インサイドセールス立ち上げガイド|組織設計・KPI・ツール選定の全ステップ

  • 2026年2月24日

ブログ目次


「インサイドセールスを導入したいが、何から始めればよいかわからない」

「SDRとBDRの違いは理解しているが、自社にはどちらが合うのか判断できない」

「IS部門を作ったものの、KPIの設定が適切なのか自信がない」

インサイドセールス(IS)は、日本のBtoB企業においても急速に導入が進んでいます。しかし、単に電話営業のチームを作れば良いというものではなく、組織設計、KPI設計、ツール選定、そしてフィールドセールスとの連携設計まで、綿密な計画が成功の鍵を握ります。

はじめに:なぜ今インサイドセールスの導入が加速しているのか

シーケンス一覧(インサイドセールス画面の例:シーケンスと取引管理)

インサイドセールス画面の例:シーケンスと取引管理(出典:HubSpot)

インサイドセールスとは、電話・メール・Web会議などの非対面チャネルを活用して、見込み顧客の育成(ナーチャリング)から商談創出までを担う営業手法・組織です。

日本企業でインサイドセールスの導入が加速している背景には、以下の変化があります。

  • 購買行動のデジタル化: BtoB購買プロセスの約6〜7割が、営業と接触する前のオンラインリサーチで完了している
  • リモートワークの定着: 対面商談が減り、非対面での顧客接点の重要性が高まった
  • 営業効率の追求: 移動時間ゼロで1日に数十件の顧客接点を持てるISの効率性に注目が集まっている
  • マーケティング投資の最大化: MAで獲得したリードを商談につなげる「橋渡し役」としてISが不可欠

しかし、IS導入に失敗する企業も少なくありません。「なんとなく始めて、なんとなく終わる」パターンを避けるためには、事前の設計が極めて重要です。本記事では、IS立ち上げに必要な全ステップを体系的に解説します。


この記事でわかること

  • インサイドセールス組織の3つのパターン(SDR/BDR/ハイブリッド)と選び方
  • IS立ち上げの5つのステップと各フェーズでの重要ポイント
  • KPI設計のフレームワーク(架電数→有効会話数→商談化率の逆算設計)
  • ISに必要なツールスタック(SFA+CTI+メール自動化)の選定基準
  • フィールドセールスとの連携設計と商談引き渡しルール
  • IS立ち上げ初期に陥りやすい失敗パターンと回避策

インサイドセールス組織の3つのパターン

IS組織の設計は、自社の営業戦略やリード獲得の状況に応じて最適なパターンが異なります。

パターン1:SDR(Sales Development Representative)型

役割: マーケティングが獲得したインバウンドリードに対して、電話・メールで接触し、商談を創出する。

特徴:

  • リードの質と量がマーケティング施策に依存する
  • 「待ちの営業」の要素が強い
  • リードからのレスポンスタイムが成果を左右する

適している企業:

  • Webサイト、展示会、ウェビナー等でリードが安定的に獲得できている
  • マーケティング部門(またはMA)が機能している
  • 月間リード数が50件以上ある
SDRの主な活動 目的
インバウンドリードへの初回架電 リードの課題感・導入検討度の確認
メールフォロー 架電不通時の代替接触、情報提供
リードの選別(クオリフィケーション) 商談化すべきリードとナーチャリング対象の振り分け
商談のセッティング フィールドセールスとの商談日程調整

パターン2:BDR(Business Development Representative)型

役割: ターゲットアカウント(狙いたい企業)に対して、アウトバウンドで能動的にアプローチし、新規商談を開拓する。

特徴:

  • マーケティングリードに依存しない能動的なアプローチ
  • ターゲット企業のリサーチとパーソナライズされた提案が求められる
  • SDRよりも高い営業スキルが必要

適している企業:

  • エンタープライズ(大手企業)をターゲットにしている
  • マーケティングからのリードだけでは商談数が不足している
  • 特定業界や企業規模にフォーカスしたABM(Account Based Marketing)を実施している
BDRの主な活動 目的
ターゲットアカウントのリサーチ 企業課題の仮説構築、キーパーソンの特定
アウトバウンドコール・メール 新規接点の獲得
パーソナライズドメッセージの作成 ターゲット企業固有の課題に即した提案
マルチチャネルアプローチ 電話+メール+SNS+手紙等の組み合わせ

パターン3:ハイブリッド型

役割: SDRとBDRの両方の機能を1つのチームで担う。

特徴:

  • 少人数での立ち上げ時に採用されることが多い
  • インバウンドとアウトバウンドの両方に対応
  • メンバーのスキルセットが広く求められる

適している企業:

  • IS立ち上げ初期で、まだ専門チームを分けるほどの人数がいない
  • インバウンドリードとアウトバウンド開拓の両方が必要
  • IS担当者が3名以下の場合

3パターンの比較表

比較項目 SDR型 BDR型 ハイブリッド型
リードの起点 インバウンド アウトバウンド 両方
マーケティング依存度
必要な営業スキルレベル
立ち上げの難易度 低〜中
推奨人数 2名〜 2名〜 1〜3名
適切なフェーズ リードが安定的にある段階 エンタープライズ攻略段階 IS立ち上げ初期

インサイドセールス立ち上げの5ステップ

取引ボード(パイプラインビュー)(インサイドセールス画面の例:シーケンスと取引管理)

インサイドセールス画面の例:シーケンスと取引管理(出典:HubSpot)

ステップ1:IS導入の目的と期待成果を定義する(2週間)

IS立ち上げで最初にすべきことは、「なぜISを導入するのか」を明確にすることです。

目的設定の例:

目的 具体的な期待成果 測定指標
商談数の増加 フィールドセールスへの商談供給を月20件→40件に倍増 月間商談創出数
リードの有効活用 マーケティングリードの商談化率を5%→15%に改善 リード→商談コンバージョン率
営業効率の向上 フィールドセールスを商談以降に集中させ、受注率を向上 フィールドセールスの受注率
エンタープライズ開拓 従業員1,000名以上の新規企業との商談を月10件創出 ターゲットセグメント別の商談数

ステップ2:組織設計と人材要件を定義する(2〜4週間)

IS組織の位置づけと、必要な人材の要件を定義します。

ISの組織配置パターン:

配置パターン メリット デメリット
営業部門の中にIS部隊を配置 フィールドセールスとの連携が密 マーケティングとの連携が弱くなりがち
マーケティング部門の中に配置 リードの情報共有がスムーズ 営業目線での商談品質管理が弱くなりがち
独立したIS部門として設置 ISの専門性を高められる 他部門との連携設計が重要

IS人材に求めるスキル・適性:

スキル 重要度 具体的な要件
コミュニケーション能力 最重要 短時間で相手の課題を引き出すヒアリング力
粘り強さ・メンタルタフネス 断られても諦めずアプローチを継続できる
ツールリテラシー SFA/CRM、CTI、メールツールの操作習熟
業界・商材知識 顧客の課題に対して一定の知見を持てる
データ分析力 自身の活動データを分析し改善できる

ステップ3:KPIを設計する(1〜2週間)

ISのKPIは、最終成果から逆算して設計するのが鉄則です。

KPI逆算設計の考え方:

売上目標 ÷ 平均商談単価 = 必要受注数
必要受注数 ÷ 受注率 = 必要商談数
必要商談数 ÷ 商談化率 = 必要有効会話数
必要有効会話数 ÷ 接続率 = 必要架電数

具体例(月間計算):

指標 数値 計算根拠
月間売上目標 3,000万円 事業計画から
平均商談単価 300万円 過去実績から
必要受注数 10件 3,000万÷300万
受注率 25% 過去実績から
必要商談数 40件 10÷25%
商談化率 20% 業界水準・仮置き
必要有効会話数 200件 40÷20%
接続率 30% 業界水準・仮置き
必要架電数 約670件 200÷30%
IS1人あたりの1日架電数 約34件 670÷20営業日

ISのKPI体系(レイヤー構造):

レイヤー KPI 計測頻度
活動量指標(行動KPI) 架電数、メール送信数、接続数 日次
中間成果指標(プロセスKPI) 有効会話数、商談化率、リードクオリフィケーション数 週次
最終成果指標(成果KPI) 商談創出数、商談の受注貢献額 月次

ステップ4:ツールスタックを選定・構築する(2〜4週間)

ISの生産性を最大化するためには、適切なツールの組み合わせ(ツールスタック)が不可欠です。

ISに必要なツールスタック:

ツールカテゴリ 役割 主な選択肢
SFA/CRM 顧客情報・商談情報の管理、活動記録 Salesforce, HubSpot, Mazrica Sales 等
CTI(電話連携) ワンクリック発信、通話記録、録音 MiiTel, Zoom Phone, Dialpad 等
メール配信・追跡 テンプレート送信、開封追跡、シーケンス自動化 SFA内蔵機能, Outreach 等
MA(任意) リードスコアリング、ナーチャリング HubSpot, Marketo, SATORI 等
Web会議 オンライン商談、デモ Zoom, Microsoft Teams, Google Meet 等
ナレッジ管理 トークスクリプト、FAQ、競合情報の共有 Notion, Confluence 等

ツール選定の3つの基準:

1. SFA/CRMとの連携性

ISのツールスタックの中心はSFA/CRMです。CTI、メールツール、MAなどすべてのツールがSFA/CRMとスムーズに連携し、データが一元管理される構成を目指します。

2. ISの業務フローとの適合性

架電→記録→フォローメール→次のアクション設定という一連の流れが、最小のクリック数で完了するツールを選びます。

3. データの可視化・分析機能

KPIの自動集計、個人別・チーム別のダッシュボード表示、コール分析(通話時間、ヒアリング率等)の機能が充実しているツールを優先します。

ステップ5:フィールドセールスとの連携設計(1〜2週間)

ISの最も重要な成功要因の一つが、フィールドセールス(FS)との連携です。ここが曖昧だと、商談の質や受注率に直接影響します。

商談引き渡しルールの設計:

項目 定義すべき内容
商談の定義 何をもって「商談」とするか(例:BANT確認済み、決裁者の存在を確認)
引き渡し条件 ISからFSに引き渡すための最低条件(例:BANT2項目以上確認済み)
引き渡し方法 SFA上でのステータス変更、Slackでの通知、引き渡しシートの共有
引き渡し後のフォロー FSが初回商談を行うまでのリードタイム目標(例:3営業日以内)
フィードバックループ FSからISへの商談品質フィードバックの仕組み(例:週次レビュー)

SQL(Sales Qualified Lead)の判定基準テンプレート:

BANT項目 確認内容 判定基準
Budget(予算) 予算の有無・規模感 予算確保済みまたは確保予定あり
Authority(決裁者) 決裁者の特定 決裁者の氏名・役職が判明
Needs(ニーズ) 課題の具体性 具体的な課題が言語化されている
Timeline(時期) 導入・検討時期 6ヶ月以内に導入・検討予定

判定ルール: 4項目中3項目以上が満たされた場合にSQLとしてFSに引き渡す。2項目以下の場合はISでナーチャリングを継続。


IS立ち上げ初期に陥りやすい5つの失敗パターン

失敗1:KPIが架電数だけに偏る

架電数だけを追うと、質の低い「とりあえず電話」が増え、商談の質が低下します。活動量指標だけでなく、商談化率や受注貢献額まで含めたKPI体系で管理することが重要です。

失敗2:フィールドセールスとの軋轢

「ISが作った商談は質が低い」「FSがISの商談を放置する」という軋轢は、IS立ち上げ初期によく見られます。商談の定義と引き渡し条件を事前に合意し、週次のフィードバックミーティングで継続的に調整してください。

失敗3:ツール先行で業務設計が後回し

「まずツールを入れて、使いながら考える」というアプローチは、ISでは失敗しやすいです。ツール導入の前に、ISの業務フロー、KPI、FSとの連携ルールを設計してからツールを選定してください。

失敗4:人材のミスマッチ

ISに求められるスキルは、フィールドセールスとは異なります。「成績が振るわないフィールドセールスをISに異動させる」という発想は避けてください。ISには電話コミュニケーション力と粘り強さが特に求められます。

失敗5:スクリプトの硬直化

トークスクリプトは必要ですが、台本を読むだけの対応では顧客に見透かされます。スクリプトは「ガイドライン」として位置づけ、顧客の反応に応じた柔軟な対応ができるようトレーニングすることが重要です。


IS立ち上げ後の成長ロードマップ

ISは立ち上げて終わりではなく、段階的に機能を拡張していくことが重要です。

フェーズ 期間の目安 重点テーマ
立ち上げ期 1〜3ヶ月 基本オペレーションの確立、KPIの初期値設定
安定期 4〜6ヶ月 KPI達成の安定化、トークスクリプトの最適化
拡張期 7〜12ヶ月 チーム増員、SDR/BDRの分化、ABMの導入
高度化期 1年〜 AIの活用、予測分析、マーケティングとの高度な連携

まとめ

インサイドセールスの立ち上げは、「組織設計」「KPI設計」「ツール選定」「FS連携」の4つの柱を事前にしっかり設計することが成功の鍵です。

本記事で解説したポイントを改めて整理します。

  1. 組織パターンの選択: SDR/BDR/ハイブリッドの中から、自社のリード状況とターゲットに合ったパターンを選ぶ
  2. KPIの逆算設計: 売上目標から逆算して、商談数→有効会話数→架電数を導き、IS1人あたりの日次行動量まで落とし込む
  3. ツールスタックの構築: SFA/CRMを中心に、CTI・メール自動化・MAを連携させた統合環境を構築する
  4. FS連携の設計: 商談の定義、引き渡し条件、フィードバックループを事前に合意する
  5. 段階的な成長: 立ち上げ期から高度化期まで、段階的に機能と体制を拡張する

インサイドセールスは正しく設計・運用すれば、営業組織の生産性を飛躍的に向上させる強力な仕組みです。まずは本記事のフレームワークを参考に、自社に最適なIS組織の設計から始めてみてください。


よくある質問(FAQ)

Q1. インサイドセールスの立ち上げに必要な人数は最低何名ですか?

A. 最低1名から立ち上げは可能ですが、推奨は2〜3名です。1名だと休暇や不在時にオペレーションが止まるリスクがあり、また複数名いることでナレッジの共有やスクリプトの改善がスムーズに進みます。まずは2名でハイブリッド型(SDR+BDR兼務)からスタートし、成果が出てきたら増員と専門分化を進めるのが現実的です。

Q2. ISの担当者は新卒採用と中途採用のどちらがよいですか?

A. IS立ち上げ初期は、BtoB営業経験のある中途採用がおすすめです。立ち上げ期にはトークスクリプトの作成やKPIの妥当性検証など、営業経験に基づく判断が求められるためです。オペレーションが安定した後であれば、新卒やIS未経験者でもスクリプトとトレーニング体制があれば十分に活躍できます。IS経験者の採用が理想ですが、市場に経験者が少ないため、法人営業経験者やカスタマーサポート経験者をIS向けにトレーニングするアプローチも有効です。

Q3. ISのKPIはどのくらいの頻度で見直すべきですか?

A. 立ち上げ初期(1〜3ヶ月)は月次で見直すことを推奨します。特に接続率、商談化率、商談の受注率は、当初の仮置き値と実際の数値にズレが生じることが多いため、実績データに基づいて修正してください。安定期以降は四半期ごとの見直しで十分です。ただし、マーケティング施策の変更や市場環境の変化があった場合は、随時KPIを再検証する必要があります。

Q4. 営業経験が浅いメンバーでもISは務まりますか?

A. 務まります。ISはフィールドセールスと比較して、1回の顧客接点が短く、対応パターンが定型化しやすいため、スクリプトとトレーニングの整備次第で未経験者でも3〜6ヶ月で戦力化できます。ただし、BDR型(アウトバウンド中心)はSDR型よりも高い営業スキルが求められるため、営業経験が浅いメンバーにはまずSDR業務から始めてもらうのが良いでしょう。

Q5. ISとコールセンターの違いは何ですか?

A. 最大の違いは「目的」です。コールセンターは問い合わせ対応(受電中心)が主な役割であり、対応の品質と効率が評価基準です。一方、ISは商談の創出が目的であり、リードの育成・選別から商談のセッティングまでを担います。求められるスキルも異なり、ISでは顧客の課題をヒアリングする力、商材への理解、BANTの確認スキルなどが必要です。


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著者情報

7-1

今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。