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「ウェブサイトはあるけど、なかなかリードが増えない」
「展示会やテレアポ頼みの営業から脱却したい」
「コンテンツマーケティングに取り組みたいが、何から始めればいいかわからない」
——こうした課題を抱えているBtoB企業の方は少なくありません。
インバウンドマーケティングとは、見込み客が自ら情報を探しているタイミングで有益なコンテンツを提供し、「見つけてもらう」ことを起点としたマーケティング手法です。HubSpotはこのインバウンドマーケティングの概念を提唱した企業であり、CRM・MA・CMS・営業支援を一つのプラットフォームに統合した仕組みを提供しています。
この記事では、インバウンドマーケティングの基本概念から、HubSpotを使った具体的な実践ステップ、BtoB企業がつまずきやすいポイントと解決策まで、これから始める方にもわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- インバウンドマーケティングの定義とアウトバウンドとの違い
- HubSpotでインバウンドマーケティングを実現する全体像
- BtoB企業がすぐ実践できる5つのステップ
- リード獲得からナーチャリング、商談化までの一気通貫フロー
- スモールスタートで始めるための具体的なプラン選定
インバウンドマーケティングとは?
出典: HubSpot (hubspot.jp/inbound-marketing)
インバウンドマーケティングとは、価値あるコンテンツや体験を通じて見込み客を惹きつけ、信頼関係を構築しながら顧客化していくマーケティング手法です。2006年にHubSpotの共同創業者ブライアン・ハリガン氏とダーメッシュ・シャー氏が提唱しました。
従来のアウトバウンドマーケティング(テレアポ、飛び込み営業、DM、広告による一方的なアプローチ)に対し、インバウンドマーケティングは見込み客が「自分で調べて」自社を見つけてくれる仕組みを作ることに重点を置きます。
アウトバウンドとインバウンドの違い
| 項目 | アウトバウンド | インバウンド |
|---|---|---|
| アプローチ | 企業から見込み客へ | 見込み客から企業へ |
| 主な手法 | テレアポ、DM、飛び込み営業、広告 | ブログ、SEO、SNS、ウェビナー、ホワイトペーパー |
| コスト構造 | 人件費・広告費が継続発生 | コンテンツが資産として蓄積 |
| リードの質 | ニーズが顕在化していない場合が多い | 自ら情報を探している=検討度が高い |
| スケーラビリティ | 人員に依存(線形的) | コンテンツが24時間働く(指数的) |
BtoBにおいてインバウンドマーケティングが特に重要なのは、購買プロセスの大部分がオンラインでの情報収集から始まるためです。多くの調査で、BtoBの購買担当者は営業に接触する前に57〜70%の購買プロセスを完了しているとされています。つまり、見込み客が情報収集する段階で自社コンテンツに接触してもらうことが、商談獲得の鍵になります。
インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングの違い
よく混同されますが、インバウンドマーケティングは「集客→リード獲得→ナーチャリング→商談化→顧客化」までの全体プロセスを指す概念であり、コンテンツマーケティングはその中の「集客」に関わる手法の一つです。
インバウンドマーケティング = コンテンツで集客 + MAで育成 + CRMで管理 + 営業で商談化
HubSpotがインバウンドマーケティングのプラットフォームとして優れているのは、この全体フローを一つのツールで一気通貫に実現できるところです。
HubSpotでインバウンドマーケティングを実現する全体像
HubSpotでは、インバウンドマーケティングの各フェーズに対応する機能が用意されています。
Attract(惹きつける)→ Engage(信頼関係を築く)→ Delight(満足させる)
| フェーズ | 目的 | HubSpotの主要機能 |
|---|---|---|
| Attract | 見込み客を惹きつける | Content Hub(ブログ・ウェブサイト)、SEOツール、SNS連携、広告連携 |
| Engage | リードを獲得し育成する | フォーム、CTA、Marketing Hub(メール・ワークフロー・スコアリング)、Sales Hub |
| Delight | 顧客の成功を支援する | Service Hub(チケット・ナレッジベース・アンケート)、カスタマーサクセス機能 |
ここが結構ミソになってくるのですが、HubSpotの強みはこれらの機能が一つのCRMデータベース上で動いているということです。ブログを読んだ人がフォームからリードになり、ナーチャリングメールを経て商談化し、受注後にカスタマーサクセスに引き継がれる——この一連の流れが、すべて一つのコンタクトレコードに紐づいて管理されます。
スプレッドシートとかで管理していて、Slackに連絡をして、それをまたHubSpotに行くとなると結構情報が分散するのですが、全部HubSpotに入っていれば、過去のやり取りというのが一覧で確認できるようになります。
BtoB企業が実践する5つのステップ
ステップ1: コンテンツで見込み客を集客する
インバウンドマーケティングの出発点は、見込み客が検索する課題やキーワードに対して、有益なコンテンツを発信することです。
具体的な施策:
- ブログ記事: 業界の課題解決型コンテンツを定期的に発信(HubSpotのContent Hubで作成・管理可能)
- SEO対策: HubSpotのSEOツールでキーワード調査・最適化
- ウェビナー・セミナー: マーケティングイベント機能で参加者をCRMに自動取り込み
- SNS連携: LinkedIn・Xなどからのトラフィック獲得
HubSpotのContent Hubを使えば、CRMと連携したウェブサイトやブログをノーコードで構築できます。ウェブサイト上でお客様がどのページを見たか、どのタイミングで離脱したかがCRMに記録されるため、訪問者の行動を可視化した上でのマーケティングが可能になります。
通常こういったウェブサイト制作を業者さんに頼むと高かったりすると思うのですが、こうした作業を内製できるのがContent Hubの良い点です。
ステップ2: フォームとCTAでリードを獲得する
集客したトラフィックをリード(見込み客)に転換するために、フォームとCTA(コール・トゥ・アクション)を設置します。
リード獲得の仕組み:
- 問い合わせフォーム: 商談意欲の高いリードを直接獲得
- 資料ダウンロードフォーム: ホワイトペーパーやeBookと引き換えにメールアドレスを取得
- ウェビナー登録フォーム: セミナー参加と同時にリード情報を獲得
- ポップアップCTA: 離脱意図検出やスクロールトリガーで表示
フォーム送信時にコンタクトのライフサイクルステージを自動で「リード」や「MQL」に設定できるため、リードの温度感に応じた管理が最初から可能です。
BtoBのリード獲得フォームでは、フリーメールアドレス(GmailやYahoo!メール)のブロック設定が結構ポイントになってきます。HubSpotではフリードメインが自動的にリスト化されているので、チェックを入れるだけでブロックできます。
ステップ3: ナーチャリングでリードを育成する
獲得したリードのうち、すぐに商談につながるのは一部です。残りの多くのリードに対して、継続的に価値ある情報を提供して関係性を構築するのがナーチャリングです。
HubSpotでのナーチャリング施策:
- ステップメール(ワークフロー): フォーム送信をトリガーに、段階的にメールを自動配信
- 例: 1通目(直後)→ 2通目(5日後)→ 3通目(7日後)→ ウェビナー案内(3日後)
- リードスコアリング: ウェブ行動(ページ閲覧、メール開封)や属性(役職、企業規模)をポイント化
- 例: エンゲージメント行動80点MAX + 属性20点MAX = 合計100点満点
- 50点以上でMQL化、70点以上で営業にトス
- ライフサイクルステージ管理: リード→MQL→SQL→商談→顧客のステージを自動更新
ナーチャリングで結構重要なのが、個別機能ではなく全体フローとして設計する考え方です。ライフサイクルステージでお客様の検討段階を可視化し、ワークフローでステップメールを自動配信し、スコアリングでホットリードを特定して営業に引き渡す——この一連の流れを設計することが、インバウンドマーケティング成功のポイントになってきます。
ステップ4: 営業連携で商談化する
ナーチャリングによってホットリード化した見込み客を、適切なタイミングで営業チームに引き渡します。
HubSpotでの営業連携:
- リードオブジェクト: ホットリードを一覧管理し、担当者にアサイン
- シーケンス: テンプレートベースの3通メールで効率的にアプローチ(100名登録→10件商談化→2件受注のイメージ)
- 取引パイプライン: 商談ステージごとに受注確度を設定し、フォーキャストを算出
- 社内通知: フォーム送信やスコア閾値超えをSlack/メールで即時通知
シーケンスの良いところは、「メルマガではなく、ちゃんと営業いただいてるなというのが分かる」形でメールを送れることです。営業個人からのメールに見えるため、BtoBでは反応率が高くなります。
ただし、確度が高い案件や案件規模が大きくなりそうな場合(数百万〜数千万の案件)は、テンプレートに頼らず自分でしっかりリサーチして文章を書く必要があります。自動化に頼りすぎないバランス感覚が結構大事かなと思います。
ステップ5: 分析・改善でPDCAを回す
インバウンドマーケティングは一度仕組みを作って終わりではなく、データに基づいて継続的に改善していくことが重要です。
HubSpotでの分析:
- ダッシュボード: 営業会議用、マーケティング分析用など、シーン別にダッシュボードを作成
- ファネルレポート: リード→MQL→商談→顧客のコンバージョン率を可視化
- キャンペーン分析: どの施策(ブログ・広告・セミナー)からどれだけの商談・収益が生まれたか
- 失注分析: 失注理由をカテゴリー分類し、マーケティング施策やプロダクト改善にフィードバック
失注分析は特に重要です。何の理由で失注したのかを分析し、例えば製品開発やマーケティング施策にフィードバックすることで、営業とマーケの連携がしやすくなります。
HubSpotのプラン選定:スモールスタートの進め方
インバウンドマーケティングを始めるにあたって、いきなり大規模に投資する必要はありません。段階的に始めることをおすすめします。
段階別の推奨プラン
| フェーズ | 推奨プラン | 月額目安 | 主な活用機能 |
|---|---|---|---|
| 導入期(1-3名) | 無料プラン or Starter | 無料〜月1,800円/シート | CRM、フォーム、基本メール、コンタクト管理 |
| 成長期(〜10名) | Professional | 要見積もり | ワークフロー、カスタムレポート、スコアリング、シーケンス |
| 拡大期(10名〜) | Enterprise | 要見積もり | カスタムオブジェクト、権限セット、サンドボックス |
StarterからProfessionalへのアップグレードを検討するポイントとしては、ワークフローとカスタムレポートの2つが最も大きな判断基準になるかなと思います。月200〜300件以上のリードが入ってくるようになると、手動での対応は現実的に難しくなるため、自動化の仕組みが必要になってきます。
創業期や小規模なチームであれば、まずはStarterプラン(月1,800円〜)から始めて、リードが増えてきたタイミングでProfessionalへのアップグレードを検討するという流れが現実的です。私も創業した当初のタイミングではHubSpotのスタータープランを使っていて、かなりコストメリット高いなと感じていました。
インバウンドマーケティングでよくある失敗と対策
失敗1: コンテンツを作っただけで終わる
ブログ記事を書いても、フォームやCTAが設置されていなければリードは獲得できません。「集客→リード獲得→ナーチャリング」の全体フローを最初から設計しておくことが重要です。
失敗2: リードを獲得しても営業に引き渡さない
マーケティングと営業の連携が弱いと、せっかくのホットリードが放置されます。ライフサイクルステージの定義と、MQL/SQLの基準を社内で共有しておくことが結構ポイントになってきます。
失敗3: 全部を一気に始めようとする
なかなか全てを一気に進めるのは難しいかなと思うので、自社で活用できそうなものとか、効果が出そうなものを見極めていただいて、優先順位をつけてトライいただければなと思います。まずはブログ + フォーム + サンクスメールの3つから始めるだけでも、インバウンドの仕組みは動き始めます。
失敗4: データの一元管理ができていない
スプレッドシートで管理している場合、やはり手動で変更が多くなってしまい、情報の差分が起きてしまいます。CRMを早い段階で導入し、顧客データを一元管理する基盤を作ることが、インバウンドマーケティング成功の前提条件です。
まとめ
インバウンドマーケティングは、コンテンツで見込み客を惹きつけ、ナーチャリングで信頼関係を築き、適切なタイミングで営業に引き渡す——という全体フローの仕組みです。HubSpotはこの一連の流れをCRM・MA・CMS・Sales Hubで一気通貫に実現できるプラットフォームです。
まずはブログ記事の発信とフォーム設置から始めて、段階的にワークフローやスコアリングの仕組みを構築していきましょう。CRMにデータが蓄積されるほど、リードの行動分析やナーチャリングの精度が上がり、より効果的な集客・商談化戦略を立てられるようになります。
なお、インバウンドマーケティングの仕組み作りにおいて、自社に最適な設計というのは企業様によって異なります。BtoBとBtoCでは設計が違いますし、業種や商材によっても最適なアプローチは変わってきます。ぜひ自社の状況に合わせて、スモールスタートから始めていただければなと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングの違いは何ですか?
コンテンツマーケティングは「価値あるコンテンツを発信して集客する手法」であり、インバウンドマーケティングはそれを含む「集客→リード獲得→育成→商談化→顧客化」までの全体プロセスを指す概念です。コンテンツマーケティングはインバウンドマーケティングの一部と捉えるとわかりやすいかなと思います。
Q2. HubSpotの無料プランだけでインバウンドマーケティングは始められますか?
はい、基本的なCRM機能、フォーム作成、メール配信(制限あり)は無料プランで利用可能です。ただし、ワークフローによる自動化やカスタムレポートなど、本格的なナーチャリングの仕組みを構築するにはProfessionalプランが必要です。まずは無料プランで基本を試し、リードが増えてきたらアップグレードを検討するのがおすすめです。
Q3. BtoB企業でインバウンドマーケティングの成果が出るまでどのくらいかかりますか?
コンテンツの蓄積とSEO効果の発現には一般的に3〜6ヶ月程度かかるとされています。ただし、既存リストへのナーチャリングメールやウェビナー開催など、すでに保有しているリードへのアプローチは比較的早く効果が出やすいです。短期施策と中長期施策を組み合わせて進めるのが効果的です。
Q4. インバウンドマーケティングに必要な社内体制は?
最低限、マーケティング担当者1名がコンテンツ作成とHubSpotの運用を担当し、営業チームとの連携窓口を設けることが必要です。HubSpotのライフサイクルステージとスコアリングの基準を営業と共同で定義し、MQL/SQLの引き渡しルールを明確にしておくことが成功のポイントです。
Q5. すでにSalesforceを使っていますが、HubSpotのマーケティング機能だけ導入できますか?
はい、SalesforceとHubSpotはデータ連携が可能です。Salesforceを使っているけどHubSpotのMA導入できないというわけではなく、データの連携はしっかりできるので、MAとSFAを切り分けて運用することも問題ありません。Marketing HubでリードナーチャリングとスコアリングをHubSpotで行い、商談管理はSalesforceで行うという使い分けも可能です。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。