自社の成長に貢献しているか」を測る指標が重視されます。部門別の指標はこれらの全体指標に紐づく形で設計されます。
設計思想の比較まとめ
| 比較軸 | The Model | フライホイール |
|---|---|---|
| 基本構造 | 直線型(ファネル / リレー) | 循環型(フライホイール) |
| 顧客の位置づけ | プロセスを通過する対象 | 成長を推進する中心 |
| 組織の基本原理 | 機能別分業 | 部門横断の統合 |
| 成長のドライバー | プロセス効率の改善 | 顧客体験の質の向上 |
| KPIの焦点 | 部門別の数値管理 | 顧客成功と全体収益 |
| 「受注」の意味 | ゴール(成果の確定点) | 起点(新たなサイクルの始まり) |
| 改善のアプローチ | 各ステップの転換率向上 | 摩擦の排除と推進力の強化 |
The Modelが適している企業・フェーズ
The Modelは「すべての企業に合わない」のではなく、特定の事業特性や成長フェーズにおいて極めて有効なフレームワークです。以下の条件に当てはまる企業では、The Modelの分業設計が大きな力を発揮します。
急成長フェーズでリード供給が潤沢な企業
市場が拡大し、リード獲得チャネルが豊富にある段階では、大量のリードを効率的に処理し商談化するThe Modelの「工場型」プロセスが最適です。分業による専門化がスループットを最大化し、急速な売上拡大を支えます。
プロダクトがシンプルで提案の型化が可能な企業
単一プロダクトで提案内容が比較的標準化できる場合、各部門の業務範囲が明確に定義できるため、The Model型の引き渡しプロセスがスムーズに機能します。商談の複雑性が低いほど、分業の効率メリットが際立ちます。
営業組織を「科学的に管理」したい成長初期企業
属人的な営業スタイルから脱却し、データドリブンな営業組織を構築したい企業にとって、The Modelは最良の出発点です。各部門のKPIが明確に設定されるため、何を改善すべきかが数値で判断できる組織体制を比較的短期間で構築できます。
新規獲得が収益の主要ドライバーである企業
新規顧客の獲得が売上成長の中心にある段階では、ファネル型の発想がそのまま事業構造にフィットします。リード→商談→受注という直線的なプロセスを最大化することが、事業成長と直結するフェーズです。
フライホイールが適している企業・フェーズ
フライホイールは、The Modelの分業設計では捉えきれない成長の力学を活かすためのフレームワークです。以下の条件に当てはまる企業では、フライホイールの循環設計がより大きな成果をもたらします。
既存顧客の拡大・維持が収益の柱になっている企業
SaaS企業が成熟期に入ると、新規獲得よりも既存顧客のアップセル・クロスセルやNRR(売上維持率)の改善が収益成長の主要ドライバーになります。この段階では、受注後の顧客体験を起点に新たな成長を生むフライホイールの発想が事業構造にフィットします。
口コミ・紹介が重要な獲得チャネルである企業
顧客の推奨や紹介がリード獲得の重要なチャネルになっている場合、既存顧客の満足度向上が直接的に新規獲得につながります。フライホイールの「Delight → Attract」の循環が、まさにこの成長メカニズムを体系化しています。
商材が複雑で長期的な顧客関係が前提となる企業
複合ソリューションの提案やカスタマイズが必要な商材では、受注までの検討期間が長く、受注後のオンボーディングやサポートも高度になります。部門をまたぐ一貫した顧客体験が、顧客の成功と長期継続の鍵となるため、部門横断の統合を志向するフライホイールの思想が有効です。
市場が成熟しリード獲得効率が低下している企業
TAM(獲得可能な市場規模)が限られ、新規リードの獲得コストが上昇している状況では、ファネルに新しいリードを大量投入する戦略が持続しにくくなります。既存顧客の成功が次の顧客を連れてくるフライホイールの循環モデルは、リード獲得効率の壁を超える成長戦略として機能します。
「The Model + フライホイール」のハイブリッド設計
ここまでの比較を踏まえると、重要な気づきがあります。The Modelとフライホイールは二者択一ではなく、進化・補完の関係にあるということです。
実際の営業組織において、The Modelの分業体制を完全に捨てることは現実的ではありません。分業による専門性の向上と効率化のメリットは、組織が一定以上の規模になれば不可欠です。同時に、顧客を中心に据えた循環型の成長設計を無視すれば、サイロ化と顧客体験の断絶が進行します。
求められるのは、「The Modelの実行力」と「フライホイールの設計思想」を組み合わせたハイブリッド設計です。
ハイブリッド設計の3つの原則
原則1:分業は維持しつつ、顧客データは統合する
The Modelの分業体制(マーケ・IS・FS・CS)は維持しつつ、顧客に関するすべてのデータを単一のプラットフォームで管理します。各部門が同じ顧客データにアクセスできる環境を整えることで、分業のメリットを活かしながら情報の断絶を防ぎます。
原則2:部門別KPIに「全体収益指標」を重ねる
各部門のKPI(リード数・商談化率・受注数・解約率)は引き続き運用しつつ、その上位指標としてLTV・NRR・顧客紹介率といった全体収益指標を設定します。部門別の努力が、顧客の成功と全社の収益成長にどうつながっているかを可視化する「二層構造のKPI設計」がハイブリッドの要です。
原則3:受注を「ゴール」と「起点」の両面で捉える
The Model的に「受注」を営業プロセスのゴールとして管理しつつ、フライホイール的に「受注」を顧客成功サイクルの起点としても設計します。具体的には、フィールドセールスからカスタマーサクセスへの引き渡し時に、受注時の期待値・課題認識・合意事項を確実に伝達し、カスタマーサクセスがその情報を基にオンボーディングを設計する。受注後の顧客体験が次の紹介や事例につながる仕組みを、プロセスとして組み込みます。
ハイブリッド設計の実装イメージ
| 領域 | The Modelの要素 | フライホイールの要素 |
|---|---|---|
| 組織構造 | 4機能の分業を維持 | 部門横断のRevOps機能を追加 |
| KPI管理 | 部門別KPIで日常業務を管理 | 全体収益指標を上位KPIに設定 |
| データ管理 | パイプライン管理でプロセスを可視化 | 統一CRMで顧客の全履歴を一元管理 |
| 営業プロセス | リード→商談→受注の直線フロー | 受注後のDelight→紹介→新規の循環設計 |
| 改善活動 | 転換率の最適化 | 摩擦の特定と排除 |
このハイブリッド設計は、The Modelの発展形としてRevOps(レベニューオペレーション)の考え方とも親和性が高いものです。RevOpsは、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスのオペレーションを統合的に管理する組織モデルであり、まさにThe Modelの分業構造とフライホイールの統合思想を橋渡しする概念といえます。
CRMがフレームワーク実装の基盤になる理由
The Modelであれフライホイールであれ、あるいはハイブリッド設計であれ、フレームワークを実際の営業組織に実装するためにはデータ基盤としてのCRMが不可欠です。フレームワークは「考え方」であり、CRMはそれを「動かす仕組み」です。
The Model実装におけるCRMの役割
The Modelを機能させるには、各部門間の引き渡しを正確に記録し、パイプラインの各段階を可視化する仕組みが必要です。SFA(営業支援システム)はこの役割を担いますが、SFA単体ではマーケティングやカスタマーサクセスのデータまではカバーできません。結果として、部門ごとにツールが分散し、The Modelが本来解決しようとしていたはずの「プロセスの可視化」が不完全な状態に留まります。
フライホイール実装におけるCRMの役割
フライホイールを実装するには、顧客の全ライフサイクルを一貫して把握できるデータ基盤が必要です。Attractフェーズでどのようなコンテンツに触れたか、Engageフェーズでどのような課題を話したか、Delightフェーズでどのようなサポートを受けたか。これらの情報が分断されていては、循環型の成長モデルは機能しません。
統合型CRMプラットフォームの重要性
ハイブリッド設計を実現するために最も重要なのは、MA・SFA・カスタマーサービスの機能がひとつのプラットフォーム上で統合されたCRMを採用することです。部門ごとに異なるツールを導入し、API連携で無理やりつなぐアプローチでは、データの統合性と即時性に限界があります。
HubSpotは、フライホイールモデルの提唱元として、CRM・MA・SFA・カスタマーサービスの機能を単一プラットフォーム上で提供しています。会社・コンタクト・取引・チケットの標準オブジェクトに加え、カスタムオブジェクトによる柔軟なデータ構成が可能であり、The Model型のパイプライン管理とフライホイール型の顧客ライフサイクル管理を同時に実現できます。
CRMの選定において重要なのは、「現在のフレームワーク」だけでなく、「将来の組織進化」を見据えたプラットフォーム選びです。The Modelからスタートし、フライホイールの要素を段階的に取り入れ、RevOpsやPod型へと進化させていく。その都度CRMを入れ替えるのではなく、進化に対応できる柔軟なプラットフォームを最初から選んでおくことが、長期的な投資効率を左右します。
自社に最適なフレームワークの選び方|判断フロー
「結局、自社にはどちらが合うのか」という問いに対して、以下の判断フローを参考にしてください。ただし、前述のとおり二者択一で選ぶ必要はありません。自社の現在地を把握し、どこから着手すべきかを判断するためのガイドです。
判断基準1:収益構造を確認する
自社の売上成長において、新規顧客からの収益と既存顧客からの収益(アップセル・クロスセル・契約更新)のどちらが大きいかを確認します。新規中心であればThe Model寄り、既存中心であればフライホイール寄りの設計が事業構造にフィットします。
判断基準2:現在の組織課題を特定する
いま最も深刻な課題が「リードの量や商談化率」であれば、The Modelのプロセス最適化が優先事項です。「部門間の情報断絶や顧客体験の不一致」であれば、フライホイールの統合思想を取り入れることが有効です。
判断基準3:顧客獲得チャネルを分析する
新規リードの獲得がアウトバウンド施策やペイド広告に依存している場合は、The Model型のファネル最適化が効果的です。口コミ・紹介・事例経由のリードが一定割合を占めている場合は、この流れを加速するフライホイール設計に投資する価値があります。
判断基準4:組織の成熟度を評価する
営業プロセスがまだ属人的で、各部門のKPIが未整備であれば、まずThe Modelで「型」を作ることが先決です。すでにThe Modelが機能しており、次の成長の壁に直面しているのであれば、フライホイールの要素を取り入れたハイブリッド設計への移行を検討すべきタイミングです。
判断フローまとめ
| 自社の状態 | 推奨アプローチ | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 営業プロセスが属人的で型がない | The Modelで基盤構築 | 4機能の分業とKPI設計 |
| The Model導入済みだがサイロ化が進行 | ハイブリッド設計への移行 | 統一CRM導入とデータ統合 |
| 既存顧客の収益比率が高い | フライホイール重視の設計 | 全体収益指標の導入とCS強化 |
| 新規市場を急拡大中 | The Model重視の設計 | パイプライン管理の精緻化 |
| 部門横断の収益最適化を目指したい | RevOps体制の構築 | RevOps担当の設置とKPI再設計 |
まとめ
The Modelとフライホイールは、BtoB営業の設計思想における2つの重要な座標軸です。The Modelは「プロセスの分解と効率化」を、フライホイールは「顧客中心の循環と体験の質」を追求するフレームワークであり、どちらが正しいという問題ではありません。
本記事で整理した設計思想の違いをまとめると、以下のようになります。
- The Modelは、分業による専門化とKPI管理で営業プロセスを科学的に最適化する。急成長フェーズや新規獲得重視の事業構造にフィットする
- フライホイールは、顧客を中心に据えた循環型の成長設計で、顧客体験の質が次の成長を生む。既存顧客の拡大や口コミ重視の事業構造にフィットする
- 多くの成熟した企業にとって最適解は、「The Modelの実行力」と「フライホイールの設計思想」を組み合わせたハイブリッド設計である
- ハイブリッド設計の実現には、部門横断の統一データ基盤としてのCRMプラットフォームが不可欠である
フレームワークは目的ではなく手段です。重要なのは、自社の事業構造・成長フェーズ・組織の成熟度を冷静に見極め、「いまの自社に何が必要か」を起点にフレームワークを選び、進化させていくことです。The Modelで「型」を作り、フライホイールの思想で「顧客中心の循環」を設計する。この両輪が、持続的な営業組織の成長を支えます。
よくある質問(FAQ)
Q. The Modelとフライホイールは対立するフレームワークですか?
A. 対立するものではなく、補完関係にあるフレームワークです。The Modelは営業プロセスの「実行の型」を提供し、フライホイールは「成長の設計思想」を提供します。実際の営業組織では、The Modelの分業体制を維持しつつ、フライホイールの顧客中心の循環設計を取り入れるハイブリッドアプローチが効果的です。どちらかを選ぶのではなく、自社の成長フェーズに応じて両方の要素を組み合わせることが推奨されます。
Q. フライホイールを導入するには、The Modelを捨てる必要がありますか?
A. The Modelを捨てる必要はありません。フライホイールの導入は、既存のThe Model体制に「上書き」するのではなく、「レイヤーを重ねる」イメージです。具体的には、The Modelの4機能の分業は維持したまま、全体収益指標(LTV・NRR・顧客紹介率)の導入、統一CRMによるデータ統合、受注後の顧客成功プロセスの強化、といった施策でフライホイールの要素を段階的に取り入れていきます。
Q. フライホイールの「摩擦」とは具体的に何を指しますか?
A. フライホイールにおける摩擦とは、顧客体験を阻害し成長の循環を遅くするあらゆる要因を指します。具体例としては、部門間の引き渡しで顧客情報が失われる、契約や導入のプロセスが煩雑で顧客に負荷がかかる、サポートの応答が遅い、同じ質問を複数の部門から聞かれる、社内のデータが分断されていて顧客対応が一貫しない、などが挙げられます。これらの摩擦を特定し排除することが、フライホイールの回転を加速させる鍵です。
Q. 小規模な企業でもフライホイールの考え方は有効ですか?
A. 有効です。むしろ小規模な企業のほうが、部門間の壁が薄く顧客との距離が近いため、フライホイールの思想を自然に実践しやすい面があります。少人数の組織では、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスを兼任するケースも多く、結果的に顧客のライフサイクル全体を一人の担当者が把握しています。この状態は、フライホイールが目指す「顧客を中心とした一貫した体験」そのものです。組織が拡大する際に、この顧客中心の文化を制度として組み込むことが重要です。
Q. CRMの選定は、フレームワークの選択に影響しますか?
A. 大きく影響します。CRMはフレームワークを実装するための基盤であり、CRMの設計思想がそのまま組織の動き方を規定します。たとえばSFA単体のツールを導入した場合、The Modelの営業プロセス管理には対応できても、フライホイール的な顧客ライフサイクル全体の管理は困難です。将来的にフライホイールの要素を取り入れたい場合は、MA・SFA・カスタマーサービスが統合されたプラットフォーム型のCRMを選定しておくことで、フレームワークの進化に柔軟に対応できます。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。